ユーロ問題は、ＥＵの骨格を揺るがし始めている。その検討。 Ｆより 南欧の国債を大量に買っている欧州銀行の信用不安が起こり、欧州 の銀行間での資金のやり取りに適用される金利（欧州銀行間取引金 利・EURIBOR）は、3カ月物で0.715％と、昨年12月中旬以来の高水準 となっている。反対に銀行が欧州中央銀行（ECB）に預ける翌日物預 金残高は、6月10日に3,690億ユーロ（約40兆6,000億円）と、1999年 のユーロ導入以来、最大規模となっている。どうしてかというと、 余ったお金を銀行に貸し付けるのは、銀行が倒産する可能性があり、 一番安全なＥＣＢに貸すしかない状態になっているということであ る。いつか見た風景が出現している。 ６月13日、欧州金融機関のギリシャとアイルランド、ポルトガル、 スペイン各国政府向け融資残高は2009年末時点で、計2540億ドル （約23兆3000億円）に達していた。国際決済銀行（ＢＩＳ）が公表 した最新の四季報で明らかになったように欧州金融機関は大量の資 金をデフォルトしそうな国家に貸していることが分かった。 フランスとドイツの金融機関のリスク債権はそれぞれ4930億ドルと 4650億ドルで、ユーロ圏の金融機関全体の61％を占めるために、独 仏両国が音頭を取って対策を構築する必要があるようだ。 このため、ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領は14 日ベルリンで会談し、メルケル首相も２７カ国による経済監視がと りわけ重要だと強調。さらに「われわれは安定成長協定を強化する 必要がある。ＥＵ条約の改定を検討する必要があることでも一致し た」と述べた。 これに対して、サルコジ大統領は、独仏は共通の政策を推進すると 消極的な印象を受けた。独メルケル首相は、ＥＵの経済金融政策を 主導していくようだ。フランスはしぶしぶドイツに着いて行くよう である。 16日、ＥＵはスペインとポルトガルの債務水準が今後数年で「雪だ るま式に膨張する」可能性があり、１カ月前に発表した財政赤字目 標の達成には追加の財政削減策が必要だとの見解を示した。歳出削 減が起こり、経済は下方スパイラルになる。 このような状況から米著名投資家ジョージ・ソロス氏はユーロ圏債 務危機への政策対応が景気の下方スパイラル（悪循環）を招いてお り、欧州が来年リセッション（景気後退）に陥るのはほぼ不可避で 、その後も何年にもわたって経済の停滞に苦しむ可能性があるとし た。 また、米国は要求していたストレステスト結果の公表について、 ＥＵは17日、域内銀行の健全性を調べる特別検査（ストレステスト ）の個別結果を遅くとも7月後半に公表するとした。 ドイツ銀行連 盟（ＢＤＢ）と英国銀行協会（ＢＢＡ）は、ストレステスト結果を 公表することは、「全く健全な銀行に取り付けを引き起こす」恐れ があると指摘したが、それをしないと銀行の健全化ができないと ＥＵもやっと、重い腰を上げたようである。 そして、ドイツ連邦銀行のウェーバー総裁は５月10日、トリシェ総 裁を含むＥＣＢの政策委員会で、国債購入は安定性への多大なリス クとなるとＥＣＢの国債購入に反対した。独メルケル首相と独ウェ ーバー総裁のコンビがＥＵの経済政策を主導する体制にするようで ある。 トリシェ総裁の８年間の任期満了を2011年10月に控え、次期総裁候 補の最右翼であるウェーバー氏の発言はますます重い。また、ユー ロ圏経済全体の４分の１以上を占め、財政規律と物価安定で域内で 異例の実績を誇るドイツの中央銀行総裁でもある。 このため、ゴンサレスパラモＥＣＢ専務理事は、ＥＣＢによる追加 流動性供給措置や国債買い入れなどの支援措置は市場の安定化に寄 与したが、異例の措置であり必要以上に長期間維持することはリス クになると認識していると。ウェーバー次期総裁候補の見解を尊重 している。 また、中国は金融不安のギリシャへの投資を拡大している。この中 にギリシャ最大の港、ピレウス港のコンテナ埠頭2つを、35年間独占 使用する権利を34億ユーロ（約3千8百億円）で獲得している。中国 が、ピレウス港を、本格的な欧州進出の拠点と位置づけていること がうかがえる。 これに対して、欧州各国は警戒を強めている。 さあ、どうなりますか？？ 参考資料： ３６５９．ＥＵ危機が世界危機へ発展か？ http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/220613.htm ３６３８．ユーロ危機で世界市場に激震 http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/220523.htm ３６３０．