3781.世界的な通貨戦争に



中国の人民元切り上げを欧米は要求しているが、欧米の投資資金が
大量に流入して、新興国全体の通貨が切り上がってきた。この通貨
高を抑えるために、新興国では為替介入が定常的に行われている。

この為替介入を当初、欧米は批判して通貨戦争は世界的な広がりを
持ち始めていた。

この文脈で日本は、韓国のウォンの為替介入で対円レートが切り下
げられているのを問題視したが、韓国は人民元との競争を意識して
いる。
このため、韓国は日本に反発したが、米国も当初は新興国全体の通
貨切り上げを行うべきとしていたが、韓国の実情を見て、批判を中
国に絞り始めている。

全ての通貨戦争の原因は、世界第2位の経済大国・中国が途上国で
あるから為替レートを低くする権利があるという甘えにあるとした。
           津田より

0.はじめに
中国の貿易黒字は8月200億3000万ドル(約1兆6800億円)で、9月
の貿易黒字は169億ドル(約1兆3830億円)となった。数ケ年150
億ドルを突破している。反対に米国は、2009年の生活困窮者が
史上最悪の4360万人にのぼり、米国全体に占める貧困率14.3%
に悪化、1994年以来の高水準に達している。

この現状を踏まえて、米オバマ大統領は「(中国の)経済が拡大し
、国が豊かになり、大規模な輸出を行っているという現状に合わせ
て人民元を上昇させる必要があると伝えてきた。市場に基づく調整
があるべきだと話してきた」と述べ、中国の甘えが許さないとした。

これに対して、中国外務省は、米国が人民元相場を名指しで批判し
たり相場上昇を求めることは、賢明ではないとした。
また、国家情報センターの有力エコノミストは、中国がより速いペ
ースで人民元相場を上昇させたのは、外国からの政治的圧力と中国
の健全な経済ファンダメンタルズに応じた措置だが、上昇は近く頭
打ちになるとした。

10月14日発表された米国の8月の対中貿易赤字が過去最高の280億ド
ル(約2兆2700億円)を記録したのを受けて中国人民元は10月15日
、ドルに対して1993年以来の高値を更新した。しかし、人民元の中
心レート1ドル=6.6497元で1%程度しか上昇していない。

温家宝首相も、人民元が20%上昇すれば、中国社会に深刻な失業や
社会不安を招く可能性があると述べ、米国の要求は聞くことが出来
ないとした。9月23日にニューヨークで行われたオバマ米大統領と
温家首相との2時間に渡る会談でも人民元の切り上げ問題だったが
、物別れに終わったようである。

この会談不調を受けて米下院は9月29日、人民元の相場をめぐり
中国への制裁法案を可決した。温家宝首相は、この対中制裁法案に
ついて「両国間の貿易不均衡の問題を政治化している」と述べ、米
議会の対応を批判した。

世銀のゼーリック総裁は10月7日、世界の首脳に対し「近隣窮乏
化政策」に未来がないことは歴史によって示されていると指摘し、
「問題が対立や保護主義に発展すれば、1930年代の失敗を繰り
返すリスクを負う」と述べた。

ソロス氏も「意識しているかどうかにかかわらず、中国は世界のリ
ーダーの一国になった」として、中国が「リーダーとしての責任を
果たさなければ、外国為替システム崩壊の恐れが生じ、世界経済も
ともに崩壊するだろう」と述べた。

中国人民銀行の周小川総裁は10月8日、為替制度の改革を段階的
に行う方針を示し、当面は通貨バスケット制度を維持する考えで、
「為替相場の改革継続が必要だ」と述べ、当面は急激な人民元切り
上げをしないとした。しかし、為替介入が大量になり、9月末の中
国外貨準備は2兆6480億ドル(約216兆5300億円)に急増したようだ。

温家宝首相はASEMで欧州に行ったが、そこでも元の切り上げを
求められ、欧米の動きをあらためて批判した。そして、10月8日夜
開かれたG7でも、新興国(特に中国)に一層の通貨切り上げを求
める認識で一致した。中国包囲網ができつつある。

