3638.ユーロ危機で世界市場に激震



 ユーロ危機は、世界株式市場の株価を急落させた。この分析が必
要である。世界市場が一体化してきて、東京市場もNY市場に連動
して動いている。このため、弱小国ギリシャの国債償還問題が瞬時
に、世界市場を混乱させることになる。

しかし、その混乱も織り込み、急に回復するなど、ヘッジファンド
の思惑が大きく作用する相場に成ってきている。このため、ヘッジ
ファンドなど機関投資家が、どう考えるかを思考することが、今の
市場予測には必要になっている。
             津田より

0.はじめに
 欧州中央銀行(ECB)による国債買い入れという異例の政策に
よって、欧州の経済小国に対する金融圧力は緩和されたように見え
るが、ソブリン債のデフォルト(債務不履行)に対する警戒感が、
依然として金融市場全体を覆っている。

このような反応からECBによる国債買い入れの効果が限定的と見
たドイツ政府は、19日から、ユーロ圏の国債ならびに関連したクレ
ジット・デフォルト・スワップ(CDS)を対象に、現物手当ての
ない空売りの一時的禁止措置を導入した。しかし、この突如の処置
に対して、金融市場は大幅に下落した。この処置はほかの欧州諸国
に事前の相談はなかったとしており、波紋が広がった。欧州全体で
の市場規制に関する不一致で、不透明感が高まったことも投資家を
不安にさせたようだ。

このようなEU不一致との指摘に対して、サルコジ大統領は「メルケ
ル首相には、このように重要な問題で独仏間で意見の不一致があっ
てはならないと話した」と述べ、「われわれは不一致が生じないよ
う全力を尽くすために、話し合いを続けている」と強調した。 

現時点、独国債に買いが集中し金利が低くなり、他国国債は買われ
ないことで金利が上昇している。市場金利はユーロ圏全体で一緒で
あり、国債金利だけが異常な状態になる。空売りをするとこの金利
差が広がり、大もうけできる。しかし、ドイツ以外ではその禁止で
、国債市場が機能しなくなる恐れがありできない。このため、EU
での不一致が起こることになる。

不一致を無くそうと、EU財務相は21日、財政・金融改革作業部会
の初会合を行い、EUの財政規律を順守できなかった国に対し一層
厳格な制裁を科すことで大方合意した。

EU加盟国は財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内に抑える
よう義務付けられているが、欧州委とドイツによる提案はいずれも
、違反を繰り返す国に対し、より広範な制裁を迅速に科すことを求
めて、双方とも、EUが定める公的債務のGDP比を60%以下に
抑えるためのメカニズムの導入も提案している。

しかし、EU危機問題の根底にあるのは、米国発のサブプライムロ
ーンでの損害がまだ、EUの銀行では内在化しているために、今回の
ギリシャ国債の債務カットやデフォルトになると、2つの損害が重
なり、銀行の倒産が起きる可能性があると見られているためである。

この危険を察知して欧州市場で、銀行間の「相互不信」が強まって
きた。金融機関のドル資金の調達コストを示すロンドン銀行間取引
金利(LIBOR)の3ヶ月物金利は21日、昨年7月下旬以来の高水準となる
0.5%近くまで上昇している。

しかし、一方では財政危機のギリシャで20日、官民の2大労組が政
府の緊縮策に反対して再び24時間の一斉ストライキを行った。し
かし、ギリシャは観光業が国内総生産(GDP)の17%を占め、
5人に1人が観光関係の仕事に従事している。

しかし、治安の悪さから欧州では自国民にギリシャへの渡航自粛を
呼びかける国も出始め、観光客が前年比で約10%減少し、今年全
体では15%減ると予測されている。というように、ギリシャ経済
危機は大きくなることが確実で、国債危機は依然、存在し、遅かれ
早かれ、国債の債務減免などの処置が必要になる。

21日の東京株式市場では、日経平均株価が取引開始直後から約3カ
月ぶりに今年最安値を更新、一時9700円を割り込んだ。終値は
、251円66銭(2.51%)安い9778円65銭である。

