3802.米国の景気浮揚策は何か?



日米中央銀行は、金融緩和で市場に大量の札を出すが、その副作用
が心配である。リーマンショック前のような資源国や新興国にキャ
ピタル・フライが起き、大量の短期資金が押し寄せる。

このときは、日本の円がゼロ金利であるために、日本から一度欧米
ファンドが借り、その後、世界に投資され世界は好景気になった。
しかし、リーマンショックで巻き戻しが起こり、世界景気はどん底
に落ちることになる。今回も同様な施策である。どうなりますか?
           津田より

0.はじめに
景気低迷に苦しむ欧米などの先進国と、景気過熱気味の中国やブラ
ジルなどの新興国の二極分化が、一段と鮮明化している。このため
、米国は景気浮揚とデフレ防止を目指して、来年6月末までに6千
億ドル(約49兆円)の長期国債(米国債)を金融機関から買い入
れることを柱にした追加の金融緩和策を決めたバーナンキ議長は
11月5日、米経済が勢いを取り戻すことは世界の安定に「非常に重要
」とし、FRBによる国債追加買い入れの決定の重要性を強調した。

これに対して、中国は、米国のドル発行は「抑制がきかない」状態
となっており、中国にインフレの脅威をもたらしているとの認識を
示し、中国人民銀行(中央銀行)は、預金と貸し出しの基準金利(
期間1年)をともに0.25%引き上げるとした。

インフレを世界に広めようとする米国と、デフレを海外に輸出して
いる中国の動きだ。最近、通貨制度などを巡る両国の対立は先鋭化
しており、今後の政治動向によっては、世界経済の波乱要因になる
ことは間違いない。

中国は、過小評価の人民元を背景に、安価な製品の輸出で、輸入す
る側から見れば、中国からの製品の輸入は、消費者物価水準を押し
下げてデフレを助長することにつながる。有体に言えば、中国がデ
フレを海外諸国に輸出している格好だ。このため、人件費を含めて
全体価格を押し下げないと、中国商品と競争できないことで、デフ
レが起きている。日本のデフレは中国近傍にあることで、より厳し
い競争のために起こっているのだ。

しかし、中国は「人民元を米国内の経済問題のスケープゴートにし
ないでほしい」と反発し、米国は「中国の人民元問題や、(世界経
済の)不均衡是正という課題は、ソウルだけで解決されるとは思っ
ていない」と述べ、G20で具体策で合意するのは難しいとの見通
しを示した。

反対に、カナダ政府高官は、米連邦準備制度理事会(FRB)による量
的緩和の拡大がG20で議論されることを明らかにした。ドル安に
つながる量的緩和に批判を強める新興国に対し、米国が説明するも
のとみられるとした。中国も問題であるが、米国も問題なのである。

そして、中国の人民元切り上げ問題で軟弱な対応をした民主党が大
敗した中間選挙の結果を受けて、オバマ米大統領は共和党のベイナ
ー下院院内総務とマコネル上院院内総務を今月18日にホワイトハ
ウスに招き、今後の政策の進め方について協議するという。

しかし、オバマ政権は景気拡大策として環境問題への対応策を推進
していたが、環境問題には逆風が吹いているので頓挫しかねない。
このため、新しい産業の芽を探す必要があるのが実情である。

また、今回の中間選挙では中国の人民元の過小評価が米国企業の雇
用を減らしたと共和党が主張して勝ったために、民主党もその主張
を取り入れることになる。

米上院は、民主党が辛うじて過半数を維持できたが、米上院も、下
院に続き、人民元の上昇を容認するよう中国に圧力をかける法案を
可決する見通しになった。

米国は、2010会計年度(09年10月〜10年9月)の財政赤字が2年連続
で1兆ドルを突破し、過去2番目の水準となる1兆2940億9000万ドル
(約105兆円)になり、主に今までは米国債を中国に買ってもらって
いた。このため、9月末の中国外貨準備は2兆6480億ドル(約216兆
5300億円)に急増していた。

しかし、FRBが米国債を大量に引き受けてくれるので、米国は中
国へ米国債の買取を依頼しないで済むことになる。今までは米ガイ
ドナー財務長官が、たびたび中国北京に行っていたが、これも無く
なる。中国バッシング(叩き)、中国パッシング(通り過ぎ)がで
きる。