ガイトナー米財務長官は12日、人民元の上昇を抑制する中国の政策
が、新興市場国による一連の資本管理と為替介入をもたらしたと批
判し、この発言に続いて、上院財政委員会のボーカス委員長は、下
院に続き、人民元の上昇を容認するよう中国に圧力をかける法案を
可決する見通しと述べた。

中国では、11月に中間選挙を控えた米国の政治的な動きとする見
方が強いために、中国商務省は「人民元を米国内の経済問題のスケ
ープゴートにしないでほしい」と反発しているが、徐々に世界的な
問題となってきている。

しかし、米財務省は10月15日に予定していた貿易相手国の為替政策
に関する半年次報告書の発表を延期した。介入で人民元相場の上昇
を抑制する中国を為替操作国に認定するかどうかが焦点だったが、
11月G20首脳会合などでの協議進展を待って報告を発表する方針を明
らかにした。

1.ドル下落策にどう対抗するか
FRBは、国債買取などの追加の流動性を注入する可能性を残すこ
とで、ドルの価値を押し下げる策を練っている。米国は為替介入に
は反対しているが、金融緩和で通貨下落させることは通常の国内政
策であり、それに批判をすることはない。

このように、新興国は為替介入、米国は金融緩和、欧州はユーロ不
安で通貨切り下げを行うが、日本は為替介入を欧米からの批判でで
きないし、国債などの買取による金融緩和には及び腰であり、この
ため円独歩高1ドル=80円になり、日本の製造業を海外に追いやり
、雇用を大量に失っている。

為替政策は国際的な相対的なものであり、その方程式を認めないか
ら、日本だけが没落していくことになる。

日銀の政策が国際的な基準からすると、非常におかしいと見るしか
ない。少なすぎ、遅すぎ病だ。政府と連携する可能性が高い財務省
の役人を日銀総裁にするべきではなったかと思うこの頃である。

先進諸国の金融政策の基準は、どう物価を押し上げて、実質マイナ
ス金利にして、貯蓄させないようにして投資か消費に向かわせよう
という基準で金融政策をしている。この基準に日銀は合わせていな
いので、円独歩高に見舞われることになる。

1930年の日本の金本位制復帰が大失敗であったように、世界の
基準にどう対応するかの戦略が必要である。

世界がハイパーインフレに向けて、まい進している時に、一国がま
ともな金融政策をすると、そこに退避する資金が流れ込むことは当
然であり、その通貨が高くなることはしょうがない。

2.1930年代との比較
1990-2010年と1919-39年の「危機の二十年」を対比させてみたい。
すると、経済的には深刻な金融危機を経験した後に、近隣窮乏化政
策等の経済政策が取られる。1930年はブロッグ経済であり、2010年
は通貨切下げ競争、相殺関税である。

また、世界の勢力図に変化が起きて、「現状」を構成する秩序に対
する「不満足」国家=現状変革国家の台頭が目立つようになる。
1930年はドイツと日本であり、2010年はロシアと中国であろう。

このため、このコラムでは1月から中国はナチス・ドイツになると
予測したのである。とうとう、多くの人がやっと目覚めたようであ
る。特に反米親中派の人たちは、早く今までの考えを変える事であ
る。日本は、米中のどちらに組しても最前線という位置にあるため
に、戦争が起きたら、真っ先に戦場になる可能性がある。

だからといって、中立ができない。中立が一番難しい。自立した防
衛能力が必要であり、軍事費をGDPの20%程度を使う必要がある。
勿論、核武装も必要である。国民皆兵体制にするなど、非常に大変
なことになる。

戦争をしないようにするためには、中米での協調と日米同盟関係を
強固にするしかない。中国とは体制が違うので、同盟に必要なシン
パシーが沸かない。

どちらにしても、中国バッシングをどう調整するか、世界的な課題
になっている。日本はその環境でどう生き残るかを試されている。

大変な時代が来た様に思うがどうであろうか??
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米、為替操作国判断を先送り=人民元の一段の上昇期待―財務省
時事通信 10月16日(土)6時14分配信

