3673.欧米での財政・金融政策の違い



欧州は財政赤字の縮小化を目指し、米国は財政より景気刺激策が重
要という立場であり、日本は財政と景気刺激を両立するという意見
である。この3者がG8、G20で協議している。
しかし、その行方は不透明感を増している。その検討をしたいと思
う。お付き合いをお願いする。   津田より

0.欧州の財政健全化
EUは、ギリシャなど南欧やハンガリーなど東欧の財政破綻問題を
抱えて、ドイツ・フランスなどを含めて財政赤字削減をしてユーロ
の価値を維持する必要がある。

ちなみに、米格付け会社、スタンダード・アンド・プアーズ(S&
P)は、スペインの金融機関が信用損失の拡大と「著しい緊張」下
にある収入源のため、2010、11両年は「困難に直面する」との見方
を示している。 

ユーロ価値維持のために、ECBは該当国国債を買い続けているが
、ドイツ連邦銀行のウェーバー総裁は国債買取反対であるし、賛成
したルクセンブルク中央銀行のメルシュ総裁でも「ECBのすべて
の非伝統的手段はリスクを伴い、構造的な難しさにつながる恐れが
ある」と述べ、「緊急時の利用に限定されるのはそのためだ」とい
うように、早期に国債買取を止める必要性を主張している。

このため、ECBのトリシェ総裁は21日、欧州各国に財政規律を
順守させるより厳格な措置が必要と主張し、EU各国政府は、財政
規定に違反した国による国債起債に課徴金を設定することで検討を
開始した。欧州委員会がまとめた提案書の草案によると、債務削減
の確約を守らない国は「国債発行の際に所定の上乗せ利回り(ベー
シスポイント)という形式で課徴金が課される」ようだ。 

欧州委員会のバローゾ委員長は、欧州諸国の財政について、赤字が
拡大するなか支出の余地は残されていないとの見方を示し、成長に
向けた信頼回復のために財政健全化が必要だと強調した。

このため、財政規律を守る必要が出てきて、ドイツやフランスでさ
え財政赤字退治を開始した。ドイツ政府は6月7日、2014年ま
でに総額約800億ユーロ(約8兆8000億円)の歳出を削減す
る財政削減策を発表した。フランス政府は、年金の支給開始年齢を
現在の60歳から62歳に、満額受給年齢を65歳から67歳に引
き上げる改革案を発表し、09年GDPの7.5%に達している財
政赤字を縮小する。

イタリア政府の5月に発表した法案は、公務員給与3年凍結や年金
支給開始の先送り、地方助成金削減が柱。250億ユーロ(約2・
7兆円)の歳出を削減し、ギリシャを上回るEU内最大の115・8
%に上る政府債務残高(対国内総生産比、昨年)などの改善を目指
す。

しかし、イタリア・フランスでは大規模なストが行われて、ドイツ
を含めて政権の支持率が大きく下落する事態になっている。

英政府は6月22日、消費税(現在17.5%)を来年1月に20
%まで引き上げる増税策と、1人最大週20ポンド(2700円)
払われている「子ども手当」の3年間の据え置きなどの歳出削減策
や銀行課税を組みあわせた2010年度の緊急予算案を発表した。
09年の国内総生産(GDP)比の財政赤字は11%台に達してお
り、大幅な改善を目指す。

また、EU主要3ケ国であるドイツ、フランス、英国は6月22日
、金融危機のコストを補うため、銀行課税を導入する計画を明らか
にし、G20に銀行課税を関係各国間に呼びかけるとした。

このようなEUの動きに、米著名投資家ジョージ・ソロス氏は、ユ
ーロには構造的な問題があり、ドイツの緊縮財政政策はユーロ圏に
属する他の国の競争力回復を困難にしているとし、EUのマースト
リヒト条約が定めた通貨統合には政治的統合が伴っていないため、
ユーロは創設当初から不完全な通貨であったとし、「明らかに構造
上問題がある」との見方を示した。

