3630.ギリシャからユーロ危機へ



ユーロが急落し、4年ぶりの安値水準になっている。  Fより

日本の景気は徐々に上昇しているが、金融危機が再度起こる可能性
があると、欧米諸国は身構えている。
14日、1ユーロ=1.23ドル、1ユーロ=113円台半ばとい
うことで、相当安い水準にまで下落している。

この原因は「フランスのサルコジ大統領がユーロ離脱の可能性を示
唆した」と14日のスペイン紙パイスは、サパテロ・スペイン首相
の発言として伝えたことからであり、スペイン政府は直ちに首相の
発言を否定、「パイス紙の報道は全く根拠を欠いている」と火消し
に追われた。

しかし、今週初めにギリシャ危機で、今までの文脈と違う対応策が
出てきた。欧州中央銀行(ECB)は、11日各国国債買い入れの
決定した。

ECBの決定は、ユーロ圏が債券市場の問題一掃のために打ち出し
た緊急対策の柱の1つであるが、国債買入れしないという原理原則
を放棄したことになる。ユーロに脅威を与えると同時に世界の金融
システムが再び危機に陥るリスクが大きいために、とうとう原理原
則に拘っていられないことになったのである。

ギリシャ政府は6日に緊縮策関連法を国会で可決したことで11日
、EUとECB、IMFに対し、財政危機脱却に向けた支援のうち
第1弾として、計200億ユーロ(約2兆3600億円)の融資実行を要請
した。

そして、ギリシャ以外のPIIGSなどへの通貨危機にも備えて、
EUの緊急財務相理事会は10日未明、欧州単一通貨ユーロ圏諸国
がギリシャのように資金難に陥った場合に支援する「欧州安定メカ
ニズム」について5000億ユーロ(約59兆円)の資金枠を用意
することで合意した。EMFの誕生である。

この前日に国際通貨基金(IMF)は、財政危機に陥っているギリ
シャを支援するため、3年間で300億ユーロ(約3.5兆円)の
緊急融資を正式に決定している。

米連邦準備理事会(FRB)は9日、他の主要中銀とスワップ協定
を再締結した。リーマンショック時に金融機関同士の短期金融市場
が枯渇したことを想定した対応である。日本の日銀も短期金融市場
にドルを潤沢に供給する協調行動に乗り出すと発表した。

世界的な通貨マフィアはリーマン・ショック時の対応を経て、非常
にすばやい行動ができるようになっているが、これで問題が解決し
たことにはならない。

ギリシャの官民2大労組が12日夕、政府が財政再建の一環として
進める年金制度改革、公務員削減や賞与廃止、付加価値税増税など
の緊縮策に反対し、大規模なデモと集会を首都アテネで始めた。

そして、ドイツ銀行のヨゼフ・アッカーマンCEOは「ギリシャが
一定の時間を経て、債務完済に十分な経済力に達するか疑問だ」と
述べた。ジョージ・ソロス氏も、5%という資金調達コストでは、
景気後退と歳入減少という「死のサイクル」に陥ると述べている。

ボルカー元FRB議長も、ギリシャの財政危機を受けて、ユーロ崩
壊の可能性に懸念を表明した。1992年に英国が欧州通貨制度(EM
S)の為替相場メカニズム(ERM)離脱を余儀なくされた際に英
国の蔵相を務めたノーマン・ラモント氏も13日、同様の意見を表明
していた。 

ギリシャ危機が世界へ拡大する経路は幾通りもある。ただこのうち
の大半は、スペインやイタリアなど経済規模のより大きい欧州諸国
にまず波及してから、世界に飛び火することになると見る。

しかし、ギリシャ国債の債務減免により欧州の銀行が、ギリシャ国
債と投資で大損害を出すと、それが波及していくことになる。相互
関連が高いことで、日本の銀行も大きな損害を抱えることになる可
能性も否定できない。

もう1つが、PIIGSなどの危機をも経て、EUやIMFの資金
が底をつき、日本が国債危機に陥っても、助けられないという状態
になる可能性もある。

さあ、どうなりますか??
自国のことでもあるという意味で、見る必要がある。
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ユーロ急落、4年ぶりの安値水準 NY外為 対円も下落
2010年5月15日10時27分

 【ニューヨーク=山川一基】14日のニューヨーク外国為替市場
は、欧州経済への不安からユーロが売られ、ユーロは対ドルで急落
。午後5時(日本時間15日午前6時)時点で前日比約0.02ド
ル安の1ユーロ=1.23ドル台半ばと、2006年4月以来、約
4年ぶりの安値水準となった。対円でも一時、1ユーロ=113円
台半ばまで値下がりした。 
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仏大統領「ユーロ離脱も」 スペイン紙報道で市場混乱
2010.5.15 00:13
 「フランスのサルコジ大統領がユーロ離脱の可能性を示唆した」
14日付のスペイン紙パイスは、サパテロ・スペイン首相の発言と
してこう伝え、ユーロが一時対ドルで1年半ぶりの安値を記録する
など市場に混乱が広がった。