中国はプラザ合意を受け入れない代償を支払う必要になってきた。
米国は、南シナ海、東シナ海での中国領土拡張を東南アジア、日本
と行う素地を整えたことになる。

1.米国の景気浮揚策とは
米国金融政策の基本は、バブルが弾けて不況になったら、もっと大
きなバブルを引き起こして解決する策で、米英の国際的な金融機関
が儲かることになる。

景気浮揚策を米国はここ20年、打ち続けている。景気浮揚策とし
て、第42代大統領(1993年-2001年)クリントン大統領が最初に軍事
技術の民間転用でITバブルを起こした。

そして、そのバブルが2000年に弾けたら、第43代大統領(2001年
ー2009年)ジョージ・ブッシュ大統領とグリーンスパンFRB議長が、住
宅バブルを住宅担保証券化という手法で起こした。金融資本主義で
米国を立て直すことにした。

その住宅バブルも弾けて、金融業界でのバブルに懲りて、第44代大
統領現オバマ大統領は、バーナンキFRB議長とともに、当初は環境バ
ブルを起こそうとしたがクライムゲート事件で失敗した。このため
、今後は資源・食料バブルを起こすことを狙っているようだ。バブ
ル振興には、お札をばら撒き、新興国の需要を膨らますことである。

新興国の大衆が金を持つと、資源・食料を今以上に必要になる。こ
の資源や食料を今の内に手にしておけという戦略である。

今回は、ドル自体がゼロ金利であるので米国から短期投資資金が流
出している。このため、投資対象の新興国・資源国通貨が上昇し、
インフレが起こっている。この流入する投資を規制し、通貨の上昇
を止めるために為替介入する国と、投資を呼び込むために為替介入
しないで公定歩合を引き上げる国が出てきた。どちらにしても資源
国・新興国のGDPがドルベースでUPすることになる。

日本の今までのゼロ金利の歴史を見ても、ただ単なる資金拡大では
FRBバーナンキ議長が期待する景気が良くなることはなく、ただ
単なる資金が海外に出て行き、世界的な狂乱インフレが起きるだけ
であるので、金融緩和でドル価値を引き下げて、輸出に有利にする
施策を取り始めた。

新興国がより質の高い食料として牛肉を志向すると米国の輸出が伸
びて、景気が回復すると見ている。また、米国は国内でのシェール
ガス開発が盛んである。LNGガスを輸入する方向からシェールガ
スを輸出できることになる。このため、BPの事故が起こっても、
半年で新規石油開発を許可している。

このように、次の経済構造をシッカリ見極め、その産業を拡大して
いくことをみている。海外に流出した産業を呼び戻すことはできな
いので、単にゼロ金利金融緩和政策だけでは米国経済の浮上はでき
ない。日本は次の戦略も無く、米国の追従をしているだけであり、
景気浮揚などできるはずがない。

もし、次の産業が構築できないと、米国はデフレにはならないが悪
性インフレであるスタグフレーションになる可能性が出てくる。

日本もただ単に米国の追従をすると、スタグフレーションになり中
産階級の没落を促進するだけになる。

2.日本の戦略を変更する時
 FRBの動きを見て、日本銀行も株価や不動産の投資信託を初め
て市場から買う方針を固めた。通貨を発行する中央銀行は普通は金
融機関が持っている資産の購入に限っており、市場からの「直接購
入」は世界でも異例だ。日銀が買うことで安心感を与え、株式や不
動産への投資が活発になることを狙うという。 

 日銀は、株価指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信
託(J―REIT)を今年12月〜来年末にETFで4500億円
分、J―REITで500億円分買うという。 

しかし、これだけでは不十分である。日本政府が戦略変更の方針を
出す必要がある。今までの戦略は製造業を中心にした産業を保護し
ていたが、これからは資源・エネルギー・農林水産業を中心にした
日本を作ることである。このような戦略変更で、新しい日本に作り
変えることである。本当の革命はこれからである。民主党の明治維
新は戦略の変更がないことで、頓挫している。

この詳細は、ある政府の研究機関への講演で明らかにするために今
は、概要しか述べることができないが、日本は「新しい江戸時代に
することである」とみている。参考資料として、下記のコラムを読
んでいただければ、分かると思う。

3799.次の戦略は、江戸時代の復活である。
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/221103.htm