これに対して、ドイツのメルケル首相は、同国が世界経済の回復に
向けて内需を増やし輸出依存度を低減すべきだとするソロス氏など
米国の呼びかけを断固として拒否する姿勢を示した。同時に、欧州
の金融危機は終息からほど遠いと警告している。 

 同首相は、ユーロ加盟国は単に通貨制度の欠陥修正のための時間
を稼いだにすぎないとの考えを示した。また、G20首脳会議参加
国に対し、金融規制の強化が進行しているというシグナルを発する
よう求めた。

1.米国の意見
G20では、欧州の財政健全化のための財政引き締め計画への移行
を慎重に行うよう説得する。なぜかというと、「フーバー・モーメ
ント」の再現を懸念しているからである。 

1930年代のフーバー政権時にように、ぜい弱な世界経済のときに、
財政縮小で再びリセッションに落ち込んだ過去の苦い経験から、欧
州の財政健全化を懸念するオバマ大統領は、各国首脳に対し、成長
を持続する手段として、一定レベルの財政支出を維持するよう促す
という。

これと平行して、米連邦準備制度理事会(FRB)は22−23日に開
いた連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、政策金利であるフェ
デラルファンド(FF)金利の誘導目標を「長期にわたり」ゼロ近
辺にとどめる方針を示し、その中で、欧州の債務危機が米国の経済
成長に打撃を与える可能性について言及した。また、23日の声明
で、昨年夏以降、前進させ続けてきた景気判断を、やや後退させた。

しかし、米国の中でも、アン・メトラー米「リスボン・カウンシル
」専務理事は、欧州は少なくとも収入に応じて生活していこうとい
うことを初めて真剣に試みている段階と言えるとして、欧州を擁護
している。また、欧州は、世界経済に占める割合が低下しているほ
か、高齢化と財政危機により、以前のような歳出規模には戻れない
だろうという。この意見は日本も同様な気がする。

また、スタンフォード大学のジョン・テーラー教授は、歳出削減が
新たなリセッション(景気後退)を招く可能性は低いとし、「現時
点で追加刺激策は必要ない」と断言。

欧州と同じ動きなのが、金融規制である。米上下両院協議会は25日
に金融規制改革法案の一本化した。今回合意した法案は、金融機関
のトレーディングならびにデリバティブ(金融派生商品)取引の利
益縮小につながる。 

2.中国の動き
 G20で人民元を話題しないように、中国が19日に通貨に弾力性
を持たせる政策を発表した。しかし、中国の貿易黒字縮小を理由に
人民元が大幅上昇することはないとしている。そして、理由の1つ
としては輸入品のコスト低減により、インフレを抑制することが目
的だった可能性も指摘されている。G20を見た外交戦略を中国は
している。

3.G8、G20の議論
G8では、財政再建の重要性について確認しつつ、成長に配慮して
各国の経済財政状況に応じて進める方向となった。財政状況や経常
収支の状況に応じて国別に成長と財政再建のバランスをとる方向で
合意に近づいたようだ。

G8首脳宣言では、「韓国の哨戒艦沈没を引き起こした3月26日
の攻撃を遺憾に思う」とし、「合同調査団は、北朝鮮に沈没の責任
があるとの結論出した。われわれはこの文脈で、沈没につながった
攻撃を非難する」とした。北朝鮮に対して非難決議ができた。

G20声明草案では 「先進国は(成長と財政健全化の間の)こうし
たバランスを反映して、2013年までに財政赤字を少なくとも半
減し、2016年までに政府債務の対GDP比率を安定もしくは低
下させる財政計画にコミットしている」 と、今後3年間での赤字半
減など具体的な目標を盛り込んでいる。

銀行課税については、メルケル独首相が「残念ながら銀行課税につ
いても金融取引税についても共通の立場は持っていない」と述べ、
今回のG20では合意に至らないようだ。

4.さいごに
 日本の菅首相がG8、G20に初参加である。無難にこなしたよ
うである。あまり目立たないがしょうがないですね。

中国など新興国の役割が急速に大きくなっている。日欧米の財政規
模が縮小して、それに伴い経済規模も現状か縮小に向かう中、新興
国の経済規模が拡大して、世界経済のエンジンとなり始めている。