 スペイン政府は直ちに首相の発言を否定、「パイス紙の報道は全
く根拠を欠いている」と火消しに追われた。

 同紙によると、サルコジ大統領がユーロ離脱を示唆したとされる
のは、ギリシャへの1100億ユーロ(約12兆6千億円)に上る
支援を決定した7日の欧州連合(EU)首脳会議の席上。

 支援に後ろ向きのドイツのメルケル首相に対し、サルコジ氏はテ
ーブルをたたきながら翻意を要請。ドイツが支援に参加しないなら
、フランスはユーロを離脱すると強く迫ったという。メルケル首相
も最後には支援に同意した。(共同)
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アテネで再び大規模デモ 官民労組、年金減額に反発
2010年5月13日0時58分

 【アテネ=南島信也】財政危機に陥ったギリシャで、官民2大労
組が12日夕、政府が財政再建の一環として進める年金制度改革な
どに反対し、大規模なデモと集会を首都アテネで始めた。アテネで
は5日にも15万人以上が参加するデモがあり、暴徒化した参加者
が投げた火炎瓶で銀行の支店が炎上し3人が死亡する事件があった。 

 政府は、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)による総額
1100億ユーロ(約13兆円)の融資の条件として緊縮策を受け
入れ、公務員削減や賞与廃止、付加価値税増税などの緊縮策関連法
を6日に成立させた。 

 さらに、年2回の年金特別給付金廃止や、女性の受給年齢を男性
と同じ65歳まで引き上げるための年金制度改革法案の早期成立を
目指している。 

 労組側は年金受給額が平均30%減額されることになり、年金生
活者への影響が大きすぎるとして反発を強めており、20日にも一
斉ストライキを行う構えだ。 
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ECB、ユーロ防衛に信認賭ける禁じ手の国債買い入れ
2010年 05月 12日 16:45 JS

 [フランクフルト 11日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB
)の国債買い入れ決定は、危機にさらされているユーロを防衛する
ため、ECBが原理原則や信認を賭ける用意があることを示してい
る。

 ECBの決定は、ユーロ圏が債券市場の問題一掃のために打ち出
した緊急対策の柱の1つだ。ギリシャに端を発した債務問題は先週
後半に重大な局面を迎え、ユーロに脅威を与えると同時に世界の金
融システムが再び危機に陥るリスクが強まっていた。

 ただ、買い入れ計画の詳細は引き続き不透明で、規模についての
ヒントはなく、目標とする償還期限や利回りに具体的目標を設定し
ているか、どの程度の期間を想定しているかも分からない。

 ECBにとって、長らく続けてきた国債買い入れへの抵抗を放棄
し、無節操な政府の歳出を賄うという究極のタブーに危険なほど近
づくことは、突然の方針転換と言える。
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200億ユーロの実行要請へ=緊急融資の第1弾−ギリシャ
5月11日16時58分配信 時事通信

 【パリ時事】ギリシャ政府は11日中に、欧州連合(EU)の執行機
関である欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)
に対し、財政危機脱却に向けた支援のうち第1弾として、計200億ユ
ーロ(約2兆3600億円)の融資実行を要請する。同国財務省筋の話と
してAFP通信が伝えた。
 このうち145億ユーロはEUのユーロ圏諸国、55億ユーロはIMFが負
担する。同筋は「可能なら、その日のうちに受け取ることになる」
と述べた。 
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米FRB、主要中銀とスワップ協定を再締結
2010年 05月 10日 11:00 JST

 [ワシントン 9日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)
は9日、他の主要中銀とスワップ協定を再締結したと発表した。
 FRBは、欧州中央銀行(ECB)、カナダ中央銀行、イングラ
ンド銀行、および、スイス国立銀行とスワップ協定を再締結した。

 FRBは声明で「協定は、ドル資金調達市場の流動性状況を改善
し、緊張が他の市場や金融センターに波及しないことを防ぐための
措置」としている。
 ECB、英中銀、および、スイス中銀との協定は、前回の協定と
類似した内容になるとしている。カナダ中銀とのスワップ枠は最大
300億ドル。期間は2011年1月までとなる。
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日米欧、市場にドル協調供給へ ギリシャ発の危機防ぐ
2010年5月10日10時14分

