3801.「ならず者」国家・中国へ



中国の欧米日に対する反発攻勢が厳しくなっているが、それを行う
ごとに、世界の認識は「ならず者」国家・中国になる。  Fより

このコラムの読者はお分かりと思うが、ここは右翼で反中的なコラ
ムではない。リアリズムの原則で世界を見て、なるべく客観的な目
で見ようと努力している。しかし、このコラムでさえ、この頃の中
国の行動は、「ならず者」国家・中国の印象を持ってしまう。

それは中国の影響力が増していることによるかもしれない。米経済
誌フォーブスは今年の「世界で最も影響力のある人物」のリストを
発表し、1位に中国の胡錦濤・国家主席を選んだように、中国の経
済軍事大国化で、世界に大きな影響を持ち始めている。これが他国
と協調的な行動であれば、世界から受け入れられるが、そうなって
いない。

フランスを公式訪問中の中国の胡錦濤国家主席は11月5日サルコジ大
統領と、首脳会談を行った。この中で「あらゆる事項についてタブ
ーなく話し合った。もちろん人権もだ」と述べ、会談で中国の人権
問題を取り上げたことを明らかにした。胡錦濤国家主席が海外で出
ると人権を会議に出されることになる。

しかし、人権問題の中心に位置するノーベル平和賞の受賞が決まっ
た中国の人権活動家、劉暁波氏に対する中国メディアの「ネガティ
ブキャンペーン」が始まり、欧米の価値観を真っ向から批判する方
針に転換したようだ。胡錦濤・温家宝など海外と接触している国際
派・改革派ではない党中央宣伝部李長春など太子党が中心になって
行っているようだ。

国家主権の保全こそ、国民の人権や自由の基礎となるものなどと、
民主や人権を重んじる欧米の価値観に挑むような論調が目立ってい
る。 党中央の保守派・太子党が勢力を握っていることを物語る。

そして、12月10日にオスロで開かれる劉暁波氏のノーベル平和
賞授賞式典への出席を見合わせるよう、中国政府が各国に圧力をか
けている。そして、出席した国とは中国との貿易させないという脅
しになっている。中国の13億人市場へのアクセスを武器に、ノー
ベル平和賞への出席を止める手に出てきた。ノルウェーのノーベル
賞委員会は、すでに駐オスロ各国大使ら約1000人に招待状を発送済
みである。

しかし、この圧力で中国の人権問題を見過ごすことはできないため
、ドイツなど欧米諸国は出席を明言するなど、働きかけが逆効果と
なる可能性も出てきている。このように、中国の経済軍事大国化で
、「ならず者」国家化してきていると欧米諸国は見始めている。

中国外務省の胡正躍次官補はアジア外交について、隣国との関係に
「歴史的変化が起きている」との認識を示し、「同盟や威嚇に頼る
旧来の考えを捨て、相互の信頼と利益、協力を核とする新しい安全
保障観を確立する」と述べた。「当事者間による話し合いでの解決
を目ざし、それまでは問題を棚上げして共同開発をすればよい」と
表明した。米国の干渉があったことで、中国は変化した。米国の干
渉が無かったら、威嚇に頼った方法で南シナ海を中国のものにした
ということである。

また、クリントン国務長官が日米外相会談で「尖閣諸島は日米安保
条約の適用対象だ」と述べたことで、尖閣列島に米国が介入すると
分かり、中国はここでも少し譲歩をして、日本に唐家セン(センは
王へんに旋)・元中国国務委員(副首相級)を送り、尖閣諸島問題
について、「島の問題は主権の問題であり、国民感情にかかわるも
のでもある。すぐに状況を変えるような行動を起こすことがあって
はいけない」との認識を示し、日本との暗黙の了解を遵守してほし
いとした。

しかし、クリントン米国務長官がハノイで10月30日に中国に提
案した「日米中3カ国による外相会談」について、中国は、「単な
る米国の考えに過ぎず、アジア太平洋にある既存の協議や協力機構
を利用すれば十分だ」とし、開催に否定的な考えを示した。 

中国は、中間選挙で大敗したオバマ政権が、対中政策を変更して中
国敵視政策になることを見越して、対米政策を敵対的にしている。
米中敵対関係が生まれているようだ。東アジア・サミット閉幕後、
クリントン国務長官と戴秉国国務委員(外交担当)と会談したが、
問題を解決するどころか、互いに顔を真っ赤にするほど激しい論争
が行われたというように米中の利害が激突している。


中国は、米国中心の包囲網形成を阻止するために、11月14ー15の両日
、湖北省武漢市で中国、ロシア、インドの外相会議を開くと発表し
たが、どうなりますか??