ギリシャからユーロ危機へ http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/220515.htm ３６２４．ギリシャ国債のデフォルト回避 http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/220508.htm ３６１８．ギリシャ財政危機問題 http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/220501.htm ３５６９．欧州版ＩＭＦ http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L2/220310.htm ３５６６．ユーロ危機で円高へ http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L2/220306.htm ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ ＥＣＢの追加支援、長期間維持することはできない＝専務理事 2010年 06月 19日 01:57 JST ［フランクフルト １８日 ロイター］ 欧州中央銀行（ＥＣＢ ）のゴンサレスパラモ専務理事は１８日、ＥＣＢが危機対策として 講じた追加支援措置はインフレリスクにつながる恐れがあり、過度 に長い期間維持することはできない、との見解を示した。 専務理事はスペイン・マラガでの講演原稿で、ＥＣＢによる追加 流動性供給措置や国債買い入れなどの支援措置は市場の安定化に寄 与したと指摘。「異例の措置は経済を下支えしたが、必要以上に長 期間維持することはリスクを伴う。これは回避されなければならな いと、われわれはしっかりと認識している」と語った。 また、支援措置が一時的な性質であることに加え、これら措置が もはや必要とされなくなった段階で、ＥＣＢは解除する意志と能力 を有している、と述べた。 ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ ＥＣＢで重み増すウェーバー氏、独連銀の伝統背負い次期総裁に最短 ６月18日（ブルームバーグ）：５月10日、欧州中央銀行（ＥＣＢ） が国債購入に踏み切った数時間後、ドイツ連邦銀行のウェーバー総 裁（53）はトリシェ総裁を含むＥＣＢの政策委員会に反旗を翻した。 ウェーバー氏は「国債購入は安定性への多大なリスクとなる。 このため、政策委の決定のこの部分には批判的だ」と表明した。 独紙ベルゼンとのインタビューでのこの発言はその後、独連銀 のウェブサイトにも掲載された。発言前夜にウェーバー氏は、ＥＣ Ｂの緊急電話会議に参加していた。 各国の財務相らがブリュッセルで欧州連合（ＥＵ）主導の7500 億ユーロ（約85兆円）規模の救済基金の構想を詰める間に、トリシ ェ総裁はほとんどの政策委員から国債購入についての合意を取り付 けた。ギリシャの財政悪化を発端とした債券市場の混乱を収束させ るには同措置が必要だと説得した。 しかし、次期総裁候補の最右翼であるウェーバー氏を説き伏せ ることはできなかった。トリシェ総裁の８年間の任期満了を2011年 10月に控え、ウェーバー氏の発言はますます重い。ユーロ圏経済全 体の４分の１以上を占め、財政規律と物価安定で域内で異例の実績 を誇るドイツの中央銀行総裁だからだ。 ドイツのメルケル首相がギリシャ支援に最後まで抵抗したのと 同様に、ウェーバー氏もＥＣＢが財政赤字国の救済にかかわり過ぎ ることを嫌い、立ちふさがる。 ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ ＥＵ首脳、ストレステスト個別結果の開示で合意 2010年 6月 18日 9:20 JST WSJ 【ブリュッセル】欧州連合（ＥＵ）は17日、域内銀行の健全性を 調べる特別検査（ストレステスト）の個別結果を遅くとも7月後半に 公表することで合意した。 各国首脳は会議後の記者会見で、これは強い域内銀行の信頼を取 り戻し、弱い銀行を支援するためのものだと述べた。 議長国スペインのサパテロ首相は「信頼性を示すのに透明さに勝 るものはない」とし、「欧州経済への信頼性を高めるために妥当な スケジュールでこれを実施すべきだと考えている」と述べた。バロ ーゾ欧州委員会委員長は「国家の介入が必要なら、規則にのっとっ て、タイムリーに検討することになる」と指摘した。 ＥＵの銀行規制当局は昨年、域内22の大手銀行のストレステスト の結果を発表したが、個別結果は示していない。これら銀行の資産 は域内銀行資産の60％に当たる。今回各国政府は個々の銀行の検査 結果を公表することになる。 