3.日本の時代が来る
日本は危機時代のときに、その存在が光り輝くことになる。自然信
仰でアミニズムが中心で、自然との調和を大事にしている。一時、
産業振興で日本の環境は、大きなダメージを受けたが、環境を守る
ことが重要となり、都市の河川でも非常にきれいになっている。
都市の下に貯水池を作り、水を大事にしている。

このような考え方の都市は、世界でもない。里山の風景も世界には
ない。木村さんが生育する無肥料、無農薬なりんごも世界では考え
られない。近大の完全養殖のマグロなども世界にない。このように
現在、日本が行っている農林水産業技術は世界でも最先端である。

このように江戸時代に流行った本草学が現代に蘇り、現在の日本を
世界とは違う文化圏にしているように感じる。

この文化を世界は必要としている。その考え方と商品は、世界に受
け入れられると見る。

政府だけが、今までと同じようなことをしていると見えるのだが、
どうであろうか??

早く、次の時代の戦略に沿った政策を行うことであろうと見る。

==============================
G20、米の量的緩和を議論へ=通貨安競争回避を―加政府高官
時事通信 11月6日(土)7時32分配信

 【ニューヨーク時事】カナダ政府高官は5日、韓国で開催される20
カ国・地域(G20)首脳会合を前に記者会見し、米連邦準備制度理事
会(FRB)による量的緩和の拡大がG20で議論されることを明らかに
した。ドル安につながる量的緩和に批判を強める新興国に対し、米
国が説明するものとみられる。
 同高官は、米国にとって主要貿易相手国である中国などが為替相
場の柔軟な変動を認めないほか、利下げの余地もないことから、「
量的緩和以外に選択肢がなかった」と理解を示した。
==============================
米雇用統計:就業者15万人増 5カ月ぶり好転、市場予測超す
−−10月
 【ワシントン斉藤信宏】米労働省が5日発表した10月の雇用統
計(季節調整済み、速報値)によると、景気動向を敏感に反映する
非農業部門の就業者数は、前月比15万1000人増と、市場予想
(6万人増)を大幅に上回り、今年5月以来5カ月ぶりにプラスに
転じた。ただ、失業率は9・6%と前月から横ばいだった。9月分
の非農業部門就業者数も当初発表の9万5000人減から
4万1000人減に上方修正された。
==============================
米景気回復は世界の回復に重要、ドルを下支え=FRB議長
2010年 11月 6日 07:49 JST 

[ジャクソンビル(米フロリダ州) 5日 ロイター] 米連邦準
備理事会(FRB)のバーナンキ議長は5日、米経済が勢いを取り
戻すことは世界の安定に「非常に重要」とし、FRBによる国債追
加買い入れの決定の重要性を強調した。同時に、米経済成長の加速
はドルを下支える、との見方を示した。

 議長は討論会での質問に対し「米景気の回復は米国民にのみなら
ず、世界の回復にとり非常に重要だ」と語った。さらに、米当局者
は主要準備通貨としてドルの役割をしっかりと認識してきるとし、
「経済が力強く拡大している状況がドルにとり最適のファンダメン
タルズだ」と語った。
==============================
米上院選 民主党系53議席、共和系党47議席に
2010年11月6日8時5分

 【ワシントン=伊藤宏】米中間選挙の連邦上院選で、結果が確定
していなかった2州のうち、ワシントン州で民主党現職が当選を確
実にした。最後に残ったアラスカ州は事実上、共和党現職と同党新
顔の争いとなっているため、上院の定数100のうち、民主党系が
53議席、共和党系が47議席を確保する見通しとなった。
==============================
オバマ大統領:共和党と政策協議へ

【ワシントン小松健一】オバマ米大統領は4日、民主党が大敗した
中間選挙後の初閣議をホワイトハウスで開催し、「選挙で有権者が
発したメッセージを肝に銘じなければならない」と述べ、効率的な
政府運営と雇用対策強化を指示した。大統領は閣議後、記者団に対
して共和党のベイナー下院院内総務とマコネル上院院内総務を今月
18日にホワイトハウスに招き、今後の政策の進め方について協議
する意向を明らかにした。

 オバマ大統領は「これから(大統領選までの)2年間、言い争う
余裕はない」と強調し、共和党との協議を党派対立解消のきっかけ
にしたい考えを示した。協議には民主党のペロシ下院議長、リード
上院院内総務も出席する。
==============================
米FRB大幅な追加緩和 6千億ドルの長期国債買い入れ
2010年11月4日11時18分