 【ワシントン時事】米財務省は15日に予定していた貿易相手国の
為替政策に関する半年次報告書の発表を延期した。介入で人民元相
場の上昇を抑制する中国を為替操作国に認定するかどうかが焦点だ
ったが、同省は声明で中国の対応を一応評価するとともに、相場の
一段の上昇に期待を表明。輸出拡大のため自国通貨を切り下げる「
通貨安競争」をめぐり、11月に韓国ソウルで開かれる20カ国・地域
(G20)首脳会合などでの協議進展を待って報告を発表する方針を明
らかにした。
 中国は米国が人民元切り上げ圧力を高める中、6月に為替制度の弾
力化を約束した。米財務省はこの日の声明で「9月2日以降、上昇ペ
ースは月間1%を上回る水準に加速した」などと評価。これがしばら
く続けば「(人民元について)国際通貨基金(IMF)が大幅な過小評
価と結論付けた状態が是正される」とし、中国に努力継続を求めた。
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人民元が最高値更新 中国「スケープゴートにしないで」
2010年10月15日23時29分

 【北京=吉岡桂子】中国人民銀行(中央銀行)は15日、人民元
の取引の目安として毎朝発表する基準値を1ドル=6.6497元
に設定、2005年7月の人民元改革以来の最高値を更新した。市
場関係者は、米財務省による外国為替報告書の議会への提出を意識
した動きとみている。 

 このところ人民元切り上げを求める圧力が高まっているのは、
11月に中間選挙を控えた米国の政治的な動きとする見方が強い。
中国政府は「人民元を米国内の経済問題のスケープゴートにしない
でほしい」(商務省)と反発している。 
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中国人民元:1993年以来の高値更新−米国の対中貿易赤字が過去最高 

 10月15日(ブルームバーグ):中国人民元は15日、ドルに対して
1993年以来の高値を更新した。14日発表された米国の8月の対中貿
易赤字が過去最高の280億ドル(約2兆2700億円)を記録したのを受
けて元上昇ペースの加速を求める米議会の圧力が高まるとの観測が
背景にある。 

  中国人民銀行(中央銀行)はこの日、人民元の中心レートを1
ドル=6.6497元と、2005年7月のドルとのペッグ(連動)制廃止以
後の最高値水準に設定。元相場は週間ベースで6週連続の上昇とな
った。米財務省は15日公表する年2回の為替報告書で、中国を為替
操作国と認定するかどうかの判断を示す。 
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コラム】新興国市場に過熱のリスク
HEARD ON THE STREET
2010年 10月 15日 9:34 JST 
WSJ
 新興国市場が熱いが、手に余るほど熱くなるだろうか。 

 力強い国内成長と欧米での異例の緩和的な金融政策が相まって、
新興国市場には多額の資金が流入している。 

 ファンド調査会社EPFRグローバルによると、新興国市場の株
式ファンドへの資金流入は先週60億ドル(約4800億円)を超え、33
カ月ぶりの水準となった。新興国市場に特化した投資会社アシュモ
アが13日明らかにしたところによると、こうした資金流入もあり同
社運用資産額は第3四半期に18%増えた。ただ、投資家はリスクを覚
えておくべきだ。 
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日本、韓国の為替市場介入を批判‐ウォンの対円相場下落で
2010年 10月 15日 9:11 JST 
WSJ
 【ソウル】日本政府が韓国の為替市場介入批判に踏み切ったこと
は、今年に入って韓国経済がうまくいっていることのほとんど知ら
れざる理由を浮き彫りにしたといえる。韓国通貨ウォンが対円では
下落していることだ。 

 円と同様、ウォンは最近数カ月間、対ドルで上昇している。しか
し円の上昇率とウォンの上昇率には乖離があり、自動車、造船、エ
レクトロニクスなど日本と競合している韓国企業の価格設定や利ざ
や面で有利に働いている。 

