3759.尖閣沖衝突事件の顛末



中国は世界第2位の経済大国になり、経済規模が大きくなったこと
を生かした外交交渉ができることを世界に示した。軍事力も米国に
ついで第2位の位置にあり、中国がアジアの地域覇権を取ることは
確実になっている。

しかし、経済規模は大きいが、中国首脳は自国のことを発展途上国
と規定して、自分の利益優先にし世界経済秩序の安定に寄与するこ
とをしないし、領土拡張を目指して周辺諸国と紛争を起こすことが
多くなっている。
          津田より

0.事件の顛末
中国の漁船が、9月7日午前10時56分ごろ、尖閣諸島・久場島
の北西約15キロの日本領海上で、巡視船の再三の停船命令に応じ
ず、左舷を衝突させて、公務の執行を妨害した疑いで中国人船長を
逮捕し、9日午前に、この中国人船長、※(※=簷の竹カンムリを
取る)其雄容疑者(41)を那覇地検石垣支部に送検した。

中国の外交を統括する戴秉国・国務委員(副首相級)は12日午前
0時(日本時間同日午前1時)、丹羽宇一郎・駐中国大使を中国外
務省に呼び出し、中国側の「重大な関心と厳正な立場」を表明した。

この中国の申し出により、日本政府は13日午前、公務執行妨害の
疑いで逮捕した漁船の中国人船長を除く中国人船員14人を帰国さ
せた。

9月14日、民主党代表として菅首相が代表に再選された。

検察当局は16日、石垣海上保安部が中国人船長の拘置期間の10
日延長を請求するし、裁判所が認め拘置期限は29日となる。

東シナ海ガス田「白樺(しらかば)」(中国名・春暁)の掘削施設
に、中国の作業船が16日までに掘削作業用のドリルのような機材
を運び込んだ。

中国外務省の姜瑜副報道局長は22日夜、「日本側がただちに(逮
捕された)中国人船長を無条件で釈放することでのみ、両国関係が
さらに傷つくのを避けることができる。」と仙谷官房長官が日中政
府間のハイレベルな接触を模索する考えを示したことに対し、これ
を拒否する姿勢を示した。

米紙NYTは22日、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に絡んで、
中国政府がこのほど、日本向けのレアアース(希土類)の輸出を全
面禁止したと報じた。

23日夜、河北省石家荘市の国家安全機関が、同省の軍事管理区域
に侵入し、違法に軍事施設をビデオ撮影していたとして、日本人4
人を取り調べていると伝えた。

那覇地検は24日、同保安部が公務執行妨害の疑いで逮捕した中国
人船長を処分保留のまま釈放した。

中国外務省は25日、「日本側は船長らを違法に拘束し、中国の領土
と主権、国民の人権を侵犯した」と強く抗議する声明を発表し、日
本側に謝罪と賠償を求める方針を明らかにした。

外務省は25日、中国が謝罪と賠償を求めていることについて「中
国側の要求は何ら根拠がなく、全く受け入れられない」との立場を
示した。これに対して、中国外務省は「尖閣諸島は中国固有の領土
だ。日本は中国の領土主権と国民の人権を侵しており、中国側は日
本に謝罪と賠償を求める権利を当然持つ」と反論する。

1.米国の対応
23日の日米外相会談。クリントン国務長官は尖閣諸島について、
「明らかに(米側の日本防衛義務を定めた)日米安保条約が適用さ
れる」と明言した。これは国務省としては、中国の傲慢さに歯止め
を掛けることが必要であるために、その声明になっている。

しかし、23日夕の日米首脳会談では「両首脳は西太平洋の海洋問
題について議論し、緊密に協議していくことで一致した」という抽
象的な文言しかない。事実、オバマ大統領が中国に直接、事態の沈
静化を働きかけようにはみえない。米国は中国と人民元切り上げの
要求をしていて、その交渉を阻害することを中国に要求できない。

