3742.ロンドン便り



ロンドン便り(2010年9月3日)
From: 木野

皆様

先週英国中部のヨークミンスターというお城に行ってきました。その食堂に
こんな張り紙がありました

「It would be greatly appreciated if you would carry your used
crockery to the carousel」

セルフサービス式の大食堂なので、この張り紙の内容は「お食事が
終わったら食器は所定の場所へ」という意味です。引っかかったのは
このcarouselという言葉です。これは有名なミュージカルのタイトル「回転木馬」
で使われることばでメリーゴーランドの華やかなイメージがあります。

「食器をメリーゴーランドに返すって変だと思わない?」と息子に聞くと
「メリーゴーランドじゃなくってぐるぐる回っている食器棚ってことだよ。
ほら、あそこに見えてるじゃないか」と答えが返ってきました。

確かに辞書を引くとそれらしき定義もメリーゴーランドのほかにあります。
鈴木先生のような気分になれたひとときでした。

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From:得丸公明
木野さん、

ロンドン便り、大変興味深く拝見いたしました。
ありがとうございました。

カルーセルが、回転木馬にも、自動下膳台にも使われていることも面白いと思い
ました。我々日本人は、回転寿司や下膳用のコンベアベルトを回転木馬とは呼び
ません。日本人には工場の流れ作業のほうが身近なようです。生活の中に回転木
馬がないからでしょうかね。

でも、もっとおもしろい、時代が変わりつつあるのだなと思ったのは、英国人が
自分で食べ終わった食器を下げるようになったことです。これは進化です。「な
んだ、君たちもできるじゃない」という思いがしました。

私が住んでいた1990年代なかばは、パブでも、マクドナルドでも、大学の学生食
堂でも、下膳コーナーそのものが存在しておらず、下膳係りのおばさんがトロー
リーをゴロゴロ転がして放置された食器を集めてまわっていました。

テーブルを空いた食器が占有する時間がもったいないし、ちょっとした手間なの
だから自分で下げればよいのにと、取引先のイギリス人に言ったところ、「あの
おばさんたちの生活を守ってあげなくては」と、もっともらしい理由をつけてい
ました。本心は、イギリス人は自分で食器を下げると、プライドが傷つくという
ことのようでした。

しかし、その英国で、下膳のセルフサービスが始まったとしたら、なんだか革命
的に感じます。おばさんの職がなくなったかもしれませんが、人間は進歩するも
のだと驚きました。

お元気で

得丸
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From: 木野
得丸さん、

ありがとうございます。最近のロンドンではこうしたセルフサービス
式の大食堂だけでなく、マクドナルドやスターバックスにも下膳台
(こちらは回転しませんが)はあります。ただいずれもだからと
いって日本ではほとんどすべての利用者がお膳を片付けるのに
対し、こちらはざっくりとしたイメージで2割くらいでしょうか?すなわち
だいたいそのまま机にお膳が残っています。(やむなく私が片付ける
こともよくあります)

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木野さん
ロンドン便り面白く拝見しています。
変化の少ないイギリス人の生活にもずいぶん変化が出てきているのですね。
ところで、最近イギリス人の生活の一部であるパブの状況はいかがですか?
禁煙と飲酒運転の取り締まりが厳しくなって廃業するパブが多く、客も少な
くなったと聞いています。以前のロンドンでは金曜日の3時頃からパブが混
んでいて気勢をあげていましたが、経済不調でポンド安のイギリスでは如何
でしょうか?生活の一部であった場所が少なくなり変化しているということ
なのでしょうか?

円高で一見強い経済のはずの日本では、アジアでも中国、インドの元気とは
逆の政治空白と雇用不安で閉塞観が続いています。仕事帰りの夕方一人で車
内でビールとイカの燻製でほっとした顔でリラックスされているサラリーマ
ンが目立つのですが、憂さ晴らしの場所がなくなりつつあるのでしょうか?

リーマンショック以降苦労していると思われるイギリス人のパブの変化につ
いて次回レポートいただけると嬉しいです。

小川
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小川さん

ありがとうございます。

ロンドンパブはあいかわらず健在で毎日多くの人でにぎわっています。
これまで2つ行きましたが、もう少々データを集めてからレポートさせて
ください

いかの燻製っていいですね。社内でくつろいでいる人がいないのがロンドンです。
このあたりも含めて次回レポートします

木野
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木野様

玉名は西南戦役の激戦地のひとつだったようです。今週末の郷土会
に向け、同郷の後輩、彼が書いていた「弧愁の岸」杉本苑子を読み
終えて、再会に備えていますが。これはまた別な機会に。

8月31日Tさんの嫌いな「朝日の文芸時評」に斉藤美奈子が書いて
いました、
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カネをカネたらしめている魔法は、何か。ぼくには、ぎりぎりのと
ころ、「信」の一字しか思い浮かばなかった。
経済は唯物論の領域だと思っていたら、その心臓部は徹頭徹尾、神
仏抜きの宗教にほかならないことに、ロンドンで気づかされたーー

これは群像9月号三輪太郎「大黒島」を評したものです。

浅山


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