3585.自由貿易論の限界



自由貿易優位論が成り立たなくなっている。この変更を検討しよう。
               Fより

自由貿易論はデヴィッド・リカードの「比較優位」という考え方を
ベースに展開されている。リカードも経済活動を行う上では資源や
技術などの面で比較優位に立っている産業ひとつに各自が専念する
ことが必要とした。

リカードの理論では、外国との貿易こそが互いを「WIN-WIN」の関係
にさせるとして、率先的に自由貿易を行うことを主張している。

国によって物価が違えば、比較優位の物も価値が変わってくる。例
えば、同じ時間を使って同じワインひとつを作るにしても、先進国
では技術が進んでいることから後進国と比べて多く量をつくること
ができるので「絶対優位」の立場にある。

ただし、先進国では人件費や物価が高いことから製造コストは割高
になるだろう。一方で後進国では技術の乏しさから製造量こそ少な
いとはいえ、人件費や物価が安価なことから製造費用自体を安く抑
えることができる。これを「比較優位」と呼ぶことができるとリカ
ードは説く。

しかし、このリガードの説は企業が国と同一に見ているが、現在の
グローバル世界の環境では、企業は国を超えて、人件費の安い国に
移転することができ、実際にも国際競争上そのようにしている。

このため、教育水準が高い人口が多く人件費が安い国に人件費比率
が高い製造業は直ぐに移転することになる。国ではなく企業がノウ
ハウを持つために、国を移動しても企業ノウハウは高められること
になる。

そして、国際比較での人件費か安いかどうかは為替レートで決まる
ので、為替レートが相対的に低い国に企業は移ることになる。この
ため、国家が一番先に工業国家化するためには、為替レートに介入
して引き下げることである。

これを効果的に行ったのが中国である。1994年に人民元レート
を約30%も引き下げて、1ドル=5.5元であったのを1ドル=8.5
元まで下げて、米国企業を呼び込んだ。この当時、プラザ合意後の
円高騰でも日本企業に米国企業が打ち負かされて、その防衛として
中国の安い為替レートを容認し、米企業復活を米中共同で行った。

しかし、徐々に日本企業を打ち負かして、また中国国内産業が育ち
、米国企業への制限が多くなってきている。また、中国企業が力を
付けてきて、現時点1ドル=7元で固定している為替水準では人民
元が不当に安い水準であると米国は見る。

このため、世界の工場に中国はなって、大きな利益を得ている。周
りの工業国家を目指す国々も人民元とのバランスを取るために、為
替介入をし始めている。タイや韓国である。

もう1つの方法がある。それがドイツであり、EU諸国のユーロ水
準は東欧、南欧の国力が低い国の経済力に引きずれている相対的に
為替水準が引き下げられている。このため、ドイツ企業の輸出力は
高まっている。

ドイツは得をしているが、ドイツはギリシャの危機でも援助しない
とドイツのエゴが丸出しになっている。世論がギリシャをEUから
追い出せと言うのでメルケル首相も世論対策上支援ができないこと
になっている。EU全体会議でもIMFを引き込み、やっと認める
ことになる。地域共同体通貨という為替引き下げの手があることを
ドイツは教えている。

為替の介入と共同体通貨という隠れ蓑という手で通貨引き下げを行
っているが、これが自由貿易を構成する理論としては禁じ手である
。しかし、世界経済の2位、4位の国家がその為替引き下げを実際
におこなっているのだ。

その為替介入をしない米国と日本・英国などは相対的に損をしてい
ることになる。日本の実力は韓国のサムソンに負けているので、ウ
ォンより相対的に低くないとおかしい。1ドル=120円程度であ
るはずが、他諸国は為替介入で不当に引き下げを行っていることで
相対的に円が高い水準になっている。

この大元は中国であり、その中国が自由貿易で得としているのに、
自由貿易を否定していることになる。自由貿易を否定すると、それ
は管理貿易となる。この方向に世界は向かうしかないことになる。

どういう事かと言うと、為替交換の市場レートではない国に対して
相殺関税を掛けて、かつ輸出には奨励金を足して、国際貿易を行う
ことになる。このようなことをしないと自由貿易国は損をしてしま
う。これが実現しようとしていると見える。

さあ、どうなりますか??
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米国企業に差別、中国政府

【3月23日 AFP】在中国米国商工会議所は22日、中国に進出している
米国企業の間で、差別的な政府の方針や、一貫性のない法的措置を
受けたことにより中国市場で「歓迎されていない」と感じる米企業
が増加しているとの報告書を発表した。

 在中米商工会議所は、会員企業203社に質問を実施。「中国に進出
した米企業は、政府系企業や官公庁との契約で、製品差別を受けて
いると考えている」との声明を発表した。