首脳会談に同席したホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)
のベーダー・アジア上級部長は23日の記者会見で、「米国は仲裁
していないし、その役割を果たすつもりもない」と日本側を突き放
していた。これは、この人民元切り上げを要求している時期に厄介
な問題を起こすなという日本に対する警告である。

そして、この首脳会談後、突然の船長釈放という知らせが届いた。

クローリー国務次官補は24日の記者会見で、中国人船長の釈放を
「適切な決定だ」と述べた。こうした評価は「米側が日本政府に対
し、早期の釈放を働きかけていた可能性がある」(日米関係筋)と
の見方を裏付けている。

25日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、日本が尖閣諸島沖で起
きた漁船衝突事件の中国人船長を釈放したことについて、「緊張を
緩和させたのは賢明だ」とする社説を掲載した。

3.中国の動向
中国は「国際社会において大国としての責任や役割を果たすことに
は関心がなく、自国のことを発展途上国と規定して、自国の利益だ
けに執着し、影響力を拡大することばかり考えている」と指摘され
てきた。

今回と同様に、中国が今後、外貨準備高や資源を武器に、外交・貿
易で紛争が起きるたびに経済報復という刀を振りかざせば、国際貿
易上の秩序や国際金融体制に大きな衝撃を受けることになる。

日本のような経済大国でも太刀打ちできないのであるから、日本以
外のアジア諸国はお手上げ状態になる。中国の言うことを聞けとい
うことであり、中国の覇道がまかり通ることになる。

これを中国が目指しているとすると、世界経済安定化に寄与しない
経済軍事大国が出てきて、経済軍事の比較的弱い民主主義国群に大
きなダメージを与えることになる。

4.大中国への対抗策
カプランがいう対応策は、
オセアニアでの米軍プレゼンスの強化策をとれば、中国による台湾
の軍事攻撃コストを大きく引き上げることができるし、アメリカが
、第1列島線における古くからの基地プレゼンスを削減しつつも、
この地域を米軍の戦艦や船が監視できるようになる。

大中国圏が、中央アジア、インド洋、東南アジア、そして西太平洋
で政治的、経済的、軍事的に姿を現しつつあるのかもしれない。だ
が、この新たな領域の外側については、その多くがおそらくはオセ
アニアを母港とする米軍艦がパトロールし、インドや日本、その他
の同盟国との間でこの監視活動をめぐるパートナーシップも形成さ
れるだろう。 

神浦によると、
今回の衝突事件で一番得をしたのはどこか。それは米海軍である。
米海軍はイラク戦争から撤退し、アフガン戦争からも撤退する。し
かし予算獲得や兵士の士気維持に新たな敵(仮想敵)が必要だった
。そこで中国海軍が進出する南シナ海が選ばれた。さらに今回の騒
動で米海軍は東シナ海も得たことになる。 

現実、今すぐに中国海軍と対抗できるのは米国海軍しかない。この
米国海軍と日本の自衛隊、インド海軍が束になって中国海軍に対応
することが必要になっている。

また、中国の後ろからの圧力も必要になっている。ロシアやイスラ
ム教の力が必要であり、早期に米軍はアフガンから撤退して、中国
のウイグル自治区である東トルキスタン解放に、タリガンやアルカ
イダのゲリラを向けるべきである。アフガンのソ連軍に対応したよ
うにである。

日本は今後、どうするかというと、谷垣自民党党首が言う「騒いで
得をするのは中国で、問題を深刻化させないことが一番大事だ。直
ちに国外退去させた方が良かった。最初の選択が間違っていた」で
しょうね。

さあ、どうなりますか??