 【ワシントン=尾形聡彦】米連邦準備制度理事会(FRB)は3
日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、来
年6月末までに6千億ドル(約49兆円)の長期国債(米国債)を
金融機関から買い入れることを柱にした追加の金融緩和策を決めた
。国債購入を通じて低金利で大量のお金を流し、米国景気を刺激す
るのが狙いだ。 

 FOMC後の声明で、来年6月末までに月間750億ドル(約6
兆円)のペースで長期国債を購入すると表明した。「購入規模や買
い入れペースは定期的に検証し、雇用の最大化と物価安定に資する
ように調整する」とし、景気がさらに悪化すれば、国債購入額を増
やして一層の追加緩和に踏み切る可能性も示した。短期金利の誘導
目標も従来通り0〜0.25%とし、事実上の「ゼロ金利政策」を
維持する。 

 FRBは2008年秋のリーマン・ショック後の不況に対応する
ため、同12月に短期金利の誘導目標を0〜0.25%まで下げ、
「ゼロ金利政策」を導入した。さらに、昨年3月には長期国債3千
億ドルの購入に加え、住宅ローン担保証券や政府機関債の購入の大
幅拡大を打ち出し、世の中に出回るお金の量を増やす「量的緩和政
策」に踏み出した。 

 ただ、昨年10月末には長期国債、今年3月末には住宅ローン担
保証券(計1.25兆ドル)と政府機関債(1750億ドル)の購
入を終え、量的緩和を縮小していた。だが、再び国債購入に乗り出
したことで、市場では「量的緩和第2弾」と受け止められている。
国債の購入規模は前回の倍で、大規模な緩和になった。 

 FRBが量的緩和に逆戻りせざるを得なかったのは、米国経済の
減速懸念が高まっているためだ。09年10〜12月期の実質国内
総生産(GDP)の成長率は年率換算で前期比5.0%増に達した
が、10年1〜3月期は同3.7%増、同4〜6月期は同1.7%
増、同7〜9月期も同2.0%増にとどまる。 

 特に、失業率は9月も9.6%と高く、雇用が改善しない。米経
済を支える個人消費も伸びず、物価上昇率が低下して「デフレ」に
陥ることを心配する声も出始めた。このため、FRBは今年夏以来
、追加緩和の用意があることを繰り返し表明してきた。 

 一方、長期国債の購入で長期金利が低下すれば、ドルを売って円
を買う動きにつながる。今後、円高ドル安の圧力が強まる恐れもあ
る。 
==============================
インフレを広める米国 VS デフレを広める中国
二大国が演出する世界経済の「恐ろしいリスクシナリオ」
【真壁昭夫 [信州大学教授]】ダイヤモンド

【インフレを世界に広める米国、デフレを世界に広める中国】

 足許の世界経済は、景気低迷に苦しむ欧米などの先進国と、景気
過熱気味の中国やブラジルなどの新興国の二極分化が、一段と鮮明
化している。

 そうした経済構造のなかで最も注目されるのは、インフレを世界
に広めようとする米国と、デフレを海外に輸出している中国の動き
だ。最近、通貨制度などを巡る両国の対立は先鋭化しており、今後
の動向によっては、世界経済の波乱要因の1つになることが懸念され
る。

 バブルの後始末で経済活動の低迷が続く米国は、金融政策を思い
切り緩和して、大量のドル紙幣を市中に供給している。その結果、
ドルが余剰となり、為替市場でドル安が進行している。

 また、余ったドルの一部は商品市況や新興国に流れ込み、新興国
の株式市場や物価水準を押し上げたりしている。言ってみれば、米
国の経済政策は、世界的にインフレの動きを促進している。

 一方中国は、依然過小評価されている人民元を背景に、安価な製
品の輸出を続けている。安価な製品を輸入する側から見れば、中国
からの製品の輸入は、消費者物価水準を押し下げてデフレ傾向を助
長することにつながる。有体に言えば、中国がデフレを海外諸国に
輸出している格好だ。

 現在、米中両国が対照的な動きを示すなか、世界経済は微妙なバ
ランスの上に成り立っている。

 この微妙なバランスを保ちながら、世界経済が本格的な回復軌道
に復帰できればよいのだが、予想外の事態の発生によって回復のプ
ロセスが崩れるようだと、世界経済のリスク要因が一気に顕在化す
ることも考えられる。

