3788.1930年代の悪夢が来る



中国の外交政策は、1930年代のナチス・ドイツの行動とよく似
ている。そして、現在の通貨安競争も1930年代のブロック経済
に行く金本位制の崩壊過程とよく似ている。1930年代を見ると
現在から近未来を見通せることになりそうである。その考察をしよ
うと思う。   津田より

0.1930年代の概要
1929年秋にニューヨーク株式市場が暴落し、そこから恐慌が始まる。
1930年の上半期には景気は自立反転して回復に向かった。しかし、
中期から再び急速に悪化した。30年暮れに投資銀行と普通銀行が倒
産。29年秋には農産物価格が下落して、33年には半分程度の価格ま
で下がることになる。工業製品も同様に価格が下がった。

このように深刻なデフレになり、各国は保護貿易主義的な対応を取
り始めた。ここで、関税引き上げ法であるスムート・ホーリー関税
法が30年に成立する。各国が報復関税を掛けたために、世界の貿易
量は1/3にまで落ち込んだ。

これと、29年までは米国から世界に大量の短期資金が供給されてい
たが、29年のニューヨーク株式市場の大暴落で資金の引き上げが起
こり、世界的に経済運営が行き詰ることになる。31年1月にボリビ
アが債務不履行になり、ラテン・アメリカ諸国も同様になった。

5月にはオーストリアで最大の銀行が破綻した。32年にはドイツも
戦時賠償のデフォルト、支払い停止を宣言したが、大手銀行の破綻
で、ドイツは金融恐慌になる。金融市場の混乱で欧州各国はポンド
売り、金に換える行為に出た。1931年英国はポンドを支えきれずに
、金本位制から離脱。32年末には32ケ国が金本位制を破棄した。
そして、通貨切り下げ競争が起こる。このため、国際金融のシステ
ムが完全に秩序を失うことになった。

国際的な混乱で31年9月には米国の銀行が305行、10月には
522行が破綻した。33年3月にルーズベルトが就任したが、緊急
銀行法を成立し、健全な銀行を選択して経営を再開することにした。
このため、8日間のバンク・ホリデーを実施した。4月には、金本
位制から離脱する。

各国は植民地を抱え込みブロック経済化を進めた。それぞれのブロ
ックは通貨圏ごとに分かれた。(ブロック経済の時代)

もう1つが、ナチス・ドイツの飛躍である。1914年ー1918年第1次世
界大戦、1917年にソヴィエト連邦が成立、1919年にパリ講和会議、
1920年、国際連盟の発足(米国の非参加)そして、世界恐慌で独裁
政治で切り抜けることを提唱した国家社会主義ドイツ労働者党(ナ
チス党)が1933年ドイツで政権を獲得する。1934年8月にヒンデンブ
ルク大統領が死去すると、ヒトラーは従来の首相職に加えて国家元
首の機能を吸収し総統になる。

1933年に日本とナチス・ドイツが国際連盟から脱退し、1934年にソ
ヴィエト連邦が国際連盟に参加する。

1935年にはヴェルサイユ条約の破棄と再軍備を宣言した。ヒトラー
はアウトバーンなどの公共事業に力を入れ、壊滅状態にあったドイ
ツ経済を立て直した。シャハトの経済学で、短期間にドイツ経済を
立て直した秘密は、通貨の変更を行って、実質金利をマイナスにし
たことによる。500万円までは無料で交換して、それ以上の金額
には手数料を取ることをした。こうすると金利0%以下と同じ効果
が出る。

1936年にはドイツ軍はヴェルサイユ条約によって非武装地帯となっ
ていたラインラントに進駐した(ラインラント進駐)。同年には国
家を威信を賭けたベルリン・オリンピックが行われた。

1938年にはオーストリアを併合(アンシュルス)。9月にはチェコス
ロバキアに対し、ドイツ系住民が多く存在するズデーテン地方の割
譲を要求。英仏独伊の4ヶ国の首脳によるミュンヘン会談が開かれ、
ヒトラーは英仏から妥協を引き出すことに成功した。

1936年には日独防共協定を締結。1937年日本と中華民国間において
日中戦争(支那事変)が起こる。1937年にイタリアが国際連盟から
脱退する。1938年には満州国を正式に承認し、中華民国のドイツ軍
事顧問団を召還した。