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中国船船長を送検 巡視船衝突、公務執行妨害容疑
2010年9月9日13時49分

 東シナ海の尖閣諸島沖で中国漁船と石垣海上保安部(沖縄県石垣
市)の巡視船が衝突した事件で、同保安部は9日午前、公務執行妨
害の疑いで逮捕した中国人船長、其雄容疑者(41)を那覇地検石
垣支部に送検した。石垣市の石垣港に入港している漁船には他の中
国人乗組員14人が残っており、9日も前日に引き続き、漁船や横
付けされている巡視船の船内で事情聴取を続けている。また、漁船
の船首付近などで実況見分を始めた。 

 海保によると、船長は7日午前10時56分ごろ、尖閣諸島・久
場島の北西約15キロの日本領海上で、巡視船「みずき」(197
トン)の再三の停船命令に応じず、急に方向を変えて左前方のみず
きに左舷を衝突させ、海上保安官の公務の執行を妨害した疑いがあ
る。海保は「船長は船体が接触した事実は認めている」としている
が、公務執行妨害容疑の認否については明らかにしていない。漁船
が日本の領海内で違法操業していた疑いがあるとみて、引き続き乗
組員も聴取する。 
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中国の戴秉国・国務委員、丹羽大使を異例の呼び出し
2010年9月13日11時13分

 【北京=坂尻信義】尖閣諸島沖の東シナ海で中国漁船と海上保安
庁の巡視船が衝突した事件で、中国の外交を統括する戴秉国・国務
委員(副首相級)は12日午前0時(日本時間同日午前1時)、丹
羽宇一郎・駐中国大使を中国外務省に呼び出し、中国側の「重大な
関心と厳正な立場」を表明した。改めて同諸島の領有権を主張した
とみられる。日本側に「賢明な政治決断」も促し、乗組員と漁船の
早期返還を求めた。 
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中国人船員14人帰国へ 巡視船衝突、官房長官が表明
2010年9月13日11時56分

 尖閣諸島沖の東シナ海で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突し
た事件で、日本政府は13日午前、公務執行妨害の疑いで逮捕した
漁船の中国人船長を除く中国人船員14人を帰国させると発表した
。仙谷由人官房長官が同日午前の記者会見で明らかにした。 

 仙谷氏は「代理の船長が中国側から来て、14人は今日の午後、
チャーター機で中国に帰る。漁船は代理の船長によって中国に戻る
」と述べた。
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2010年9月の民主党代表選  
AFPBB News  
菅直人代表の任期満了による代表選は9月1日告示、9月14日投開票で
8年ぶりに約34万人の党員・サポーターによる投票が実施された。代
表選は菅直人首相と小沢一郎前幹事長の争いとなったが、選挙の結
果、菅直人首相が過半数の721ポイントを獲得して再選された。
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船長の拘置延長請求へ=海域特定、違法操業立件も検討−中国の反
発必至・検察方針
時事
 沖縄県の尖閣諸島沖で中国の漁船が海上保安庁の巡視船に衝突し
た事件で、検察当局は16日、石垣海上保安部が公務執行妨害容疑
で逮捕した中国人船長※(※=簷の竹カンムリを取る)其雄容疑者
(41)の拘置期間の10日延長を請求する方針を固めたもようだ
。裁判所が認めれば、拘置期限は29日となる。
(2010/09/16-23:25)
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東シナ海ガス田「白樺」 中国がドリル搬入か
2010年9月17日12時41分

 日中が資源開発の権利を主張し、共同出資の条約締結交渉を進め
ている東シナ海ガス田「白樺(しらかば)」(中国名・春暁)の掘
削施設に、中国の作業船が16日までに掘削作業用のドリルのよう
な機材を運び込んだことがわかった。岡田克也外相が、退任前の
17日午前に行った記者会見で明らかにした。 
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中国、ハイレベル接触に拒否姿勢 「船長無条件釈放を」
2010年9月22日23時38分

 【北京=古谷浩一】中国外務省の姜瑜副報道局長は22日夜、尖
閣諸島沖の衝突事件をめぐり、「日本側がただちに(逮捕された)
中国人船長を無条件で釈放することでのみ、両国関係がさらに傷つ
くのを避けることができる。国際世論を欺く見せ物に活路はない」
との談話を発表した。仙谷由人官房長官が日中政府間のハイレベル
な接触を模索する考えを示したことに対し、これを拒否する姿勢を
示したものだ。 
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日本向けレアアースを全面禁輸=中国、尖閣沖衝突問題で−米紙

