3726.「貯蓄税」について



「貯蓄税」について

徳留です。

以前テレビで「貯蓄税」について紹介しているのを知り
興味を持ちました。

原案としては、1人1000万円を超える預金に対して
2%の税金を課すというものです。

これって、減価する地域通貨と同様、
通貨の保存機能を弱める働きをしますから、
消費を促進する働きがあり、景気対策としても
所得の再配分としても、とても優れている気がします。

お金持ちや、すでに引退した世代には不評のようですが
(当然でしょうが)
景気対策や貧困対策としても、
方向性としては、消費税アップなどより
現状では最善の策に思えてなりません。

森野さん、青木さん、みなさんのご意見をうかがいたいです。
このMLのテーマとしても相応しい気がしました。
よろしくお願いします。

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From: Eiichi Morino 

こんにちは

貯蓄税あるいは銀行預金(の一定額)に課税する考えは
昔からあるのですが、これには難点がひとつあるんです。

資産家は銀行口座を利用せず、現金に逃げることができる
からです。

これは一般に、課税側が個人の資産状況を把握する必要が
ある徴税方式の場合かならず付いてまわる問題でもあります。

減価マネー(あるいは課税貨幣)は貨幣そのものに課税する
わけで、この隘路を回避できるところに特徴がありますね。

こうした貨幣券面への課税とあわせ、預金通貨に同じ税率を
課すことで、逃げ道はなくなり、全般的マイナス金利状況
を作り出すことができます。
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徳留です。

森野さん、早速のお返事ありがとうございました。

たしかに海外にお金が逃げる分は出てくるでしょうが、
その割合が、課税しても意味がないほどになるかどうかだという気
がします。
やる意味がないほど、マイナスは大きくないならない気もしますが
・・・。

また、逃げないようにするためには、預金の名寄せが必要という議
論もあり、これって、国民総背番号制と抱き合わせでないと
ちゃんとした制度設計ができないということになるのでしょうか?

ちなみに、検索して、最近の提唱者がわかりました。
白川浩道さん(クレディ・スイス証券チーフエコノミスト)でした。

テレビでの議論も見つかりました。以下、ご参考まで。
http://blogs.yahoo.co.jp/bmb2mbf413/35494664.html

ネット上では、「苦労して溜めた貯金に課税するなんてヒドイ!」
というトーンが強い感じですが、誰かが言ってたように
「死に金税」とネーミングした方が、趣旨は伝わりますね。

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From: Eiichi Morino 

> たしかに海外にお金が逃げる分は出てくるでしょうが、

海外である必要はないのですよ。キャッシュなら
いいわけです。具体的なやり口は、それこそ我が国
の権力者である●沢なんかはよくご存じでしょうね。
カネ○の場合は無記名債券なんかにカネを変えちゃい
ましたのでばれましたが(笑)

> これって、国民総背番号制と抱き合わせでないと
> ちゃんとした制度設計ができないということになるのでしょうか?

総背番号制にしても現金に逃げれば把握できないんですよ。
あたかも背番号制をいれると資産把握ができるかのような
議論は国民を騙すものですね。
徴税側と担税側の情報の非対称性はそう容易には解消
できませんね。
だから消費税のほうがいいという議論は、また別の問題
があります。最近はみなさん不公平税制についてはみな
黙ってらっしゃいますね。

> ちなみに、検索して、最近の提唱者がわかりました。
> 白川浩道さん(クレディ・スイス証券チーフエコノミスト)でした。

証券の方には願ったりの税ですなあ〜(笑)
株式は預金ではありませんからね(笑)

> 「死に金税」とネーミングした方が、趣旨は伝わりますね。

銀行に預金した場合、貯蓄預金の回転高は営業預金ほどでは
ありませんが、貸出や信用創造を通して通貨量の増加を
もたらしますが、それが十分にできているか、そうでないか
は金融機関の姿勢や貨幣需要、借り入れこすと(金利水準)が
どれほどかによって決まりますから、かならずしも死に金ではな
いんでしょうね。
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From:青木

>カネ○の場合は無記名債券なんかにカネを変えちゃい
>ましたのでばれましたが(笑)

まあかなり部分アングラ化するでしょうね。ヤミ金とその資金洗浄
が大はやりになるのかも。

それでもソ連邦崩壊直後のロシアや、いまのギリシャやイタリアの
ようになるなら、ある意味見事なんですが、わが邦の住民は意気地
がないというか真面目ですから、そうはならんでしょうね。

>だから消費税のほうがいいという議論は、また別の問題
>があります。最近はみなさん不公平税制についてはみな
>黙ってらっしゃいますね。
>

白川提言だと世帯ごとに課税するとしているので、個人にタグを付
けるのは必至ということでしょうね。

もっとも、税務の現場では課税客体をユニークにしなければ仕事に
ならないわけでいまでも勝手に符号を付けているのですから、それ
が大っぴらになるだけというふうにもいえないこともありせんが…。

