3691.ベーシックインカムについて



ベーシックインカムについて
from森野

BIを推進される方のご主張は月8万じゃなかったでしょうか。
年間凡そ100万、掛ける人口数で、おおまかに年間100兆円
と承知していましたが・・

それから「負の相続税」といいますと、相続に際してマイナスの
相続税が課される(相続に際して褒美がでる)という意味に
なりはしませんか。

> 
> 性懲りもなくベーシックインカムについて考えています。
> 「政策として実現可能なBI」というテーマでブログ記事
> を書いていて「負の相続税としてのBI」というアイデア
> が浮かびました。
> 
> 『政策としてのベーシックインカム論(5)』
> http://philosopher.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-1e01.html
> 
> 議論のきっかけにでもなれば幸いです。
> 千隈
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千隈さん、こんにちわ〜

ひとつだけ教えてください。

>昔からの労使対立の構図の上で賃上げ要求などしていたら、
>日本は労も使もつぶれてしまう、そういう危機感を持っています。

と仰有っていますが、「労使協調」の書き間違えではなのではない
ですか??

>その原資は68兆円と推計される国民年金の積立金です。

と仰有っていますが、厚労省の公式データでは、2007年度末で
国民年金の積立金残高は約8.8兆円となっています。
↓
http://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/04/04-01-02-19.html

60兆円近くをどこかに「埋蔵」しているということでしょうか?


青木
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森野先生、こんにちは。千隈です。
メールのご返事ありがとうございます。

「負の相続税」という呼び方は、BIに近い考え方に
「負の所得税」というのがあるので、そこから自然に
連想したものです。あまり厳密に捉えられるとつらい
ものがあります。(笑)

ただ、BIというものを「人生においてやがて払うべき
相続税に対する先取りされた補償」と捉えるなら、
あながち「負の相続税」という呼称が的外れでもない
気もします。

所得格差を埋めるためにBIのようなものが発案された
のだと思いますが、私の考えはこれを資産格差の是正
に使えないかということです。
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青木先生、こんにちは。千隈です。
メールのご返事ありがとうございます。

国民年金の積立金を68兆円と推定した根拠は、以下の
記事で説明しました。厚生年金・共済年金・国民年金
は、これまで相当などんぶり勘定で運営されて来たの
だから、積立金も納得いくように計算し直しましょう
という主旨です。何か間違いがありましたら、ご指摘
いただけると嬉しいです。

『政策としてのベーシックインカム論(3)』
http://philosopher.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-1c9e.html

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千隈さん もう一度教えてください。

この68兆円というのは、厚生年金や共済年金とは「別」に存在する
のですか?

さらにどこかに「積み立て」てあるのでしょうか?

そうそう、それからもう一つ。

現在の基礎年金という「制度」は、国民年金と同じなのですか?
同じであるとすれば、何故、国民年金あるいは基礎年金という
呼称のどちらかに統一されないのでしょうか?
青木
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青木先生、こんばんわ。千隈です。

国民年金の積立金が68兆円という根拠は、ブログ記事
の本文に書いた通りです。少し長いですが引用です。

『先ほどのページの表によれば、平成20年3月の公的
年金の残高は、厚生年金が127兆円、共済年金が52兆円
くらいあるのに対し、国民年金はわずか8兆円あまり
しかないのだそうです。(中略)国民年金にしても厚
生年金にしても、純粋な積立方式ではなく、国庫負担
がある前提で運営されて来たのですから、たとえバラ
ンスシート上では厚生年金と国民年金の残高がそんな
ふうに分かれていたとしても、その金額に正当な根拠
は無いのではないかと思います。もしも国民年金を
廃止するなら、この点は調整が必要です。考えられる
最も妥当な方法は、これまでに納付された実績と支出
された実績に合わせて残高を計算し直すことでしょう。
(中略)平成19年度の年金支給額(月額)は国民年金
が1.51兆円(平均5.8万円×2601万人)、厚生年金と
共済年金の合計が2.64兆円(平均17.6万円×1502万人)
ということになります。つまり国民年金は、規模的に
言って公的年金の約36.4パーセントを占めているとい
うことです(1.51/(1.51+2.64))。同じ表から
公的年金の積立残高の合計は187.8兆円であることが
分かります(8.3+179.5)。このことから国民年金の
実質的な積立残高は68兆円くらいであろうと想定しま
す(187.8×0.364)。』

