3820.緩やかなデフレは常態化



緩やかなデフレは常態化
From: Hidekazu Aoki

ダイヤモンドオンラインに掲載された早稲田大学の岩村さんの見解を
添付します。


「現代は、信用制度が大変に発達した結果、このリスクプレミアムが、非常に低くなっ
ている。将来性に程々の懸念がある企業でも、国債などの基準となる金利に対して、リ
スクプレミアムは数%しかない。だから、自然利子率や物価上昇率が大きく低下して合
計値がマイナスになったりすると、リスクプレミアムを加えても、金利がマイナスにな
ることもあるわけです。

 そういう世界になっているということを前提にして、金融政策を考えないといけない
。実際に世の中に存在する金利はゼロが下限で、マイナス金利はつけられないので、物
価を何とか上昇させようとする。そうすると、いろいろな面で無理が出る。そもそも金
融政策や財政政策で、物価を自在にコントロールできるという感覚が間違いなのだと私
は思っています。」


マイナス金利「賛成」派が約45%、「反対」・「損をする感じがする」は
合わせて約3割というのは興味深いアンケート結果ではないでしょうか。

実現の可能性を感じさせます。

ただ、現有貨幣にマイナス金利が付くとして、負債の側にも少なくとも同
率の削減率が働かないとなれば、人々はいつまで経っても「破産」の恐怖
から逃れられないようにも思います。
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From: Eiichi Morino 
キャッシュの名目利子率がマイナスになると、同率ではありませんが、
短期・長期の貸借がゼロ以下でも成立するメカニズムが働くと考え
られるんじゃないかなと思っているんですが 。
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From: Hidekazu Aoki 
なるほど、成り立ちそうですね。
ただですね、将来に向けてはそうなったとしても、現有の負債は自動的
にその大きさが小さくなるわけではありませんよね。

満期が来て、残債の借換が出来れば、その残債についてはそうしたメカ
ニズムが働き、それを繰り返していくうちに負債そのものもスパイラル
的に縮減していく。

一番マイルドなかたちの通貨=負債の縮小策でしょう。

でもいまのようにあまりにも負債が大き過ぎて、大幅なバランスシート
調整をせざる得ない局面で、果たしてそうしたことを待っていられる余
裕があるのか?という疑問に対してなんとか答を見つけなければいけな
いような気もします。

それと、現状では各国政府とも赤字財政を止めるわけにいきませんが、
かといって現状のような財政発散状態も放置できない。

となると、ドーマー準則を適用すれば、通貨縮小を反映したGDPのマ
イナス名目成長率以上に、新規に発行する長期国債の表面利率はマイナ
ス金利としなければならないことになる。

ただこれも本当にそうなのかはきちんと検証してみなければ分からない
ような気がします。

もしかすると、マイナス金利の世界では、財政の安定条件も変わってく
るのかもしれません。

知的訓練としては良い宿題ですよね。当面の間、頭を働かす課題ができ
ました。
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From: Eiichi Morino 
マイナス金利(ゲゼルタックス)の世界は、ちょっと不思議な
世界で、貨幣を保有することに意味がないと言う意味で貨幣
の所有権が社会化されてしまうのですが、融資の所有権はそのまま
残るわけです。ですからこれまでの始末はどうしてくれるの、待てないよ
という問題はあるわけです。
ましてや不始末がでかすぎると、指数関数的に金利が膨らむばかりで
どうにもならんと。ドラスティックな解決策をあれこれ言う向きも
いらっしゃるけど、おおむね政治的にすぎる手法ですね。

ゲゼルタックスで金融資産の膨張は止まっていきますが、国家債務の
問題は、他方で、膨らんだ民間部門の金融資産をどうするか、という
こととと裏腹でしょうから、どのような経済メカニズムを通して
解決されていくべきか考えるという姿勢が必要なんでしょうね。

財政への要求が多様化する民主主義国家の有り様がかなり行き着くところ
まできていますからね。そうして緊縮政策が採られたにしても、それが
もたらす短期的な経済悪化が理由にされて、アイルランドの件でユーロ
が投機筋の攻撃対象になるのが唯今の状況。
国家デフォルトが投機筋の金儲けの材料にされ、緊縮へと動けばよけい
に材料にされるほど。

ロンドンスクールオブエコノミクスのブイターさんが、取り組まれて
いますので、こんど議論をまとめますね。
独のフスさんの研究もかなり参考になりそう。
岩村さんとは、お話したときは、国際化した金融のなかで、一国での
ゲゼルタックスの導入がどういう結果を生むかについて話題にしあった
記憶があります。
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From: Hidekazu Aoki 
わが国の場合、金利が付くことを前提として成り立つ仕組みが
社会のそこら中に埋め込まれていますから、マイナス金利にし
た場合、どうなるのかも示さないといけないように思います。