1936年スペイン内戦(1936年7月 - 1939年3月)
1939年 - ドイツ、ポーランドに侵攻。これに対してイギリスとフラ
ンスが宣戦(第二次世界大戦勃発)。その後、ソ連もポーランドに
侵攻した。1940年9月にはアメリカを仮想敵国として日独伊三国軍事
同盟を締結した。

というように、日本とドイツが経済成長して、経済不況の英国覇権
体制「現状」の秩序に対する「不満足」な国家=現状変革国家の台
頭が目立つようになり、そこに経済的な世界的な崩壊が起こると、
現状を打破しようという動きが起こる。

この1930年代の不満国家はドイツと日本であったが、現代の不
満国家の代表例はロシアと中国になっている。

1.現在の状況
中国は、南シナ海、東シナ海の領土拡張を志向している。ナチス・
ドイツは神聖ローマ帝国復活という第三帝国構築で、神聖ローマ帝
国の領土が本来のドイツ領土としているために、周辺国家・地域の
割譲を求めた。

これと同じ論理で、中国は歴代王朝最大版図の清帝国の領土復活を
要求しているように感じる。この論理であると、東南アジア全体も
自国勢力範囲ということになるし、韓国も属国になる。そのような
論理にしないと、南シナ海の領有権を主張できない。

もう1つが、経済面であるが、自国通貨を為替介入で切り下げ、輸
出で、自国経済を成り立たせている。貿易額は、実にGPDの40
%も占めている。国内消費は30%と日米の70%程度と大きく違
う。この貿易依存の経済拡大が大量の資源供給を必要として、ナチ
ス・ドイツの理論的な支柱であるハウスホーファー地政学にある生
存権理論と同じような論理を中国は、国家戦略としている。

2008年のリーマンショックで世界経済は低迷し、いち早く国内の公
共事業で中国は立ち直り、軍備拡張をあいまって世界の大国になっ
た。英米は1930年代の金本位制離脱で札を大量に印刷したのと同様
な金融緩和を行い、1930年代金本位制堅持していた国と同様に日本
など正常な金融政策実施国の通貨を上昇させるという経済的な苦境
に追いやっている。それに対応するために、アジア諸国は通貨介入
を繰り返している。

この1930年に米国が関税引き上げ法であるスムート・ホーリー関税
法を成立させるが、これと同様な中国に対する相殺関税法が成立す
る可能性が高い。この法律が、通貨の為替介入をする国のどこでも
適用できるような法律であり、アジア諸国もターゲットである。

このように米国の行動は1930年代の大恐慌当時の姿と同様であり、
一方、中国は軍備拡張し領土拡張を主張するナチス・ドイツと同様
である。

3.相互依存世界の今後
1930年代と同様な方向に現在は向いているが、それでは戦争に
まで行くのかというと、疑問符が付く。それは原子爆弾があり、そ
う簡単に大国同士が戦争をできない状態にあり、それを両国首脳が
知っているということである。

ここからは、ツイッターでのfj197099さんの意見
引用開始
1907年1月1日、英外務省のエア・クロウ卿は台頭するドイツに対し
て英国は宥和すべきではないと説いた外交書簡がある。この文書が
、中国の台頭に直面する米国の外交政策を考慮する上で参考になる。

この文書で、ドイツの台頭が平和的なものであろうがなかろうが、
大切なのはドイツが継続的に大規模な海軍力を形成しつつあるとい
うことだと言う。そしてそれはドイツの意図に関係なく能力面から
英国にとって脅威となるものだから、英国はドイツとの宥和を試み
るべきでないと言うのだ。

クロウ卿の発想は今日的には攻撃的リアリズムの発想と呼ぶべきも
ので、国家間の不確実性が極めて大きい時に成立する思考なのであ
るが、英国を米国に、ドイツを中国に置き換えればこの覚書の提言
は今日に米中関係にもすっぽりと当てはまる。
引用終了

そして、米政権内でも議論が起こっている。政権内で一貫して中国
への和解や譲歩を説くグループは「叩頭派」と呼ばれ、スタインバ
ーグ国務副長官、ベーダー国家安全保障会議アジア部長、中央情報
局(CIA)の実務者たちが主体という。

反対に、中国の対米態度に反発し、現実的で強固な対中政策を求め
るグループは「失望派」と呼ばれ、クリントン国務長官、パネタ
CIA長官、キャンベル国務次官補、グレグソン国防次官補らがい
る。ゲーツ国防長官も「失望派」に傾いているとされる。

