3667.「第3の道」とは



江戸時代中期と同様に政治の前面にマクロ経済学者が出てきている。
小泉政権の竹中平蔵であり、そして小野善康・大阪大社会経済研究
所長である。これで菅政権の経済政策が、ある程度読めるようであ
る。その経済政策がどのようなものであり、その実行に何が必要か
を検討しましょう。           津田より

0.はじめに
 江戸時代が経済的に行き詰ったときから側用人政治が始まる。こ
の側用人として経済的なセンスがある荻原とか大岡とか田沼が活躍
する。それと同じ状態が小泉政権から始まった。マクロ経済学者を
側用人として使う。竹中平蔵であるが、荻原と同様に批判された。
そして、菅政権では小野氏である。

荻原重秀は、金貨の質を落として通貨供給量を増やす政策をする。
商品作物が出てくるが、通貨供給量がそれに見合っていなかったこ
とでデフレになるがそれを抑えることができた。しかし、新井白石
に讒言されて失脚した。しかし、新井白石の政策ではデフレになり
経済政策は失敗する。

竹中平蔵も、規制緩和とベンチャーを育成するという新自由主義的
な方法で経済立て直しを行ったが、それも貧富の差が拡大したと批
判され、安倍以後の自民党政権で元の政策に戻したが、経済的な失
政になってしまった。

経済学者の政治が始まり、しかし、それに慣れない人たちから最初
は批判が出る状態なのである。

しかし、現実的な政治を心がけると、江戸時代と同様な様相になる。
それは人間の気持ちは、あまり違わないからである。問題があると
、それに対応した政治をする必要が出て、そのとき改革が起きるが
、鳩山政権のように革新的過ぎると現実に引き戻されることになる。 

もう1つが、ツートップ体制はうまくいかないということで、権力
が菅首相に集約された。これも小泉政権に似てきた。政治主導であ
るが、官僚を使うという考え方も小泉政権と同様である。党との関
係は政調会を復活して、議員の不満を抑えた。やっと、民主党政権
として安定した政権ができたと見る。 

しかし、それは大改革を望む人たちからは批判を受ける。財務省の
言いなりとか自民党と同じや新自由主義に戻るとかという。しかし
、現実政治をすると、それほどには違わないのである。その中でも
事業仕分けという良い政策がある。

この事業仕分けを財務省の予算査定と一緒に使うと効果がある。事
業仕分けは、事業そのものを査定することであり、予算査定は事業
の執行予算を査定するから相互に補完している。 

このようなことが政治と官僚との役割分担である。官僚と政治家は
それぞれに役割が違う。自民党政治は政治家の役割があまりにも小
さすぎた。これを鳩山政権では政治家主導として官僚の役割を否定
し過ぎた。この中間が重要なのである。この確立をやっと菅政権で
できそうである。

しかし、このような政権になると、反自民政権というより経済的な
諸課題を経済原則に照らして行う必要が出てくる。この経済原則を
新自由主義経済(新古典派)の竹中流ではなく、公共事業重視のケ
イジアンの小野流で行うようである。この経済論理の区別が付かな
い人たちからは、小泉政権と同様という批判が出るようである。

しかし、小泉政権以前の自民党も歴代ケインズ経済学で運営してい
た。この意味でも菅政権は自民党政治と同じケインズ経済学で運営
するが、その視点が道路などのコンクリート公共事業ではなく、医
療・介護や観光・環境などというサービス業にシフトして雇用を生
み出す方向である。同じケインズ経済であるが、ここが違う点であ
る。もう1つ自民党と違うのは、官僚と政治の2軸運営体制を確立
することである。

しかし、菅首相のイデオロギーは社民党などとは違い自民党的であ
り、革新的というより自民党政治を改良するという政治であり、自
民党とあまり違わない。

菅首相は、財政再建と経済成長、社会保障の充実に三位一体で取り
組む「第三の道」を歩むと決意した。「第三の道」とは、公共事業
を成長の原動力とした高度成長期の「第一の道」、規制緩和を中心
に企業の活力を引き出す「第二の道」と一線を画す新たな経済政策
だとした。第三の道は、政府が無駄排除や増税などで確保した資金
を、雇用創出が期待できる成長分野に投入することであるという。

消費税増税を悲願とする財務省も、増税と景気との関係について調
査するなど、第三の道理論を積極的に支える姿勢だ。ある幹部は「
国民に増税を納得してもらうためには、負担増だけでなく明るい展
望を示す必要がある」と。

菅政権と財務省はタッグルを組んでいる。しかし、「増税で社会保
障を厚くすれば成長する」という実証的なデータが乏しい上、政治
的な思惑で、非効率な分野に予算が回れば「大きな政府、大きな借
金」(谷垣氏)に直結することになる。