1930年代のドイツ・日本の歴史を見ると、中国の動きは危ない
と思うが、どうであろうか??

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ノーベル平和賞、出席するな…中国が各国に圧力
 【ロンドン=大内佐紀】12月10日にオスロで開かれる中国民
主活動家・劉暁波氏(54)のノーベル平和賞授賞式典への出席を
見合わせるよう、中国政府が各国に圧力をかけていることがわかっ
た。

 AP通信が4日、伝えた。
 同通信によると、オスロ駐在のフィンランドなど複数の国の外交
官が「彼は犯罪者で、ノーベル賞授与は中国への内政干渉だ」とし
て出席を控えるよう求める公式書簡を中国大使館から受け取ったこ
とを確認した。式典で劉氏支持の声明を出さないようクギを刺す文
書もあった。中国政府は、北京駐在の外交団にも働きかけをしてい
るという。ただ、ドイツなどは出席を明言するなど、働きかけが逆
効果となる可能性がある。

 授賞式典には、ノルウェーの国王ハラルド5世や同国閣僚が出席
する。駐オスロ各国大使ら約1000人が招待され、招待状も発送
済み。ノーベル賞委員会のルンデスタッド事務局長によれば、中国
大使館にも招待状を送ったが、あらゆる郵便が開封されないまま返
送されてきているという。

(2010年11月6日01時27分 読売新聞)
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中仏首脳、人権問題も議題に=G20での協力など協議
時事通信 11月6日(土)8時18分配信

 【パリ時事】フランスを公式訪問中の中国の胡錦濤国家主席は5日
、南部ニースでサルコジ大統領と、今回の訪問で2回目となる首脳会
談を行った。同大統領は会談後、記者団に対し「あらゆる事項につ
いてタブーなく話し合った。もちろん人権もだ」と述べ、会談で中
国の人権問題を取り上げたことを明らかにした。
 サルコジ大統領はこの中で「中国の経済成長、中国の改革開放に
異論を唱える者はいない」と指摘。「中国がこの方向に進むよう後
押しすべきだと、われわれは冷静に、互いを尊重し、理解し合える
よう努めながら話し合った」と述べ、批判は抑制しつつ政治面の自
由拡大を促したことを示唆した。
 中国高官は先に、胡主席のフランス訪問では人権問題が議題にな
ることはないとの見方を示していた。
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沈黙一転、ノーベル賞・劉暁波氏へ批判報道相次ぐ 中国
2010年11月6日7時1分

 【北京=林望】ノーベル平和賞の受賞が決まった中国の人権活動
家、劉暁波(リウ・シアオポー)氏に対する中国メディアの「ネガ
ティブキャンペーン」が始まっている。国内では劉氏に関する情報
を厳しく統制してきたが、12月の授賞式を前に、劉氏を支持する
動きや欧米の価値観を真っ向から批判する方針に転換した模様だ。 

 中国共産党機関紙人民日報傘下の国際情報紙「環球時報」は1日
、「劉暁波、その人間とそのしてきたこと」との論評を掲載し、劉
氏は「米情報機関と関係する組織から資金を受け取っていた」「(
天安門事件後に逮捕された際)号泣して助けを求めた」などと、強
い調子で批判。これを機に人民日報(海外版)や、劉氏の仕事や経
歴すらほとんど報じてこなかった国内各紙が、劉氏を非難する記事
を掲載しはじめた。 