宥和政策である和解や譲歩によるアプローチの失敗が明確になって
いる。このため、徐々に米政権内で「失望派」が力を持ち始めて、
オバマ大統領の11月のアジア訪問で中国に立ち寄らないことにな
ったようだ。政権内でのクリントン国務長官の位置が大きくUPし
ているようだ。このため、次期大統領選挙で、クリントンを副大統
領にするべきということになる。

中国も胡主席を来年春に訪米させるようであり、対米政策を見直し
始めるようであるが、保守的な太子党が次期政権を握るため、軍部
が、どう出るか不明である。米中関係は一層難しくなることだけは
間違えない。

さあ、どうなりますか??
今後も見ていく必要がある。日本は米中の動向を見ていくしかない
。

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「米国は強いドル政策を支持」と米財務長官

 【慶州(韓国)=岡田章裕】ガイトナー米財務長官は23日、
G20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、「米国は強いド
ル政策を支持する」と述べた。
 その上で、「米国は、世界の準備通貨として、金融システムの安
定に特別な責務がある」と強調した。
 また、米政府高官は23日、ガイトナー財務長官が24日に中国
を急きょ訪問し、人民元問題を巡って、山東省青島空港で王岐山副
首相らと会談することを明らかにした。
(2010年10月23日23時53分 読売新聞)
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G20「通貨安競争回避」声明採択し閉幕 不均衡是正も
2010年10月23日17時22分

 【慶州(韓国南東部)=尾形聡彦、稲田清英、福田直之】当地で
開催されていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会
議が23日午後3時39分、共同声明を採択し、閉幕した。共同声
明では通貨安競争の回避が盛り込まれると共に、各国が過度の不均
衡是正に向けた政策を推進することを明記した。不均衡が続く場合
には、国際通貨基金(IMF)が査定することも盛り込まれた。 

 共同声明では、各国の基本姿勢として、まず通貨を巡って「(各
国が)競争するように切り下げを行うことは控える」とした。各国
に、為替介入などを行いにくくする効果がありそうだ。 

 世界的な不均衡の是正を巡っては、米国が提案した経常収支是正
の数値目標は盛り込まれなかった。その代わり、各国は「過度な不
均衡の削減」に努力するとの内容を盛り込み、経常赤字や黒字など
で、大規模な不均衡が続く場合はIMFが評価するとした。 

 また、為替相場についても、「各国は市場が決める、より柔軟な
為替レートに移行する」と盛り込んだ。 
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対中政策で米政権二分 穏健VS強硬 対立増幅 米紙報道
産経新聞 10月24日(日)7時56分配信

 【ワシントン=古森義久】オバマ米政権が対中国政策をめぐって
二分し、激しいやりとりが交わされていることが21日、米紙ワシ
ントン・タイムズの報道で明らかになった。中国関連の取材で定評
のあるビル・ガーツ記者が報じた。

 報道によると、オバマ大統領の11月のアジア訪問で中国に立ち
寄らないことが中国政府をさらに硬化させ、米政権内部の従来の意
見対立を増幅させた。

 米政権内で一貫して中国への和解や譲歩を説くグループは「叩頭
派」と呼ばれ、スタインバーグ国務副長官、ベーダー国家安全保障
会議アジア部長、中央情報局(CIA)の実務者たちが主体という。

 これに対し、中国の対米態度に反発し、現実的で強固な対中政策
を求めるグループは「失望派」と呼ばれ、クリントン国務長官、パ
ネタCIA長官、キャンベル国務次官補、グレグソン国防次官補ら
がいる。オバマ大統領とバイデン副大統領はこの対中政策論議には
加わっていないが、ゲーツ国防長官は「失望派」に傾いているとさ
れる。

 報道はさらに「叩頭派」主体のオバマ政権のこれまでの対中政策
では、イランや北朝鮮の核開発、人民元交換レート、貿易政策、気
候変化、韓国哨戒艦撃沈など、一連の重要案件で中国の協力を得ら
れなかったことが失敗と指摘している。

 スタインバーグ国務副長官は中国に対し、現在の勢力拡大があく
まで平和的であることを「戦略的に再確認」するよう求めたが断ら
れ、和解や譲歩によるアプローチの失敗を印象付けているという。
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相互依存が進んだ世界では戦争がないという神話
zyesuta & daichi_at_KCL

貿易が世界を平和にする、これほど相互依存が進んだ世界にあって
戦争は割にあわない、合理的に考えて大損する戦争になどもはや行
われるわけがない、といった議論は古くて新しい話です。zyesuta