このエンジンが推進しているので、先進諸国は豊かを維持している。
また、BP海底油田の事故で、今後深海での海底油田開発は困難にな
り、石油のオイルピーク論が息を吹き返すことになる。

このように今までの世界経済とは違う異次元に向かうことになる。
日本の企業・社会はどう対応するのか、非常に難しい局面にある。

さあ、どうなりますか??
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G8首脳会議、韓国の哨戒艦沈没で北朝鮮を非難
2010年 06月 27日 06:17 JST

 [ハンツビル(加オンタリオ州) 26日 ロイター] 主要8
カ国(G8)首脳会議は26日、韓国の哨戒艦沈没事件をめぐり北
朝鮮を非難する首脳宣言を発表した。イランの核開発にも懸念を示
した。
 首脳宣言は「韓国の哨戒艦沈没を引き起こした3月26日の攻撃
を遺憾に思う」とし、「合同調査団は、北朝鮮に沈没の責任がある
との結論出した。われわれはこの文脈で、沈没につながった攻撃を
非難する」と指摘した。

 北朝鮮が行った核実験やミサイル活動にも「最も重大な懸念」を
表明。「北朝鮮は核拡散防止条約上の核兵器国の地位を有しておら
ず、また有することはできない」と明記した。

 イランについては「核開発に関する透明性の継続的な欠如、ウラ
ン濃縮を継続し拡大するというイランが表明した意図を深く懸念し
ている」とした。
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G8は財政再建で歩み寄り、各国状況に応じた計画許容
2010年 06月 27日 11:02 JST

 [ムスコカ/トロント 26日 ロイター] カナダのムスコカ
で開催された主要8カ国(G8)首脳会議では、日米欧の間での財
政再建と成長のバランスについての対立を回避しおおむね合意に達
した。
 財政再建の重要性について確認しつつ、成長に配慮して各国の経
済財政状況に応じて進める方向となった。このため米国は、日本な
ど経常黒字国には内需の拡大を求める姿勢を示した。一方で菅直人
首相は成長と財政再建の両立がG8にとって重要だと表明した。
この後行われる20カ国・地域(G20)首脳会議の声明でこうし
た内容を盛り込む方向で議論される見通し。

 <財政再建と成長のバランスで対立回避、各国の状況に応じたペ
ースで>
 今回の首脳会議では、金融危機対応で各国が巨額の財政資金を投
じた結果、財政状態が悪化したことに加え、ギリシャ危機が欧州景
気に水を差していることも踏まえ、財政再建問題への取り組みが大
きなテーマとなった。財政悪化に悩む欧州は財政再建を急ぎたい考
えの一方で、米国は世界全体が財政緊縮に走れば景気に水を差しか
ねないため、マクロ景気への配慮を重視しており、立場の違いを抱
えての会合となった。それでも討議の結果、欧米はこの問題で対立
はなかったと強調、財政状況や経常収支の状況に応じて国別に成長
と財政再建のバランスをとる方向で合意に近づいた模様。 

 <G20声明で、3年以内の赤字半減盛り込みへ> 
 G8声明では経済問題についての言及は保護主義貿易の圧力への
対抗や、WTOの下での貿易・投資の促進を謳うだけにとどまった。
G8で歩み寄りが図られた財政再建と成長のバランスについては、
この後開催されるG20声明に具体的内容が盛り込まれる見通し。
議長国カナダのハーバー首相は「G20首脳会議では財政健全化に
ついて、活発な議論を予想しているが、先進国の財政健全化の中期
目標の必要性については、強力なコンセンサスがあると感じている
」と述べた。 