 金融危機をいち早く抜け出し国際経済で影響力を増した中国では
、政府の強力な権限の下で効率的に進む改革開放路線を「中国式発
展モデル」ととらえる議論が盛んだ。そうした自信を背景に、政治
面でも「国家主権の保全こそ、国民の人権や自由の基礎となるもの
だ」(チャイナ・デイリー)などと、民主や人権を重んじる欧米の
価値観に挑むような論調も目立つ。 
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胡主席が1位、プーチン首相4位、菅首相は…
 【ニューヨーク=吉形祐司】米経済誌フォーブスは今年の「世界
で最も影響力のある人物」のリストを発表し、1位に中国の胡錦濤
・国家主席を選んだ。

 2位は昨年1位だったオバマ米大統領で、両氏は昨年と順位が入
れ替わった。

 同誌は胡主席について「世界人口の5分の1の13億人の国民に
対し、独裁に近い支配力を及ぼしている」と評した。また、中国経
済が日本を抜いて世界第2になったと指摘。25年後には米国をし
のぐ世界最大の経済大国になるとの「信頼すべき予測」を紹介した。
(2010年11月5日10時35分 読売新聞)
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中国、争いは「対話で解決」 新華社、インタビュー
2010年11月4日22時28分

 【北京=林望】中国外務省の胡正躍次官補はアジア外交について
新華社通信のインタビューに応じ、海洋権益を巡る周辺国との対立
を念頭に「中国は対話を通して適切に解決する」と強調した。アジ
ア太平洋経済協力会議(APEC)を控え、周辺国が中国に対して
抱く警戒感や不信を和らげる狙いとみられる。 

 新華社が4日に記事を配信した。胡氏は中国の隣国との関係に「
歴史的変化が起きている」との認識を示し、「同盟や威嚇に頼る旧
来の考えを捨て、相互の信頼と利益、協力を核とする新しい安全保
障観を確立する」と述べた。 

 東南アジア諸国との間で対立がある南シナ海の海洋権益を巡って
は、「当事者間による話し合いでの解決を目ざし、それまでは問題
を棚上げして共同開発をすればよい」と表明。名指しは避けつつ「
域外の勢力が介入すべきではない」として、米国を牽制(けんせい
)した。尖閣諸島を巡る問題には言及しなかった。 
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中・ロ・印外相、中国で14、15日に会談 新華社
2010年11月5日7時49分

 【北京=林望】中国国営新華社通信によると、中国政府は今月
14、15の両日、湖北省武漢市で中国、ロシア、インドの外相会
議を開くと発表した。3国の外相会議は10回目で、中国の楊潔チ
ー(ヤン・チエチー、チーは竹かんむりに褫のつくり)外相の招き
に、ロシアのラブロフ外相、インドのクリシュナ外相が応じたとい
う。 
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日中の唐家セン氏、尖閣「状況変える行動いけない」
2010年11月4日22時54分

 来日中の唐家セン(センは王へんに旋)・元中国国務委員(副首
相級)が4日、日本経団連を訪ね、米倉弘昌会長らと懇談した。同
席者によると、唐氏は尖閣諸島問題について、「島の問題は主権の
問題であり、国民感情にかかわるものでもある。すぐに状況を変え
るような行動を起こすことがあってはいけない」との認識を示した
。その上で、「日中関係、特に民間同士の関係はこれまで通り発展
させていくべきだ」と話したという。 

 米倉会長は「日中関係では我々も先輩たちの努力を無にしてはな
らない」と応じたという。 

 また唐氏は4日昼前、首相官邸に仙谷由人官房長官を訪ね、
約30分会談した。日中両国が戦略的互恵関係を進めることが大事
だという認識で一致したという。 
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中国、日米中外相会談に否定的 尖閣、日中問題と強調
2010年11月2日19時12分

 【北京=峯村健司】クリントン米国務長官がハノイで10月30
日に中国に提案した「日米中3カ国による外相会談」について、中
国外務省の馬朝旭報道局長は2日、「単なる米国の考えに過ぎず、
アジア太平洋にある既存の協議や協力機構を利用すれば十分だ」と
の談話を発表し、開催に否定的な考えを示した。 