しかし、菅直人首相率いる新政権で、7月11日の参院選情勢が劇
的に変化した。政治評論家、小林吉弥氏による最新の獲得議席予測
では「民主党59議席」「自民党35議席」になり、過半数になる
可能性もあるということである。今後2年以上は菅政権になること
が確定的である。

ということで、小野善康・大阪大社会経済研究所長の理論が、経済
政策上、重要なファクターになる。それを検討しよう。

1.小野流経済学
 小野氏はいわゆる「ニューケインジアン」という、拡張財政派の
立場で、「新古典派」と呼ばれるケインズ理論を否定する立場の理
論を用いて、ケインズ経済学を新しくした。

ヒックスの「IS−LM分析」に代わる、「π−L分析」という新
たな金利−所得理論を作った。簡単に言うと、「金(カネ)がカネ
であるだけで喜んで稼ぎまくるヤカラがいる限り、不況が必ずやっ
てくる。その不況を克服するためには、新たな財やサービスを提供
して金持ちに金を使わせるか、金の価値を下げて金持ちの貯蓄を放
出させるか、どちらかが必要だ。」というものである。

金を持つ者が金を使うように誘導する必要があり、その誘導方法と
して税金を取り、政府は需要と雇用を作るか、金利をマイナス(ゲ
ゼル化)にして、使うほうが得になるように仕向けるかであるとい
う。

しかし、小野理論は経済理論としては正しくとも、社会学としてみ
た場合、人間の行動力学を無視した机上の空論化しやすい問題点が
あると感じる。たとえば、日本の銀行の金利をマイナス金利にする
と、欧米の銀行に預金を移し変えるということが起きることである。

また、税金で資金を政府が吸い上げるために、資金も使い道を問題
で、公共事業の雇用力が問題になる。池尾和人慶大教授のような議
論になる。時間的な資金活用効率などの議論が必要になる。また、
規制緩和による雇用創造など、雇用という目線から全ての効率を把
握する必要が出てくる。

このために、単なる「ばらまき」は否定される。所得制限をかけて
、渡られた資金が早期に使われることが重要で、時間的な効率を上
げることが重要になる。もう1つが、渡した資金が国内にとどまる
ことである。外国人に渡したらいけない。

資金を海外から日本に呼び寄せることも重要で、特に海外で日本企
業が稼いだ資金を日本で使ってもらう方策である。

というように、経済理論的な政策を並べると、竹中平蔵が行った政
策をあまり代わらない政策になる。雇用創造をどう行うかであり、
その手法が違うだけである。経済理論的には、大きな違うがあるが
??

2.グローバル化
 日本だけの経済という環境から世界が同質になり、その世界で企
業は行動することが重要になっている。江戸時代の国とは藩のこと
であり、日本全体は天下といっていた。この江戸時代後半も商品経
済が発展して、一藩(国)経済だけでは成り立たなくなる。日本全
体を相手にした経済を見て、藩経営をする必要になってきた。これ
と同じ状況に日本企業の経営はなっている。日本に固守しては成り
立たない。日本も国家経済ではなく、世界を見た国家経営をする必
要になってきたのである。

商品を国内で売るというより、海外で売る方向が重要になっている。
この時、韓国のようにターゲットを決めて、1つのターゲットに1
つの企業を決めて、開発資金を出して行う国家経営は有効である。
それが有効なのは新分野だけであり、新興国はその分野が多く、先
進国は少ないだけである。ターゲットを決めたら、それに国家と企
業が協力して取り組むことが必要である。

米国では、ARPAという防衛研究機関がターゲットを決めて、企
業育成をしている。それがCISCOを世界的な企業にしたのであ
る。国家がターゲットを決めて開発費や投資を行うことは先進国で
も日常的に行っていることである。

韓国では李明博大統領自身が、韓国企業を支援して相手国の首脳に
電話をする。これは強力である。このため、日本企業は負けている。
このように国が強力に支援しないと負けるので、国家経営としても
するしかない。トヨタ自動車が米国で問題になったとき、日本政府
は何もしなかったが、BP石油流出事件で英国のキャメロン首相は
米オバマ大統領と会談をしている。このように大国でも企業支援は
普通のことである。

世界的な企業支援を日本政府もするべきであるのだ。日本国内の需
要が不足しているので、その重要を世界に求めるのは日本国民に職
業を与えるために重要な経済政策である。

観光産業も重要である。日本文化が売り物になる。日本庭園などは
世界に驚嘆されている。生花や日本料理もである。この観光資源を
使う必要がある。サービス業も同様である。

3.さいごに
 日本は世界の工場であった時代は、日本は黙っていても仕事が世
界から降ってきたが、世界の工場は中国へ行き、またベトナムにシ
フトしている。日本は黙っていたら、仕事がなくなることになる。
このため、政府の経済政策が重要になってきたのである。それを間
違えてはいけない。

