3646.今こそ「国体」を考えるべき



 今こそ「国体」を考えるべき    
                      久保憲一 

  同じ民主制国家でも、それぞれの国は特色を有する。これを「国
体」と呼ぶ。この認識が曖昧であると政治制度の無原則・無秩序な
採用をもたらし、その結果矛盾、混乱を生じやすい。 

「デモクラシーの母国」英国は、憲法の下に国王を戴く「立憲君主
国」である。またその政治制度「議院内閣制」はその歴史的由来と
目的から国王を輔弼し、支えるよう考え出されたものである。  

英国は主権在民の米国とは異なり、議会が事実上の主権を有してい
る。またこの国では「女王陛下の大臣」から囚人「女王陛下の客人
」に至るまで社会の隅々に国王の権威が及んでいる。 

 米国大統領は、合衆国の元首であり政府首長以上の力を有する存
在である。多くの国では元首と政府の首長の役割は別であり、国王
または大統領が元首、首相が政府首長として存する。合衆国では大
統領は政府の首長も兼ねている。 

 元首としての任務は、外交上、合衆国を代表して栄誉を与え、国
を代表して儀式的任務を果たす。 
また国民的指導者として重要問題に関して国民に直接訴え指導する。

 かくして明確な憲法規定がなくとも国民的指導力を発揮できるの
は、彼が全国規模で選ばれる唯一の人物だからである。 
 わが国も「立憲君主国」であり、やはり「議院内閣制」を採用し
ている。「大臣」も存在する。そして意識しようがしまいが、今日
に至るまで天皇は日本の政治社会および文化体系の中心に位置づけ
られてきた。しかし天皇は必ずしも「政治権力」を持ったわけでは
ない。どの時代においても政治権力者たちは、「天皇の権威」によ
ってその権力正統化を図った。占領軍総司令官マッカーサーも例外
ではない。 

 現行憲法では天皇の国事行為・公的行為によって様々な事柄が正
統化されている。内閣総理大臣や最高裁長官の任命等の国事行為の
他、公的行為は今日のわが国の国際的地位向上や国連加盟国の増大
、国際関係緊密化に伴い益々増加している。公的行為の濫用問題も
派生している。 

 特に今日の天皇は、外交上「百人の大使に匹敵する」といわれる
ように親善の任を大いに果たされ、日本の国際的信用を保持してい
る。 

 最後に、英国の現女王は三八代、直接の祖先はジョージ一世、ハノ
ーバー家のドイツ人であり、一般国民とは異なる民族である。ちな
みに天皇が英国王と異なる点は、男系相続に限られ、百二十五代、
世界最古の王室である。また英国王は英国教の単なる「擁護者」で
あるが、天皇は自ら神道『祭主』である。 

久保憲一 


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