 馬局長は、「釣魚島(尖閣諸島)をめぐる領土問題はあくまで日
中間の問題である」と強調。日本が実効支配していることを理由に
、日米安保条約5条で定めた米国の防衛義務の対象になるとクリン
トン氏が表明したことについて、馬局長は「完全に間違っており、
立場を改めるべきだ」と批判した。 
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中国の戴秉国国務委員/アメリカのクリントン国務長官会談
朝鮮日報2010 年 11 月 01 日 
尖閣:米中対立にも飛び火
 尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権をめぐる日中両国の対立が
米中間にも飛び火している。

 東アジア・サミット(EAS)が閉幕した先月30日、ベトナムでクリ
ントン米国務長官と中国の楊潔チ外相が会談した。同日午後には、
クリントン国務長官が中国南部の海南島を訪れ、戴秉国国務委員(
外交担当)と空港のVIPラウンジで2時間半にわたり会談した。

 しかし、問題を解決するどころか、互いに顔を真っ赤にするほど
激しい論争が行われたもようだ。先月27日にハワイで行われた日米
外相会談で、クリントン国務長官が「尖閣諸島は日米安保条約の適
用対象だ」と述べたことが争点となった。

 中国外務省の馬朝旭報道局長は、クリントン国務長官の発言が伝
えられた直後の29日夜、緊急の論評を通じ、「クリントン国務長官
の発言に厳重な懸念と強い不満を表明した。釣魚島は中国固有の領
土であり、論争の余地がない主権を保有している」と主張した。馬
局長はまた、「日米安保条約は冷戦期の産物であり、二国間条約に
すぎず、それが中国を含む第三国の利益を侵害してはならない。中
国政府と人民は釣魚島を条約の範囲内に含めることを決して容認し
ない」と述べた。中国は米国に対し、「日中間の問題に介入し、片
方の肩を持つな」というメッセージを伝えた格好だ。馬局長は論評
の一部で、通常の「米日」という表現を一部「日米」と言い換えた。
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急接近:松本健一さん 台頭する中国に、どう対応しますか?
 <KEY PERSON INTERVIEW>

 沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件以来、不協和音が続く日
中関係。民主党政権は台頭する中国とどう付き合うべきか。学問の
世界から内閣官房参与に就任した外交ブレーンに聞いた。
【聞き手・野口武則】

 ◇戦前の失敗、今に生かす−−内閣官房参与・松本健一さん(64)
 −−どういう経緯で内閣官房参与を引き受けたのですか。

 ◆ 友人の仙谷由人官房長官に頼まれ、4年前から前原(誠司外
相)グループの議員を中心に日本近代史を講義しました。日本が大
東亜戦争に入っていく過ちと、この失敗の経験を生かしてアジア共
同体をどう作るかを話したのです。昨年の政権交代で入閣した仙谷
さんから「アジア外交で助言してもらいたい」と言われました。
10月に辞令を受けた時、菅直人首相から「夏休みに軽井沢で『日
本のナショナリズム』(松本氏の著書)を読ませてもらいました」
と。仙谷さんが勧めたのでしょう。

 −−菅政権は8月、日韓併合100年で首相談話を出しました。
何か助言をしたのですか。

 ◆ 日韓併合の過ちなどを話し「談話を出した方がいい」とは言
いました。何を失敗したかを踏まえないと、外交戦略は作れないか
らです。韓国だけでなく、来年は中国の辛亥(しんがい)革命
100年、再来年は中華民国の建国100年に当たります。その後
、日本政府が対華21カ条要求で中国に干渉して日中戦争の発端と
なり、反日暴動で関係が悪化する現在の日中外交の基本パターンが
できたことも忘れてはなりません。

 −−漁船衝突事件で、日本は中国の強硬な対応を読み誤りました
。中国の現状をどう見ますか。

 ◆ 今の中国は、日清・日露戦争に勝った後の日本と同じです。
経済発展で元気になれば、主権や国土、資源を拡大するナショナリ
ズムが強くなる。中国の国家目標は今「富強」。明治維新後に日本
が進めた「富国強兵」です。日本は領土を拡大し、覇権傾向が強く
なり失敗しましたが、中国も同じ間違いをする可能性があります。

