3554.米中経済対立は何をもたらすか



「P0066と3512.地政学から見た将来」を書いたが、その
予測どおりに米中の関係は、キナ臭くなっている。中国の生存圏拡
大と生存圏防衛の意識から米国だけではなくて、欧州、インドなど
とも摩擦を起こしている。

中国は、米国債売りを開始して、大量のドルを海外直接投資に回し
た。また人民元レート維持のドル買いしたドルも海外直接投資に振
り向けている。この米国債売りで米国は中国に対する対応を変えた。
              津田より

0.はじめに
中国の米国債大量買い入れを前提とした景気浮揚の財政支出を縮小
して、米国債の発行量を削減することと、中国製品のダンピング課
税を強化することと、グーグルへの検閲やダライ・ラマとの会見な
ど自由と人権についても中国に要求し始めている。その上、台湾に
MDを売り、中国の反発を買っている。

これに対して、中国政府は軍部を中心とした国内の強硬派(ナショ
ナリスト)の反発を説得できずに、対米強硬姿勢を続け、軍事相互
訪問を止めた。

今後、中国国内で、米国製品の不買運動などを起きると、米国民は
中国への敵視を一段と加速して、人民元を通貨操作していると認定
して、全中国製品に課徴的な課税をして輸入しないようにすること
になる。

このような展開になることを恐れて、中国政府も軍部を説得しよう
としているが、中国自体が民主的国家ではないので軍部の政治に占
める割合が大きい。このため、軍部の強硬意見が一般国民にも受け
がよい。戦前の日本と同じような感じになってきた。

中国の軍部Zhu Chenghu少将へのインタビューで、台湾への武器輸出
の報復は単なる軍事的報復だけではなく、政治、経済、軍事、外交
面で複合的なパンチを与える必要があると言及して、米国国債を投
売りするのも、その方法のひとつだとしたが、実際に米国債売りを
実行している。

米国は、中国が経済発展すれば民主化して米国と利害が共有できる
として戦略的なパートナーとして援助した。中国の発展は米国の利
益にもなると始めたが、中国国内で海外企業は不利な状態になって
いる。

米国の歴史的な流れを追うと、そのときの新興国を一時的には助け
るが、自国の脅威と感じると、その国を徹底的に叩くことになる。

日本も第1次大戦までは英米から助けられたが、その後米国から敵
視され、その反発から第2次戦争になってしまった。

中国を育てるフェーズから自国の脅威として見る方向に変化し始め
たように感じる。これは、米国の大きな戦略の変更である。

とすると、今後、起きる世界の動向を予測することが重要になって
くる。

1.米国の経済・軍事戦略
 現在の世界経済が問題なのは、絶対的な需要不足である。中国が
経済発展をしても、欧米日の先進国が作る製品を買わない。先進国
では新しい需要は現時点ではない。中国もインドも低価格商品しか
需要がない。

景気浮揚として財政出動を各国は行ったが、この財政出動で欧米日
で財政状況もおかしくなってきた。これ以上の財政支出を拡大でき
ない。このため政府需要も大きく出来ないので、全体の需要拡大が
できない。

よって経済問題の一層の解決に行詰ってきた。オバマ政権は当初、
環境関連の産業を立ち上げようとしたが、石油企業や中小企業から
大きな抗議が出て、環境を立ち上げることを躊躇し始めた。そこに
クライメートゲート事件が起きる素地がある。

目線を代えると、米軍はアフガンではへルマンド州マルジャ地区攻
撃を行い、イラクとアフガンに米軍は居る状態になっている。イラ
ンの核問題で、イラン制裁へ向け周辺諸国の説得を米国はしている
し、イスラエルはイラン空爆を準備している。

現時点では空爆を受けた場合の報復攻撃などイラン側の出方につい
て「予測が非常に難しい」と米マレン統合参謀本部議長は指摘して
現時点では反対であるが、選択肢として軍事攻撃を残している。

需要不足を解決する方法として、米国がイラン戦争を選択する可能
性はある。イスラエルはロシアにレーダなどの機器を輸出している
ので、高性能の対空ミサイルS300をイランに供与しないよう要請し
たようだが、このミサイルにも多数のイスラエル製部品を使用して
いるので、危機時にイスラエルは部品を意図的に誤動作できるよう
にしている可能性がある。

そして、ロシアを味方に着けるために、米国はポーランドのMD設
置を取り止める等、ロシアに気を使い始めている。これは、イラン
包囲網を完成させるためであるとも見える。

