3711.「最期は自宅」は、幸せなのだろうか



「最期は自宅」は、幸せなのだろうか( by NBonline)
From: 青木秀和
                
ある
本日配信のNBonlineの記事からです。

―引用ここから

 例えば、1時間の訪問看護であれば830単位=8300円。自己負担は830円となる。利用
者と話をしながら状態観察し、変わったことはないか確認していくが、「(お金がない
から)30分でお願いします」と言われることも。30分以上1時間未満であれば425単位な
ので、自己負担は420円で済むからだ。前述のように深夜「ちょっと様子を見に来てほ
しい」との電話が入り、清美さんが「行けば利用料が発生する」と念のため確認すると
、「お金がかかるなら」と躊躇あるいはキャンセルされることも多い。 

 また、本来であれば週に1度は訪問看護が必要な人であるにもかかわらず、月1回に手
控えられるなどして、必要なケアができないケースもあるという。清美さんが訪問看護
を初めて利用する高齢者に「これから、どんな生活を送れるようにしたいですか」とケ
アプランを立てるために尋ねると、冒頭のように「家族に迷惑がかかるから、早く死に
たい。どうしたら早く死ねるか教えてほしい」と言われることが増えているという。 

(中略)

2010年度の診療報酬の改定は、前回の改定に引き続き、在院日数が短いほど保険点数が
高くなり、退院や転院に加算がつくなど、病院経営を考えれば、早期退院を促し、在宅
医療を方向づけるような内容となった。全体として、社会問題化した周産期や外科、救
急のほか、障がい者や認知症、精神疾患に手厚いが、同じように退院が促がされている
ため、患者が医療難民化する懸念がある。 

 それなのに、在宅医療を担う訪問看護について、大幅な診療報酬の引き上げは行われ
てはいない。わずかに、末期の悪性腫瘍などの利用者に対して同時に看護職員が複数で
訪問する際の加算が新設されるなどの引き上げはあったが、ただでさえも、人材不足の
訪問看護で必要な人員を満たすには不十分。就業看護職(保健師、助産師、看護師、准
看護師)は、2007年で約137万人だが、そのうち、訪問看護ステーションで働く看護職
は、たった2万8494人で全体の2.1%に留まる。訪問看護の人材が増えないことには在宅
医療とはいっても事実上、家庭に負担を強いるだけとなる。 

―引用ここまで

基礎所得(BI)を導入すれば、福祉施策を全部廃止することも可能という
ような議論があるようですが、現実問題とすればそんなに簡単にいくもの
ではないと思われます。

全文をご覧になりたい方は、DMをください。
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From: Eiichi Morino

こんにちは

我が家は老(超高齢の母親)老(私ほか)介護をしていましたが
幸運にも老人保健施設に入ることができました(どこも順番待ち
かな)。毎月20万円強かかります。これが何年も続いています。
母親はしぶんの資産をすべて使い尽くすことになりますが、そう
なった後も生きていれば、私の乏しい資産をつぎ込むことになります。

万人に無差別無条件のお小遣いで毎月8万円ありがたくちょうだいして
もたらんですね。在宅で訪問看護を受けて家族が世話していたときは
下記のような状況ですね。病院には、時折入院できましたが、すぐに退
院のお勧めがありました。

施設にはちょくちょく行きますが、他の収容者を拝見していると、
家族は冷たいもんですね。施設に預けて厄介払いできたとでも
お考えのご家族もいるいるようで、これが現実かと思わされます。

政府が成長部門として期待するこの分野は、行くたびに人が変わる
ほど労働条件は悪いようですね。働いて居る方も条件が悪いと、入所
者にあたります。ひどい事例も聞きますね。ある産業部門が成長する
には高収益が期待でき、失敗しても補って余りある夢と人の評価が人
を惹きつけていないとなりませんが、介護の分野、そこにみるのは暗
い心性とツライ労苦と低賃金でしょうか。人がこの分野を希望しない
のもわかるような気がします。