 −−どう対応すべきですか。

 ◆ 失敗の経験者だから中国に「その道を行けば、戦前の日本と
同じ失敗をする」と言えます。中国が愛国教育や富強路線を進め、
軍事力で東シナ海の海上覇権を展開するのは、他のアジア諸国や米
国にとっても迷惑。中国がナショナリズムを超えるための場として
も、東アジア共同体が必要です。

毎日新聞 2010年11月1日 東京朝刊
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【湯浅博の世界読解】新しい覇権国は好き勝手
2010.10.27 07:59サンケイ
 「ならず者」が権力を握ると横暴な専制君主になり、近隣の諸侯
がひざまずかないことに腹を立てる。彼我の力の差を計算せず、怒
りにまかせてむやみに戦争を仕掛けていく。

 そして、最後は滅びることになることは、多くの歴史家が指摘し
ている。

 都市国家の昔から似たような覇権争いが繰り返されてきた。地中
海地方から欧州大陸に広がり、アジア太平洋でも日本が当時の覇権
国に挑んで敗れた。

 いまの中国を専制的な「ならず者国家」と呼んだのは、ノーベル
賞学者のクルーグマン教授であって本紙ではない。

 為替政策から見れば、国際ルールを守らずに人民元を勝手に操作
している。南シナ海の大半を92年領海法で線引きすると、武装艦を
出して沿岸国を脅して歩く。揚げ句に、軍幹部は「大国が空母を持
つのは当然であり、小国と同じうせず」と豪語した。

 なるほど、けんか上手なクルーグマン教授がいうのもムベなるか
なである。

 彼がいうには、漁船の船長が尖閣諸島周辺海域で海上保安庁に逮
捕されたというのは、争いにしては「些細(ささい)な原因」であ
った。それを中国は、「喜んで引き金を引いた」と断ずる。

 その報復を段階的に引き上げ、レアアース(希土類)の禁輸から
邦人の身柄拘束にまで及んだ。

 クルーグマン教授は堪忍袋の緒が切れた。中国は「政治紛争で思
い通りにするために、通商法に違反して影響力を行使した」と非難
し、ルール無視の「ならず者経済大国である」とレッテルを張った
のだ。

 来日した米ジョージワシントン大学のマイク・モチヅキ教授は、
これを少し品の良い表現で新興大国の特徴を示した。

 新興の覇権国はまず、(1)自分の力を過大評価しがちになる
(2)既存の国際秩序に不満を抱く(3)感情的な民族主義に傾斜す
る(4)国家的な損得勘定の分析ができなくなる-。こうなると危険
水域である。

 これを避けるため、ある程度は新興大国の見解を取り入れること
はやむを得ないという。同時に、「限界があることも示すべきであ
る」と。そのためにも、日本は自衛力を引き上げ、日米同盟を強化
するという常識的な線を推奨する。

 モチヅキ教授は防衛費増を強調し、「日本のように小さな棍棒(
こんぼう)を片手にわめくのではなく、セオドア・ルーズベルト大
統領の言葉のように、大きな棍棒を手にしてソフトな声の方がいい
」と、抑止力の充実を提言した。

 78年の日中平和友好条約を結ぶ前にも、日本が尖閣の帰属を明確
にすべきだと議論しただけで、中国漁船の大群が尖閣に押し寄せた
ことがある。

 結局は条文に「尖閣」を挿入せず、問題を先送りした。外交上は
「圧力に弱い日本」のイメージが定着し、今回のような漁船の横暴
と中国当局の傲慢(ごうまん)を許してしまった。

 中国が対日圧力を加えた場合には、日本の防衛費増と国際世論の
反発というコスト高になることを知らしめる必要がある。

 そして、自由と民主主義という普遍的価値を行動で示すこと。小
国ノルウェーが、中国の民主活動家にノーベル平和賞を授与したよ
うに、尖閣事件の証拠ビデオを公開することがこれにあたる。

 モチヅキ流にいえば、日本も「大きな棍棒を片手に大声で」へと
踏み込むころ合いではないか。(東京特派員)



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