3730.高速道路と鉄道の連絡駅を整備しよう



高速道路と鉄道の連絡駅を整備しよう
                    平成22年(2010)8月25日(水)
                     「地球に謙虚に運動」代表
                        仲津 英治
日本列島もまだまだ猛暑が続いております。

 私は、家族旅行、友人との旅行に出かける際、近くであれば自動車で出かけ、
遠方であれば、新幹線など鉄道で目的地付近まで出向きそこからレンタカーを
借りることが多いです。その方が経済的であり、気楽でもあるからです。

 自動車で出かける際、仕事の関係で外出している家族を途中でピックアップ
するケースが多くあります。その場合、高速道路のサービスエリア(以下SA)、
パーキングエリア(以下PA)で、交通手段を持たない家族と待たせることは
できませんので、大阪駅など鉄道駅に一旦向かいます。ここで時間をロスする
のです。高速道路でそのまま行くことに比べ、1時間や2時間はすぐつぶれます。
お盆のように大渋滞時以外は、通常混んでいるのは都心部であり、信号待ちが
多いのが都市部の道路だからです。そして都心部往復するためにガソリンを追
加消費し、炭酸ガスも追加させています。

 高速バスと鉄道を連携利用されている場合もあります。高速バスを利用され
る方で、大阪の都心に向かう人は、前述の新御堂筋が良く混んでいるので、
桃山台のバス停で下車し、地下鉄御堂筋線と相互乗り入れしている北大阪急
行電鉄をよく利用されます。高速道路と鉄道の相互利用の典型でしょう。
このことから思うのは、家族、友人を高速道路のSAか、PAでピックアップ
できたらな、ということです。

 これを可能にしようと思えば、SAか、PAに鉄道が乗り入れるか、高速道路
と鉄道の交差している、あるいは平行隣接して走っているところに鉄道駅を
作り、道路側にも駐車場、待合スペースを整備することです。旅客が高速道
路と鉄道を相互利用できるようになります。
しかし、私の知っている限り、このような高速道路と鉄道の交差箇所に鉄道
駅を設けて、一般車が相互利用できるようにしているところは、一箇所もあ
りません。

 日本では在来鉄道が先行して整備され、高速道路は新幹線と同じ時期に整備
され始めていますが、高速道路の設計者には、鉄道と接続するという考え、
発想は全く無かったのでしょう。ものの見事に両者は別体系になっています。
車で出かける人は最後まで車で用を済ますか、旅行を完結するという前提に
立って、高速道路が計画され、整備されてきたのでしょう。

 第二次大戦前から高速道路体系を整備しているアウトバーンで有名なドイ
ツでも高速道と鉄道が連絡している設備はありませんでしたから、日本でも
無理からぬことであったとは思いますが。しかしいまや全国には、高速自動
車国道と一般国道自動車専用道路も含めると高速道路と呼びうる路線延長は
18,000キロ以上ものネットワークが形成されています。新幹線の2,100キロ
に比べても桁違いに全国的に整備されています。そこで高速道路と鉄道の相
互利用を促す設備は整備されて良いのではないでしょうか。

 私の提案は、高速道路と鉄道の連絡駅を整備しようということです。
まず、大都市である京阪神とつながりの深い、北陸道、名神高速、近畿道、
阪和道など近畿の高速道路と在来鉄道が交差もしくは、平行している箇所を
調べて見ました。資料はワラヂヤのナビップ関西道路地図と、NEXCO西日
本がSAなどで提供している高速道路ガイドマップそして、インターネット
の地図サービスです。驚くほど交差・隣接している箇所があり、69箇所に
も上りました。まだあるかも知れません。一覧表に纏めましたが、4ページ
にもなるので、発信対象からははずさせて頂きます。
ご覧になりたい方は、「地球に謙虚に運動」ホームページの代表発信欄をご覧
ください。

 新規に交差箇所などに高速道路・鉄道連絡駅を整備するのは、経費、時間も
掛かることでしょうから、既に鉄道駅のあるところに、高速道路側で駐車場、
待合設備、階段、エレバーターなど整備するのは如何でしょう。これら設備
は鉄道から高速道路に乗り換える旅客あるいは、高速道路から鉄道に乗り換
える旅客専用の設備とします。自動車の出入り設備は設けません。私は自ら
現地を見聞きしている経験に照らして、3箇所の具体的な連絡駅候補として
掲げたいと思います。