お世話になっている老人介護施設は、リッチな階層向けの施設も
経営していますが、聞くとすごい差がありますね。そうしたところに
入っている富裕層にも万人に無差別無条件のお小遣いが同額支給され
るのでしょうね。おそらくそのカネはFXの投機の一部や国債の購入の
一部に振り向けられるのでしょう。

貧者にして老境を迎えたくないものですね。
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From: 白崎

青木さん、白崎です。

> >
> 基礎所得(BI)を導入すれば、福祉施策を全部廃止す
ることも可能という
> >
> ような議論があるようですが、現実問題とすればそん
なに簡単にいくもの
> > ではないと思われます。
> > 

青木さんと森野さんにいただいたお返事もまだなので申
し訳ないのですが、上記のことについて、ひとこと。
まったく青木さんの言われる通りです。わたしの仕事は
、障害のあるこどもたちの支援機器輸入・販売ですが、
たとえば、北欧製の重度の脳性まひなどの人が使用する
ような電動車いすは、300万円程します(これでも、
けっしてメーカーが利益が潤沢ではありません)。これ
を月10万円のBIでまかなえーーと言われたら、その
障害当事者は「途方にくれます」。やはり、現物給付と
現金給付の両方の公的支援が必要なわけです。そこを市
民のベーシックニーズ・ラディカルニーズで再構築して
いかないといけない。また、そこに市民・共同のなかで
「地域通貨」の出番もある。
某六本木ヒルズにすんでいらっしゃるBI推進派と称す
る方のように「BIさえあればなんでもござれ」という
ことには、私は、おんなじBI推進派でも、まったく、
違う、相反する立場なのです。そして、それは、自分の
仕事、仕事仲間、ケア労働に従事する知人たちの声の一
部でもあるのです。
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From: Eiichi Morino

よこから失礼

白崎一裕 への返信:
> 青木さん、白崎です。
> 
> > >
> > 基礎所得(BI)を導入すれば、福祉施策を全部廃止す
> ることも可能という
> > >
> > ような議論があるようですが、現実問題とすればそん
> なに簡単にいくもの
> > > ではないと思われます。
> > > 
> 
> 青木さんと森野さんにいただいたお返事もまだなので申
> し訳ないのですが、上記のことについて、ひとこと。
> まったく青木さんの言われる通りです。わたしの仕事は
> 、障害のあるこどもたちの支援機器輸入・販売ですが、
> たとえば、北欧製の重度の脳性まひなどの人が使用する
> ような電動車いすは、300万円程します(これでも、
> けっしてメーカーが利益が潤沢ではありません)。これ
> を月10万円のBIでまかなえーーと言われたら、その
> 障害当事者は「途方にくれます」。やはり、現物給付と
> 現金給付の両方の公的支援が必要なわけです。そこを市
> 民のベーシックニーズ・ラディカルニーズで再構築して
> いかないといけない。また、そこに市民・共同のなかで
> 「地域通貨」の出番もある。

カネで払うか現物で払うかは戦前のカナダのダグラス主義者
も議論していましたよ。

しかし、ニーズに応えるベーシック・プロダクツはどうするの
という視点はまったくなかったですね。単にお小遣いの上げ方
のレベルの話でした。

つまりサプライはもう存在すると前提して疑わなかったんです
ね。

しかしラスキンが言っているように、小麦のない島で小麦を
入手する切符を作ったところで小麦は手に入らないわけです。

地域通貨もニーズとサプライを調整する仕組みの一つですが、
地域通貨が地産地消を督励する効果があることで、地域性
をもったニーズに地域が対応する供給構造を促進する効果
が期待できるでしょう。


> 某六本木ヒルズにすんでいらっしゃるBI推進派と称す
> る方のように「BIさえあればなんでもござれ」という
> ことには、私は、おんなじBI推進派でも、まったく、
> 違う、相反する立場なのです。そして、それは、自分の