 日本と韓国のあつれきはまた、世界的に通貨をめぐってぎくしゃ
くしていることの一環でもある。 
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YS:日経:「先進国のデフレ」「新興国のバブル」同時進行 − 
先進国の金融緩和競争が生んだ余剰資金は新興国に流れ込み、資産
バブルやインフレの温床になりつつある。世界経済は「先進国のデ
フレ」と「新興国のバブル」が共存する難しい局面に入った。 
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9月末の中国外貨準備、2兆6480億ドルに急増
2010年 10月 14日 9:36 JST 

 【北京】9月末の中国外貨準備は2兆6480億ドル(約216兆5300億円
)に急増した。為替市場をめぐり世界的に緊張が高まるなか、中国
当局が為替市場で元売り・ドル買い介入を積極的に実施したことが
浮き彫りになった。 
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米上院、対中制裁法案を下院に続き可決へ=財政委員長
2010年 10月 14日 07:10 JST

 [ワシントン 13日 ロイター] 米上院は、下院に続き、人
民元の上昇を容認するよう中国に圧力をかける法案を可決する見通
し。上院財政委員会のボーカス委員長(民主党、モンタナ州)が
13日、明らかにした。
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米財務長官:中国が世界的為替介入の原因と批判−「全世界的問題」 

10月13日(ブルームバーグ):ガイトナー米財務長官は人民元の上
昇を抑制する中国の政策が、新興市場国による一連の資本管理と為
替介入をもたらしたと批判した。 

同長官は12日放送のPBSの番組「チャーリー・ローズ」でのイン
タビューで、「中国が自国通貨を押し下げる中、新興市場国の通貨
が上昇し、中国に対して不公平な不利益を受けないように懸命に努
力しなければならないという状況が起きている」と語った。同イン
タビューはブルームバーグテレビジョンで13日に放映。 

  ブラジルや韓国、タイは輸出の伸びを妨げ、景気減速につなが
る恐れがある通貨高を抑制するため、ここ数週間に自国通貨売りを
実施。また、韓国や台湾、ブラジル、コロンビア、ロシアは通貨変
動抑制に向け資金流入規制を強化している。 

  ガイトナー長官は「この問題は、米国だけが固執していると定
義したがる人がいるが、実際は世界にとってより重要で、全世界の
問題だ」と述べた。 

  同長官はまた、人民元は「大幅に過小評価されている」とし、
一方で世界的な「通貨戦争」のリスクはないとの認識を示した。過
去6週間に中国は元の「非常に大幅な」上昇を容認したとし、より
長期的には一段の上昇をおそらく認めるだろうと話した。 
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中国の貿易黒字:9月は169億ドル−7〜9月は08年以来最大

10月13日(ブルームバーグ):世界最大の輸出国、中国の9月の貿
易黒字は169億ドル(約1兆3830億円)となった。人民元上昇を求め
る圧力が強まるなか、7−9月(第3四半期)の貿易収支は金融危
機のさなかの2008年10−12月(第4四半期)以来の大幅黒字となっ
た。 
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G7、中国にじわり包囲網 人民元切り上げへ団結確認
2010年10月9日22時35分

 【ワシントン=尾形聡彦】主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議
(G7)が8日夜開かれ、為替問題が重点的に話し合われた。G7
各国は、新興国に一層の通貨切り上げを求める認識で一致。G7と
して「団結」していくことも確認し、為替問題を多国間の枠組みで
解決する取り組みに向けて動き出した。じわりと形成される包囲網
に、中国側は反発している。 
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中国首相「元の急上昇、世界に災い」 欧米要求を批判
2010.10.8 05:00サンケイ

 中国の温家宝首相は6日、訪問先のブリュッセルで欧州連合
(EU)の行政執行機関、欧州委員会のバローゾ委員長らと会談し
、人民元が急速に上昇すれば国内経済の足かせになるとし、元の切
り上げを求める欧米の動きをあらためて批判した。
(ブルームバーグ Zijing Wu)
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当面は通貨バスケット制維持=中国人民銀総裁
2010年 10月 9日 04:49 JST