1.世界への影響
世界の株安は、欧州の債務問題が終息しなければ、金融市場が機能
不全に陥りるリスクを見ているためであり、2008年末の市場混
乱のような世界的危機を引き起こす可能性があるとタルーロFRB
理事は指摘する。「欧州のソブリン債問題は世界景気回復に深刻な
妨げとなる可能性がある」と述べた。

また、米経済再生諮問会議のボルカー議長は18日、欧州の債務危機
について、米国が財政赤字を抑制しなければ陥りかねないリスクを
示している、と述べた。日米もギリシャなどPIIGS諸国同様に
財政赤字が大きい。

また、中国は欧州債務危機の影響で、利上げや人民元の上昇容認を
含む政策上の変更を6月遅くまで先送りする可能性があるとの見方
が強まっている。北京で来週開催される米中戦略・経済対話でもイ
ラン制裁や北朝鮮の天安攻撃での沈没での制裁などで、人民元切上
げは交渉のカードに使われるだけであり、人民元に関して中国は外
圧に屈することはないようだ。

もう1つが、英住宅ローン会社は「信用履歴に多少の傷」を負った
人々に融資を提供している。融資の名称にサブプライム(信用力の
低い個人向け)は使わない。その呼び名は「コンプレックスプライ
ム」という。 ユーロとは距離を置く英国でも危機が高まっている。

これに米国では第1四半期の米住宅ローン、差し押さえ率が過去最悪
更新した。というようにまだ、危機の火種が残っている。

このようにユーロ危機は、銀行の危機に発展すると、ユーロ圏以外
の世界にも拡大する可能性が高い。2008年末リーマンショック
後の金融危機に再度なる可能性があることを認識して、世界同時株
安になったようである。しかし、あくまでも機関投資家の認識であ
るが。

2.ユーロの欠陥
欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は、ユーロは危機的な状況
になく、信頼できる通貨であるとの見解を示した。「明確にしたい
のは、危機的な状況にあるのはユーロではなく、一部の国の財政政
策であることだ。これらには対処しなくてはならず、対処はなされ
ている」と述べた。ECBはこのため、ユーロ圏諸国の国債を買い
入れることにしたのである。

しかし、EUでは財政や直接税に関する政策は各国に委ねられて、
経済統合のために財・人・サービス・資本の自由な移動を保障する
法的枠組を作り、これを阻害する加盟国の国内法は内外無差別の原
則に反するとして禁止されている。しかし、今回は、ユーロ加盟国
の財政赤字が問題になり、それをキーに危機が拡大している。

このため、EUの財政規律を順守できなかった国に対し一層厳格な
制裁を科すことで大方合意したが、制裁とは何かが問題になる。
どうも、ユーロからの脱退になるように感じる。ユーロにある程度
成熟した諸国が加盟している間はよかったが、徐々に東欧諸国が加
盟してきて、発展途上国的な要素が増している。このため、どうし
ても財政規律がゆるくなり、かつユーロの価値が自国通貨時代より
あるために、国債を発行しやすくなる。

もう1つの問題が、ユーロ危機で経済大国ドイツやオランダが得を
することになる。ユーロの下落で輸出環境が良くなる。しかし、そ
の代わりに、破綻国の面倒を見るのは、ドイツしかない。ドイツ国
民は、自分たちの税金が働かない国の国民に配られることになり、
これは面白くない。このため罰則として、そのような破綻国になり
そうな国はユーロから追い出すか、ドイツがユーロから出るかどち
らかということに成る。この気持ちは分かるような気がする。

もう1つの解決が、財政や直接税までユーロ圏全体で監視する制度
にすることであるが、こうすると各国政府の意味が無くなるので、
反対が多い。

というように、通貨同盟は難しいことが分かる。東アジア共同体を
鳩山政権は目指しているが、通貨統一は止めたほうがよい。経済一
体化の方向でアジア経済統一を進めることである。