ベンサムによれば、諸国民の間では、本来利益は対立していない。
世論に基づいて、公開外交を進め、植民地を放棄し、軍隊を縮小し
、軍事同盟を排していけば、戦争は回避できる。国際平和にとって
大切なのは、自由貿易の推進である(『普遍的永久的平和のための
一計画』1789)zyesuta

この種の「〜わけがない」は歴史のテストに落第済みですなw 
合理的に考えて〜って常識的に考えて〜みたいだなと。
daichi_at_KCL

歴史から学べることは、人類が歴史に学ばないということですね。
zyesuta

カントによれば、国民の代議制(君主制か否かに関係なく)をとり
、秘密外交を排し、常備軍を漸次廃止し(民兵制へ)、植民地を放
棄することが、永久平和への第一歩である。永久平和が、あたかも
可能であるかのように、行動することが大切である(『永久平和の
ために』1795)zyesuta

日本では東洋のルソーと呼ばれた中江兆民の『三酔人経綸問答』に
おいて登場する「洋学紳士」君が、理念と民主制度による平和を説
いている。zyesuta

洋学紳士君の曰く「民主平等の制を建立し、人々の身を人々に還へ
し、城堡をたいらげ兵備を撤して他国に対して殺人犯の意有ること
無きを示す」こと、つまり民主的で非武装がいいんだ、という説で
す。戦後日本の平和主義者の言説に通じるものがあります。では、
もし侵略を受けたときはどうするのか。zyesuta

洋学紳士君が言うには、他国が攻めてきたら「僕の願ふ所は、我衆
一兵を持せず、一弾を帯びず…因て弾を受けて死せんのみ」で、非
武装の理念に殉じて国民みんな死ぬのが良いという。首尾一貫、立
派なものです。zyesuta

また洋学紳士君がいうには、民主の制度を広めていけば、侵略を受
けたらどうする、という懸念がそもそも不要になるといいます。「
民主の制度は、兵をおさめ、和を敦くして、地球上万国を合して一
家族と為らしむる」で、素朴な民主的平和論です。zyesuta

また第一次世界大戦前にはノーマン・エンジェルという人の「大い
なる幻想」が有名です。彼はのちに相互依存論の発展にともなって
再発見される、先覚者でした。zyesuta

ノーマン・エンジェルはイギリスに生まれ、渡米して文筆で名を為
します。英国に帰ってからは労働党から下院議員にも当選しました。
彼はヨーロッパで戦争が起こることはあり得ないと考えていました。
zyesuta

産業革命の普及により、経済の相互依存が高まった現在(1909年)、
戦争はヨーロッパのどの国にとっても不合理で、許容不可能になっ
た、とします。zyesuta

「経済の相互依存がこれほど高まった状態で、諸国が戦争すること
など考えられない」のであって今どき戦争を心配するのは大いなる
幻想に過ぎずと喝破しました。実際、台風の目たるドイツ経済は4
割が国際貿易に依存し、かつ最大の貿易相手はイギリスでした。
zyesuta

しかしその後の経済はご存じの通りです。戦後、大戦によってボロ
ボロになった欧州をみて、エンジェルはそらみたことか経済も社会
もメタメタになったではないかと、これまた緻密な分析を展開する
のですが、とはいえ大戦は起こったわけです。zyesuta

他には、戦争は企業が市場を求めるために起こるのであって、資本
主義を廃止して共産主義にすれば戦争は起きない、とする考えもあ
りました。が、ソビエトも中国も平和的であったとはおよそ聞かな
い話です。zyesuta

だって階級闘争史観なんだもんw
daichi_at_KCL

とまれ、経済、理念、民主政治、市民社会ら、さまざまな要因をも
ってして「もはや戦争は時代遅れになった」あるいはそのようにす
ることが可能である、したがって戦争に備える必要などないのだ、
むしろ戦争に備える姿勢こそが戦争を生み出しているのだ、といっ
た各種批判は古今不滅です。zyesuta

リアリズムの議論は、その類のユートピアニズムからの批判を絶え
ず浴び続けてきました。それどころかリアリズムの曙光にあたる
E.H.カー「危機の二十年」がユートピアニズム批判をしていように
、リアリズム発祥の動機からして反・ユートピアニズムなのだとい
うこともできようかと思います。zyesuta

