3654.菅新政権の経済政策は



菅新政権は、当初うまくいくが支持率が徐々に降下する。それは今
、誰がやっても日本経済は下降していく。しかし、参議院選挙が終
わると、3年間は国政選挙がない。この時期に改革をしないと、永
遠に日本は衰退してしまう。 

この改革の方向も、歴代内閣がいろいろな実験をしたので、徐々に
分かり始めている。欧州のオランダ、デンマーク、ノルウエーの福
祉国家型にするしかない。 

この方向からすると、同一職種同一賃金という制度の導入が不可欠
であることが分かるが、労働組合は反対をする。ここで、日本は難
しいことになる。

公務員改革も自治労を説得できないと難しい。公務員数を削減する
とか、公務員給与を削減するという手が取れない。これは仙石さん
も言っている。というように制約がある中で改革を行うことになる。 

江戸時代は、元禄時代を境に大きく思想が変わる。その違いが分か
るのが新井白石と荻生徂徠の思想の違いで出ているように感じる。 

この境が実を言うと、1990年代〜2010年の日本でもある。
失われた20年の日本である。この違いは、経済発展しないときの
経済政策の考え方をどうするかという観点である。 

江戸時代に今と同じような状況があり、それを乗り越えようとした。
その状況と同じで、現在、同じような政策と思想が重要になってい
るように感じる。

小泉・竹中改革は、田沼意次の改革と同じで金融資本の利便に寄り
すぎで、貧富の差を拡大した。このため、日本国民から嫌われた。
250年間、江戸時代は貧富の差を広げないよう、戦争にならない
ように新技術開発禁止や領土固定、長男相続などの政策を打ってい
た。

このため、日本国民はミームとして貧富の差を拡大する政策に拒否
反応を示す。今後の改革も新自由主義的な改革は国民の支持を得な
いと見る。

田沼の政治は大商人に事業の独占を認め、その代わりに商品の売り
上げに応じた税金を徴収した。これで、大商人はより大商人になる。
大商人は金融資本も兼ねていた。

これと同じような施策が新自由主義であり、結局、大きな金融資本
が儲かる仕組みになってしまった。このため、貧富の差が広がって
しまい、国民は失望した。 

菅新政権は、新自由主義ではない。菅さんの顧問である小野教授の
意見を見れば分かる。日本式の福祉国家を狙っている。貧富の差を
広げないよう、失業者の雇用を政府が生み出すという。

しかし、小野教授の公共サービスに多数の失業者を雇用して、国家
財政は持つのかという疑問は当然ながら沸く。

織田信長の楽市楽座のように、新規事業者が簡単に参入できる仕組
みを意図的に作らないと、なかなか大企業には中小企業はかなわな
い。ただの夜警国家的な自由主義では新規参入できず、中小企業や
新規参入者は参加できずに日本自体が衰退することになる。もちろ
ん、欧州や米国も同様である。

このように新規事業者と新規事業分野を作ることが、経済活性化に
は必要である。この新規分野が無くなってきたことで、日本は衰退
してきた。既存産業は、中国や韓国など人件費が安い国が優位。日
本は新規しかない。 

新井白石は農本主義で、金融を知らなかった。元禄時代までは農業
拡大期であり、それでよかったが、それ以後は農業の拡大はなくな
る。そうすると、経済的に行き詰まり、そのため、金融政策や経済
政策が必要になる。 

この金融政策や経済政策を提案したのが荻生徂徠と太宰春台である。
春台が経済ということばを作り、経済政策を大岡越前と行うのであ
る。これと同じ状態に日本はある。今までの経済論理が古いし、使
い物にならないのである。 

経世済民ということは、世を治め民を助けるであり、国の民を幸福
にさせることが国のリーダの役割である。そうすると、貧富の差を
無くして、日本人全員があるレベルの生活を送れる仕組みを考える
ことが国家リーダの政治なのである。 

この観点で江戸の政治もしているが、いろいろな社会的な試行実験
をしていた。それが田沼息意次や荻原重秀であり、新井白石や荻生
徂徠であり、徳川吉宗である。また、商品作物を薦めた大蔵永常な
どが出る。

これと同じ状態に現在の日本はなっている。いろいろな社会実験を
歴代政権はしているような気がする。しかし、また、新しい経済理
論ができない。連立方程式が分からないということでしょうね。 

江戸時代後半は、藩から日本全体へと経済が全国規模になり、一藩
だけという経済は成り立たないことになっていく。

現在の世界経済も同じで、世界が経済の一体化をしている時に、日
本だけの経済を論じていても埒が明かないのですね。

世界的にも産業革命後の大きな転換点になってきた。一国経済の理
論では解決できないことが多くなり、世界全体の観点で考えるべき
であるが、まだ一国経済に縛られえいるので行き詰っている。これ
は日本だけではなく、米国も欧州もである。 

日本は、拡大日本戦略で乗り来るべきであると思うが??

さあ、どうなりますか??
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増税で公共部門に雇用を創出せよ=菅首相の経済アドバイザー
WSJ
2010年 6月 7日  20:09 JST 
 菅直人新首相はこれまで数カ月間、財務相を務めたが、洗練され
た経済知識を持っていることは国民に知られていない。 
 
菅氏は、大阪大学社会経済研究所の小野善康所長(59)に経済政策
の師事を仰いだ。小野氏は「Money, Interest, and Stagnation: 
Dynamic Theory and Keynes’s Economics」などの著書で知られる。 

 内閣府参与で首相の経済アドバイザーを務める小野氏は興味深い
持論の持ち主だ。「 失業者のために公共セクターで職を創出するた
め、定職に就いている労働者への課税を強化すべき」というのがそ
れだ。 

 菅氏が副首相と財務相を兼任していた時期、同氏と官僚に対し、
経済政策に関する2時間の個人授業を小野氏は何度も行ったという。 

 小野氏は、日本経済はデフレを脱却できずにいるとし、職の確保
に対する不安から、国民は支出を渋っており総需要が減少している
、と説明する。 

 小野氏は、政府は増税を実施し、自転車専用道路の建設や保育施
設の充実といった公共計画に資金を充当することで、民間セクター
で職を得られない労働者に報いるべき、と説く。 

 小野氏は、この施策は経済に実質的な負荷はもたらさないとし、
事業会社はいずれにせよ、このような労働者を雇わないため民間セ
クターを大きく損うこともなく、あらゆる点でばら色の計画、と述
べた。その上で、新たな公共サービスが提供され、雇用が拡大する
ことで、デフレが和らぐとともに民間需要が押し上げられ、収入増
と消費税収の拡大がもたらされる、と述べた。 

 小野氏は「無職の労働者はそのままにしておくよりも、職を与え
た方が良い」と言う。組閣の際に首相が考慮すべき言葉だろう。 


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