因みに私の記事では、国民年金と基礎年金という言葉
は同じ意味で使っています。1986年の年金制度改正で、
厚生年金が2階建てになり、1階部分(基礎年金)が国
民年金と統合されたという理解です。厚生年金や共済
年金に加入している人は、必然的に国民年金(基礎年
金)にも加入していることになります。

もしも理解に間違いがあればぜひご指摘いただきたく
お願い致します。
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千隈さん

要するに千隈さんのお頭の中では、年金制度はすでに「統一」されていて、その積立金
残高うちの「国民年金」部分が68兆円にあたるという理解でよろしいでしょうか。

よく分かりました。ありがとうございます。

おそらく「基礎年金」というのは厄介な制度、とりわけ厄介な第3号被保険者の取り扱
いについても整理がなされていらっしゃるのでしょう。感服いたします。

ただ次の質問にはまだお答えいただいていないようです。恐れ入りますが、お答えをい
ただくわけには参らぬでしょうか。

■それは、どこかに「積み立て」てあるのでしょうか?

■「平成19年度の厚生年金の保険料収入は21兆9691億円、それに対して厚生年金部分へ
の保険料給付は22兆3179億円になっています。その差、 3488億円。これを積立金の120
兆円を使って埋めて行きます。」と仰有っていらしゃいますが、ここでいう「保険料収
入」というのは、現行の厚生年金の被用者の年金保険料と事業主負担分なのですか?

■またこの「保険料収入は21兆9691億円」の中には、現行の国民年金を含む「基礎年金
」側に繰り出す拠出分も含まれているのではないですか?

■「昔からの労使対立の構図の上で賃上げ要求などしていたら、日本は労も使もつぶれ
てしまう、そういう危機感を持っています。」と仰有っていますが、「労使協調」の書
き間違えではなのではないですか??
青木
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青木さん、こんばんわ。千隈です。
> ■それは、どこかに「積み立て」てあるのでしょうか?

国民年金と厚生年金の積立金は、2006年に設立された
厚生労働省所管の年金積立金管理運用独立行政法人に
よって管理・運用されています。運用の内訳は、国内
債券57.56%、国内株式17.88%、外国株式10.63%、
国外株式13.93%となっています。
―以上、Wikipediaからの抜き書きです。

> ■「平成19年度の厚生年金の保険料収入は21兆9691
> 億円、それに対して厚生年金部分への保険料給付は
> 22兆3179億円になっています。その差、3488億円。
> これを積立金の120兆円を使って埋めて行きます。」
> と仰有っていらしゃいますが、ここでいう「保険料
> 収入」というのは、現行の厚生年金の被用者の年金
> 保険料と事業主負担分なのですか?

はい、そのように理解しています。

> ■またこの「保険料収入は21兆9691億円」の中には、
> 現行の国民年金を含む「基礎年金」側に繰り出す拠
> 出分も含まれているのではないですか?

含みません。これは国庫負担、運用収入、基礎年金勘
定への繰入等を除いた「保険料収入」と「保険料給付」
だけを取り出した数字です。
私の構想は、国民年金(基礎年金)を廃止したあとに
国庫負担に頼らないかたちで厚生年金を継続していく
というものですから、「基礎年金」側に繰り出す拠出
も無くなるという理屈です。

> ■「昔からの労使対立の構図の上で賃上げ要求など
> していたら、日本は労も使もつぶれてしまう、そう
> いう危機感を持っています。」と仰有っていますが、
> 「労使協調」の書き間違えではなのではないですか??

この文章の中に「労使協調」という文字を当てはめて
読み直してみるのですが、私にはしっくり来ません。
書き間違いではありません、ここは「労使対立」です。

以上となります。
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From: Eiichi Morino 

相続税は相続する者が相続する時点で負担する
ものですよね。
人生を終えるものは三途の川の渡し賃6文あればよし、
黄泉にいくなら旅費はただと決まっているそうだし(笑)

> あながち「負の相続税」という呼称が的外れでもない
> 気もします。
> 
> 所得格差を埋めるためにBIのようなものが発案された

BIは格差を前提にした均等な配分ですよね。
所得や資産の状況を勘案しない給付。
人頭税で総スカンを食ったネオリベが今度はマイナス
の人頭税でその他社会給付をすべてなくそうとし、
結果的には資産格差・所得格差の点では同じ効果
をねらうネオリベラルの変化球かもしれませんぞ(笑)

