3790.ゾンビ負債と化したサブプライムローン



ゾンビ負債と化したサブプライムローン
From: Hidekazu Aoki

↓のようになると、もはや哀れを通り越して嗤うしかありません。

―引用ここから

アメリカで庶民がマイホームを購入するとき住宅ローンを銀行から借ります。銀行は殆
どの場合、そのローン(それはつまりお金を貸した代わり、毎月、金利を取る権利に他
ならないわけですが)を第三者に転売します。

そのようにして転売されたローンをひとまとめにして(証券化)さらに取引するという
ことが行われてきました。

するともともとお金を貸した銀行が、いまではその物件の真の所有者ではなく、金利を
受け取る権利、物件を差し押さえる権利は転売の過程で何回も所有者を変え、証券化の
過程で輪切りにされ、「バラバラ殺人事件」みたいになってしまっているケースが殆ど
なのです。

JPモルガンやバンク・オブ・アメリカの担当者が差し押さえを実行するにあたり「も
ちろん、この物件はオレのものだよ」という宣誓書にサインしたのに対し、タイトル・
インシュアランス・カンパニーは「アンタ、この権利はバラバラにされて、転々と転売
されてきたのに、これが本当にアンタのものだと、本当に調べたの?」と言っているわ
けです。

実際、よく調べたらそうではなかったというケースが出て、銀行はボコボコに非難され
ています。

でもこれを調べ始めたらいままで輪切りにされ、転売された証券化商品の歴史をぜんぶ
遡らないといけないわけで、「ヒト・ゲノムの解読作業」みたいな膨大な作業が待って
いるわけです。

―引用ここまで

全文は、↓を参照してください。
http://markethack.net/archives/51638228.html

金融工学は、数理経済学的厳密さをもって、米国社会の構造的いい加減さを隠蔽し、決
して死に絶えさせる(清算させれる)ことができない負債を産み落とした、ということ
でしょう。
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差し押さえ住宅の競売、バンカメ、全米で停止、手続き不備の疑い
2010/10/10, 日本経済新聞 朝刊  

 【ニューヨーク=米州総局】米銀大手バンク・オブ・アメリカ(
バンカメ)は8日、差し押さえ住宅の競売を全米で一時停止すると
発表した。物件の競売に必要な書類を過去に作成した際、物件の売
却が妥当かどうか、ローン契約の詳細確認を怠ったとの疑いが浮上
しているためだ。

 同様の動きは一部の米銀に広がっているが、全米での売却の一時
停止を発表したのは同行が初めて。

 住宅ローンの借り手が借金返済に行き詰まり、銀行が担保物件と
して差し押さえた住宅の競売を巡っては、オハイオ州の司法当局な
どが手続きの不備を指摘。物件の売却を急ぐため、銀行側が不適当
な書類を作成したと主張している。

 バンカメは現在、売却手続き中の担保物件についてローンの契約
内容を精査中。対象物件すべてについて競売の判断が妥当と確認で
きるまでは、手続きを一時的に凍結する方針だ。同行の広報担当者
によると、確認作業は数週間以内に完了する見通し。調査済みのロ
ーンについてはすべて売却が適切な判断だったと確認したと説明し
た。

 米メディアによると、JPモルガン・チェースやアリー・ファイ
ナンシャル(旧GMACファイナンシャル・サービシズ)もバンカ
メと同様の理由から、複数の州で差し押さえ手続きの一部を凍結し
ている。

 全米最大級の労働組合「サービス従業員国際労組(SEIU)」
は8日、ウォール街の金融機関に全米で差し押さえ住宅の競売を停
止するよう要求。自らの損失を抑えるため、手持ち物件の現金化を
進めようとする金融機関に対し、強く反発している。   

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ゴールドマンやシティが「悲劇的」商品生んだ
                 −米金融危機調査委員長

 10月24日(ブルームバーグ):ゴールドマン・サックス・グルー
プやシティグループなど米ウォール街(金融業界)の金融機関は「
悲劇的に欠陥の多い」金融商品をつくりだした−。米金融危機調査
委員会(FCIC)のフィル・アンジェリーズ委員長がこうした認
識を示した。 

  アンジェリーズ委員長はCスパンが24日放映した番組のインタ
ビューで「ウォール街に罪は問えないとの考え方はばかげている」
と述べ、欠陥を「分かっていた上で影響を気にしなかったか、分か
りもせず知ろうともしなかったか、どちらかだ」と金融機関を批判
した。 

  さらに委員長はゴールドマンとシティ、メリルリンチを「ウォ
ール街の住宅ローン証券組成マシン」の部品に例え、住宅市場が2005
年か06年にピークを付けた後にもこのマシンの動きは決して鈍らな
かったと指摘。「市場で自ら販売する商品をつくりだしていた。こ
れらが悲劇的に欠陥の多い商品となったのは明らかだ」と語った。