さあ、どうなりますか??
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菅首相:所信表明で決意 増税、荷は軽い?「第三の道」
毎日
 <分析>

 菅直人首相は11日の所信表明演説で、財政再建と経済成長、社
会保障の充実に三位一体で取り組む「第三の道」を歩むとの決意を
示した。先進国中最悪の財政赤字や少子高齢化など、日本が抱える
諸問題の解決を通じて、新たな需要や雇用を創出し、経済成長につ
なげる考えだ。だが、増税への理解が得られるのかなど課題は多く
、「強い経済、財政、社会保障」実現への道のりは険しそうだ。

 ◇成長分野に投資で「還元」
 「バブル崩壊から約20年の閉塞(へいそく)状況を打ち破り、
立て直すための設計図が『第三の道』だ」−−。菅首相が示した「
第三の道」とは、公共事業を成長の原動力とした高度成長期の「第
一の道」、規制緩和を中心に企業の活力を引き出す「第二の道」と
一線を画す新たな経済政策だ。

 所信表明で菅首相は、第一の道による公共事業について、道路や
空港など基礎的なインフラ整備が終わった90年代以降、経済効果
を失い、財政赤字拡大の元凶になったと指摘。小泉政権下の構造改
革に代表される第二の道も企業業績を改善させる一方、リストラに
よる雇用不安や所得の減少、格差拡大を生み、デフレを深刻化させ
たと断罪した。

 第三の道はまず、政府が無駄排除や増税などで確保した資金を、
雇用創出が期待できる成長分野に投入する。具体的には、菅首相が
成長分野に位置付ける▽地球温暖化対策などの「環境」▽医療、介
護などの「健康」▽アジアでの環境対策、インフラ整備支援▽観光
・地域活性化−−に重点投資。20年度までの年平均で名目3%の
経済成長を目指すとした。

 さらに経済成長に伴う税収増と税制の抜本改革で「強い財政」を
実現。「強い社会保障」を提供できるようになり、国民の不安が軽
減すれば、持続的な成長が可能になるという。

 第三の道の源流は英労働党のブレア元首相。ブレア氏は自由主義
と、社会保障を重視する社会民主主義を融合する概念として提唱し
た。ブレア氏は97年の総選挙で圧勝し18年ぶりに保守党から政
権を奪回。退陣するまでの10年間、英国はプラス成長を続け、失
業率も数%と、10%前後の独仏より低水準で推移した。菅氏は
98年に東京都内でブレア氏と対談、00年には英国を視察してお
り、その後、「英国を参考にしたい」との発言が目立つようになっ
た。

 消費税増税を悲願とする財務省も、増税と景気との関係について
調査するなど、第三の道理論を積極的に支える姿勢だ。ある幹部は
「国民に増税を納得してもらうためには、負担増だけでなく明るい
展望を示す必要がある」と期待する。【坂井隆之】

 ◇「トラウマ」ハードルに
 「第三の道」実現に向けた最も高いハードルが、消費税増税など
負担増への国民の理解をどう取り付けるのかだ。成長分野への投資
と社会保障の強化、財政再建を同時に実現するには、税収増による
恒久的な財源の確保が不可欠なためだ。

 菅首相は4月、「政治家には増税すれば選挙に負けるというトラ
ウマがある」ことを認めた上で「必要な増税をやれば経済は良くな
るとの認識を与野党が共有できれば、トラウマを乗り越えられる」
と説明。所信表明では、超党派で税制の抜本改革などを議論するよ
う呼びかけた。ところが、消費税増税に前向きな谷垣禎一自民党総
裁ですら「民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)の総括が必要
。それがなければ『はい、そうですね』とならない」とつれない。

 菅首相の経済政策が本当に「強い経済」を作るのかにも疑問の声
が上がる。「増税で社会保障を厚くすれば成長する」という実証的
なデータが乏しい上、政治的な思惑で、非効率な分野に予算が回れ
ば「大きな政府、大きな借金」(谷垣氏)に直結するためだ。
BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「持続的な経済成長に必要なの
は、一人一人の創意工夫を引き出す自由な経済活動だ」と指摘する
。【久田宏】
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鳩山前政権、司令塔不明確だった=官僚も重要な役割−民主・細野氏

 【ワシントン時事】民主党の細野豪志幹事長代理は18日、ワシ
ントン市内での講演で、鳩山前政権が崩壊した理由について、「政
治的なコントロールタワー(司令塔)がどこにあるのかが不明確だ
った」と述べ、鳩山由紀夫前首相の指導力不足が響いたとの認識を
示した。
 その一方で、菅政権では菅直人首相、仙谷由人官房長官、枝野幸
男幹事長の3人が司令塔になると述べた。
 細野氏はまた、「鳩山前政権は経験豊富な官僚を使いこなすこと
ができなかった。政治主導は理念としては重要だが、外交には継続
性という問題がついて回る」と指摘、官僚の役割を再認識する必要
があるとの考えを示した。 (2010/06/19-13:29)
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“菅効果”追い風で民主59、自民35大惨敗 参院選予測
2010.06.17ZAKZAK