しかし、イランの軍備や鉄道インフラでは中国の援助が大きな部分
を占めている。このイランは北朝鮮と同盟関係にある。中国はイラ
ンとも北朝鮮ともに近い。

対米戦争になれば、イランは中国軍に頼る可能性がある。というこ
とは中国を軍事的な敵として米国は認定している可能性もある。イ
ラン戦争に近づいて、米国は戦争準備をしているように感じるし、
その対象はイランというより、中国の可能性が高い。そうしないと
有効需要の量が確保できない。最先端兵器を持つ中国のような通常
軍との戦いでないと、高度な兵器が必要なく、高度な兵器需要が生
まれない。

2.中国の経済・軍事戦略
 中国はアフリカ諸国、イラン、北朝鮮、ベネズエラなど反米諸国
や今まで欧米諸国から相手にされない国家と友好・同盟関係を築い
てきた。中国に懐疑的なのは、インド、欧米、日本などであり、ロ
シアは中間的である。

中国の石油などの資源獲得は、生活レベルが上がり大量に必要とし
ている。この石油をアンゴラ、イランに依存しているので、アンゴ
ラ・イランとのシーレーンを守るために、インド洋に多数の基地を
建設中である。インド洋は中国洋になる日は近い。

このシーレーン防衛で2隻の空母を持とうとしている。インド洋で
の給油サービスを日本の代わりに中国が行う方向であり、益々中国
艦隊の存在が大きくなっている。

中国は世界一の輸出国になっている。それも安い商品を大量に世界
に補給している。そろそろ、世界貿易のバランスのために人民元の
レートを上げて、中国は高度産業に活路を見つける必要がある。

それを現時点では拒否している。これでは世界の他の国が納得しな
いし、生きていけない。ロシアも武器輸出で大きな不利益を受け、
インドも不利益を受けている。このため、中国の味方は限られてく
る。それを軍が納得しないと言う国内事情の説明では世界を納得さ
せられない。

ここで、自国に不利な情報の開示や民主化などの政治革命で、中国
軍部やナショナリスト達の力を抑えられるかどうかが、中国が米国
や世界と共に生きいけるどうかに関わるのだ。中国の政治体制変革
が出来ないと中国への風当たりはどんどん増すことになる。

国際的な会合に出ている中国人民銀行総裁の周小川氏は世界の状況
をよく分かっているが、温家宝首相など国内派には理解されていな
いように見える。

3.最終戦争になる可能性
 イラン戦争準備で、米国はアフガニスタンに増派してイラン攻撃
に備えるためにへルマンド州を攻めている。この地点はパキスタン
のカラチからの補給が出来、かつイラン攻撃拠点になる地点である
ためだ。この州制圧は完全にイラン攻撃を意識している。

イランを2正面作戦に追いやる戦術的な作戦を米軍はすでに立て終
わり、イラン攻撃準備に入っている。物資補給が完成するためには
3ケ月程度が必要であり、4月以降にはイラン攻撃の準備は終わる。
イランはウラン濃縮技術を捨てることはないので、完全に欧米とイ
ランはぶつかる。

一方、中国はタジキスタン、トルクメニスタン、イラン、トルコと
鉄道版シルクロードを建設している。物資を鉄道でイランに届ける
ことができる計画である。これを使って大量の中国軍をイランに派
遣することも出来る。イランは石油供給で中国の生命線である。
何が起こるか、非常に心配であるが、中米は管理された戦争を行う
可能性が高いと見る。

北朝鮮はその経緯を見て、中国に脅しを掛けている。北朝鮮もイラ
ンに呼応して戦争を起こすがよいかと。これに対して、中国は急遽
、党首脳を派遣して、戦争ではなく経済支援を100億ドル上げる
から止めるようにしてほしいと。
これに対して、北朝鮮は核開発はこのまま行い、援助を貰ったから
と言って核開発は中止しないときた。完全に中国の足元を見ている。

4.さいごに
 日本は米国の戦略変更から日米関係が正常化してきた。この流れ
を強化してほしい。米国との強固な友好的な同盟関係を築いてから
中国との友好関係を築くしかない。日本独自の政策は必要であるが
国際情勢を見て、それに合わせた戦略が必要である。
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オバマ米大統領、ダライ・ラマ初会談 米中関係は重要と認識 
 【ワシントン=弟子丸幸子】オバマ米大統領は18日、ホワイトハ
ウスで訪米中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と初会談
した。約70分間に及ぶ会談で、大統領はチベットの宗教、文化、人
権擁護への強い支持を表明。両者は中国との関係を巡っても協議し
「建設的かつ協力的な米中関係が重要」との認識で一致した。会談
に中国は反発しており、通商摩擦や台湾への武器売却問題でぎくし
ゃくしている米中関係がさらに冷え込む可能性が出てきた。