3.機関投資家の思惑
21日のニューヨーク株式市場は4日ぶりに反発し、ダウ平均は前日
比125.38ドル(1.25%)高の1万0193.39ドルで
取引を終えた。EUの状況はあまり変化していないのに、機関投資
家はギリシャ危機は折込済みということで、次の材料を探し初めて
いる。

日本経済の状況を見ても景気回復感があり、東京株式市場でのユー
ロ危機に影響された株安は、日本の現状からすると奇異な感じを受
けるが、東京市場の売買比率は外国人投資家が60%以上もいるた
めに、日本経済の実態というより、世界の懸念が反映されている。
世界の機関投資家がどう考えるかが反映されて、このようなことに
なる。

このため、日本の個人投資家も世界の動向を見て、かつ世界の機関
投資家がどう見るかを予測している必要がある。

さあ、どうなりますか?
しかし、世界を見ると経済的な話題が沢山あり、徐々に日本という
狭い範囲からグローバルに事態を見る必要が出てきている。

参考
3630.ギリシャからユーロ危機へ
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/220515.htm
3624.ギリシャ国債のデフォルト回避
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/220508.htm
==============================
ニューヨーク株、4日ぶり反発 終値125ドル高
2010年5月22日6時7分

 【ニューヨーク=山川一基】21日のニューヨーク株式市場は4
日ぶりに反発した。大企業で構成するダウ工業株平均は前日比
125.38ドル(1.25%)高の1万0193.39ドルで取
引を終えた。取引開始直後には、欧州経済への不安感から大きく値
を下げ、一時、約2週間ぶりに1万ドルを割ったが、その後、値下
がりの激しかった金融株を中心に買い戻された。 

 ダウ平均はこの3日間で約560ドル下げており、21日は取引
終了近くになって安値買いの動きが広がった。ハイテク株主体のナ
スダック総合指数も、前日比25.03ポイント(1.14%)高
の2229.04に上昇した。 
==============================
ECBの緊急支援策、今週のユーロ圏国債入札が試金石に
2010年 5月 17日 16:16 JST 
WSJ
 欧州中央銀行(ECB)による国債買い入れという異例の政策に
よって、欧州の経済小国に対する金融圧力は緩和された。だが、ソ
ブリン債のデフォルト(債務不履行)に対する警戒感が、依然とし
て金融市場全体を覆っている。 

 アイルランドとスペインは今週、国債入札を控えており、その結
果は、ECBの緊急支援策がどの程度奏功したかを占う試金石とな
るだろう。 
==============================
欧州債務危機、米国の「制御なき借り入れ」のリスク示す
=ボルカー氏

 [スタンフォード(米カリフォルニア州) 18日 ロイター]
 米経済再生諮問会議のボルカー議長(元連邦準備理事会議長)は
18日、欧州の債務危機について、米国が財政赤字を抑制しなけれ
ば陥りかねないリスクを示している、と述べた。

 同氏はスタンフォード経済政策研究所で講演し、「制御なき借り
入れが米経済にもたらす潜在的な脅威についてさらなる例証が必要
なら、欧州の単一通貨維持や欧州経済の均衡化、欧州の政治的結束
の持続に向けた必死の努力を見るだけで済む」と指摘。米国は投機
筋の攻撃にさらされているギリシャのような欧州の小規模国とは異
なり、米国の通貨と信用は「十分に確立されている」としながらも
、「深刻な問題が存在する。最も差し迫った問題は、拡大する給付
金制度へのわれわれのコミットメントの持続可能性だ」と述べた。
==============================
ドイツの空売り規制が適用開始、金融市場は大幅下落
2010年 05月 20日 08:38 JST

[ベルリン 19日 ロイター] ドイツ当局は19日から、ユー
ロ圏の国債ならびに関連したクレジット・デフォルト・スワップ(
CDS)を対象に、現物手当てのない空売り(ネーキッド・ショー
ト・セリング)の一時的禁止措置を導入した。金融市場は大幅に下
落、ほかの欧州諸国は事前の相談はなかったとしており、波紋が広
がった。