そうであれば、同じバンドワゴンにのり同じカネやタイコ
をたたくわけにはいかんのでしょうね。

> 仕事、仕事仲間、ケア労働に従事する知人たちの声の一
> 部でもあるのです。
> 
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白崎さん こんにちわ〜
From:青木

「健康で文化的な最低限度の生活を営む」に足る所得を「基礎所得」
と位置づけるなら、基礎所得とは、やはりその獲得を「保障」される
べきものであり、それは国民に一律に「支給」することで代替すると
するのは、少々大雑把に過ぎるように思います。

さらに、もし基礎所得を配ることですべての福祉施策を廃止するとす
るなら、日本国憲法第25条第2項をまず「改正」しなければなりません。
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青木さん、白崎です。

お返事ありがとうございます

お答え、まっておりました(笑)。わたしは、全面改憲論者(上賜
文・全文・1条からすべて)なので(どこかの保守ご都合改憲とは違
いす)25条の健康や文化に「最低限度」を設けるのは、どうも、き
がすすみません。
生存権は「刑務所」のなかがもっとも保障されているようなーーー
。なので、国際人権規約にのっとって、「人間の尊厳ある暮らしを
保障する」というようなことにしたいです。
現行憲法の25条の下案をつくった若きベアテ・シロタの原案も、い
まの25条にくらべるとはるかに「国際法」を意識した、豊かな内容
でした。
それをマッカーサーが、小娘ごときとおもったのか、ばっさり削除
しちゃったんですね。

あと、「国民(市民)全員」に支給するのはいかがなものか?とい
うのは、かならずBIに対する批判としてあるものです。それにつ
いては、森野さんの応答にお答えするかたちできちんと(できるか
な?)お返事をしたいと思います。ただ、わたくし、今週から、山
陰・三重と貧乏行商生活にはいります。なので、すこし、お時間く
ださい。
申し訳ありません。
==============================
白崎さんへの返信:
From:青木

> 青木さん、白崎です。
> 
> お返事ありがとうございます
> 
> お答え、まっておりました(笑)。わたしは、全面改憲論者(上
賜文・全文・1条からすべて)なので(どこかの保守ご都合改憲とは
違います)、25条の健康や文化に「最低限度」を設けるのは、どう
も、きがすすみません。
> 生存権は「刑務所」のなかがもっとも保障されているようなーー
ー。なので、国際人権規約にのっとって、「人間の尊厳ある暮らし
を保障する」というようなことにしたいです。
> 現行憲法の25条の下案をつくった若きベアテ・シロタの原案も、
いまの25条にくらべると> はるかに「国際法」を意識した、豊かな
内容でした。それをマッカーサーが、小娘ごときとおもったのか、
ばっさり削除しちゃったんですね。
> 
> あと、「国民(市民)全員」に支給するのはいかがなものか?と
いうのは、かならずBIに対する批判としてあるものです。それに
ついては、森野さんの応答にお答えするかたちで
> きちんと(できるかな?)お返事をしたいと思います。ただ、わ
たくし、今週から、山陰・三重と貧乏行商生活にはいります。なの
で、すこし、お時間ください。
> 申し訳ありません。

どうぞゆっくり行ってらっしゃってください。

無差別無条件支給をただ道徳的に批判しているのではないことはご承知と
思います。最近のBIをご主張なさる方々のインフレターゲット論やあれこれ
目にしますと、語っている方が言葉を理解していなんじゃないかとさえ感じ
させられます。

ダグラス主義でさえ、これほどにまでいいかげんなものではないよといいたく
なるほどです。まあ、日本への紹介者が経済知らん人のようですからもっとも
かとも思いますが、バンドワゴンで騒いでいる人たちのレベルですと流行が終
わっちゃうかもしれません。