 【ニューヨーク時事】米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は
22日、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に絡んで、中国政府がこ
のほど、日本向けのレアアース(希土類)の輸出を全面禁止したと
報じた。訪米中の温家宝首相は21日、「日本が船長を釈放しない
場合、さらなる行動を取る」と表明しており、禁輸が事実ならば、
日本に強い圧力を掛けることが狙いとみられる。
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「軍事管理区侵入」中国、フジタ関係者4人を取り調べ
2010年9月24日12時15分

 中国の国営新華社通信は23日夜、河北省石家荘市の国家安全機
関が、同省の軍事管理区域に侵入し、違法に軍事施設をビデオ撮影
していたとして、日本人4人を取り調べていると伝えた。尖閣諸島
沖での中国漁船衝突事件が起きて以降、中国で日本人の拘束が明ら
かになるのは初めて。中国政府は船長逮捕に強く反発しており、今
回の事案に関連している可能性がある。 
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尖閣沖の衝突事件、中国人船長を釈放 「日中関係考慮」
2010年9月25日2時18分

 東シナ海の尖閣諸島沖で中国漁船と石垣海上保安部(沖縄県石垣
市)の巡視船が衝突した事件で、那覇地検は24日、同保安部が公
務執行妨害の疑いで逮捕した中国人船長、せん其雄(せん・きゆう
、せんは憺のつくり)容疑者(41)を処分保留のまま釈放すると
発表。船長は25日未明に釈放され、チャーター機で離陸した。
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日本に謝罪と賠償要求=船長帰国、「拘束で主権侵害」―中国
時事通信 9月25日(土)5時53分配信

 【北京時事】中国外務省は25日、尖閣諸島(中国名・釣魚島)沖
での漁船衝突事件で処分保留のまま釈放された中国漁船の※(※=
簷の竹かんむりを取る)其雄船長(41)が帰国した後、「日本側は
船長らを違法に拘束し、中国の領土と主権、国民の人権を侵犯した
」と強く抗議する声明を発表し、日本側に謝罪と賠償を求める方針
を明らかにした。
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謝罪・賠償「受け入れず」=中国の要求拒否−政府

 外務省は25日、沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に関
する佐藤悟外務報道官の談話を発表し、中国が謝罪と賠償を求めて
いることについて「中国側の要求は何ら根拠がなく、全く受け入れ
られない」との立場を示した。
(2010/09/25-17:11)
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中国「賠償は当然」 要求拒否の日本に再反論
2010年9月25日23時27分

 中国外務省の姜瑜副報道局長は25日夜、日本の外務省が中国側
の謝罪・賠償要求を拒否する談話を発表したことに対し、「釣魚島
とこれに付属する島々(尖閣諸島)は中国固有の領土だ。日本は中
国の領土主権と国民の人権を侵しており、中国側は日本に謝罪と賠
償を求める権利を当然持つ」と反論する談話を発表した。 
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「国外退去にすべきだった」=自民党の谷垣氏
時事
 自民党の谷垣禎一総裁は25日午後、京都市内で講演し、尖閣諸
島沖での中国漁船衝突事件で中国人船長が釈放されたことに関し「
騒いで得をするのは中国で、問題を深刻化させないことが一番大事
だ。直ちに国外退去させた方が良かった。最初の選択が間違ってい
た」と述べ、政府の対応を批判した。
 政府が釈放は検察独自の判断だとしていることについては「捜査
機関に外交に配慮するようなことを言わせてはいけない。政権が国
民に対して説明責任を果たさなければならない」と強調した。
(2010/09/25-17:30)
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船長釈放は「賢明」=中国、隣国の不安あおる―NYタイムズ紙
時事通信 9月26日(日)6時49分配信