 菅直人首相(63)率いる新政権の誕生で、来月11日の参院選
情勢が劇的に変化した。「政治とカネ」や「迷走政治」で国民的不
信を買った鳩山由紀夫首相(63)と小沢一郎幹事長(68)のツ
ートップが退いたことで、昨年の政権交代直後の清心なイメージが
復活したためだ。政治評論家、小林吉弥氏による最新の獲得議席予
測では「民主党59議席」「自民党35議席」に。サッカーW杯日
本代表のごとく、菅民主党は単独過半数目前の追い風状態に突入し
た。

 「完全に潮目は変わった。先月まで、民主党は酸欠状態でアップ
アップしていたが、『小鳩の退陣』で勢いを取り戻した。世論調査
から、民主党から離れていた無党派層の半数以上が『もう一度、期
待してみよう』と戻ってきているのが分かる。国民を失望させた8
カ月間だったが、鳩山氏は最後の『小沢氏との抱き合い心中』で指
導力を発揮した」

 小林氏はこう分析する。

 今回の獲得議席予測は、最新の世論調査に国政選挙での各党得票
率、個別の選挙区事情などをもとに、選挙分析で定評がある小林氏
が弾き出した。

 まず、与党陣営。菅首相(代表)率いる民主党は「単独過半数
(122議席)獲得」のためには60議席が必要だが、小林氏は「
選挙区38、比例区21の計59議席」と単独過半数目前の数字を
予測。最大値ではプラス9議席で68議席に達する。
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焦点:新成長戦略、雇用増やアジア輸出に期待の声
2010年 06月 17日 17:10 JST

 [東京 17日 ロイター] 菅直人政権が打ち出す新成長戦略に
ついて、社会保障分野での雇用増やアジア向けのサービス輸出、イ
ンフラ支援への期待が高まっている。一方で経済界からの要望の強
い法人減税は財源の問題に加えてその効果も限定的との見方が浮上
している。

 <社会福祉強化による雇用増に期待、箱物投資回帰の指摘も>
 成長戦略で打ち出される見通しの産業支援策について、事前に伝
えられている内容を総合すると、自民党政権時代と大きな変化がな
いメニューが並ぶ。環境・エネルギーや観光、都市部での公共事業
、規制改革などは以前からテーマに上っていた。それでも「以前は
実現に至らなかった政策でも、日本経済に今ほど危機感が高まって
いた時期はこれまでなかったため、今回は実現できそうだという期
待が持てる」(第一生命経済研究所・主席研究員・永濱利廣氏)と
の期待感もある。

 特に菅政権が打ち出した方向性として、医療や介護といった社会
保障分野の強化を雇用につなげる手法については「日本経済の足を
引っ張っている将来不安の解消にもつながるため、どこまで踏み込
めるか注目している」(伊藤忠商事・主任研究員・武田淳氏)との
声もある。

 一方で「結局は箱物投資という自民党政権と同じ道に回帰したと
いう印象も否めない」(クレディ・スイス証券・チーフエコノミス
ト・白川浩道氏)との指摘もある。同氏は、新成長戦略の案で具体
的な雇用増加のイメージを打ち出したのは、1)環境未来都市づく
り(140 万人の雇用創出)、2)総合特区制度の創出とオープン
スカイ推進(56 万人の雇用創出)であり、社会資本整備による雇
用増であれば、自民党政権と似通った結果となり目新しさに欠ける
、と見ている。

 <アジア需要取り込み、サービス分野に期待>
 アジアの成長取り込みも注目度が高そうだ。国内期待成長率が低
下する中で、大企業から中小企業まで幅広い分野でアジア進出に目
を向けている。アジアを中心にインフラ関連輸出に力を入れるため
、官民一体となったファンド創設や、閣僚によるトップセールス展
開などは成長戦略に盛り込まれる見通しだ。

 アジアではサービス消費が急速に拡大している。中国、インドに
おける08年家計支出に占めるサービス支出の割合は4割、インド
ネシアやタイでも3割を超え、10年前の2倍以上となった。この
ため経済産業省の産業構造ビジョンではモノだけでなく、サービス
輸出にも力を入れ、医療ツーリズムの受け入れ拡大や日本文化を産
業としてビジネスにつなげる方針を打ち出している。伊藤忠・武田
氏は「すでに対中投資では非製造業の伸びの方が高い。日本のサー
ビス産業の質は高く、これを生かす方向性は評価できる」と指摘。
サービス分野への進出に際して、日本政府が相手国政府との交渉な
どに尽力すべきと述べている。