>> テレビでの議論も見つかりました。以下、ご参考まで。
>> http://blogs.yahoo.co.jp/bmb2mbf413/35494664.html

じつは↑の番組、生で見るとはなしに見ていました。

それにしてもテレビ朝日は編集が下手くそですね。というかディレク
ターが何も分かっていないんでしょうか。

最後のほうで「休眠預金があぶり出されれば、その一部は海外投資に
向かう。そうすれば円高も是正される方向に向かうだろう」というよ
うな趣旨の白川発言を放映してしまっている。

こんなに早く語るに落ちたでは、見るほうはドッチらけですね。芸が
なさ過ぎる。

>は金融機関の姿勢や貨幣需要、借り入れこすと(金利水準)が
>どれほどかによって決まりますから、かならずしも死に金ではな
>いんでしょうね。

ほぼ絶対的に引き出されない預金があるから銀行は信用創造を安心し
てできるんであって、それを取りに来られたら、すぐさま「取り付け」
に発展してしまう。

それにだいたい、そうした預金があるから銀行は長期国債に資金を
「寝かす」ことができる。直接的な関係は指し示せないものの、白川
提言のいう休眠預金の裏に国債がびっしり貼りついていて、決して
「死んでいる」わけではありません。

「死に金」という言い方は白川氏も使っているのですが、じつはそれ
こそ金融システムの命脈を保つための重要な資金源で、そんなことは
金融関係者なら百も承知、五十も合点なはずです。
「この人ほんとにチーフエコノミストなの?」って正直思いましたね。

白川「貯蓄税」構想には、それをぶち上げたときのわが国の世論の状
況を値踏みしようというクレディスイス本社の意向が働いていると見
ておいたほうが良いのではないでしょうか。
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青木さん、森野さん

徳留です。
詳しいレスありがとうございました!

ほんと、奥が深いというか、闇も深いというか
なかなかシロウトには、思いつかない様々な
弊害というか、カラクリというか、あるのですね。

景気回復と財政再建という二律背反を越えられる
名案と感じたのですが、ことはそう簡単ではないのですね。

ただ、最近感じていることは、
やはり、経済成長が不可欠という発想から脱し
広井良典さんの言う定常型社会に移行していくことを
本気で考えないと、人類は持続可能じゃないということです。

経済学も環境という枠組のなかで再構築し
自然という元本に手を付けず(つけた分は返済し)、
自然の利子だけで生活が成り立つようにしていきたいです。

青木さんの「お金崩壊」の結論も、そういうことだったと思います。
今後の活躍を楽しみにしております。

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From: Eiichi Morino 

> 広井良典さんの言う定常型社会に移行していくことを
> 本気で考えないと、人類は持続可能じゃないということです。

定常状態の経済の議論はどのような経済条件の
なかで成立するのか、それをどう実現するのか
まだまだこの国の議論は輸入段階で入り口の
感がありますね。
寡聞にして、最適な金利構造をもつ通貨・金融
政策について議論さえみかけません。実質金利と
生産の増加率に関するAllais-Theorem(アレ定理)
などは出発点としては必須の議論のひとつと思いま
すが、モーリス・アレの議論はこの国の環境経済学者
たちによって無視されていますね。

若い人たちによる独創的な達成を期待したいです。
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From: Eiichi Morino 

> それでもソ連邦崩壊直後のロシアや、いまのギリシャやイタリアの
> ようになるなら、ある意味見事なんですが、わが邦の住民は意気地
> がないというか真面目ですから、そうはならんでしょうね。

このへん、国内の貯蓄が海外に向かわず国内に止まるかは、その国民の
文化的特性、人間性など制約要因があるんですが、90年代ころは、
金融の国際化でどう変化してきたか、フェルドシュタイン・ホリカワ
の再帰方程式なんかで数値をみる習慣があったのですが、最近はさっぱり
調べなくなった(泣

ワタナベ夫人と海外で揶揄されるほどになっているし、各種ETF商品
の人気を考えると日本人の行動パターンも少しは変化がみられるかな・・・

とにかく、脱税を国民的娯楽に高めたギリシャ人から学ばなくちゃなら
なくなる時代が迫っているかもしれません。

> それにしてもテレビ朝日は編集が下手くそですね。というかディレク
> ターが何も分かっていないんでしょうか。

この番組をおそらく構成した作家は誰か、思い当たる人います(笑)。

外資も狙っているでしょうが、ただいまの権力側の世論瀬踏みの
ねらいもあるでしょうね。



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