 日米欧の6中央銀行は10日、金融機関同士が資金を融通し合う
短期金融市場にドルを潤沢に供給する協調行動に乗り出すと発表し
た。ギリシャの財政危機が世界的な金融危機につながるのを防ぐた
め。2008年秋のリーマン・ショックで導入されたが、10年2
月に終了していた。 

 日本銀行は10日、臨時の金融政策決定会合を開き、協調行動に
加わることを正式に決める見通しだ。 
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ドイツ与党、参議院で過半数割れへ ギリシャ問題影響か
2010年5月10日18時40分

 【デュッセルドルフ(ドイツ西部)=金井和之】ドイツ西部ノル
トライン・ウェストファーレン(NRW)州議会選挙が9日、投開
票され、地元メディアによると、連邦レベルでも連立を組むキリス
ト教民主同盟(CDU)と自由民主党(FDP)は過半数を維持で
きなかった。 

 CDUとFDPが州政府の政権から転落すれば、メルケル政権は
各州代表で構成される連邦参議院(上院)で過半数割れに追い込ま
れることになり、厳しい政権運営を迫られることになる。 

 メルケル政権は今回の選挙の直前に、財政危機に陥ったギリシャ
への巨額の支援を決めており、自国の経済状況の改善を優先すべき
だとする有権者らの反発を受けた可能性がある。CDU関係者は「
主要因とは言えないが、ギリシャ支援の影響があったことは否定で
きない」と述べた。 

 有数の工業地帯ルール地方などに多くの工場労働者を抱える同州
では雇用への不安を抱える人が多く、地元メディアの速報によると
、CDUは10%近くも得票を落とし、ライバルで中道左派の社会
民主党(SPD)に議席数で並ばれた。90年連合・緑の党は2倍
近く議席を伸ばし、連立のかぎを握る存在となった。 
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欧州安定基金59兆円で合意 ギリシャ以外の危機にも対応
2010.5.10 10:43サンケイ

 【ロンドン=木村正人】欧州連合(EU)の緊急財務相理事会は
10日未明、欧州単一通貨ユーロ圏諸国がギリシャのように資金難
に陥った場合に支援する「欧州安定メカニズム」について5000
億ユーロ(約59兆円)の資金枠を用意することで合意した。信用
不安が世界に拡大するのを防ぐため、国際通貨基金(IMF)も協
力してユーロ防衛に全力を注ぐ。

 同理事会は11時間以上に及び、終了後、EU議長国スペインの
サルガド経済・財務相と欧州委員会のレーン委員(経済・通貨担当
)が記者会見した。

 それによると、ユーロ圏16カ国が4400億ユーロの融資保証
枠を設定。EUの執行機関、欧州委員会が金融危機で国際収支が悪
化した非ユーロ圏のラトビア、ルーマニア、ハンガリーを支援して
いる融資制度を600億ユーロ増額してユーロ圏にも適用する。

 IMFは2200億ユーロの融資保証を検討している。IMFの
ストロスカーン専務理事も会議に同席した。
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IMF、ギリシャに3.5兆円の融資決定 2番目の規模
2010年5月10日11時2分

 【ワシントン=尾形聡彦】国際通貨基金(IMF)は9日に理事
会を開き、財政危機に陥っているギリシャを支援するため、3年間
で300億ユーロ(約3.5兆円)の緊急融資を正式に決定した。
ユーロ圏がすでに決定している800億ユーロの融資と合わせて、
3年で計1100億ユーロ(約13兆円)の支援態勢が整った。 
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ドイツ銀CEO:ギリシャの債務完済能力は疑問−ZDF5月14日
(ブルームバーグ):

ドイツ銀行のヨゼフ・アッカーマン最高経営責任者(CEO)は、
ギリシャが債務を完全に返済できない恐れがあると指摘。完済には
「途方もない努力」が必要になるとの見解を示した。 

  アッカーマンCEOはドイツのZDFテレビのインタビューで
、「ギリシャが一定の時間を経て、債務完済に十分な経済力に達す
るか疑問だ」と述べた。また、ギリシャは安定する必要があるとし
、破たんすれば影響が他国に波及し、「ある種の崩壊」につながる
可能性が極めて高いと指摘した。同CEOのインタビューは13日遅
くに放送され、ZDFテレビのウェブサイトに掲載された。 
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ボルカー氏:「ユーロ崩壊」の可能性を懸念−ギリシャ危機で

5月13日(ブルームバーグ):ボルカー元米連邦準備制度理事会(
FRB)議長は、ギリシャの財政危機を受けて、ユーロ崩壊の可能
性に懸念を表明した。 

  ボルカー氏(82)は13日にロンドンで講演し、「ユーロ崩壊の
可能性という重大な問題がある」と発言。「一部の国では、経済政
策と財政政策の規律の不可欠な要素に対する期待がこれまでのとこ
ろ報われていない」と指摘した。 