このテストは、さまざまな経済的苦境の中で銀行がどの程度持ち こたえられるかを調べるもの。 ＥＵ首脳会議はまた、各国政府は銀行に課税し、必要ならその収 入の一部を経営難の銀行の処理に充てるべきだとする点でも合意し た。ＥＵはこれを今月下旬にカナダ・トロントで開かれる主要20カ 国・地域（Ｇ20）首脳会合で提案する。ただ、同会合ではカナダな ど他の国が反対する公算が大きい。 ファンロンパイＥＵ大統領は、ＥＵはＧ20で金融取引税導入の可 能性も探ると述べた。しかし、外交筋によると、一部のＥＵ加盟国 はこの税に反対しているという。 さらにＥＵ首脳会議は、予算に関する規律・監視の強化提案で合 意した。ＥＵの規則は年間の財政赤字がその国の国内総生産（ＧＤ Ｐ）の3％、債務残高が国内総生産（ＧＤＰ）の60％を下回ることを 義務付けている。提案は高財政赤字国だけでなく、重債務国も特別 調査を受けるべきだとしている。 ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ 中国がギリシャへの投資拡大 新たな海のシルクロード 欧州に広 がる警戒感 2010.6.17 20:40サンケイ 【北京＝川越一】アフリカや中東諸国との関係を深めてきた中国 が、今度は欧州に金融不安を引き起こしたギリシャへの投資拡大を 進めている。同国を訪問した張徳江副首相は１７日までに、パパン ドレウ首相らと会談し、中国企業による投資拡大で合意した。“底 値”に乗じた中国のバルカン半島進出に、欧州各国のメディアは警 戒を強めている。 中国国営新華社通信などによると、15日、アテネで会談した双方 は、両国企業による14事業に関する合意文書に調印した。貨物船建 造や通信設備の提供、オリーブオイルの輸出入など、さまざまな分 野での貿易総額は、数十億ユーロにものぼるとみられている。 中国はすでに昨年、ギリシャ最大の港、ピレウス港のコンテナ埠 （ふ）頭（とう）2つを、35年間、独占使用する権利を34億ユーロ （約3千8百億円）で獲得している。今回、合意した契約の中には、 北京の不動産開発業者による、ピレウスでの商業とホテルの複合施 設開発も含まれている。中国が、ピレウス港を、本格的な欧州進出 の拠点と位置づけていることがうかがえる。 ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ ストレステスト結果公表「取り付け」の恐れ−英銀行協会 ６月16日（ブルームバーグ）：英国銀行協会（ＢＢＡ）は、銀行 のストレステスト（健全性審査）結果を公表することは、「全く健 全な銀行に取り付けを引き起こす」恐れがあると指摘した。 ＢＢＡは16日の電子メールで、公表を考える前に、２つの質問 に対し答えを出す必要があると説明。「データが誤って解釈された 場合の影響に対して準備ができているか」、そして「結果が財務力 の成績表ととらえられ、全く健全な銀行の取り付けを招いたらどう するのか」と疑問を呈した。 さらに、「銀行がストレステストで不合格となった場合、監督 当局は国民が求める行動への要求にどのように応えるのか。銀行へ の公的資金投入が必要になるのか、それとも別の方法で安定させる のか」と続けた。 ドイツ銀行連盟（ＢＤＢ）はストレステスト結果の公表につい て、金融市場の「誤解」を招く恐れがあると指摘している。 ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ 欧州経済が来年リセッションに陥るのは「ほぼ不可避」＝ソロス氏 2010年 06月 16日 10:52 JST ［ロンドン １５日 ロイター］ 米著名投資家ジョージ・ソロス 氏は１５日、ユーロ圏債務危機への政策対応が景気の下方スパイラ ル（悪循環）を招いており、欧州が来年リセッション（景気後退） に陥るのはほぼ不可避で、その後も何年にもわたって経済の停滞に 苦しむ可能性があるとの考えを示した。 欧州のシンクタンクが開催したユーロ圏の危機に関するセミナー で述べた。 単一通貨ユーロに関しては、誕生以来組み込まれていた欠陥が深 刻さを増したと指摘。ユーロには調整メカニズムが欠落しており、 離脱に関する条項がないことから、致命的な弱点となる可能性があ ると述べ、今回のユーロ圏の危機が欧州連合（ＥＵ）を崩壊させる 恐れがあると警告した。 さらに欧州の銀行システムについて、欧州の銀行はぜい弱なユー ロ圏諸国の国債を、わずかな金利差で大量に購入したため、著しく オーバーレバレッジの状況に陥っていると指摘。「現在では、欧州 の銀行に損失が生じているが、バランスシートに計上されていない ため、銀行自体の信頼性が低下しており、銀行システム全体が深刻 な問題を抱えている」と警告した。 ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ スペインとポルトガルの債務、「雪だるま式に膨張も」−ＥＵ ６月15日（ブルームバーグ）：欧州連合（ＥＵ）はスペインとポ ルトガルの債務水準が今後数年で「雪だるま式に膨張する」可能性 があり、１カ月前に発表した財政赤字目標の達成には追加の財政削 減策が必要だとの見解を示した。 ブルームバーグ・ニュースが入手したＥＵの文書の草稿によれ ば、ＥＵはユーロ圏救済基金をめぐる５月10日の合意の一環として 両国が発表した赤字削減措置は不十分だとみている。財政赤字比率 がＥＵ加盟国で３番目に高いスペインは赤字を今年国内総生産（Ｇ ＤＰ）の9.3％に、来年は６％に減らすと表明。ポルトガルはそれぞ れ7.3％と4.6％に減らすことを約束している。 ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ 独仏首脳、ＥＵすべてによる経済監視が必要と認識 2010年 06月 15日 10:10 JST ［ベルリン １４日 ロイター］ ドイツのメルケル首相とフラ ンスのサルコジ大統領は１４日ベルリンで会談し、ユーロ圏ばかり でなく、欧州連合（ＥＵ）２７カ国すべてによる経済監視が必要だ との認識で一致した。 サルコジ大統領は、会談終了後の共同記者会見で「共通の政策を 推進し、欧州が正当な野心を達成するため、ドイツとフランスはこ れまでよりも一層、声を一つにして話していく方針だ。そのため、 ２７カ国レベルでの経済ガバナンスが不可欠で、必要に応じてユー ロ圏内でユーロの問題について協議していく」と述べた。 メルケル首相も２７カ国による経済監視がとりわけ重要だと強調。 さらに「われわれは安定成長協定を強化する必要がある。（ＥＵ） 条約の改定を検討する必要があることでも一致した」と述べ、独仏 は近くこの問題について提案を行う考えを明らかにした。 フランス政府筋によると、ドイツとフランスはこれまで、経済監 視の強化に向けたアプローチをめぐり見解が対立しており、当初は 先週予定されていた両首脳の協議は、合意が難しいとの懸念から開 催が延期されていた。 ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ 欧州金融機関のギリシャなど４カ国政府向け融資2540億ドル ６月13日（ブルームバーグ）： 欧州金融機関のギリシャとアイルラ ンド、ポルトガル、スペイン各国政府向け融資残高は2009年末時点 で、計2540億ドル（約23兆3000億円）に達していた。国際決済銀行 （ＢＩＳ）が公表した最新の四季報で明らかになった。 それによれば、個人や企業向け融資を含めると、欧州金融機関 の４カ国向けのエクスポージャー（リスク債権）は１兆5800億ドル に上り、政府向けは全体の16％にすぎない。フランスとドイツの金 融機関のエクスポージャーはそれぞれ4930億ドルと4650億ドルで、 ユーロ圏の金融機関全体の61％を占める。 ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ マネー縮小による景気後退も織り込み始めたユーロの下落 2010/06/11 (金) 14:48（KlugView） 最近になって、欧州の銀行においてリスクを回避する姿勢を強めて います。銀行が欧州中央銀行（ECB）に預ける翌日物預金残高は、 6月10日に3,690億ユーロ（約40兆6,000億円）と、1999年のユーロ導 入以来、最大規模となっています。 欧州の銀行間での資金のやり取りに適用される金利（欧州銀行間取 引金利・EURIBOR）は、3カ月物で0.715％と、昨年12月中旬以来の高 水準となっています。また1年物は1.269％と、昨年9月以来の高水準 となっています。ECBに預ける翌日物預金残高の金利は0.25％ですの で、資金に余裕がある銀行であれば、（期間の違いこそあれ） EURIBORで貸付ける動きが強まってもよさそうです。 ECBの翌日物預金に銀行の資金が集まり、EURIBORが高水準にある理 由として、欧州の一部銀行での破綻リスクの高まりが指摘されてい ます。 ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ ユーロは年内に1.10ドルへ下落、「最も確実なシナリオ」で−ＲＢＳ ６月10日（ブルームバーグ）：英ロイヤル・バンク・オブ・スコッ トランド・グループ（ＲＢＳ）は、ユーロの対ドル相場の最も確実 なシナリオとして、年内に１ユーロ＝1.10ドルへ下落する可能性が あるとの見方を示した。欧州連合（ＥＵ）による域内の債務危機を 封じ込める取り組みは単なる先送りにすぎないと指摘している。