  09年に発足し、10人の委員で構成する同委員会は金融危機の原
因を調査中。年末までに議会に調査結果を報告する予定だ。 
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2010年10月11日17:59 ロボ・サイナー問題とは何か? アメリカの
不動産市場、オワタ
http://markethack.net/archives/51638228.html
日本では殆ど注目されていませんが、いまアメリカでは「ロボ・サ
イナー問題」というのが頭の痛い問題として認識されつつあります。

ロボ・サイナーとは中身をちゃんと吟味せず、ロボットのように単
純動作の繰り返しにより書類の山を次々にサインしてゆくことを指
します。

今回、特に問題になっているのはマイホームのオーナーが住宅ロー
ンが払えなくなり、住んでいる家を銀行が差し押さえするとき、銀
行の担当者が「この物件の所有権はまちがいなくわが銀行にある」
という宣誓書(affidavit)に無造作にサインする行為です。

「アンタ、これ本当にアンタの銀行の所有だって、証明できるの?」

そう異議を唱えたのは不動産名義保険会社(タイトル・インシュア
ランス・カンパニー)です。

タイトル・インシュアランスというのは不動産の登記がしっかりし
ている日本では想像しにくい機能かもしれません。

アメリカでは昔から不動産登記のシステムがいい加減だったので、
不動産の買い手が物件を売ってくれる相手のことをよく調べもせず
うっかり不動産を購入して、後で「あの物件は実は売り手の所有で
はなかった」ということがわかるという事件が頻発したのです。

すると買い手は泣き寝入りです。

だからタイトル・インシュアランス・カンパニーという商売が生ま
れたのです。

タイトル・インシュアランス・カンパニーは売り手が間違いなくそ
の物件の所有者であるということを保証(インシュアー)し、若し
、そうでなかったときの損失を引き受けます。つまり不動産登記に
まつわる詐称にかける保険です。

タイトル・インシュアランス・カンパニーは誰から誰へと所有権が
変わってゆく物件の歴史をしっかり追跡、記録しています。言わば
「私設不動産登記所」みたいなイメージです。

さて、今回、JPモルガンやバンク・オブ・アメリカなど大手の銀
行が次々と「当分の間、物件の差し押さえを中止する」と発表しま
した。

その背景にはタイトル・インシュアランス・カンパニーが叛乱を起
こしたということがあります。

「JPモルガンさん、アンタの宣誓書はデタラメじゃないの?所有
権がハッキリしない以上、ウチはこの物件がアンタの所有であると
いうことを保証したくない」

タイトル・インシュアランス・カンパニーはそんな風に登記保証の
提供を拒否したのです。

(なんだ、アメリカの銀行って、いい加減だな)

これを読んだ皆さんはそう思うかも知れません。

実際、アメリカ人にはいい加減なところがあります。

でも問題はもっと深いし、構造的なのです。

アメリカで庶民がマイホームを購入するとき住宅ローンを銀行から
借ります。銀行は殆どの場合、そのローン(それはつまりお金を貸
した代わり、毎月、金利を取る権利に他ならないわけですが)を第
三者に転売します。

そのようにして転売されたローンをひとまとめにして(証券化)
さらに取引するということが行われてきました。

するともともとお金を貸した銀行が、いまではその物件の真の所有
者ではなく、金利を受け取る権利、物件を差し押さえる権利は転売
の過程で何回も所有者を変え、証券化の過程で輪切りにされ、「バ
ラバラ殺人事件」みたいになってしまっているケースが殆どなので
す。

JPモルガンやバンク・オブ・アメリカの担当者が差し押さえを実
行するにあたり「もちろん、この物件はオレのものだよ」という宣
誓書にサインしたのに対し、タイトル・インシュアランス・カンパ
ニーは「アンタ、この権利はバラバラにされて、転々と転売されて
きたのに、これが本当にアンタのものだと、本当に調べたの?」と
言っているわけです。

実際、よく調べたらそうではなかったというケースが出て、銀行は
ボコボコに非難されています。

でもこれを調べ始めたらいままで輪切りにされ、転売された証券化
商品の歴史をぜんぶ遡らないといけないわけで、「ヒト・ゲノムの
解読作業」みたいな膨大な作業が待っているわけです。

中間選挙を控えて有権者の歓心を買う「ネタ」に飢えている議員さ
んたちは「それっ!」とばかりこの問題に飛びついています。また
「銀行叩き」が出来るからです。

銀行としてもタイトル・インシュアランス・カンパニーにソッポを
向かれたら差し押さえ作業は出来ません。

最近のアメリカの不動産取引の少なからぬ部分は銀行の差し押さえ
競売でした。それらの物件の買い手はハゲタカ・ファンドです。

だからそういう財テク型の不動産取引は今後パタッと止まるでしょう。

それは米国の不動産市場のアク抜けが一層遅くなることを意味します。

ベン・バーナンキ議長がQE2(追加量的緩和政策)を繰り出すのを急
いでいる一因はここにあります。

そういう事情で不動産市場は逝く寸前ですから、バーナンキFED
はジャブジャブにせざるを得ませんから。


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