欧州連合(EU)は今週、ソブリン債危機の拡大阻止とユーロの信
認回復を図るため、7500億ユーロ(約87兆円)に上る包括的な金融
支援策をまとめた。スノー元米財務長官は12日、ユーロが生き残る
には共通の財政政策が必要との見解を示した。1992年に英国が欧州
通貨制度(EMS)の為替相場メカニズム(ERM)離脱を余儀な
くされた際に英国の蔵相を務めたノーマン・ラモント氏も13日、同
様の意見を表明した。 
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ギリシャ悲劇、世界は息を殺して見守る
2010年 5月 11日 18:49 JST 
WSJ
 21世紀初頭の叙事詩的金融ドラマが終わりに近づいているような
時、運命の歯車が狂った。それは再び日曜日の夜だった。アジアで
市場が開くのを控え、当局者は救済計画の策定を急いだ。今回の大
きな違いは舞台裏で動いたのが欧州連合(EU)と欧州中央銀行(
ECB)で、前回のように米政府とニューヨーク連銀ではなかった。
またもう一つの相違点は緊張をもらしたのが銀行ではなく、政府の
信用力だったことだ。 

 1幕目は米住宅市場のバブルの崩壊。われわれは、米国の金融が単
純だが間違った想定に依拠していた点を学んだ。つまり住宅価格は
全国レベルで絶対に下落しないという見通しだ。また、現代の金融
が、リスクを集中化するよりも拡散することも知った。2幕目で米政
府は対応した。しかし積極的ではなかった。 

 3幕目で天空神ゼウスが雷撃を放ち、リーマン・ブラザーズとアメ
リカン・インターナショナル・グループ(AIG)に火を放った。
米国と他の主役たちは結局、金融システムの崩壊を防ぐため、でき
ることはすべてする決定を下した。議会は銀行支援のため7000億ド
ル(約65兆円)規模の金融安定化法案を承認し、連邦準備理事会(
FRB)は1兆ドル(約93兆円)以上の紙幣を印刷し、各国政府は銀
行債務を保証した。 

 4幕目では7870億ドル(約73兆円)の景気対策を引っさげ、オバマ
大統領が登場した。銀行のストレステスト(健全性審査)が行われ
、奇跡的に増資の道が開かれた。 

 ここで金融危機劇は幕あいとなる。観客は劇が尻すぼみになるの
か、あるいは今後何か思わぬ展開になるのかと訝った。5幕目でアジ
アが回復し、米国もそれほど旺盛ではないものの、同様に持ち直し
た。信用市場は回復し、暗雲に覆われた地平線も晴れ始めた。コー
ラスの音色も明るくなり始めた。 

 6幕目で債務を返済できなくなったギリシャが脇役で登場。しかし
、ギリシャの罪はその規模においてだけ、他の配役とは違っていた。
市場は再び一斉に嘆き始めた。燃え上がる金融の炎は舞台のセット
を包んだ。しかし、消防署の政治学により、消防士の到着が遅れ、
火災は次第に大きくなった。登場人物は2008年9月の教訓を忘れてい
た。消防士の対応が少な過ぎ遅過ぎれば、消火のために使う水の量
も増えることになる。 

 そこで先の日曜日に大量の水とともに7幕目が開幕した。EUと国
際通貨基金(IMF)はギリシャに対し1兆ドル近い支援を約束。
ECBも欧州の政府国債と民間債券を買い入れる方針を示した。 

 ウニクレディト・グループのマリオ・アンヌンツィアータ氏は「
今回に限り、発表された支援規模は事前リークや憶測をはるかにし
のぐものだった。これは、大幅に増えた予算とより印象的な特殊効
果で制作された3D版『衝撃と畏怖』パート2を見るようなもの」と
述べている。 

 FRBも、米国や海外の投資家が米国債に回避せずに妥当なリス
ク資産投資を継続できるよう、ECBとドル・スワップ協定の再締
結を発表した。10日夜明けが来ると、市場の合唱は明るくなった。 

 しかし、今回の危機劇はまだ終わっていない。市場は一旦は落ち
着いたが、基本的な問題は解決されていないからだ。 

 カリフォルニア大学バークレー校の国際経済学者バリー・アイケ
ングリーン氏は、ポルトガルとスペインが支払い不能に陥る可能性
に触れ、「ECBの助けもあり、債券市場は両国が財政状態を調整
する限り、支えられるだろう」と指摘。しかし、両国の財政規律の
公約については、スウェーデンのボルグ財務相が呼ぶところの「オ
オカミの群れ」(つまり、市場)を食い止めるには不十分かもしれ
ないと警告している。 


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