 [ワシントン 8日 ロイター] 中国人民銀行(中央銀行)の
周小川総裁は8日、為替制度の改革を段階的に行う方針を示し、当
面は通貨バスケット制度を維持する考えを明らかにした。
 同総裁はBBCのテレビ討論会で「為替相場の改革継続が必要だ
」と述べた。その上で「ショック療法ではなく、漸進主義であり、
段階を踏んだやり方と考えている」とし、通貨バスケットを参照す
る為替制度が依然として中国には必要と語った。
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ソロス氏、「通貨戦争」懸念は的外れでない−中国は国際金融で責
任を 

10月8日(ブルームバーグ):資産家ジョージ・ソロス氏は、「意
識しているかどうかにかかわらず、中国は世界のリーダーの一国に
なった」として、中国が「リーダーとしての責任を果たさなければ
、外国為替システム崩壊の恐れが生じ、世界経済もともに崩壊する
だろう」としている。 

  一方で、対中制裁法案可決などの米国の行動については、単独
の行動は逆効果を生む可能性があるとして、「為替相場の調整は、
世界の不均衡を是正する国際協調に基づく計画の一環でなければな
らない」と論じた。 
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IMFと世銀、通貨めぐる緊張緩和を呼び掛け
2010年 10月 8日 09:18 JST

 [ワシントン 7日 ロイター] 世界銀行のゼーリック総裁は
7日、世界の首脳に対し、大恐慌の失敗を繰り返さないよう通貨を
めぐる緊張緩和を呼び掛けた。

 世銀のゼーリック総裁は「問題が対立や保護主義に発展すれば、
1930年代の失敗を繰り返すリスクを負う」と述べた。

 また「近隣窮乏化政策」に未来がないことは歴史によって示され
ていると指摘し、IMFや世界貿易機関(WTO)のような国際機
関が深刻化する前に通貨をめぐる緊張緩和に寄与できる可能性を指
摘した。
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中国首相、米議会を批判 人民元切り上げ迫る制裁法案に
 【ワシントン共同】中国の温家宝首相は、3日に放映された米
CNNテレビとのインタビューで、人民元の一段の切り上げを迫る
米下院の対中制裁法案について「両国間の貿易不均衡の問題を政治
化している」と述べ、米議会の対応を批判した。
2010/10/04 10:35 【共同通信
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米国:対中制裁法案、下院可決 
毎日新聞 2010年10月1日 東京朝刊
 【ワシントン斉藤信宏】米下院が29日、人民元の相場をめぐり
、中国への制裁法案を可決したことを受けて、米政府は今後、人民
元の切り上げを求めて中国への圧力を一段と強めることになりそう
だ。
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人民元切り上げ巡り、米中睨み合い 
SEPTEMBER 25, 2010 09:31 
東亜日報
人民元の切り上げ問題を巡り、米国と中国との為替戦争が激しく繰
り広げられている。23日、ニューヨークで行われたバラク・オバ
マ米大統領と中国の温家首相との2時間に渡る会談の主要議題は人
民元の切り上げ問題だった。 

ジェフリー・ベーダー・ホワイトハウス国家安保会議(NSC)ア
ジア担当補佐官は同日の会談後のブリーフィングを通じ、「2時間
行われた会議では為替問題が集中的に議論された」と述べ、「オバ
マ大統領は、中国は人民元の為替問題によって生じた米国との緊張
関係の解決に向け、より多くの努力を傾けるべきだと語った」と伝
えた。オバマ大統領は人民元の切り上げを促し、米中間貿易摩擦を
避けるべきだと強調したという。 

これに対して温家宝首相は、「中国は為替体系の改善に向け努力し
ている」と、原則的な発言に止まったという。温首相は、「米国と
中国との全ての見解の食い違いは、話し合いを通じて解決でき、中
国は前向きな態度を取っている」と語ったと、ベーダー補佐官は伝
えた。 
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米FRB、勝利なき通貨ゲームに参入
2010年 9月 23日 14:23 JST 
WSJ
 【ニューヨーク】米連邦準備理事会(FRB)は自国通貨の価値
下落を模索する世界の中銀のリーダーとしての地位を固めた。 