 ロイターが入手したG20声明草案では 「先進国は(成長と財政
健全化の間の)こうしたバランスを反映して、2013年までに財
政赤字を少なくとも半減し、2016年までに政府債務の対GDP
比率を安定もしくは低下させる財政計画にコミットしている」 と、
今後3年間での赤字半減など具体的な目標を盛り込んでいる。ただ
し「財政の持続可能性を実現するため、(中略)成長に配慮した計
画をまとめる必要がある」として、成長への配慮も謳っている。

 ただ銀行課税については、メルケル独首相が「残念ながら銀行課
税についても金融取引税についても共通の立場は持っていない」と
述べ、今回のG20では合意に至らない可能性を示した。
   (ロイター日本語ニュース 中川泉記者)
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中国人民元急上昇の根拠ない=中銀幹部
2010年 06月 26日 04:11 JST

 [上海 25日 ロイター] 中国人民銀行(中央銀行)金融市
場局の謝多局長は25日、中国の貿易黒字縮小を理由に人民元が大
幅上昇する根拠はないとの認識を示した。
 また、人民元の弾力性は今後一段と高まるとし、中国の最近の為
替政策は長期的に国内経済改革に寄与するとの見方を示した。

 局長は当地で行われた金融会合で、前週末の人民元弾力化方針発
表が世界の商品(コモディティー)相場を押し上げたとする一方、
商品市場への影響は限定的、と述べた。
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中国、人民元の上昇容認へ 対ドル相場固定を解除の意向
2010年6月19日22時4分

 【北京=琴寄辰男】中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は19
日、「人民元為替レートの弾力性を強める」とする声明を発表した。
人民元相場のドルへの固定を解除し、再び人民元を上昇させていく
意思を示すものだ。カナダで26日に開かれるG20首脳会議を目
前に、為替制度の改革への積極性を示した。 

 週明けの21日以降、為替介入によって2008年夏から続けて
きた1ドル=6.83元前後での相場固定を解除。対ドル相場の緩
やかな上昇を再び容認していくものとみられる。為替制度そのもの
は変更しないので、人民元の対ドル相場の上昇ペースは今後も人民
銀が握る。最大でも毎朝、人民銀が公表する基準値の0.5%に制
限される。 
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米金融規制改革法案の合意、大手銀行は敗者に-FRBは勝者
2010年 6月 26日 8:18 JST 
WSJ
 【ワシントン】米上下両院協議会は25日に金融規制改革法案の一
本化で合意した。この合意でゴールドマン・サックス・グループや
JPモルガン・チェースといった大手金融機関は敗者に回った格好
となった。今回合意した法案は、こうした金融機関のトレーディン
グならびにデリバティブ(金融派生商品)取引の利益縮小につなが
る。 

 「ボルカー・ルール」として知られる条項では、ゴールドマン・
サックスや米大手銀行にとっては、リスクの高い取引が抑制される
ことになる。新法案の下では、ゴールドマンのヘッジファンドなら
びにプライベートエクイティ(PE、未公開株)取引への投資額は
20億5000万ドル(約1829億円)に制限されることとなる。同社のこ
うした投資額は第1四半期末時点では276億ドルに達していた。 

 オバマ米大統領は今回の合意について、「世界大恐慌後に作成し
たもの以来で最も厳格な金融改革」と呼んだ。 
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欧州は財政緊縮策を固持する必要、米国の要請は無視を−テーラー
教授 

6月25日(ブルームバーグ):欧州諸国は週末開催される20カ国・
地域(G20)首脳会議で、継続的な景気刺激策の実施を呼び掛ける
米国の要請を無視し、財政緊縮策を固持すべきだと、スタンフォー
ド大学のジョン・テーラー教授は指摘した。歳出削減が新たなリセ
ッション(景気後退)を招く可能性は低いとしている。 

  テーラー教授は24日、オスロでの中銀当局者会議でインタビュ
ーに応じ、「現時点で追加刺激策は必要ない」と断言。「これは現
在、特にG20首脳会議が開催されるタイミングで、重要なメッセー
ジだ」と強調した。 