しかし彼らは責任をとるなんてことはないんでしょうね。でも
Utopische Forderungen sind der beste Karrierekiller.
「空想的な要求は最高のキャリアキラー」ともいいます。
語っている方の評価に響いてくるかもしれません。

よくある批判という受け止め方でしたらお答えは不要ですよ。
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支給方法のテクニック
From: Eiichi Morino
                

無条件無差別のお小遣いになんだかゲゼリアンは反対している
ようでけしからんとお思いの方もいらっしゃるでしょう。たしかに
なかなか小遣いをくれないシブイおかあちゃんより、すぐ小遣いを
くれて機嫌をとってくれるじいちゃん・ばあちゃんのほうが人気
です。

ゲゼリアンもI・フィッシャーが緊急通貨としての減価型代用
貨幣を支給する方法として貧者への給付を示唆しています。

無条件・無差別ではないのです。貧者だけです。それは限界
消費性向が高いというばかりでなく(経済的効果;快速のマネー)、
貧者支援という社会的な観点もあります。

しかしここで、テクニカルな問題が生起します。
貧者及びその範囲をどう認定するの?という問題です。

この問題は無条件無差別支給の場合でも範囲認定(線引き)
を除き発生します。

支給は交換ではなく一方的供与ですから、供与される側が
その条件を満たしているかどうかが常に問題になります。

人のふところに手を突っ込むように、総背番号制という
人間の登録制度の最高形態を実現して、貧困かどうか、その
資産状況・所得状況を把握するという考えがすぐ浮かぶで
しょうが、給付者と非給付者の情報の対称性が実現する(
非給付者の事情を彼が知っている程度に給付者も知る)
ということを回避する方法はありますし、それに好都合の
ポジションにいる社会層も存在します。

じゃあ君たちはどうするんだねと言われるでしょう。
そうしてその認定作業のコストもばかにならんだろうとも。

ここで比較的コストもかからず、地域のボランティアで運営
されている米国農務省のフード・スタンプ・プログラムが
思い浮かぶ人もいるでしょう。そうした顔の見える地域性
の関守のなかで地場ごとに認定して、フードスタンプに参加
している人には給付するとしたらどうかとかアイデアは出ます。

しかし、数ヶ月前フードスタンプでも、なりすましを避けるた
めに、受給用IDカードを写真入りのものに変えました。

フード・スタンプに参加するぐらいだから、食うにも困って
いるだろうと思いますが、また実際そうであるにしても、
なりすましや複数回受給を考える人もいるわけです。
なかには資産家でもただならといって受給を画策する人が
いるかもしれません。

マイナスの所得税の手法の場合もそうですが、資産家でありながら
資産を把握させない方法(典型的には現金に逃げる)を塞ぐこと
はできませんから、莫大なコストをかけて番号制を導入しても
富裕層で給付を受ける人がでるでしょう。

無差別・無条件給付の場合ももし定額給付金のごとく、公的
当局の手を煩わせて、なりすまし、複数回受給を防いでも
公的当局との関わりを欠いたり、関わりたくない人には給付
することは難しいでしょう。

これは給付にともなう技術的な難題でもあるでしょう。どのていど
の大まかさを許容するかは人によって異なるでしょうし、政治的
に決まるものなかもしれません。

まだ若造のとき丁度中曽根内閣が売上税を画策しているころで、
その方面のゴーストライターをしていましたが、所得状況を把握する
ためのコンピュータシステムの導入も計画されていました。しかし
そういうなかで、もし欧州流間接税が入ったらこういうごまかし、詐
術が可能ということを克明に書いたら全部削除された経験があります。

けっきょく、マイナスの税も含めた税の実効性を考える場合、これま
での経緯には、人の掛引のノウハウが山をなしているわけですね。

むかしから「人窮して巧みをなす」といいますが、支給や徴収という
一方的行為には人の巧みがからんでむずかしいところが潜んでいるよ
うです。





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