【世界経済の微妙なバランスを演出する米国の「バランスシート調整」】

 世界経済の微妙なバランスの背景には、2つの大きな不均衡がある
と考えればわかりやすい。1つ目の不均衡は、バブルの後始末に追わ
れる欧米諸国、特に米国の家計部門のバランスシート調整だ。

 米国では、大規模な住宅バブルによって、家計部門が多額の借り
入れで旺盛な消費活動を行なった。住宅バブルが破裂した今でも、
米国の家計部門はそのツケを払い終っていない。

 そのため、個人消費はなかなか盛り上がらない。国内の需要が盛
り上がらない部分を、政府が財政政策で埋める格好になっている。
その結果、財政赤字は拡大の一途を辿り、もうこれ以上の拡大が難
しい状況になっている。

 そこで米国の政策当局は、金融政策を思い切り緩和して、市中に
大量のドル紙幣を供給することを選択した。ドル紙幣の供給を増や
すことによって、ドルの価値を下落させ、輸出ドライブをかけるこ
とを狙ったのである。

 また、供給されたドル紙片の一部は、より高い投資効率を求めて
新興国へ流れ込み、株価を急上昇されたり、景気を一段と押し上げ
る効果をもたらすことになる。その結果、米国からの輸出が増加す
れば、輸出の増加をテコにして、米国経済は回復過程を歩むことが
できるはずだ。

 一方、ドル資金が流れ込む新興国にとって、資金流入には大きな
デメリットがある。まず、実力以上に自国通貨が上昇するため、輸
出産業には痛手が及ぶことになる。また、株価の高騰などによって
、バブルが発生する可能性が高まる。それらは、いずれも新興国経
済の阻害要因につながる。

【輸出依存から脱却できない中国経済が抱える重要な不均衡】

 好調な展開を示す中国にも、重要な問題点がある。それは、中国
経済の輸出依存度が高いことだ。有体に言えば、中国経済は今まで
厳しい為替管理体制の下で、豊富で安価な労働力を背景にして、輸
出に依存した高成長を維持してきたと言える。

 安価な製品が流れ込む輸入国では、結果的に輸入物価が押し下げ
られ、デフレ傾向が加速することになった。それは、1990年台中盤
以降、中国製品の流入によって「価格破壊」という現象に遭遇した
わが国の例を見れば、明らかだ。

 また、中国経済の成長に伴って、わが国をはじめとする主要先進
国の生産拠点が中国へ進出したことによって、先進国における雇用
機会減少を招くことになった。

 そうした現象が鮮明化して、わが国などでは給与水準が低下する
、いわゆる賃金デフレの現象が顕在化することになった。賃金デフ
レの顕在化は、国内景気の低迷を加速することになった。

 世界経済全体の観点からすると、中国経済が抱える最も大きな問
題は、輸出主導の経済構造から先進国並みの国内消費主導の経済構
造に、転換することができるか否かだ。

 2011年から始まる中国の新5ヵ年計画では、所得の増加を図り、国
内の消費を拡大することで、経済構造のモデルチェンジを図ること
が明記されている。その計画が有効にワークすれば、中国経済の輸
出依存度が低下し、人民元の過小評価を修正しながら、貿易収支の
不均衡を解消することができるはずだ。

 ただし、それには時間がかかる。欧米諸国がバブルの後始末を完
全に終えるまでには、いまだ1〜2年を要するだろう。その間に、中
国の経済構造のモデルチェンジが進み、人民元の問題も少しずつ解
消に向かうことを期待したい。
==============================
不均衡是正の具体策 G20での合意「困難」…米高官

 【ワシントン=岡田章裕】米ホワイトハウスは1日、韓国・ソウ
ルで11、12日に開かれる主要20か国・地域(G20)首脳会
合(サミット)などオバマ大統領の一連の外交日程を控え、政府高
官による記者会見を開いた。

 フロマン大統領副補佐官は「中国の人民元問題や、(世界経済の
)不均衡是正という課題は、ソウルだけで解決されるとは思ってい
ない」と述べ、G20で具体策で合意するのは難しいとの見通しを
示した。

 10月下旬のG20財務相・中央銀行総裁会議では、米国は人民
元切り上げや不均衡是正を狙い、経常収支の黒字や赤字の上限や下
限に国内総生産比4%という目標を設定するよう求めたが、中国、
ドイツなどが反対、「参考となる指針」を策定することで折り合っ
た。