 【ニューヨーク時事】25日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、
日本が尖閣諸島沖で起きた漁船衝突事件の中国人船長を釈放したこ
とについて、「緊張を緩和させたのは賢明だ」とする社説を掲載し
た。
 社説は、中国の「(隣国を)いじめるような態度は周辺国の懸念
を増幅させた」と指摘。「中国は日本を譲歩させたものの、得たも
のは何もない」と付け加え、中国に対する国際社会の信頼が低下し
たとの見方を示した。 
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菅政権、対米関係でも敗北
産経新聞 9月25日(土)21時11分配信

 【ワシントン=佐々木類】中国漁船衝突事件で日本側に勾留(こ
うりゅう)されていた中国人船長が突然、釈放された要因の一つと
して、米政府が早期解決と釈放を日本側に求めたとの見方がある。
その真偽はなお判然としないものの、米政府が中国への配慮により
重きをおいたとすれば、菅政権は事件をめぐる対米外交にも敗北し
、民主党政権下における日米関係の脆弱(ぜいじゃく)さのつけが
回ったともいえる。

 ニューヨーク市内のホテルで行われた23日の日米外相会談。ク
リントン国務長官は尖閣諸島についてこう明言した。

 「明らかに(米側の日本防衛義務を定めた)日米安保条約が適用
される」

 同日夕には、ゲーツ国防長官とマレン統合参謀本部議長が国防総
省で緊急の記者会見を開き、「尖閣諸島地域へのわれわれの関与は
、間違いなく変わっていない」「(米国は日本の)同盟国としての
責任を十分果たす」と口をそろえた。

 ここまでは、前原誠司外相もそれなりの成果を上げたかにみえた
。日米安保条約の適用ほど東シナ海における米軍の存在感を強く印
象付け、中国サイドを牽(けん)制(せい)するカードはないから
だ。だが、中国を牽制したはずのその効用も、突然の船長釈放とい
う知らせに瞬く間にかき消された。

 加えて、オバマ大統領の対外的な反応は実にあっさりしたもので
、実務交渉に当たったワシントンの日本外交筋を落胆させた。

 ホワイトハウスが日米首脳会談後の23日夜に出した1枚紙の発
表文。北朝鮮やイラン、アフガニスタンなどの国名はあったが、中
国の「ち」の字もなかった。中国を想起させたのは、「両首脳は西
太平洋の海洋問題について議論し、緊密に協議していくことで一致
した」という抽象的な文言だけだった。

 米側によると、日米安保条約の適用といった尖閣問題への関与に
触れたのは外相会談だけだ、という。

 同盟国が国家の根幹にかかわる主権を脅かされている中、極めて
不自然なことではある。オバマ政権の中国への配慮があったとみれ
れ、「外相会談と首脳会談を使い分けた」(日米関係筋)との見方
はあながち的はずれとはいえない。つまり、中国への牽制は外相レ
ベルに止め、首脳会談では取り上げず中国を刺激しない、というも
のだ。

 首脳会談に同席したホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC
)のベーダー・アジア上級部長は23日の記者会見で、「米国は仲
裁していないし、その役割を果たすつもりもない」と日本側を突き
放した。2時間近く行われた米中首脳会談でも、「尖閣諸島は議題
にならなかった」(ベーダー氏)という。米側は首脳レベルでは明
らかに、日本よりも世界第2の経済大国となった中国への配慮を優
先させたといえる。

 日本政府は、尖閣諸島への日米安保条約の適用をハイレベルで再
確認した。しかし、同盟国のオバマ大統領が中国に直接、事態の沈
静化を働きかけたフシはどこにも見あたらない。

 それどころか、クローリー国務次官補は24日の記者会見で、中
国人船長の釈放を「適切な決定だ」と述べた。こうした評価は「米
側が日本政府に対し、早期の釈放を働きかけていた可能性がある」
(日米関係筋)との見方と符合する。
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大中国圏の形成と海軍力増強 
――中国は東半球での覇権を確立しつつある 
ロバート・カプラン/アトランティック誌記者
(2010年6月号) 