リアリズムの側からするとユートピアンの期待は的外れであり、そ
の種の善意や楽観性こそがかえって危険なものだという風に解釈さ
れます。zyesuta

例えば非武装については「地球上の一、二の国民を力への欲求から
解放しても、他の国民のそれがそのままならば、それは無益かつ自
己破壊的でさえある。力への欲求から逃れた人は他の人の力の犠牲
になるだけである」(モーゲンソー)と考えます。狼の檻の中で一
人だけ牙を手放せば餌食になるのみです。zyesuta

リアリストは人の善性についても皮肉な見方をします。zyesuta

「ロベスピエールは、その動機から判断すれば、史上最も有徳な人
物のひとりであった。しかし、彼が自分自身よりも徳において劣っ
た人びとを殺し、みずから処刑され…革命を滅ぼすに至ったのはほ
かでもない、まさにあの有徳のユートピア的急進主義のせいであっ
た」というようにです。zyesuta

 第一次大戦のあまりの犠牲に戦争は無益だという感覚が生まれ、軍
縮の動きが起きたというのに四半世紀も経たぬうちにもう一つの大
戦をやって殺戮と荒廃をもたらすのだから人間はつくづく救えない
。daichi_at_KCL

善意によって世界を急進的に良くできるという確信はかえって危険
であり、「政治家が世界を改革しようという欲求に動機づけられな
がら、結局は世界をさらに悪くしてしまうことがいかに多くあった
ことか」という見方をします。zyesuta

学び取れるのは既存秩序に満足せず、これにチャレンジしようとす
る新興国は早めに封じ込めたほうがいいだろうということ。中国は
100年前のアメリカに似ている(成長過程が)との見方があるが
、性質はドイツに近い。daichi_at_KCL

従ってリアリストによれば「世界を改革するためには、人はこれら
の力に逆らわずに、むしろその力に沿って事を進めなければならな
い」のです。よってリアリズムは「絶対善の実現よりもむしろ、
より少ない悪の実現を目ざすわけである」というスタイルをとりま
す。zyesuta

しかしながら、ユートピアンの世界観が一面的であるように、リア
リストの世界観もまた一面的なのです。パワーと主権国家を重視す
るリアリストの旧態依然とした世界観は、国際制度、貿易、NGO、法
や規範といった力以外の要素を、時として軽視しすぎます。zyesuta

ために、リアリストの陥りがちな問題点は、現実的であると自称し
ながら、その実は「古い現実」に凝り固まっているだけであり、従
って進歩発展への動きにも理解にも欠けるということです。zyesuta

実際に世界を進歩させていくのは、某国連機関の第一回会議で述べ
られたように「我々は幻想的だと言われるかもしれない。しかし今
日の現実はまた、かつての幻想であった。今日の幻想は、明日の現
実であるかもしれない」というような勇気ある虚勢から生まれてく
るものだからです。zyesuta

自己催眠ですな。願えばそのうち二次元の世界にいける!とさして
変わらないw daichi_at_KCL

実際のところ、民主主義の普遍的な価値観とやらの普及や、世界的
な規範意識の形成、NGOの活躍、国際機構の発展、グローバル化や複
合的相互依存により、今日の世界で戦争において、戦争の蓋然性が
著しく下がっていることは、明らかに事実です。zyesuta

まあ核兵器のおかげなんですけどね。daichi_at_KCL

そういった変化に目をつぶるのであれば、リアリズムは現実から遠
ざかっていくでしょう。ただしそういった変化を過信し、だから戦
争は起こらなくなったと言い切ったならば、恐らく先人たちと同じ
間違いを犯すことになるのでしょう。zyesuta

やっぱりチャーチルの言うとおり、若い頃に理想にハマってからリ
アリズムに目覚めるのがちょうど良い気がしますnanayoh

現状のところ、起こるかもしれない紛争に対処し、あるいは予防し
て国益を防衛するためにはリアリズムがいう現実に目を向けねばな
らないが、しかしドグマティックなまでにリアリストであればかえ
って新しい現実を見失うことになってしまう、といったところでし
ょうか。zyesuta

普遍的な価値の普及、という情熱めいたものがイラク戦争の背景の
一つですし、世界的な規範意識というのは紙の上(レトリック)に
とどまっているのが残念なところ。国際機構、というけど大国間は
核の存在があるし、小国は大国の軍事制裁があるから(グルジアは
例外w)daichi_at_KCL