 会談内容はホワイトハウスが文書による声明で明らかにした。声
明によると、大統領は「チベット特有の宗教、文化、言語の独自性
と、中華人民共和国におけるチベット族の人権擁護を強く支持する
」と発言。中国当局によるチベットの人権抑圧をけん制する一方、
チベット自治区は中国の一部との認識を示し、中国政府への配慮も
にじませた。
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アフガン南部「治安確保に1カ月」 米司令官
 【ワシントン=弟子丸幸子】アフガニスタン南部で始まった反政
府武装勢力タリバンへの大規模軍事作戦が正念場を迎えた。南部の
国際治安支援部隊(ISAF)を率いるカーター司令官は18日、タ
リバンの拠点であるへルマンド州マルジャ地区の掃討作戦が予想よ
り長期化し、完全な治安確保まで最短でも約1カ月かかるとの見通
しを表明した。一方、米パキスタン間の軍事協力には改善の兆しも
出ている。対テロ戦争は重要局面に差し掛かった。

 米軍主導で13日にマルジャ地区で開始したタリバン掃討作戦は、
2001年のアフガン開戦以来、最大規模。アフガン軍が初めて参加す
る合同作戦になった。アフガンから来年7月の撤収開始を目指すオ
バマ政権にとって、タリバンがテロ攻撃の拠点とするマルジャ地区
制圧は、アフガンへの治安権限移譲に向けた分水嶺(ぶんすいれい
)となる。(07:00) 
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中国「強い不満と断固たる反対」 米大統領とダライ・ラマ会談 
 【北京=佐藤賢】中国外務省は19日未明、オバマ米大統領がチベ
ット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会談したことを批判し「強
い不満と断固たる反対」を表明した馬朝旭報道局長の談話を発表し
た。談話では「直ちに有効な措置を取り、悪影響を解消するよう米
側に要求する」と警告し、「実際の行動」で米中関係の安定的な発
展を維持するよう求めた。 

 談話は「中国側の再三にわたる申し入れを無視」する形で会談し
たと非難し「米政府が『チベットは中国の一部で、チベット独立を
支持しない』と何度も承認してきたことに反する」と指摘した。
また「チベット独立派という反中分裂勢力への支持を直ちにやめ、
中国の内政干渉を停止するよう求める」と強調した。 
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米国債保有、日本が中国抜き首位に 09年末
 【ワシントン=御調昌邦】米財務省が16日発表した2009年12月末
の国際資本統計によると、日本の官民が保有する米国債残高が7688
億ドル(約69兆円)となり、7554億ドルだった中国を抜いて再び世
界一となった。日本がトップになるのは08年8月以来、1年4カ月
ぶり。中国が米国債の保有をやや減らした一方、日本の民間金融機
関が購入を増やしたことが背景だ。
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中国、米国債保有大幅削減の意図なし 新華社報道 
 【北京=品田卓】2009年12月末の中国の米国債残高が342億ドル減
り、日本が中国を抜いて再び世界一になったことを受け、中国国営
の新華社は「今回の削減は(運用の)技術的な問題で、米ドル資産
を大幅に減らすことを意味しない」と報じた。ただ、外貨準備を多
様化する流れは変わらない方針にも言及し、長期的にドル資産の比
率を下げる方向を示した。

 米財務省が16日に国際資本統計を発表して以降、市場では「米国
が人民元切り上げなどで中国に圧力をかけていることへの暗黙の抵
抗では」との見方が出ていた。
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「欧米のおだてに乗るな!」中国紙が警告 元高容認なら「日本の
二の舞」2010.2.4 18:06IZA

【上海=河崎真澄】「欧米の“おだて”には決して乗るな」−。世
界第2位の経済大国に王手をかけた中国の台頭を称賛する海外の報
道ぶりに対して、広東省の有力紙、広州日報が4日までに、「有頂
天になっていると日本の二の舞を演ずることになる」などと、浮足
立った中国国内の論調を戒める異例の記事を掲載した。

 同紙は、「もし国内総生産(GDP)で世界2位になっても、科
学技術など総合力で中国が世界のナンバー2になったことを意味し
ない」と冷静に論評。日本がたどった道を失敗例として引き合いに
出して、1970年代後半から、欧米が米エズラ・ボーゲル氏の著
書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などを通じて日本を持ち上げ
たのは、応分の経済負担を求めるための陰謀だった、と断じた。

 舞い上がった当時の日本は、結局、85年の「プラザ合意」で急
激な円高をのまされ、バブル経済に突き進んで、崩壊後の低迷が今
も続いていると酷評した。このため、欧米が政治圧力の一方で“お
だて”も使い始めたあの手この手の「人民元切り上げ」の要求に応
じれば日本の轍(てつ)を踏む、などと強い警戒感を示した。