 第1は、湖西道路とJR西日本湖西線の比叡山坂本駅付近です。湖西道路と
JR湖西線は大津市内で平行して走っているところがあり、比叡山坂本駅は
丁度その中ほどにあります。
湖西道路は平成17年に国有化されて無料化されましたが、自動車専用道です。
高架道路の西側と高架下には前述のような設備を設ける十分なスペースはある
と思います。

 第2の候補は、名神高速道路と阪急千里線の関大前駅付近の交差部です。
名神高速道路は、吹田市にある関西大学のキャンパスの地下をトンネルで貫
いており、丁度その西口付近に阪急千里線関大前駅があります。トンネル口
の近くで市街地が形成されているところなので、駐車場、ランプウェイなど
を設けるのは難しい感じがしますが、可能性はあると思います。

 第3の候補箇所は、神戸淡路鳴門自動車道の明石大橋の北側に位置する舞子
高速バス停留所付近です。JR西日本の神戸線舞子駅と山陽電鉄の舞子公園駅
が近接しており、高速道路との連絡設備が設けられれば、利用客は多いこと
でしょう。
 私も以前、ここの高速バス停留所で家族をピックアップしようと思い立ちま
したが、バス停は一般車乗り入れお断りとのこと、駅前で待ち合わせること
としました。現場付近の地図と航空写真を見ると、公園スペースもあり、
連絡設備を設ける余裕は十分あると思われます。高速バスと鉄道の連絡乗換
え設備は既に整備されており、その意味では高速道路と鉄道の相互利用設備
が、本格的に設けられた先行事例ですね。今や、本州と四国をつなぐ重要な
結節点となっています。

 もっともこれら3箇所はいずれも市街化され、開発されているところなので、
用地の確保、工事施行などに課題はあれえましょう。そこで郊外の交差箇所
を新規開発することも可能性があるかかも知れません。

 こうした高速道路と鉄道の相互利用設備を設ければ、道路、鉄道相互の利用
が生み出され、新しい需要を掘り起こすことに繋がるとも思われます。高速
道路をいったん出て都心部で友人などを送迎するための往復ロス(時間、
エネルギー)を減らすことができ、環境問題の改善にも資すると考えます。
またこうした連絡設備に高速バスの停留所を設ければ、高速バス、鉄道の相
互利用が促進され、高速バスの収入をもって辛うじて経営を維持している全
国のバス事業者、地方鉄道会社の営業改善にも役立ちうるでしょう。

 去る6月28日から始まった高速道路無料化社会実験区間の1ヶ月間のデータが
国土交通省から8月11日に公表されました。それによれば、全国平均で無料
化区間の通行量は2倍に増え、並行一般道路は平均で2割減っており、トータ
ル通行量は増えたことになります。鉄道、高速バスへの影響はどうでしょう
か。1週間のデータしか有りませんので、断定的なことは言えませんが、顕
著な例としては、舞鶴若狭自動車道の利用台数が無料化前の333%に急増し
たのに対し、競合する北近畿タンゴ鉄道は平日▼1%、休日▼11%の旅客減
となっています。環境と交通問題に詳しい環境自治体会議の環境政策研究所
の上岡直見氏の速報によれば、時間短縮効果はマイナス約600億円、炭酸ガス
排出量20万トン/年と推計されています。無料化により高速道路へ並行一般道
から転換が起きたことは事実だが、追加的な自動車交通が誘発され、一般道
における速度向上効果が相殺・逆転したためではないか、と推定されていま
す。

 人々に交通権を保障するという交通基本法案が近々国会で審議されようとし
ています。公開でコメントが募集されており、私も意見書を国土交通省に提
出しました。本法案の基本精神は総合交通体系の整備することにあります。
高速道路と鉄道の相互利用促進は、総合交通体系を整備する大きな柱となり
えましょう。利用客そして鉄道にも高速バス等にもプラスする交通政策が求
められているのです。経費は、環境改善、省エネ・省資源の趣旨からも石油
税の一部を充当するべきだと考えます。

 皆様いかが思われますか。                 以上

「地球に謙虚に運動」代表

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