 FRBは、日本の当局が先週行ったような通貨市場での介入を実
施する可能性は低いが、ドル安を支持している。これは、米国のイ
ンフレが責務と一致すると考える水準よりも低いとした、14日の連
邦公開市場委員会(FOMC)閉会後の声明の要点だ。FRBは声
明で、必要であれば追加の量的緩和措置を講じる意欲を示した。 

 追加の流動性を注入する可能性を残すことで、FRBはドルの価
値を押し下げていると多くの関係者が主張するだろう。FRBはこ
の1年間に1兆7000億ドルにのぼる資産を買い入れている。確かに14
日の声明の発表後、ユーロやその他の通貨は当初、ドルに対して上
昇した。 
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中国首相:人民元の20%上昇は「重大な社会的混乱」招く

9月22日(ブルームバーグ):中国の温家宝首相は、人民元が20%
上昇すれば、深刻な失業や社会不安を招く可能性があると述べた。
首相の発言は、中国が元高を求める米議員らとの衝突に向かってい
ることを示唆している。 

  温首相は22日のニューヨークでのスピーチで、中国が要求を受
け入れて人民元の20−40%上昇を容認した場合、「どれほど多くの
国内工場が破産し、どれだけの国内労働者が職を失うか、都会に出
ている労働者のうちどれほど多くが地方に帰るか、想像もつかない
」とし、「中国は重大な社会的混乱に苦しむだろう」と語った。
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米国の人民元相場批判は賢明でない=中国外務省
2010年 09月 21日 21:25 JST

 [北京 21日 ロイター] 中国外務省は21日、米国が人民
元相場を名指しで批判したり相場上昇を求めることは、賢明ではな
いとの見解を示した。
 同省はウェブサイトに発表した声明で、米国は自国の経済回復に
注力し、ドルの安定維持に努めるべきと指摘した。

 また、人民元が上昇するとの見方は強くなく、人民元相場の上昇
は、ニ国間の貿易不均衡の解決にさほど寄与しないとの認識を示し
た。
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人民元上昇ペース、いずれ頭打ちに=中国政府エコノミスト
2010年 09月 21日 21:44 JST

 [北京 21日 ロイター] 中国の政府系シンクタンク、国家
情報センターの有力エコノミストは21日、中国がより速いペース
で人民元相場を上昇させたのは、外国からの政治的圧力と中国の健
全な経済ファンダメンタルズに応じた措置だが、上昇は近く頭打ち
になる可能性があるとの見解を示した。
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人民元で中国の取り組み不十分、貿易法一段と活用へ=米大統領
2010年 09月 21日 05:21 JST

 [ワシントン 20日 ロイター] オバマ米大統領は20日、
中国は人民元について成すべきことのすべては実施していないとの
見解を示した。
 オバマ大統領は、CNBCテレビが主催したタウンホールミーテ
ィングで、人民元相場は市場が適切とする水準を下回っていると指
摘。「(中国の)経済が拡大し、国が豊かになり、大規模な輸出を
行っているという現状に合わせて人民元を上昇させる必要があると
伝えてきた。市場に基づく調整があるべきだと話してきた」と述べ
た。
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米国の生活困窮者、史上最悪の4360万人 人種で格差
2010年9月18日2時28分

 【ニューヨーク=田中光】米国勢調査局は16日、2009年の
生活困窮者が史上最悪の4360万人にのぼったと発表した。米国
全体に占める貧困率も08年の13.2%から14.3%に悪化、
1994年以来の高水準に達した。 