  また、「われわれはより迅速に財政再建に動く必要がある。債務
や財政赤字があまりにも膨大で、今後、景気に水を差すためだ」と
述べた。その上で、「追加刺激策を実施せずに財政再建に動こうと
することは有益だろう。景気回復にとって良いことだと考えている
」と説明した。 
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世界経済、減速の懸念ふたたび 米FRBの景気判断後退
2010年6月24日21時17分

 【ワシントン=尾形聡彦】世界経済の減速懸念が再び台頭し始め
ている。米連邦準備制度理事会(FRB)は23日の声明で、昨年
夏以降、前進させ続けてきた景気判断を、やや後退させた。欧州で
はいくつかの大手銀行が資本不足ではないかとの情報が飛び交って
いる。この結果、投資資金は「安全資産」とされる日本の国債に向
かい、日本の長期金利が低下する事態になっている。 
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【オピニオン】米国の間違った欧州への忠告 
アン・メトラー シンクタンク「リスボン・カウンシル」専務理事 
2010年 6月 24日 17:21 JST 

 今週末の20カ国・地域(G20)首脳会議の開催を控え、米国は欧
州に対し、緊縮財政計画の停止を求め、一段と圧力を強めている。
経済危機を乗り越えるため赤字になっても財政支出が必要と説くの
は、米国のノーベル経済学賞受賞者ポール・クルーグマン氏、オバ
マ大統領、ガイトナー財務長官それにサマーズ国家経済会議(NE
C)委員長らだ。かれらの忠告は、経済的に不合理であるほか政治
的にも不適切である。さらに欧州の現実をあまりに理解していない
ことを露呈している。 

 欧州は不幸にも経済好調期に改革をしなかったという歴然とした
前歴がある。例えばフランスは過去ほぼ40年間、財政が均衡したこ
とがない。そのうちの多くの年は経済が成長していた時期が含まれ
ており、大きな社会的混乱を引き起こさずに容易に公共支出を抑制
することができたはずだ。悲しいかな、そうしなかった。  

 フランスだけではない。欧州連合(EU)を見渡しても、各国は過去
最高ペースで債務を積み上げており、国家は特に年金など、この先
どうやって給付するのか、往々にして最低限の戦略も持ち合わせず
に負担を背負い込んでいる。 

 政治家は、「社会的正義」という大義のための行動を主張し(そ
して意図的に高齢化と人口減少という人口動態的な見通しには意図
的に触れずに)、臆病にも責任を将来の政府と世代に転嫁した。
しかし、その将来が今なのだ。遂に審判の時が来た。もう浪費はで
きない。 

 興味深いことに(格付け会社のサブプライム危機への対応が遅か
ったことに最近、批判がでているものの)、スタンダード・アンド
・プアーズ(S&P)は2006年に、2050年までにフランスとイタリアの
債務の対GDP比が200%を超え、ポルトガルとギリシャの約2倍になる
と予想した。   

 現在の赤字削減努力を「緊縮」と呼ぶのは、重大な誤りだ。現状
は、少なくとも収入に応じて生活していこうということを初めて真
剣に試みている段階と言える。欧州は、世界経済に占める割合が低
下しているほか、高齢化と財政危機により、以前のような歳出規模
には戻れないだろう。たとえ現在、ある程度歳出を削減できたとし
ても、ベビーブーム世代が引退準備に入るため、年金給付は今後増
加が続き、高齢者の増加により医療費も着実に増加する。換言すれ
ば、財政状況は予想できる将来、引き続き不安定な状態が続くこと
になる。だからこそ現在の歳出削減努力が必要になる。従って、欧
州がやっと始めた財政健全化に似たような動きを止めろという要求
は有害なだけだ。 

(寄稿者のアン・メトラー氏は、ブリュッセルのシンクタンク「リ
スボン・カウンシル」の専務理事) 
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FOMC:「長期にわたり」低金利継続、欧州危機も警戒
6月23日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)は
22−23日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、政策金
利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を「長期にわ
たり」ゼロ近辺にとどめる方針をあらためて示した。また、欧州の
債務危機が米国の経済成長に打撃を与える可能性について言及した。 