 調査によると、中国市場に参加し競争することについて「歓迎さ
れていない」と感じる企業は38%に上った。2009年第4四半期の調査
では26%だった。企業が最も懸念していたのは、「一貫性のない規
制適用と法的措置」だった。

 また、中国政府が、数十億ドルにのぼるPCや備品などの行政契約
から、外国企業を閉め出す動きが出ているとの報告も出た。

 中国当局は認可済み製品の購入を推奨する方針を出している。し
かし、「国産イノベーション」キャンペーンの一環として、ハイテ
ク製品では、新たに中国の知的財産が含まれていることが条件に加
わったため、外国企業が排除されることになっているという
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人民元めぐり“米中通貨戦争”懸念 「制裁」「報復」なら世界経
済に波及…3月22日7時56分配信 産経新聞

 中国の通貨、人民元切り上げを求める米国と、拒否する中国の対
立が激化している。これまでの人民元をめぐる米中摩擦は水面下で
の調整により和らげられたが、今回は米中間の対話が途絶えている。
米中間で「制裁」と「報復」の応酬が始まれば、世界景気の不安要
因にもなりかねない。

 エスカレートする米中対立を止めるには対話が欠かせないが、今
回は不発である。

 日中関係筋によると、中国側は日本に対し日米中3カ国による包
括対話機関設置を打診しているという。「胡錦濤政権はオバマ政権
とのまともな対話ができず、困り切っている」(同筋)からだ。

 人民元問題に限らず、地球温暖化対策などでの中国側のその場し
のぎの対応は、米側をあきれさせた。チベット仏教最高指導者ダラ
イ・ラマの訪米や米国の台湾への武器輸出では形だけ米国に抗議し
た後、どう修復するか、まとまった対米方針が決まっていない。

 背景には、胡錦濤総書記の党内における政治基盤の脆弱(ぜいじ
ゃく)さがある。江沢民前総書記を中心とする「上海閥」に押され
、党の最高意思決定機関である党中央常務委員会(胡総書記ら9人
で構成)では多数の支持を得られない不安を抱える。しかも、党幹
部の多くが「人民元切り上げは中国企業の輸出競争力を損なわせる
」と反対姿勢を公言するようになった。党内をまとめられない中、
人民元問題で譲歩すれば「米国に屈した」として指導部はいっそう
政治的な苦境に立たされる。

 秋の議会中間選挙が迫るというのに、オバマ政権も景気や雇用の
回復に手間取り、世論の支持率が下落している。そこで、オバマ大
統領は今後5年間で輸出を倍増させる戦略を打ち上げた。最大の貿
易赤字相手である中国には、特に人民元の切り上げなど強硬策しか
ない。

 外国為替市場を不当にゆがめて対米通商を有利にしている貿易相
手と米財務省がみなす「為替操作国」の認定期限は4月15日。中
国が認定されれば、議会は法案採決へと一挙に勢いづく。

 北京側はかたくなに「外圧」を拒否し、ひたすら人民元の現行制
度の正当性を強調するしかない。
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中国は為替政策を変更すべき=米有力議員
2010年 03月 25日 04:43 JST

 [ワシントン 24日 ロイター] 米下院歳入委員会のレビン
委員長(民主党)は24日、中国は通貨人民元を過小評価している
為替政策を変更する必要があるとの見解を示した。

 「中国は継続的な経済戦略・政策を取っており、そのカギとなっ
ているのは過小評価された水準で通貨をドルに固定させることだ。
これについて議論の余地はないように思われる」と述べた。

 さらに「この問題に簡単な解決策はない。しかし問題を否定する
ことは解決にはならない」とし、「中国の為替政策や輸出主導型(
経済)成長政策も世界の他の国々にとってマイナスだ」と語った。

 同委員会のキャンプ議員(共和党)も人民元のレートに懸念を表
明する一方、他の重要な貿易問題を米国は見過ごすべきでないと主
張した。

 同議員はオバマ政権に対し、為替問題で中国に圧力をかけるため
に「強力な多角的プロセス」を設けるよう促した。

 エコノミストは人民元が最大40%過小評価されていると推定し
ている。

 公聴会ではまた、4月15日に公表される米財務省の為替報告で
オバマ大統領は中国を為替操作国に認定するべき、との見方が示さ
れた。

 経済戦略研究所(ESI)のプレストウィッツ所長は「なぜ大統
領がそれ(為替操作国への認定)を回避できるか分からない」と述
べた。

 ピーターソン国際経済研究所のバーグステン所長も、大統領が「
法」に従い中国を為替操作国に認定しなければ、中国に国際的圧力
を掛けるうえで「信頼性を欠く」ことになる、との見方を示した。
そのうえで「今回の報告書で財務省が中国を為替操作国に認定する
可能性は十分ある」と述べた。

 また、中国が人民元を上昇させれば、米国は財政赤字を拡大させ
ることなく雇用創出ができる、とした。



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