 ドイツが単独での規制に踏み切ったことは、欧州が債務危機への
対応で一枚岩ではないことを示唆している。また欧州の市場規制に
不透明感が高まったことも、投資家を不安にさせる原因となったも
よう。

 欧州改革センター(CER)のチーフエコノミスト、サイモン・
ティルフォード氏は「問題は市場ではないということを、ドイツが
理解していないことを示す。市場がユーロ圏の持続可能性に懐疑的
になるのはもっともだ」とし「今回の規制も他国と協調して行うべ
きものだった。ドイツの決定は国民におもねるものだ」との見方を
示した。 
==============================
ギリシャ官民労組が再び一斉スト 渡航自粛で観光業打撃
2010年5月20日21時43分

. 【ローマ=南島信也】財政危機のギリシャで20日、官民の2大
労組が政府の緊縮策に反対して再び24時間の一斉ストライキを行
った。今月5日のストでは、デモに参加した暴徒による火炎瓶で3
人が死亡しており、夏の休暇期を前に、主要産業の観光業は深刻な
影響を受けている。 

 ギリシャでは政府の緊縮策に対する国民の反発が収まらず、治安
が悪化しているとのイメージが定着。欧州では自国民にギリシャへ
の渡航自粛を呼びかける国も出始めた。 

 ギリシャは、観光業が国内総生産(GDP)の17%を占め、5
人に1人が観光関係の仕事に従事している。09年は世界中から約
1500万人の観光客が訪れた。しかし、4月末現在で観光客が前
年比で約10%減少し、今年全体では15%減ると予測されている。
主要産業の低迷は、景気後退や失業者増に拍車をかけることになり
、財政再建への道のりは一層困難になる。 
==============================
東証、一時9700円割れ 今年最安値を更新
2010年5月21日11時23分

 21日の東京株式市場では、前日のニューヨーク市場での急激な
株安と円高の流れを受け、日経平均株価が取引開始直後から約3カ
月ぶりに今年最安値を更新、一時9700円を割り込んだ。

 日経平均は一時、前日終値より333円68銭安い9696円63
銭をつけ、昨年12月以来の安値になった。午前の終値は、251
円66銭(2.51%)安い9778円65銭。円高が嫌気され、
輸出関連株を中心に売られている。
==============================
メルケル独首相:6月のG20首脳会議で金融改革の推進を求める
2010年 5月 21日 4:01 JST 
WSJ
【ベルリン】メルケル独首相(20日、独財務省で)はこの日、次回
G20首脳会議で協議される見通しの新金融規制について検討するた
めのG20諸国の多くの財務相との会議で発言した。次回G20首脳会
議は6月にトロントで開催される予定。 

 同首相は「景気刺激策導入時と同様に、出口戦略についても国際
的協調で合意できるとの見方を大いに強めている」と語った。 

 メルケル首相はまた、銀行各行に対する金融取引税もしくは金融
活動税の導入を推進している。こうした課税は金融機関の利益と賞
与の支給に適用される見通し。与党高官らは、ドイツが導入を計画
している銀行課税に加え、こうした課税が検討されている、と明ら
かにした。 
==============================
財政危機への対応で仏独連携を確認 サルコジ大統領 
(CNN) フランスのサルコジ大統領は20日、欧州の財政危機
への対応をめぐり、ドイツのメルケル首相との連携に全力を挙げて
いると述べた。訪仏中のキャメロン首相との共同会見で語った。 

サルコジ大統領は大統領官邸での会見で、「メルケル首相には、こ
のように重要な問題で英仏間で意見の不一致があってはならないと
話した」と述べ、「われわれは不一致が生じないよう全力を尽くす
ために、話し合いを続けている」と強調した。 
==============================
人民元、切り上げ先送りか 欧州危機、引き締め措置に慎重
2010.5.22 05:00サンケイbiz

 中国は欧州債務危機の影響で、利上げや人民元の上昇容認を含む
政策上の変更を先送りするとの見方が強まっている。

 一方、オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)は21
日の顧客向け文書で、中国は人民元の上昇を容認する動きを少なく
とも6月遅くまで先送りする可能性があるとの見方を示した。