 長引く不況の影響が響いており、10年はさらに悪化すると指摘
する専門家は少なくない。中間選挙を前に、オバマ政権と与党民主
党に一層、厳しい風が吹きそうだ。 
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3カ月連続で200億ドル突破=8月の中国貿易黒字
 【北京時事】中国税関総署が10日発表した8月の同国貿易黒字
は200億3000万ドル(約1兆6800億円)と、3カ月連続
で200億ドルを突破した。輸出は同34.4%増の1393億ド
ルと、過去最高だった前月を下回った。一方、輸入は同35.2%
増の1192億7000万ドルと、伸び率は前月から12.5ポイ
ント拡大。貿易黒字は前月比では30.4%減少した。
(2010/09/10-11:51)
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1990-2010年を1919-39年の「危機の二十年」に対比させる
fj197099
まだはっきりと考えがまとまっている訳ではないが、1990-2010年を
1919-39年の「危機の二十年」に対比させることは可能なのだろうか
。実は二つの時代には似通っているところが多いように思うのだ。
この類推がうまくゆくとすると、未来は決して明るくないという結
論が導かれるのだが…

どちらの時代もそれまでの対立の終結から出発している。1919年は
第一次大戦の終結の結果としてヴェルサイユ会議が開かれた年、
1990年は冷戦終結の結果としてドイツ統一(と東西の宥和)が図ら
れた年だ。どちらの20年も対立の終結から新しい平和な時代への希
望から出発している。

どちらの時代も対立の終結の結果として集団安全保障の強化が図ら
れている。1919年には国際連盟が創設され、新たな集団安全保障の
取組みがスタートした。1990年には湾岸危機を契機に長い間機能不
全だった国連安保理の集団安全保障システムが機能し始めた。湾岸
戦争がそれである。

どちらの時代も軍備管理面における多国間協力への期待が高まりを
見せた。第一次大戦と第二次大戦の「戦間期」にはワシントンやロ
ンドンの軍縮条約が結ばれ、パリ不戦協定などの取組みが為された
。冷戦後には同じく核軍縮や核不拡散などの取組みが為され、通常
兵器やミサイル等でも協力が行われている。

どちらの時代も多国間主義はやがて単独主義に取って代わられた。
戦間期には1931年の満州事変に始まって伊のアビシニア侵攻、独の
ラインラント進駐等があったが国際連盟は満足に対応できなかった
。冷戦後は米国のイラク戦争、ロシアのグルジア侵攻等に対して国
際連合が満足に対応できていない。

どちらの時代も深刻な金融危機を経験し、近隣窮乏化政策等の経済
のブロック化の弊害に直面している(しつつある)。戦間期には大
恐慌の影響があり、第二次大戦の遠因ともなった。現代では世界金
融危機の影響で国際経済政策(特に為替面)における協調が満足に
機能しなくなっている。円高はその一例だ。

そしてどちらの時代も時間が経つにつれて国際機関等での発言力と
国家のパワーの間に乖離が生じ、「現状」を構成する秩序に対する
「不満足」国家=現状変革国家の台頭が目立つようになっている。
戦間期のそうした国家の代表例はドイツと日本であったが、現代の
そうした国家の代表例はロシアと中国だ。

共通点はここまで。後は類推が妥当なのかどうかだ。戦間期の場合
、蓄積された国際システムの矛盾は最終的には大国間戦争という形
で解消されざるを得なかった。現代でも「不満足」国家による国際
秩序への挑戦は観察できるが(中国の拡張姿勢はその例)、問題は
矛盾が平和裏に解消できるかどうかだ。

過去と現代では大国間戦争を抑止する核兵器の存在がある、グロー
バル化=相互依存のレベルが違う、国際社会の制度化が進んでいる
、等の数多くの相違点もある。だから矛盾の蓄積は結局は大国間戦
争に至るとする決定論に組するつもりはない。しかし戦間期との共
通点を無視するつもりもないのだ。

E.H.カーが『危機の二十年』で主張したのはユートピアニズムに溺
れリアリズムを軽視する事の過ちであった。「油断」こそ同書の中
心的主題だ。「平和」とは景気のバブルのようなものだ。その最中
にいる人間には危険性が分からない。現代が「危機の二十年」では
ないという保証がどこにあるだろうか。


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