藻から作る石油の生産効率が良い。現在の実験設備でも1リットル が155円程度でできる。これを大量生産して、23万万ヘクター ル分の休耕田や耕作放棄地で、栽培すれば国内生産の石油価格は低 下し、国内で石油は自給できることになる。 今後、中東から日本へのシーレーンは、中国の海軍艦艇がいつでも 日本のタンカーを攻撃できるほど、中国の存在感が増している。日 本は自給自足経済へと向わねばならない。 この強い味方が、もう1つ現れたようである。 ============================== 県産藻、バイオ燃料で有望 筑波大が研究 2009年9月7日 琉球新報 【東京】油を生産する微細藻類で緑藻の一種「ボトリオコッカス 」からバイオ燃料の抽出実験を進めている渡邉信筑波大学教授らの 共同開発グループが、県内から採取したボトリオコッカスの「沖縄 株」を有望視し、研究・開発を進めている。油の抽出量、増殖率と も沖縄株が「優れている」との結果をこれまでの実験結果から得た。 温度が15度以下になると死滅する危険があることから、培養地に ついて渡邉教授は「亜熱帯地域の沖縄にセンターを造ってはどうか と大学にも言った」と話している。 微細藻類は湖や沼に生息する。光合成で二酸化炭素(CO2)を 取り込み、油を生産。しかも硫黄、窒素などを含まない純度の高い 炭化水素のバイオ燃料のため、環境効率も高いと注目されている。 渡邉教授らはフランス、タイなど海外や県内のダムなどから144 種を採取し、油の生産量、増殖率を探ってきた。 細胞の直径は0・01〜0・02ミリ。沖縄株は乾燥重量にして 約45%の油を作り、増殖率も高いことから、バランス面で有望と 判明した。県内での具体的な採取場所は公表を控えている。 微細藻類の1ヘクタール当たりの油生産量は年47〜140トン に上る。トウモロコシの0・2トン、ヒマワリの1トン、アブラヤ シの6トンに対し、けた違いの産油量を示す。ただ、実用化に向け ては大規模な土地や設備が必要となるなど、生産コストに課題があ った。渡邉教授は油生産効率を一けた向上させてコスト圧縮を図り たい考えで、量産システム設計に取り組んでいる。 屋内実験で一定の成果を収めており、今後、本格的に屋外実験に 着手する。実用化のめどは2025年だが、世界的な開発競争が熱 を帯び、米国が22年を目標年にしていることから、渡邉教授は前 倒しの実用化を目指している。 (斎藤学) ◆沖縄に「油田」の可能性 微細藻類バイオ燃料 食糧事情に影響せず、二酸化炭素(CO2)を取り込み、油を生 産するという微細藻類の仕組みに世界が注目しており、国内では沖 縄産の「ボトリオコッカス」がにわかに脚光を浴びている。培養地 としても適地とされ、県内の微細藻類と亜熱帯気候が「油田」を生 み出す可能性を秘めている。ただ、広大な土地が求められるなど課 題もある。 渡邉教授は、微細藻類「ボトリオコッカス」の1ヘクタール当た り年間生産量を、今のところ100トンと見積もっている。ただ、 この水準では生産コストと市場流通価格面で採算がとれず、生産効 率を「ひとけた上げ、10倍の1千トンにする」方向で技術開発を 進めている。実現すれば「市場で十分競える」と話す。これを目安 に、例えば返還予定の米軍普天間飛行場の面積で培養した場合、単 純計算で年48万トンの油が生産されることになる。これは県内の 石油年間使用量(約220万トン)の20%強に当たる。 渡邉教授は「海辺を開発したり、森林伐採したりしてまで開発す るなら難しいが、(温暖な)沖縄でなら陸地を上手に使えばコスト が低い」と、培養温度の調整にほとんど手間がかからない分、有利 と指摘する。 渡邉教授は、全国の耕作放棄地約30万ヘクタールを藻類バイオ 燃料生産に使った場合、「将来、日本が燃料輸出国になることも可 能」と話している。(斎藤学) ============================== 現在、ボトリオコッカスから作り出したバイオ燃料の値段は1リッ トル当たり155円程度でまだ高い。 渡邉教授らは、品種改良や新たな株の探索で、沖縄株よりも効率 が高い“超優等生株”の発見を目指す。抽出・精製方法の改良や、 実験室での培養実績を屋外プラントで再現することも実用化への課 題だ。 「2013年ごろまでに生産効率を1ケタ上げたい。そうすれば コストも下げられる」 試算では、目標の生産効率が達成されると国内の原油需要を 約23万ヘクタール分の休耕田や耕作放棄地などでまかなえ、二酸 化炭素排出量も1990年比で約半分に削減できる。「藻類は人類 の救世主となりうる重要な生物なのです」