 <法人減税、財源問題も大きな課題に>
 経済界からは「今回の成長戦略で真っ先に法人税引き下げを実施
していほしい」との声が上がっている。企業のキャッシュフロー増
加やコスト削減による国際競争力強化につながると期待されている
ためだ。

 ただ、大幅な引き下げは財源問題という難問を抱えている。第一
生命経済研究所の試算では、5%の法人減税を実施すると、10年
後に減税波及効果による自然増収が減収の64%を賄うにとどまる
ため、法人税率引き下げの単独実施は困難であり、別途財源の確保
を要するという。

 効果についても疑問の声が浮上している。「対日投資の促進とい
う点からは、日本の事業環境が改善する意味で効果は見込める」(
第一生命・永濱氏)との見方もあるが、対日投資の低迷や国内設備
投資の回復の遅れは、税率の高さだけでなく、日本の人口問題など
期待成長率の低下が主因とも言われる。6月のロイター企業調査で
も企業の成長阻害要因で最も多かったのは「需要不足」だった。

 法人減税による設備投資や対日投資の促進で、どの程度の経済効
果が生まれるのか−−。複数の調査機関が、法人税率を5%引き下
げてもGDP押し上げ効果は5年たっても0.3%程度にとどまる
と試算しており「成長戦略という位置づけとして適当かどうか疑問
だ」(クレディ・スイスの白川氏)との声もある。

 (ロイター日本語ニュース 中川泉記者;編集 田巻 一彦)
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需要拡大こそ大切 「菅氏の知恵袋」小野・内閣府参与
2010年5月9日1時32分

 このところ、菅直人副総理兼財務相は「増税と経済成長の両立」
を唱える。ただ、実現できるのか、疑問は多い。菅氏の知恵袋とさ
れ、内閣府参与に就任した小野善康・大阪大社会経済研究所長は「
単なるばらまきではなく、雇用を増やす需要を作り出すこと」が、
実現のカギを握ると語る。 

 ――景気回復の動きが緩やかです。何が足りないのでしょうか。
 「需要をつくることが大切だ。民間需要が足りない今は政府の出
番だ。小泉改革は企業への直接支援で経済成長を促そうとした。だ
が、そもそもモノが売れないのに、いくら生産力を増強しても成長
できない。需要の拡大こそが本当の企業支援になる」 

 ――具体的にどうすれば? 
 「働く場を増やして人材を生かすことだ。政策の是非を、人が働
けるようになったかどうかで判断するべきだ。手段は二つ。一つは
政府が事業を興して仕事を増やす。もう一つは規制改革。環境規制
などでお金をかけずに新たな市場をつくることができる」 

 ――民主党でマニフェスト(政権公約)の見直し作業が進んでい
   ます。 
 「民主党の政策は需要側の支援に向いている。そこは評価できる。
だが、単なる『ばらまき』では無意味だ。特に子ども手当には所得
制限をかけるべきだ。中間層以上がもらえば、その分自分への税負
担となるだけ。経済的に苦しい世帯に絞れば、負担はぐっと減る。
高校授業料の無償化も所得制限が必要だ」 

 ――高速道路の一部無料化や農家の戸別所得補償もばらまき批判
   があります。 
 「高速道路の一律無料化を変えようとしているのは評価できる。
すいている道路は無料化してよいが、こんでいる道路は値上げして
よい。戸別所得補償は地方支援になるのか疑問。道路などの公共事
業を減らして農家へのお金を増やしても、地方が受け取る総額は変
わらない」 

 ――それでも、財源は足りそうにありません。 
 「それなら増税すべきだ。増税は、国民負担が増えて消費が減る
から景気に良くないと言うが、これは間違いだ。働く場をつくり増
税分を国民に所得で渡るようにすれば、消費は減らない。むしろ、
所得増大で新たな税収も生まれ、つくった物やサービス分だけ生活
も豊かになる」 

 「国民がお金を使わないから不況になっている。だから、政府が
代わりにお金を有効に使ってやるべきだ。所得になって民間に返っ
てくる。国民が消費を増やして雇用が上向いたら、民間の邪魔をし
ないように減税して政府事業を減らすと確約すればよい」 

 ――結局、公共事業が中心になるのですか? 
 「無駄な道路や使わない港ではダメだが、必要な道路もあるし、
老朽化した社会資本の補修も必要だ。環境対策、介護や保育などの
社会保障分野、芸術や文化活動も重要だ。働く場を創造して、楽し
く住みよい社会を築くために人材を生かす。そんな新しい公共事業
の姿を考えるべきだ」 