 ブレイナード財務次官も1日、「どのような(数値の)範囲で(
世界経済が)持続可能か、ソウルの後も具体化をしてゆく」と述べ
た。
(2010年11月2日 読売新聞)
==============================
日銀、市場から初の直接購入へ 株価上場投信など
2010年10月30日3時1分

 日本銀行は、株価や不動産の投資信託を初めて市場から買う方針
を固めた。通貨を発行する中央銀行は普通は金融機関が持っている
資産の購入に限っており、市場からの「直接購入」は世界でも異例
だ。日銀が買うことで安心感を与え、株式や不動産への投資が活発
になることを狙う。 

 日銀は5日の金融政策決定会合で、国内で上場している株価指数
連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J―REIT)
を買うことを決めた。今年12月〜来年末にETFを4500億円
分、J―REITを500億円分買う方針だ。 

 日銀はこれまでも国債や社債などの資産を買ってきたが、いずれ
も金融機関から。これらを買って金融機関にお金を流し、融資や投
資が増えるのを狙ってきた。だが、企業融資は伸び悩み、株価や不
動産価格も低迷したまま。市場からの直接購入に踏み切り、株式や
不動産への投資を促す必要があると判断した。
==============================
米ドル発行は「抑制きかない」状態、中国にインフレ脅威=中国商
務相
2010年 10月 27日 09:16 JST

 [北京 26日 ロイター] 中国の陳徳銘商務相は、米国のド
ル発行は「抑制がきかない」状態となっており、中国にインフレの
脅威をもたらしているとの認識を示した。新華社が26日伝えた。

 新華社によると、陳商務相は講演で、輸出業者は人件費の増加や
為替相場の変化に首尾よく対応したが、突然の新たな課題に直面し
ていると指摘。「米国のドル発行に抑制がきいておらず、国際的な
商品相場が継続的に上昇していることから、中国は輸入インフレに
さらされている。この(事態に関する)不透明性が企業にとって大
きな問題となっている」と述べた。

 同相は、米金融政策の影響に懸念を表明する一方、来年の中国の
貿易については楽観的な見方を示した。

 輸出の伸びは安定し、輸入も大幅に拡大するとの見通しを示した。
==============================
中国人民銀、0.25%利上げ インフレ懸念強く
2010年10月20日0時34分

 【北京=吉岡桂子、上海=奥寺淳】中国人民銀行(中央銀行)は
19日、預金と貸し出しの基準金利(期間1年)をともに0.25
%引き上げると発表した。20日から実施する。利上げは2007
年12月以来で、これまで緩和気味だった金融政策を引き締めに転
じる姿勢を鮮明にした。日米など世界的な金融緩和でだぶついた資
金が中国に流れ込み、食品の値上がりや住宅の高止まりなどインフ
レ懸念が強まっているためだ。 

 この結果、基準金利は、預金が2.5%、貸し出しが5.56%
となる。中国では食品や住宅など生活に身近な物価の上昇ペースが
警戒水準に近づいている。賃金の上昇が追いつかず、労働者の不満
はたまっている。利上げで、利子が高い人民元の資産が一層買われ
る可能性があるが、一定の人民元の値上がりを容認しても、物価を
抑える必要があると判断したようだ。 
==============================
米財政赤字、2年連続1兆ドル超え
 【ワシントン=岡田章裕】米財務省は15日、2010会計年度
(09年10月〜10年9月)の財政赤字が2年連続で1兆ドルを
突破し、過去2番目の水準となる1兆2940億9000万ドル(
約105兆円)になったと発表した。

 ただ、赤字幅は2月の予算教書で予測した1兆5560億ドルよ
りは小さく、過去最大だった前年度(1兆4157億2400万ド
ル)から8・6%減少した。国内総生産(GDP)に占める割合も
10・0%から8・9%に低下した。

 歳入は2・7%増の2兆1617億4500万ドル、歳出は1・8
%減の3兆4558億3500万ドルだった。金融危機が峠を越し
て金融機関の破綻(はたん)処理費用が減少し、公的資金の注入額も
減ったことなどから歳出削減が進んだ。歳入面では、緩やかな景気
回復で法人税収などが増えた。

(2010年10月16日10時52分 読売新聞)
==============================
ゴールドマンやシティが「悲劇的」商品生んだ
                 −米金融危機調査委員長