 金融危機の克服に自信を深めている中国では、「日本を追い抜い
て世界第2位に」「国家主導型の経済発展モデル『北京コンセンサ
ス』が世界の羨望(せんぼう)の的」といった海外の記事を好んで
引用するメディアであふれている。
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「困難克服したい」=対米関係で外務次官−中国
2月13日20時50分配信 時事通信

 【北京時事】中国の崔天凱外務次官(前駐日大使)は12日、中国
に進出する清涼飲料大手コカ・コーラなど米企業の責任者らと懇談
し、米中関係について「目の前の困難を克服し、共通利益の拡大に
精神を集中したい」と述べた。中国外務省が13日明らかにした。
 中国は、米政府による台湾への武器売却決定を受け、軍事交流停
止や米関連企業への制裁を発表。18日にはオバマ大統領とチベット
仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の会談が予定され、新たな報復措
置を打ち出す可能性もある。
 対米政策担当の崔氏の発言は、米中関係がぎくしゃくしても、全
面対立には至らないことを強調し、特に経済活動に影響を与えない
方針を伝えたものとみられる。 
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イラン制裁へ米が環境整備 各国が駆け引き
 【ドバイ=松尾博文】ウラン追加濃縮を強行したイランに対し、
米国が制裁強化に向けた地ならしを加速している。クリントン国務
長官ら政府首脳や軍高官が相次いで中東入りし、協力取り付けを急
ぐと同時に軍事衝突の回避を探っている。これと並んでイランと対
立するイスラエルは、ロシアからイランへのミサイル供与を警戒。
ネタニヤフ首相が15日にロシアを訪問するなど、各国の駆け引きが
活発化している。

 中東歴訪中のクリントン国務長官は15日、カタールの首都ドーハ
で「イランは軍事独裁に向かっている」と語った。アハマディネジ
ャド大統領の出身母体で、イラン指導部内で影響力を増している革
命防衛隊に重点を置いた制裁の強化が必要との認識を示した。(07:00) 
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米軍統合参謀本部議長、イラン攻撃に慎重論 「予期せぬ結果懸念」 
 【カイロ=安部健太郎】米軍制服組トップのマレン統合参謀本部
議長は14日、イランの核問題などを協議するためイスラエルを訪問
した。同国はイランの核施設への空爆も辞さない姿勢をちらつかせ
ているが、マレン氏は「攻撃が予期せぬ結果をまねきかねないと非
常に懸念している」と述べ、現時点では攻撃を自制し、国際社会に
よる圧力強化など外交努力を重視するよう求めた。

 マレン氏は空爆を受けた場合の報復攻撃などイラン側の出方につ
いて「予測が非常に難しい」と指摘。一方で外交努力に関しても「
期限はある」とも述べ、イランが強硬姿勢をとり続けた場合は軍事
的選択肢をとる可能性に含みを残した。

 イスラエルのネタニヤフ首相は14日からロシアを訪問。国連安保
理決議によるイランへの制裁強化を求めるほか、同国へ高性能の対
空ミサイルS300を供与しないよう要請するとみられる。 (16:00) 
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中朝、半島非核化「深く討議」 北朝鮮報道官
 【ソウル=島谷英明】北朝鮮の外務省報道官は13日、同日平壌に
戻った金桂官(キム・ゲグァン)外務次官ら代表団の訪中に関し、
中朝双方の間で朝鮮戦争の平和条約締結や制裁解除、6カ国協議再
開など朝鮮半島の非核化を進めるための問題が「深く討議された」
と述べた。

 朝鮮中央通信が記者の質問に答えた内容として報じた。中国側と
の具体的な協議の内容は明らかにしていない。金次官らは今月9日
から13日まで中国を訪れていた。(02:00) 
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北に100億ドル投資か=中国高官訪朝時に約束−聯合ニュース
2月15日8時35分配信 時事通信

 【ソウル時事】韓国の聯合ニュースは15日、先に行われた中国の
王家瑞共産党対外連絡部長の訪朝で、鉄道や住宅など100億ドル
(約9000億円)以上の北朝鮮に対する投資計画がまとまったと報じ
た。統計にもよるが、これは北朝鮮の国内総生産(GDP)の7割にも
当たる巨額の計画となる。北朝鮮の外資誘致にかかわる朝鮮テプン
国際投資グループの消息筋の情報として伝えた。
 事実であれば、核問題をめぐる6カ国協議復帰の見返りとして、中
国が北朝鮮に投資を約束したとの見方もある。


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