 ――自民党政権時代にたまった借金はどうすればいいのでしょう。 
 「国債の信用低下を招く無制限な借金は慎むべきだが、借金返済
のためだけの増税なら景気にマイナスで、税収も下がって失敗する。
むしろ雇用拡大に使って所得を増やし、そこからの税収で返してい
くべきだ。財政再建を自己目的化させるのではなく、経済成長の結
果、国債が自然に減るように仕向けることが大切だ」
(聞き手・鯨岡仁) 

     ◇ 
 おの・よしやす 東工大卒、東大大学院博士課程修了。経済学博
士。菅氏とは10年前に雑誌で対談して以来のつきあい。2月に内
閣府参与に就任した。経済財政政策を中心に助言している。著書に
「不況の経済学−甦(よみがえ)るケインズ」など。59歳。 
==============================
小野善康氏が内閣府の参与に(驚き)?
http://blog.livedoor.jp/fudousan_soudan/archives/1390486.html#
 小野氏はいわゆる「ニューケインジアン」という、拡張財政派の
立場なのですが、宮沢喜一元総理のような「古い」ケインズ主義者
ではなく、「新古典派」と呼ばれるケインズ理論を否定する立場の
理論を用いて、ケインズ経済学を導いた、という異色の経済学者で
す。
 大学の経済学の教科書に出てくるヒックスの「IS−LM分析」
に代わる、「π−L分析」という新たな金利−所得理論を展開した
人です。

 その理論は複雑で、言葉で説明するのは非常に難しいのですが、
簡単に言うと、「金(カネ)がカネであるだけで喜んで稼ぎまくる
ヤカラがいる限り、不況が必ずやってくる。その不況を克服するた
めには、新たな財やサービスを提供して金持ちに金を使わせるか、
金の価値を下げて金持ちの貯蓄を放出させるか、どちらかが必要だ
。」というものです(この説明が間違っていた場合、私の不勉強の
せいです。念のため)。
 普通の人は、Money(カネ)は使いたくて稼ぐのですが、中
にはカネを稼ぐこと自体に喜びを感じ、札束を積んだり預金通帳に
残高が貯まっていくことそのものに快感を覚えるヤツがいる。それ
ほど極端でなくとも、”将来への不安”などを理由に(現金か低利
の預金で)貯蓄ばかり行い、消費も投資もしない人が増えると、世
の中のカネにアンバランスが生じ、不況が必ずやってくる、という
理論です。
 
 不況を克服するためには、財やサービスの「時間選好率」を上げ
る、すなわち、「明日より今日欲しい」と人々が思うモノやサービ
スを増やすか、貨幣の「流動性プレミアム」を減らす、すなわち、
「カネを持っていても、使わなきゃ意味がない」と人々に思わせる
か、その両方が必要だ、という発想です。そのための手段として「
良い公共事業」を増税してでも行うべき、という考えを持っている
人です。

 小野氏は「どマクロ経済学者」と呼ばれており、経済理論として
は正しくとも、社会学としてみた場合、人間の行動力学を無視した
机上の空論であるという、批判者が多くいます。
 ケインズ派の経済学者に共通している考えに「合成の誤謬」(1
人1人の行動として正しくとも、みんなが同じ行動を取ると間違い
になってしまうこと)というものがあります。景気が悪くなると、
人は贅沢をやめて遊興費を減らし貯蓄を増やしますが、国民全員が
それを行ってしまうと、遊興のサービスをしている人の収入が減り
、その人が消費する金額も減り、経済全体が収縮してしまいます。
 そうなった場合、伝統的なケインズ経済学では、公共事業を増や
し国全体の仕事を増やす、という発想をしますが、小野氏はそうで
はなく、金持ちに豪遊させるか、豪遊しないなら金持ちから税金を
多く取って公共事業で需要を拡大しろ、と主張しているようです。
金利を引き下げて、貯蓄の相対的な価値を減らし、金利がゼロでも
効果がなければ、貯蓄に税をかけて(いわゆるマイナス金利)その
税で公共事業を行う、とも考えているようです。これらの点で、社
会政策としては理想的でも現実的でもない、という批判があります。
 でも、一番重要なことは、企業が新たな商品やサービスを開発・
提供して、人々の「時間選好率」を上げる、という方法がベストと
も主張してます。その点、竹中平蔵氏のような「サプライサイダー
」と共通する発想でもあり、それが伝統的なケインズ経済学とは異
なる考えです。