資産格差の是正に効果があるのは、母子年金の財源
を土地保有並びに土地地代への課税に求め、相続時
に土地証券によって買い上げ利札部分の支払を消滅
貨幣で行うゲゼルの土地社会化案や、相続時に国有化
し年金支給に変えて代償を給付するレオン・ワルラス
の土地国有化案などがあります。金融資産については
そもそも課税貨幣がその効果を持っていますよね。

ちなみにゲゼルの母子年金は均等な給付ではありません。
標準地を設定し、それとの差等を反映するかたちになります。
限界地に居住する者は100%の母子年金を受け、労働
せずとも子育てできるのですが、都会の優良地を選ぶほどに
減額部分が発生します。それを埋め合わせる労働機会
があるためでもあります。

まあこれらは基礎所得なみに思考実験の段階のものでは
あります。
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森野先生、こんばんわ。千隈です。

また宿題のテーマをいただきました。「レオン・ワル
ラス」、知りませんでした。Wikipediaの記述によれば
『ヨーゼフ・シュンペーターによって「すべての経済
学者の中で最も偉大」と評された』人なんだそうです。
へえー! 勉強してまた出直しますね。(笑)

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From: Eiichi Morino 
まあ昔の人ですけどね。主流の経済学者たちが評価するような、その純粋理論ば
かりでなく、もし我々の将来社会の経済をより連帯的なものにしたかったら、む
しろ彼の社会経済学や応用経済学のほうが興味深いと思います。

「自然は万人に土地を与え、各人に個人的な諸能力を与えた。道徳上の諸定義か
ら合理的に導き出された道徳的諸原理の名において、我々は地代を共同で費消し
なければならず、賃金は各人で消費すべきと私は主張する・・・また個人の諸能
力、そしてその労働、また賃金をば完全に個人のものとしつつ、地代をば国家が
所有するものとせよ・・・
レオン・ワルラス、『応用経済学研究』、1898年。

なんとも過激ですね。

ここで地代と訳したのはrentesと複数形になっています。つまり所有や独占とい
う事実のみによって人が請求するものを広く意味しています。私が好みの(笑)
偉大な経済学者、モーリス・アレの表現では「ただ所有に由来する所得」です。
これは個人の領有するところとせず、共同で使うべきだという考えです。ゲゼル
も同様の見解です。

ワルラスの著作はどれくらい邦訳があっかなあ、あまりないかもしれない。まあ
仏和辞典を買ってくればいいだけだけど。よいものをじっくり味わうのは楽しい
ですよ。
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森野先生、こんにちは。千隈です。

いろいろお教えいただき、ありがとうございます。
基本的な経済学の素養に欠ける上に、翻訳の壁が
あるので、ゲゼルの主著を読みこなすのにも苦労
をしています。母親年金についても、自分なりに
理解したつもりだったのですが、森野先生の説明
で新たに気付かされたことがありました。

gesell-mlに参加させていただいてから、自分なり
に世界が広がったように感じています。どうして
もインターネットでつまみ食いをするような仕方で
知識を吸収している部分がありますが、それでも
少しずつ生きた知識に変わっている部分もあるの
ではないかと思っています。

モーリス・アレについては、まずはゲゼル研究会
の森野先生のコラムから入門したいと思います。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
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From: Eiichi Morino 
いまから15年くらいも前になりますが、ネオリベラル
な思考の背骨をなすラジカル・キャピタリズム乃至
ラディカル・リベラリズムが流行はじめたころ、「情況」
という共産主義者の雑誌でそれを特集するというので
アレを紹介したことがあります。コミュニズムの方々
がどう批判的な議論を展開するか楽しみだったのですが、
お一人も書かれず、すべてラディカル・キャピタリズム
万歳の議論ばかりでしたが、その両者ではない視点から
「自由主義と自由な社会主義の課題」としてアレを取り上
げたことがあります。

以前GRSJのサイトで参照できたのですが、いまはどこかに
行ってしまっているようなので、閑な折にでもネットで
アクセスできるようにしておきます。

ほんとうはアレがゲゼルを全面的に議論している『経済
と利子』という著作を入手して紹介すべきなのでしょうが、
忙しさに流され今に至っているという状況。



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