◆何が中国の対外行動を規定しているのか 
中国の対外行動は、エネルギー資源、金属、戦略的鉱物資源を確保
する必要性によって導かれている。世界における中国の行動は、経
済的成長を持続させるという、中核的な国益によって規定されてい
る。石油や鉱物資源に恵まれたアフリカの各地域にしっかりとした
足場を築きたいと考えているし、インド洋、南シナ海全域で港を確
保しようと試みている。これに成功すれば、炭化水素(化石燃料)
資源の豊かなアラブ・ペルシャ湾岸と中国の海岸線をうまく結ぶこ
とができる。 

◆日本の基地問題はどうなるか 
米軍を受け入れる東アジアのホスト国の市民たちは、大規模な外国
の部隊のプレゼンスをいやがり始めている。中国の台頭を前に、各
国は中国に威圧感を覚えるとともに魅了されている。この複雑な感
情が、アメリカと太平洋諸国との二国間関係を複雑にしており、い
まや変化の時を迎えている。現在の日米関係の危機は、経験に乏し
い鳩山政権が、中国とのより緊密な関係を模索すると表明する一方
で、日本により都合がよいようにアメリカとの二国間関係のルール
を書き換えたいと望んだことがきっかけだが、実際には、もっと早
く危機が表面化していてもおかしくなかった。 

◆なぜ西太平洋・オセアニアが注目されているのか 
グァムから北朝鮮まで飛行機でわずか4時間だし、台湾にも船で二
日の距離だ。アメリカにとって、日本、韓国、フィリピンに部隊駐
留を続けるよりも、オセアニアに基地を持つほうが、とかくホスト
国を刺激せずにすむ。・・・あらゆるコストを負担しても大中国圏
に対抗していくのか、それとも、中国海軍が第1列島線を警備する
ような将来図を受け入れるのか。オセアニアにおけるアメリカの空
・海軍のプレゼンスを強化するのは、この二つの選択肢の間に位置
する路線だ。オセアニアでの米軍プレゼンスの強化策をとれば、中
国による台湾の軍事攻撃コストを大きく引き上げることができるし
、アメリカが、第1列島線における古くからの基地プレゼンスを削
減しつつも、この地域を米軍の戦艦や船が監視できるようになる。

◆西太平洋の未来像は 
大中国圏が、中央アジア、インド洋、東南アジア、そして西太平洋
で政治的、経済的、軍事的に姿を現しつつあるのかもしれない。だ
が、この新たな領域の外側については、その多くがおそらくはオセ
アニアを母港とする米軍艦がパトロールし、インドや日本、その他
の同盟国との間でこの監視活動をめぐるパートナーシップも形成さ
れるだろう。 

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大国が資源を武器に経済報復に出る時
朝鮮日報

中国は「国際社会において大国としての責任や役割を果たすことに
は関心がなく、自国の利益だけに執着し、影響力を拡大することば
かり考えている」と指摘されてきた。人民元の切り上げをずるずる
と引き延ばし、二酸化炭素を減らそうとする国際的な合意にも強く
反対してきた。

そして今回、中国は世界的な金融危機以降、国際的な政治の舞台で
力を強めたうえ、国内総生産(GDP)基準で世界第2位の経済力を持
つことから、米国と真っ向から渡り合える大国に浮上した。

刀の「つか」を手にした中国が今後、外貨準備高や産業の中核を担
う資源を武器に、外交・貿易で紛争が起きるたびに経済報復という
刀を振りかざせば、国際貿易上の秩序や国際金融体制がどれほど衝
撃を受けることか。

日本のような経済大国でも太刀打ちできず、中国による圧力の前に
頭を下げなければならないなら、日本以外のアジア諸国はお手上げ
だ。
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中国、台湾が一方的主張…尖閣諸島なぜトラブル
  
 尖閣諸島は、沖縄県石垣市を所在地とする日本固有の領土で、政
府は「領有権問題は存在しない」との見解を貫いている。

 にもかかわらず、中国や台湾が一方的に領有権を主張して外交問
題化している。

 尖閣諸島は、石垣島の北北西約170キロの東シナ海に位置し、
魚釣島、大正島など五つの島と三つの岩礁からなる。同県の統計に
よると、総面積は約5・56平方キロ・メートルで、河口湖(山梨
県)ほどの広さ。現在は無人島だが、魚釣島には最盛期で250人
が住んでいた。