 私が感じるに、小野氏の経済学の前提には、公的機関性善説があ
り、公的機関が悪意で自らの組織と利権の肥大化のために行動する
と、小野氏の理論は破綻します。小野氏に批判的な学者は、小野氏
の主張している経済理論そのものに対する批判ではなく、小野氏の
理論が、現実の世の中では実行不可能な、不自然な前提を置いてい
る(「それができてりゃ、苦労しないよ!」)というものです。人
間は自らの欲望のために合理的な行動をしない動物であり、いくら
理論的に経済を改善する方法を導き出しても、政策論として実行す
ることが社会的にできない以上、机上の空論であるという批判です。
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「いかにして使い道を間違えないか」こそが論点−−池尾和人.
http://agora-web.jp/archives/984925.html

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小野善康さん、それってちょっと……      山形浩生 
http://cruel.org/econ/ono3.html

1. 小野善康の論理構造
 というわけでまず、小野善康の景気回復論は、二部構成になって
います。

(1)失業があるのは無駄。だからなにもしないよりは無駄でも公
   共投資をばんばんして、そいつらを使ってなんかしらさせよう。
(2)でも現在の俗流ケインズ的なばらまき公共投資は無駄だからダメ。
   だから需要をつくる役に立つ公共投資をしよう。

 まず (1)は、みんなの考えている景気対策ではありません。みん
な、俗流ケインズ式公共投資がまともな景気対策だと考えることに
、いつの間にかなれてしまっています。でも、そうではないのは小
野さんも幾度も指摘なさっているとおりだし、クルーグマンが「十
字の時:公共投資で日本は救えるか」でも述べているとおり。不自
然な公共投資の前倒しなしでも、ちゃんと需給がマッチして完全雇
用に近いものが達成されるにはどうしたらいいか、というのがみん
なの考える景気対策ですね。したがって、(1) が景気対策として成
立するには、(2) が必須です。

しかし一方では、(1) と (2) は、よく考えると矛盾しています。
(1) では、失業者を遊ばせておくくらいなら、無駄でもいいから公
共投資をしろと言う。しかし(2) では、無駄な公共投資はダメだと
いう。どっちなんでしょうか。これについてはまた後で。

 しかし、この矛盾をぼかして議論を進めることで、小野善康の
「経済政策」論は展開されています。そしてこれをぼかすことで、
この両者を単発でも繰り出せるし組み合わせても繰り出せるという
かなりアクロバチックな議論展開が可能になっているわけです。

 その様子を、まず(なぜか)二番目のものものから見ていきまし
ょうか。

2. 「よい」公共投資とは言うけれど……
 いまのばらまき公共投資がダメで、役にたつ公共投資が必要、と
小野善康はいいます。が、その具体的な中身はまったくありません
。「需要をつくる公共投資を」というだけです。それはなに? 具
体的にどのようにもたらされるの? これに対する小野善康の答え
は、最終的には「わかんない」です。「それを考えるのは経済学者
の仕事じゃない」ということです。役人がもっといいアイデアをだ
せばいい、民間がもっといい提案をすればいい、それは現場の仕事
だからオレは知らない、ということになります。

 これに対する当然の反論は、いまの役人のやってることを見て、
かれらがこれから急に「いい」公共投資のアイデアを出すなんてど
うして思えるの? ということです。民間が公共に対して提案しろ
と言うなら、どうして民間が自分のアイデアを自分で実施するだけ
ではダメなの? ということです。現に、小野善康がしょっちゅう
挙げる「需要をつくりだした」事例の携帯電話は、民間の民間によ
る投資です。それを(減税でもなんでも)支援したほうがいいじゃ
ないですか。

 さて、これに対して小野善康は次のように論じます。そんなに役
人が信用できないなら、そもそも政府なんかなくしちゃえ、経済政
策なんか無意味ということになってしまうではないか。さらに民間
がだめだからこんな不況になってるんだし、民間なんか信用できな
い、連中はためこむだけだ。

 前半については、まずあんまり極論をしないでくださいな、とい
うだけです。政府をなくされたらぼくも仕事がなくなって困ります。
単に景気回復策という場面で、小野善康式の「なんか良いアイデア
だしてよ」式の無条件な信頼はできない、ということです。
 さらに後半については、携帯電話についてだけ民間は信用できて
、ほかのところは急に信用できないというのはどういうわけだろう
、と思うのが人情でしょう。さらに、なにをしようともいずれ民間
の設備投資とかが回復しなきゃ景気は戻らない。公共投資を経由し
ようとも、減税を経由しようとも、いずれは民間に頼るしかないん
ですよ。

 もちろん、実際に「宇宙開発をやりなさい」とかいうプロジェク
ト提案を期待しているわけではありません。しかしながら、単に「
アイデアを出せ出せ」というだけではダメでしょう。しかじかの理
由で公共のほうがアイデアを出せるはずだ、というのを過去の実績
なりアイデア生成リソース(ってなんでしょうね)の分布なりで示
さないと。そしてその上で、「だからこいつらにもっとリソースを
まわそう、そうしたらアイデアもでるであらふ」という議論をしな
いと。