  声明は「金融の状況は総じて経済成長を支える方向性を弱めて
おり、これは主に国外の展開を反映している」と指摘した。インフ
レは鈍化していると言及。景気回復については「進行中」とし、4
月の「引き続き強くなっている」から変更した。先行きの回復ペー
スについては当面、「緩やかなものになる」との見通しを維持した。 
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歳出めぐるG20の戦い─「フーバー・モーメント」再現を懸念す
る米国
2010年 6月 22日 18:45 JST 
WSJ
 米国は20カ国・地域(G20)首脳会議で、財政引き締め計画へ
の移行を慎重に行うよう参加国を説得する計画だ。米高官らは「フ
ーバー・モーメント」の再現を懸念している。 

 1930年代のフーバー政権時にように、ぜい弱な世界経済が再びリ
セッションに落ち込む可能性を懸念するオバマ大統領は、各国首脳
に対し、成長を持続する手段として、一定レベルの財政支出を維持
するよう促す意向だ。しかし世界の政治家は現在、財政引き締めに
舵を切ろうとしている。 

 中国では、刺激策の継続で持続不可能なバブルが発生する可能性
を当局者が懸念している。エコノミストは、中国が19日に通貨に弾
力性を持たせる政策を発表したことについて、輸入品のコスト低減
により、インフレを抑制することが目的だった可能性がある、と指
摘する。 

 中国は人民元とドルのペッグを外すと発表することで、G20の
議題になった可能性の高い問題を葬り去った。これによって、財政
政策をめぐる緊張、日独両国の弱い内需と巨額の貿易黒字がより重
要な議題として浮上する可能性がある。 

 国際通貨基金(IMF)の元チ−フエコノミストでハーバード大
学のエコノミスト、ケネス・ロゴフ氏は「(G20での)最も重要
な議題は、財政刺激策をどれだけ早く止められるかだ」と述べた。 
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イタリア最大労組がゼネスト、緊縮財政策に反対
 【ローマ=柳沢亨之】イタリア最大の労組「伊労働総同盟」(加
盟約550万人)は25日、伊政府の緊縮財政策に反対する初のゼ
ネストを行った。

 中道右派のベルルスコーニ政権が5月に発表した法案は、公務員
給与3年凍結や年金支給開始の先送り、地方助成金削減が柱。250
億ユーロ(約2・7兆円)の歳出を削減し、ギリシャを上回る欧州
連合(EU)内最大の115・8%に上る政府債務残高(対国内総
生産比、昨年)などの改善を目指す。7月中の議会承認が必要だ。
(2010年6月25日23時40分 読売新聞) 
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欧州に赤字支出の余地残されていない=バローゾ委員長
2010年 06月 25日 09:22 JST

 [トロント 24日 ロイター] 欧州委員会のバローゾ委員長
は24日、欧州諸国の財政について、赤字が拡大するなか支出の余
地は残されていないとの見方を示し、成長に向けた信頼回復のため
に財政健全化が必要だと強調した。
 欧州連合(EU)内の財政引き締めは国ごとに異なり、既に多額
の赤字を抱える国はより早急な引き締めに取り組むとした。

 委員長は今週末の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット
)を前に会見を開き、「一夜にして状況が変わるわけではないが、
赤字財政支出の余地はない」と指摘。欧州の財政政策について、年
内は引き続き緩和的となり、引き締めは2011年に徐々に開始す
ると述べた。
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仏 年金改革に反対で全国スト
6月25日 4時26分 NHK
ヨーロッパ各国が相次いで財政再建に乗り出すなか、フランスは、
年金の支給額を削減する改革を打ち出していますが、24日には、
これに反発する労働組合が全国でストライキに踏み切り、各地で大
規模な抗議行動が行われました。