 政府は1895年、入念な現地調査を重ねて中国(当時は清国)
の支配が及んでいないことを確認した上で、沖縄県に編入した。こ
の時、清国からの異議はなかった。1951年調印のサンフランシ
スコ講和条約でも、日本が放棄した領土に含まれなかった。

 尖閣諸島は72年の沖縄返還まで米国の施政下に置かれたが、中
国や台湾はこの時も異議を唱えなかった。実際、60年代に中国や
台湾で発行された地図にも日本の領土として記載されている、と多
くの研究者らが指摘している。

 ところが、中国や台湾は70年代以降、尖閣諸島の領有権を主張
し始めた。その頃から、周辺に石油などの海底資源が眠っている可
能性が取りざたされ始めたためとみられる。中国は92年に制定し
た自国の領海法で中国の領土と明記し、台湾は99年に領土として
領海の基準線を定めた。

 96年には、台湾と香港の活動家が尖閣諸島に一時上陸し、中国
旗などを立てた。政府は領土管理強化のため、2002年に魚釣島
など3島の民有地を借り上げる措置を取った。だが、04年には中
国の活動家7人が上陸し、沖縄県警に出入国管理・難民認定法違反
(不法入国)の現行犯で逮捕され、強制退去処分となる事件も起き
た。

 尖閣諸島をめぐるトラブルについて、政府は国際司法裁判所(オ
ランダ・ハーグ)に提訴するなどの対応は必要はないとの立場だ。
提訴すれば、領有権問題の存在を認めることになるためだ。

 しかし、蓮舫行政刷新相が14日、「領土問題」と一時発言する
など、閣内の足並みも乱れがちで、「民主党政権の国家主権に対す
る認識不足が中国につけ入るスキを与えている」との批判が出てい
る。

(2010年9月23日12時04分  読売新聞)
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中国政府の主張
サーチナ
  明朝初期から釣魚島(尖閣諸島)は明らかに中国の領土だった
。明、清の両王朝期、釣魚島は「無主地」だったが、中国の海防管
轄の範囲内にあった。

  1895年、日清戦争(中国側呼称は甲午戦争)での中国の敗北が
決定的になると、講和のための下関条約(中国側呼称は馬関条約)
締結の3カ月前に日本は釣魚島を窃取した。

  1943年12月、中国、米国、英国はカイロ宣言を発表。同宣言で
は、日本は中国から窃取した東北地方(旧満州)、台湾、澎湖諸島
を含む領土を中国に返還すべきことが盛り込まれた。

  1945年に日本は、カイロ宣言の履行義務を含むポツダム宣言を
受諾して無条件降伏した。このことは、日本が釣魚島を含む台湾を
中国に返還することを意味する。

  1951年9月8日に、日米はサンフランシスコ条約に署名した。こ
の条約で日本は釣魚島を沖縄と同様に米国の統治にゆだねることに
なったが、当時の周恩来首相兼外相は「サンフランシスコ条約は中
華人民共和国が参加しておらず、日本との不完全な講和条約であり
、中国政府は法的根拠がなく無効だと認識する。絶対に承認するこ
とはできない」との中国政府声明を発表した。

  1971年6月17日、日米は沖縄返還協定に署名した。この協定では
、釣魚島も「返還地域」に含まれていた。これに対して中国外交部
は同年12月30日、日米両国政府に対して、「釣魚島を日本に返還す
るのは中国の領土と主権に対する明白な侵犯であり、中国人民は絶
対に容認できない」と厳しく非難した。

  中国政府は同時に、釣魚島を「返還地域」に含めたのは完全に
非合法であり、中華人民共和国の釣魚島など島嶼(とうしょ)に対
する領土の主権を変えることは全くできない」と主張した。

  その後、米国政府の報道官も「沖縄の施政権返還は、釣魚島の
主権問題には関係しない」と発言した。


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