もっとも現行の極低金利ですでにこうしたシステムが崩壊の瀬
戸際に立たされていて、破綻は時間の問題になっているのです
が…。

といって「だから仕組みが悪いんだ」では済まされないわけで、
修正案や解決策を含めて提案しないことにはマイナス金利への
理解は得られないでしょう。

とくに実生活に直接影響がある「年金」について、どういうオ
ルタナティブがあるのか、きちんと説明する必要性を感じてい
ます。

まあ、BI推進論のみなさんからは「だから、基礎所得なんだ
よ!」という声が聞こえてきそうですが…。
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From: Eiichi Morino 
年金の抜本的な改革は戦前のカリフォルニア洲でいい線までいった
例のように課税貨幣でしなければならなくなるでしょうね。現行の
金利構造をそのままにしたBIなるものはマネタリストのもたらす高
いリスクと類似のリスクを経済社会にもたらすでしょうね。BIをい
うかたは例えば国家債務の問題はどう解決するんでしょうか?貨幣
金融システムはそのままにしてヘリコプターマネーなんですかねえ。
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From: Hidekazu Aoki 
おそらくBIが必要とされ、成り立つのは、たった1人の大金持ちと、
残り99人の貧乏人という社会じゃないでしょうか。

しかしBIを得ることによって99人の貧乏人が「満足」するなら、
BIは、その状況を固定化こそすれ、基本的に何も解決しないでしょう。

現代社会に絶対的貧困をもたらし、経済的・政治的混乱をきたす根本要
因は、金利が代表する謂れ無き「経済的地代」の獲得を可能にさせる不
労所得の稼得機構ないしは稼得構造にあるといえます。

私たちの最大の敵はそうしたメカニズムやシステムであり、その解体こ
そが私たちの最大の目的とすべきところです。

BIは、しかし残念ながらそこに反撃を加えるどころか、下手をすると
それを援護射撃してしまう可能性があるように思います。

BIをいわれる方々はここまで考えていらっしゃるのでしょうか。
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From: 白崎
そうなんです。そういう、困ったちゃんのBI論のほうが人気があ
るから困るんですね。
通貨体制、利子つき負債問題などなど、通貨体制や国家論および民主主義論まで
射程にいれておかないといけませんね。私もそのあたり、考えているのですが、
なにせ、貧乏ひとり会社で、明日、銚子まで、脳性まひのお子さんに納品に行こ
うと思うのですが、風邪をひいていて、体が思うようにいかない、さて、どうし
たもんか(苦笑)というなかで、いろいろ、考えているので、十分論理がすすみ
ませんが、微力ながらやってみます。
ところで、ご紹介の岩村さんのご発言のなかに「物価が下がって貨幣の価値が高
くなるので、みなが貨幣を退蔵」云々のお話しがありましたが、たしかに、そう
いう面もありますが、そもそも、私も含めて「退蔵」すらできない世帯も4分の
1ほどありますね。そういうことは、どうなんでしょうか。そもそも、有効需要
そのものの衰退ということも言われたりしますがーーー。
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From: Hidekazu Aoki 
岩村さんは、主にMonetary Economicsの観点から論理を進められているので
敢えて触れられていないのかもしれませんが、私はいまのデフレ状態を説明
するのに、貨幣面からだけではなく、実物経済面からのアプローチも必要と
思っています。

要するに「市場飽和」を説明要因に加えなければいけない。

おそらくわが国はバブル経済の頃に耐久消費財市場はすでに「飽和」してい
たんじゃないでしょうか。

で、それ以降は「付加価値」と称して本来不要な機能をゴチャゴチャ付けな
いと「新製品」が売れなくなってしまった。

でも基本的に代替需要だから大きな経済成長に繋がらない。というより、経
済規模を一定に保つのが精一杯な状況だった。

それでちょっとでも需要が落ち込むとマイナス成長となってしまうので、公
共事業で必至に支えていたのが、わが国の90年代だったのではないでしょ
うか。

新世紀に入って、米国を震源とする住宅・証券という狂乱バブルに助けられ
て一息つくことができたんですが、引き替えに「いらん物」を作って、それ
で所得を得る産業構造は温存されてしまった。

そこにバブル崩壊が起こって、ほんとうに「いらん物」を作り続けることが
できなくなってしまい、そこで起きた所得崩壊が連鎖して真に生活を維持す
るのに必要とされる需要までが浸食を受けるような事態が大々的に起こりつ
つある。

と整理できるのではないでしょうか。
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青木さん、白崎です。

早速のお返事ありがとうございます。
以下の青木さんのご意見は、まったく賛成で、私も同じ認識です!!!!!
ようするに「いらん物」の生産・消費が「経済」だという「欺瞞体制」ですね。
こういう認識が青木さんと同じなのですから、BI推進派の私とたとえ立場は異なっても
十分議論は可能だと言うことを再確認いたしました。ありがとうございます。

まあ、私の場合は、青木さんや森野さんの胸の一部をお借りしてやる
ぐらいのもんですがーーー。


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