 つまりアイデアを出せというなら(役人に対してであれ民間に対
してであれ)、アイデアを出しやすくする仕掛けというのが必須で
すが、それについて小野善康はなにも述べていません。これについ
ても特に案はないということでよろしいですね。

 もちろん、山形としても、どういうアイデアで景気が回復するの
かはわかりません(が、ぼくの立場については後述)。ただここで
大事なのは、民間が信用できようとできまいと、小野さんがぼくの
揚げ足取りについてなにを言おうとも、小野さんとしては需要を創
造する投資がどんなものであるかについてはまったく見当がついて
いないし、さらには、そういうアイデアを(民間側でも公共側でも
)出やすくするためのインセンティブや方策づくりについても、ま
ったく無策である、ということです。

 つまり上の (2) の議論は、政策的には実在しないのです。(2) は
政策提案ではなく、「みんながんばろう」式のかけ声でしかありま
せん。

 さて、問題は次です。こういう話で分が悪くなると、小野さんは
 (1) に逃げます。これが次です。

3. なにもしないよりまし……?
「そんなことを言ったって、失業者といういちばん無駄なところに
人がたくさんいるんだから、かれらを遊ばせておくよりも、無駄で
も何かさせたほうがいいじゃないか」 

はいはい、わかります。つまりこれは、とにかく失業者に雇用機会
ができて、まったく無駄なものであれなんかしらできるんだから、
とにかく公共投資しなさい、という話です。「なにもしないよりは
まし」ですね。

 でもこの議論はつまり、小野さんがご自分でさんざん批判してい
る、通俗ケインジアンの議論と寸分変わりません。とにかく需要が
足りないんだから、とにかく公共投資で需給ギャップを埋めろ、な
にもしないよりは何かしたほうがいい、という議論です。でも、小
野さんは(2) の話をするときには、「いまのようなばらまき型公共
投資はダメだ」と何度も言うのですね。どっちなんでしょうか。

 ぼくから見ると、小野さんは「いまのばらまき型公共投資も評価
できるし、評価すべきだ、これからやる公共投資がすべて乗数効果
のない無駄なやつになっても、それはそれでかまわないのだ」とい
うのをはっきりおっしゃらない限り、理論的な一貫性をもてないよ
うな気がするのです。が、お書きになっているものを読むと、それ
はたぶん言うわけにはいかないのかもしれませんが。

 失業保険を出すのと、失業者を使ってゴミ処理場をつくるのとど
っちがいいか? これも小野さんのよく使う論法です。小野さんは
ゴミ処理場が圧倒的に「明白に」いいとお考えのようですね。

 つまりこれは、(2) をやれ、というのを弱い形で言い換えただけ
です。携帯電話みたいな需要をばんばん作るものではないにしても
、 (2) は明白にできるんだ、素人判断でもわかる無駄でない投資は
たくさんあるぞ、という主張です。

 がぁ、これはコスト便益分析して考えてみないとはっきり言えな
いんじゃないでしょうか。ゴミ処理とかダイオキシン処理とか、い
かにも聞こえのいいものをあげて、湾岸戦争支援とか悪そうなもの
をスケープゴートにすることで、公共にできる明らかによいことが
いくらもある、という印象を小野さんは作り上げます。でも、本当
にそうなんでしょうか。もしそうなら、なぜこれだけ公共工事が前
倒しされる中で、そうしたものに手がつかないんでしょう。

 可能性は三通り。

1.役人は、新しいアイデアを思いつくどころか、目の前にある素人
でもわかるすぐれた投資機会をみすみす逃してしまうほど無能だ。
2.役人としてもすぐれたプロジェクトはわかっていて、それを実施
したいのはやまやまなのに、政府内の組織硬直のためにそれが実現
できない(でもこれは上のと大差ない話ですね。結局役人には期待
できない、という話です)。
3.実はこういうプロジェクトは見た目ほどはよくない。
 どれが正しいかは、諸般の事情でノーコメントですが、いずれに
しても小野さんの議論は成立しないのは明かでしょう。

 そしてそう言われると、小野さんは「いや、個別プロジェクトは
おれは知らん、問題はそういうことじゃなくて、需要創造につなが
るような投資をしろということだ!」と逃げます。(2) ですね。が
、それについてはすでに前段で、小野さんに具体的な策がないこと
は見たとおり。この逃げ道は、小野善康の政策議論としては実在し
ません。

 そしてその「需要創造」の具体案がない以上、小野さんの議論は
要するに、先の見えないまま、失業対策の多額の(おそらくは無駄
な)公共投資をいつまでも続けなさい、というだけです。これが減
税して民間にため込ませるのとなんら変わりないのは、小野さん自
身が何度もご指摘のとおり。でも、小野さんの政策的な貢献は、そ
れを正当化することでしかないのです。


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