フランス政府は先週、財政再建策の一環として、▽年金の支給開始
年齢を現在の60歳から62歳に、▽満額受給年齢を65歳から67
歳に引き上げる改革案を発表しました。これに反発する主要な労働
組合は24日、全国の公共施設や民間企業でストライキに踏み切り
、公共交通機関も大幅にマヒしました。また、各地で大規模な抗議
行動も行われ、このうちパリで行われたデモ行進には組合側の発表
で13万人が参加しました。去年の財政赤字がGDP=国内総生産
の7.5%に達しているフランスも、早急な財政の立て直しを迫ら
れています。しかし、年金改革などに対する国民の反発は強く、サ
ルコジ大統領の支持率も落ち込んでおり、政府の計画どおりに財政
再建が進むのか、予断を許さない状況です。
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ユーロには構造的な問題がある=米投資家ソロス氏
2010年 06月 24日 07:48 JST

 [ベルリン 23日 ロイター] 米著名投資家ジョージ・ソロ
ス氏は23日、ユーロには構造的な問題があり、ドイツの緊縮財政
政策はユーロ圏に属する他の国の競争力回復を困難にしているとの
認識を示した。
 ソロス氏は大学での講演原稿で、欧州連合(EU)のマーストリ
ヒト条約が定めた通貨統合には政治的統合が伴っていないため、ユ
ーロは創設当初から不完全な通貨であったとし、「明らかに構造上
問題がある」との見方を示した。

 欧州にまず現在の問題から脱却し、その後ユーロの構造的改修と
強化に取り組むよう促すとともに、ドイツのリーダーシップなしに
実現することはできないと指摘した。
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独メルケル首相、内需拡大の要求を拒否
2010年 6月 24日 7:26 JST 
WSJ
 【ベルリン】ドイツのメルケル首相はウォール・ストリート・ジ
ャーナルのインタビューに対し、同国が世界経済の回復に向けて内
需を増やし輸出依存度を低減すべきだとするオバマ米大統領の呼び
かけを断固として拒否する姿勢を示した。同時に、欧州の金融危機
は終息からほど遠いと警告している。 

 同首相は、ユーロ加盟国は単に通貨制度の欠陥修正のための時間
を稼いだにすぎないとの考えを示した。26、27両日にカナダ・トロ
ントで開かれる20カ国・地域 (G20)首脳会議(金融サミット)
参加国に対し、金融規制の強化が進行しているというシグナルを発
するよう求めた。大手銀行が抵抗するなか、強化に向けた機運が薄
れつつあるという印象を払しょくするためという。 

 ドイツの財政規律重視は欧州連合(EU)首脳の支持を受けた。
EUのファンロンパイ大統領(首脳会議の常任議長)と欧州委員会
のバローゾ委員長は、23日に公表されたG20諸国あての書簡で、
「世界経済の回復は予想以上に順調」であり、刺激策を終了する時
だとの考え を示した。主要経済は「遅くとも2011年には」財政再建
を開始すべきだとしている。 

 同首相は、欧州の債務危機はスペインやポルトガルなどに広がる
ことが懸念されていると指摘。「救済策を決めたことで、ユーロ圏
の構造的な脆弱性を解決し、規則の枠組みを構築するための時間を
稼ぐことができた」と強調した。 

 またドイツの反対によって救済策の取りまとめに時間がかかった
というフランスなどEU諸国の批判に対し、「この危機の背景にあ
る原因について考えず、ギリシャを明確な条件なしに支援するとい
う安易な道を取らなかったことは正しい。われわれは今、ギリシャ
などが危機に陥った原因の解消に取り組んでいる。その最大の原因
は競争力の欠如だ」と反論した。 
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英・仏・独、G20会合を前に銀行課税導入案を発表
2010年 06月 23日 08:09 JST

 [パリ/ベルリン 22日 ロイター] ドイツ、フランス、英
国は22日、金融危機のコストを補うため、銀行課税を導入する計
画を明らかにした。これらの欧州主要国が今週の20カ国・地域(
G20)首脳会合を待たずに銀行課税案を発表したことで、関係各
国間の亀裂が浮き彫りとなった。
 3カ国の共同声明は、ドイツ、フランス、英国は「野心的なG20
金融セクター改革案の完全な実施にコミットする」とした。ただそ
の上で、課税導入のタイミングは、世界的な合意への欧州の期待が
低いことを示唆していると指摘した。