 米中戦略・経済対話をめぐっては、中国財政省の朱光耀次官補が
20日の北京での会見で、人民元に関して外圧に屈することはない
と述べ、対話を機に中国当局が上昇容認に踏み切るとの観測を打ち
消した。

 朱次官補は「主権国家の担当当局だけが為替レートの形成方法に
ついて決定を下す権限を有する」と発言。各国は「世界経済の回復
にとって好ましい環境をつくり出すために、為替レートの安定維持
に取り組むべきだ」と続けた。

 また、朱次官補は、米中戦略・経済対話の議題にはユーロ圏の債
務危機が含まれると述べた。
==============================
EU財務相、財政規律違反国への厳格な制裁導入で大方合意
2010年 05月 22日 07:49 JST 
[ブリュッセル 21日 ロイター] 欧州連合(EU)財務相は
21日、財政・金融改革作業部会の初会合を行い、EUの財政規律
を順守できなかった国に対し一層厳格な制裁を科すことで大方合意
した。

 その上で「加盟国すべてが、必要ならばEUの安定・成長協定に
ない新たな制裁を導入する用意ができている」と述べた。

 EU加盟国は財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内に抑え
るよう義務付けられているが、欧州委とドイツによる提案はいずれ
も、違反を繰り返す国に対し、より広範な制裁を迅速に科すことを
求めている。また、双方とも、EUが定める公的債務のGDP比を
60%以下に抑えるためのメカニズムの導入も提案している。
==============================
実態はサブプライムか−拡大中の英「コンプレックスプライム融資」

5月20日(ブルームバーグ):英住宅ローン会社は「ほぼプライム
(優良)」な借り手のほか、「信用履歴に多少の傷」を負った人々
に融資を提供している。融資の名称にサブプライム(信用力の低い
個人向け)は使わない。その呼び名は「コンプレックスプライム」
だ。 

米サブプライム危機が約80年で最悪の金融危機を引き起こしてから
3年。米ゼネラル・エレクトリック(GE)のGEマネーや英イン
ベステックのケンジントン部門は、主要銀行から融資を拒まれた英
顧客に再び住宅ローンを提供している。信用履歴が良くても、貸し
付ける額は以前よりも少ないという。 

住宅ローン仲介会社ジョン・チャーコルのアドバイザー、レイ・ブ
ルガー氏は「それほどリスクが高くない人々向けの市場はある。そ
こに向けた融資供給がなかったということは、高い金利で融資でき
るサブプライム市場があるということだ」と指摘した。 
==============================
第1四半期の米住宅ローン、差し押さえ率が過去最悪更新=MBA
5月20日14時12分配信 ロイター

 5月19日、米抵当銀行協会の調査で、第1四半期の住宅ローン
差し押さえ率が過去最悪を更新したことが明らかに。
ロイター/Joshua Lott
==============================
欧州危機、数週間内に支援枠組み ユーロ圏議長
 欧州連合(EU)ユーロ圏財務相会合のユンケル常任議長(ルク
センブルク首相)は20日、東京都内で共同通信の取材に応じ、財
政難に陥ったユーロ導入国を支援する新たな枠組み「欧州安定メカ
ニズム」の整備が数週間以内に終わるとの見通しを示した。

 今月上旬にEUが決定した支援枠組みは、欧州委員会とユーロ導
入国が計5千億ユーロ(約56兆円)を拠出し、国際通貨基金
(IMF)が最大2500億ユーロを支援する。ユンケル氏は、導
入国による拠出の仕組みに「技術的な細かな点の解決が残っている
」とした上で、近く財務相会合で協議し、数週間以内に実行可能な
状態になると述べた。

 危機の再発防止に向け、ユーロ圏の財政規律を定めた「安定成長
協定」に繰り返し違反した国に「罰則を科しやすくしなければなら
ない」と主張。具体的な罰則として、EU交付金の停止を挙げた。

2010/05/20 18:41   【共同通信
==============================
欧州債務危機、米経済や金融機関に深刻なリスクも=FRB理事
2010年 05月 21日 09:03 JST