身も蓋もない。でもそれはそうですよね。後、民主主義国だとみな
してもらえる国で有力なところはだいたいアメリカと同盟してるっ
てことも。zyesuta

グローバル化、複合相互依存が進む一方でこれから切り離されてい
る国もわずかながらあります。こういうところには上記二つは働き
ません。働いているとすれば国際規範、合意に基づいた経済制裁の
類で軍事力強化を困難にするのと、アメリカの威圧と。
daichi_at_KCL
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英外務省エア・クロウ卿の有名な覚書

1907年1月1日、英外務省のエア・クロウ卿は有名な覚書を提出して
台頭するドイツに対して英国は宥和すべきではないと説いた。日本
での知名度が高いとは思えないが、凡そ100年前のこの文書は中国の
台頭に直面する米国の外交政策を考慮する上で参考になると、米国
の外交界では非常に有名である。fj197099

当時の時代背景を概観すると、ビスマルク以後のドイツは皇帝ヴィ
ルヘルム二世の「世界政策」の下に大規模な軍艦建造を開始してお
り、英国の海軍力に急速にキャッチアップしつつあった。そこで英
国としては、ドイツの挑戦を受けてこれと抗争するか、それとも宥
和するかの選択を迫られた訳だ。fj197099

この選択におけるクロウ卿の覚書の立場は極めて明白である。以下
がその原文になるが、ポイントはp.23の節417の最後の段落の記述で
ある。重要なので引用してみよう。
http://tmh.floonet.net/pdf/eyre_crowe_memo.pdf
fj197099

 @(ドイツの意図が脅威となるものか、それともそうでないものか
について)「よく考えてみれば、イギリス政府にとって、ドイツの
政策に関するこの二つの理論のいずれを採用するかをはっきり決定
する必要が、現実には存在しないことが示されるであろう。」
fj197099
 
 A「なぜならば、第二のあり方(政略にまったく指導されないわけ
ではないにしても、半独立的な成り行きまかせというあり方)であっ
ても、いずれかの段階で第一の、意図的な計画というあり方に融合
してしまうかもしれないからである」fj197099

要するに、たとえドイツの台頭が平和的なものであろうがなかろう
が、大切なのはドイツが継続的に大規模な海軍力を形成しつつある
ということだと言うのである。そしてそれはドイツの意図に関係な
く能力面から英国にとって脅威となるものだから、英国はドイツと
の宥和を試みるべきでないと言うのである。fj197099

このクロウ卿の発想は今日的には攻撃的リアリズムの発想と呼ぶべ
きもので、国家間の不確実性が極めて大きい時に成立する思考なの
であるが、英国を米国に、ドイツを中国に置き換えればこの覚書の
提言は今日に米中関係にもすっぽりと当てはまることが一目瞭然で
あろう。中国の軍拡は著しいものがある。fj197099

そして中国の軍拡は極めて不透明でその意図が見えない。中国自身
は「平和的台頭」というが、実際には「核心的利益」の名の下に周
辺国への恫喝を繰り返してばかりいる。つまり中国の意図について
の不確実性は大きい。この状況で挑戦を受ける米国はどう対処すべ
きか?クロウ卿の提言は極めて明確である。fj197099

中国の軍拡、特に海軍力と長距離打撃力はその意図に係らず米国及
び地域の同盟国にとって脅威である。そして中国が軍拡を継続する
限り、たとえ現在の中国の意図が平和的でも将来の意図が変化しな
いという保証はない。故に宥和という選択肢はありえない。これが
クロウ卿の提言の今日的意味なのである。fj197099

「現在の中国は20世紀初頭のドイツを思い起こさせる・・・台頭す
るパワーは人々のナショナリズムを鼓舞し、この感情が近隣諸国に
対して、あるいは近隣諸国と抱え込んでいる国境論争へと向かうよ
うに誘導されている」(F・ザカリア)
http://bit.ly/bs8RMy
foreignaffairsj

今の東アジア三国の状況を「バックパッシング」で考えた場合:ア
メリカ・・・「日本や韓国を中国とぶつけたい!」、日本・・・「
アメリカか韓国を中国にぶつけたい!」、中国・・・「日本か韓国
をアメリカにぶつけたい!」masatheman

中国には二つの道がある。1)共産党の一党独裁体制で、一部の共
産党幹部が利権から私腹を肥やす弊害があるが、市場経済を導入し
たことで徐々に国民も豊かになる道。2)民主化を推し進めた結果
、政党が乱立し、国家が分裂するか、または内戦状態に陥る危険性
。どちらがましかは自明ではないだろうか?yamamoto1208


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