 ドイツは、夏に銀行課税法案を閣議にかける方針を明らかにした。
フランスは、2011年の予算案で銀行課税の詳細を示す方針。
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英「消費税」20%に引き上げへ 緊急予算案を発表
2010年6月23日0時52分

 【ロンドン=有田哲文】5月の総選挙で政権交代した英保守党・
自由民主党連立政権のオズボーン財務相は22日、2010年度の
緊急予算案を発表した。日本の消費税にあたる付加価値税
(現在17.5%)を来年1月に20%まで引き上げる増税策と、
1人最大週20ポンド(2700円)払われている「子ども手当」
の3年間の据え置きなどの歳出削減策を組みあわせた。 

 財政再建策は歳出削減で7割以上まかない、残りを増税で行う。
歳出削減策はこのほか、公務員給与の2年間昇給凍結や住宅補助の
上限設定など。増税では、株式売却益課税(現在18%)を28%
に即日で引き上げるほか、銀行への特別課税も来年1月から始める
。一方で法人税(現在28%)は4年かけて24%まで引き下げる
。課税最低限については自由民主党の主張を一部取り入れ、千ポン
ド引き上げて年収7475ポンド(約100万円)とする。09年
の国内総生産(GDP)比の財政赤字は11%台に達しており、大
幅な改善を目指す。 

 英国では、いまある税の税率変更であれば、国会の議決がなくて
もできる。1909年に予算審議がもめて成立までに1年もかかっ
たことの反省から、財務相に強い権限を持たせている。
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EU:財政違反国に国債上乗せ利回りのペナルティー検討−提案書
草案 

6月22日(ブルームバーグ):欧州連合(EU)各国政府はギリシ
ャに端を発した債務危機の教訓として、財政規定に違反した国によ
る国債起債に課徴金を設定することを検討している。欧州委員会が
まとめた提案書の草案をブルームバーグ・ニュースが入手した。 

同草案によると、債務削減の確約を守らない国は「国債発行の際に
所定の上乗せ利回り(ベーシスポイント)という形式で課徴金が課
さる可能性がある」。 

上乗せ利回り分は封鎖勘定に支払われ、国債が予定通りに償還され
なかった場合には没収される。同案は23日のEU経済担当者会合で
協議され、7月12日のEU財務相理事会でも討議される。 
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ECB総裁、財政規律順守に向けた厳格な措置の必要性訴え
2010年 06月 22日 09:50 JST

 [ブリュッセル/ロンドン 21日 ロイター] 欧州中央銀行
(ECB)のトリシェ総裁は21日、欧州議会に出席し、欧州各国
に財政規律を順守させるより厳格な措置が必要と主張し、そのため
の新たなシステムを提案した。

 提案は、各国が財政規律を順守するための奨励措置とともに、規
律を守れなかった場合に投票権を失う可能性や、独立機関による財
政監視など、制裁的な面の両方が盛り込まれている。
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スペイン金融機関、10−11年は「困難」に直面−S&P

6月21日(ブルームバーグ):米格付け会社、スタンダード・アン
ド・プアーズ(S&P)は、スペインの金融機関が信用損失の拡大
と「著しい緊張」下にある収入源のため、2010、11両年は「困難に
直面する」との見方を示した。 
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ECBメルシュ氏:国債買い入れは構造的な困難招く恐れ−ウォル
ト紙 

Buzzurl 6月21日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)の
政策委員会メンバー、ルクセンブルク中央銀行のメルシュ総裁は同
国紙ウォルトとのインタビューで、ECBの国債買い入れ決定は
「構造的な難しさ」を招く恐れがあると警告した。 

  メルシュ総裁は「もちろん、ECBのすべての非伝統的手段は
リスクを伴い、構造的な難しさにつながる恐れがある」と述べ、
「緊急時の利用に限定されるのはそのためだ」と説明した。インタ
ビューは22日付のウォルト紙に掲載される。 

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