 [ニューヨーク 20日 ロイター] 米連邦準備理事会(FR
B)のタルーロ理事は20日、欧州の債務危機について、世界のク
レジット市場や米大手金融機関を脅かしていることから、米景気回
復に深刻なリスクをもたらす可能性があるとの見解を示した。
 理事は米議会の小委員会で証言し、欧州の債務問題が終息しなけ
れば、金融市場が機能不全に陥り、2008年末の市場混乱のよう
な世界的危機を引き起こす可能性があると指摘。「欧州のソブリン
債問題は深刻な妨げとなる可能性がある」と述べた。

 投資家の間ではギリシャを取り巻く懸念が依然根強い。欧州連合
(EU)と国際通貨基金(IMF)による1兆ドル規模の緊急支援
措置は欧州の債務問題解決に十分ではないとの見方が強まっている。

 タルーロ理事は「緊急支援パッケージをもってしても、ユーロ圏
で本質的かつ、痛みを伴う公算の大きい財政改革を実施する必要性
がなくなることはない、と投資家は認識している」と語った。

 「欧州周辺国のソブリン問題が拡大し、欧州全域に問題が及んだ
場合、かなりの規模のクレジットエクスポージャーがある米銀は一
段と大きな損失に直面するだろう」とし、「米金融機関への直接的
な損失に加え、欧州での金融の緊張の高まりが世界の金融市場に波
及する可能性がある」と語った。

 また、欧州の見通しが悪化すれば世界的に貿易が減速し、米景気
回復を圧迫する恐れがある、との見方を示した。
==============================
ユーロは危機的な状況にない=ECB総裁
2010年 05月 22日 05:03 JST

 [フランクフルト 21日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB
)のトリシェ総裁は、ユーロは危機的な状況になく、信頼できる通
貨であるとの見解を示した。独紙フランクフルター・アルゲマイネ
が19日に行ったインタビューでの同総裁の発言として伝えた。
 同紙によるとトリシェ総裁は「明確にしたいのは、危機的な状況
にあるのはユーロではなく、一部の国の財政政策であることだ。こ
れらには対処しなくてはならず、対処はなされている」と述べた。

 ユーロの貿易加重ベースでの下落率は過去3カ月で10%に達す
る。市場でECBによる介入が取りざたされていることについてト
リシェ総裁は「介入に関しては一切コメントしない」と述べるにと
どめた。

 ECBは2000年終盤以来、外国為替市場への介入を実施して
いない。この当時のユーロの貿易加重ベースでの下落率は10カ月
で11%。ECBは当初他の中銀と共に協調介入を行い、1ユーロ
=0.82ドル近辺に相場を維持した。

 またECBがソブリン危機対策として再導入した緊急貸し出し措
置は時限的なものであるとし「市場の機能改善に伴い、ECBは確
実にこうした措置を適切な時期に解除する」と述べた。
==============================
欧州、銀行間金利が上昇

ギリシャ危機を受けて動揺が広がる欧州市場で、銀行間の「相互不
信」が強まってきた。金融機関のドル資金の調達コストを示すロン
ドン銀行間取引金利(LIBOR)の3ヶ月物金利は21日、昨年7月下旬以来
の高水準となる0.5%近くまで上昇。欧州債券市場では、安全性が高
いとされるドイツ国債への資金流入が目立ち始めた。リスク警戒が
さらに強まれば、市場の信用収縮が広がる恐れも否めない。

「ソブリンリスク(政府債務の信認危機)は歴史的に、政治の弱さか
ら起こってきた」。19日、米ボストンに世界の投資家を集めて開い
た会合で、金融史が専門のハーバード大教授、ニーアル・ファガー
ソン氏が力説すると、会場の喝采を浴びた。
目先の支持率を意識したばらまき財政や不十分な税収。財政の悪化
は景気の低迷はもちろん、リーダーシップ無き政治が根底にあると
説いた」
(日本経済新聞2010年5月22日1面)


コラム目次に戻る
トップページに戻る