 10月24日(ブルームバーグ):ゴールドマン・サックス・グルー
プやシティグループなど米ウォール街(金融業界)の金融機関は「
悲劇的に欠陥の多い」金融商品をつくりだした−。米金融危機調査
委員会(FCIC)のフィル・アンジェリーズ委員長がこうした認
識を示した。 

  アンジェリーズ委員長はCスパンが24日放映した番組のインタ
ビューで「ウォール街に罪は問えないとの考え方はばかげている」
と述べ、欠陥を「分かっていた上で影響を気にしなかったか、分か
りもせず知ろうともしなかったか、どちらかだ」と金融機関を批判
した。 

  さらに委員長はゴールドマンとシティ、メリルリンチを「ウォ
ール街の住宅ローン証券組成マシン」の部品に例え、住宅市場が2005
年か06年にピークを付けた後にもこのマシンの動きは決して鈍らな
かったと指摘。「市場で自ら販売する商品をつくりだしていた。こ
れらが悲劇的に欠陥の多い商品となったのは明らかだ」と語った。

  09年に発足し、10人の委員で構成する同委員会は金融危機の原
因を調査中。年末までに議会に調査結果を報告する予定だ。 
==============================
差し押さえ住宅の競売、バンカメ、全米で停止、手続き不備の疑い
2010/10/10, 日本経済新聞 朝刊  

 【ニューヨーク=米州総局】米銀大手バンク・オブ・アメリカ(
バンカメ)は8日、差し押さえ住宅の競売を全米で一時停止すると
発表した。物件の競売に必要な書類を過去に作成した際、物件の売
却が妥当かどうか、ローン契約の詳細確認を怠ったとの疑いが浮上
しているためだ。

 同様の動きは一部の米銀に広がっているが、全米での売却の一時
停止を発表したのは同行が初めて。

 住宅ローンの借り手が借金返済に行き詰まり、銀行が担保物件と
して差し押さえた住宅の競売を巡っては、オハイオ州の司法当局な
どが手続きの不備を指摘。物件の売却を急ぐため、銀行側が不適当
な書類を作成したと主張している。

 バンカメは現在、売却手続き中の担保物件についてローンの契約
内容を精査中。対象物件すべてについて競売の判断が妥当と確認で
きるまでは、手続きを一時的に凍結する方針だ。同行の広報担当者
によると、確認作業は数週間以内に完了する見通し。調査済みのロ
ーンについてはすべて売却が適切な判断だったと確認したと説明し
た。

 米メディアによると、JPモルガン・チェースやアリー・ファイ
ナンシャル(旧GMACファイナンシャル・サービシズ)もバンカ
メと同様の理由から、複数の州で差し押さえ手続きの一部を凍結し
ている。

 全米最大級の労働組合「サービス従業員国際労組(SEIU)」
は8日、ウォール街の金融機関に全米で差し押さえ住宅の競売を停
止するよう要求。自らの損失を抑えるため、手持ち物件の現金化を
進めようとする金融機関に対し、強く反発している。   
=============================
人民元が最高値更新 中国「スケープゴートにしないで」
2010年10月15日23時29分

 【北京=吉岡桂子】中国人民銀行(中央銀行)は15日、人民元
の取引の目安として毎朝発表する基準値を1ドル=6.6497元
に設定、2005年7月の人民元改革以来の最高値を更新した。市
場関係者は、米財務省による外国為替報告書の議会への提出を意識
した動きとみている。 

 このところ人民元切り上げを求める圧力が高まっているのは、
11月に中間選挙を控えた米国の政治的な動きとする見方が強い。
中国政府は「人民元を米国内の経済問題のスケープゴートにしない
でほしい」(商務省)と反発している。 
==============================
9月末の中国外貨準備、2兆6480億ドルに急増
2010年 10月 14日 9:36 JST 

 【北京】9月末の中国外貨準備は2兆6480億ドル(約216兆5300億円
)に急増した。為替市場をめぐり世界的に緊張が高まるなか、中国
当局が為替市場で元売り・ドル買い介入を積極的に実施したことが
浮き彫りになった。 
==============================
米上院、対中制裁法案を下院に続き可決へ=財政委員長
2010年 10月 14日 07:10 JST

 [ワシントン 13日 ロイター] 米上院は、下院に続き、人
民元の上昇を容認するよう中国に圧力をかける法案を可決する見通
し。上院財政委員会のボーカス委員長(民主党、モンタナ州)が
13日、明らかにした。


コラム目次に戻る
トップページに戻る