3548.日本経済の復興は江戸の再発掘から



日本経済が次の発展をするためには、時代の変化に合わせた独創的
な考え方から生まれた製品やコンテンツが重要である。独創的なア
イデアが重要なのは、つい最近のアップル事例を出せば分かること
である。
                津田より

0.はじめに
アップル社のスティーブン・ジョブズは、ハードとソフトを一体的
に結びつけたiPodやiPhoneを生み出し、音楽業界の体系
を大きく変えてしまい、また今後のiPadでは書籍の分野でも今
までの体系が変革されることになる。そして、アップル社は息を吹
き返し、蘇らせた。1人の天才がどんどん、新しいアイデアを生み
出すことになる。生み出すにはベースになる考え方や事例が存在す
ることが多い。

このiPodの場合は、PCでの音楽配送ではコピー禁止ができな
いために、そのコピー禁止が出来るハード+ストアをセットにする
アイデアであったのだと見る。この延長上にiPhoneとiPa
dがある。音楽から書籍、映画などにも大きなインパクトが起きる
と見る。新しいコンテンツもできてくるはず。

この事例と同様な独創性が日本企業にも必要なのである。日本人は
基本的にはアイデアマンである。電気自動車でもいろいろな仕組み
を考えている。インホイールモータや回生ブレーキ、回生電気系な
どである。しかし、1人の天才に期待しても、日本経済全体の復興
は無理がある。組織的な取り組みが重要になっている。

もう1つが、時代の変化をビジネスチャンスと捉えることである。
インターネットが出て、紙から電子媒体への流れ、環境問題で石油
から自然エネルギー・省エネへの流れ、脳科学や生命科学の発展で
、ロボットや新しい治療法ができることになる。

しかし、これらは技術開発が必要であり、日本の中小企業では難し
い。もう少し、簡単に独創的な考えはないのかと探すと、日本が日
本として特徴を持っている文化が存在する。この文化から独創性を
発揮すれば、天才でもなく技術開発がなくても、新しい製品やサー
ビス、コンテンツを見つけることが出来る。

そして、この日本特有な文化を形成したのが江戸時代である。江戸
時代の農業経営書は有機農法の集大成であり、現在、その復活が有
機農家で行われている。これと同じような企業面、経済面での掘り
起こしが進んでいない。現在の欧米思想の行き詰まりに対する打開
策は江戸の思想にあると見ている。もちろん、江戸時代の思想をそ
のまま、現在に持ってきても時代が違うので通用しない。この江戸
時代の思想の現在化をすることである。

1.日本の現状
 日本の現状には心配な点が多い。財政赤字を20年以上も続けて
かつ、この不況で赤字国債を40兆円も発行している。累積の国債
は800兆円にもなっている。

日本は国内貯蓄が増えているので大丈夫という意見を聞くが、団塊
世代の退職金が一時的に預金量を増大させたが、その団塊世代の退
職も少なくなり、かつ退職金自体が少なくなることで、今後、貯蓄
総額も徐々に減っていくことになる。

この時、銀行の貯蓄金額が減り、日本の国債を買うことが銀行もで
きなくなる。500兆円のGDPであるから、800兆円はGDP比で1.6
倍である。このような日本国債は海外では売れない。その内、日本
も財政の縮小をすることになる。そうしないと国債の金利上昇で、
長期金利が上昇してしまい、景気を冷やすことになる。

これを起こさないためには、日本の税収を拡大することである。そ
の拡大には日本の産業を活性化して、企業が雇用を拡大できる環境
を作ることである。

このため、日本産業の活性化は待ったなしである。しかし、ベトナ
ムやUAEなどでの原子力発電所建設で日本企業は敗退している。
日本政府が日本企業の後押しを積極的にしないことで、韓国やロシ
ア企業に負けている。日本政府の企業支援が不足して、日本企業力
が徐々に衰退しているようにも感じる。トヨタのリコールもしかり
である。

このように日本の産業力は、このままにすると非常に危ういことに
なるのであるが、民主党政権の動きは鈍いように感じる。国民の生
活中心で、産業政策が確立していない。

このため、日本企業は自助努力で世界に出て、企業力を強化する必
要になっている。日本国内には拡大する余地がないために中国やア
ジアに出て行くしかない。そのときの日本企業の武器が必要になっ
ている。それが日本独自の文化であると見る。

2.江戸時代の日本文化に学べ
 昭和30年代までは、家庭の主婦は内職をしていた。母も裁縫の
内職で、和服を作っていた。この内職が無くなり、安くできる仕組
みを日本は失った。この内職は江戸時代にできたのである。江戸時
代は、武士が内職をして生計を立てていた。

この内職システムで、ジポンという日本製の子供服は1着1995円とい
う低価格でできるのだ。大阪の「株式会社マーキーズ」が、岡山の
「有限会社マルミツアパレル」に製造を依頼しているが、岡山県・
倉敷市と言えば、ジーンズ生産の街として全国的に有名な街で、主
婦の内職と言っても技術力は確かなわけで、自宅での内職だから工
場を持たなくてもいいのでジポンの低価格につながるわけである。

このように、ジポンは販売店と製造現場が直結して生産しているた
め、卸を介さないし、企画と販売戦略を練るのは販売店である大阪
のマーキーズの各店長である。

このように内職システムが有効に働いて、中国製にも負けない低価
格になっている。

しかし、この内職システムは現在の日本で、相当壊れている。老人
ホームや介護施設のお年寄りが手内職をできないことや家庭の主婦
はアルバイトに出てしまい、内職をしなくなっている。このため、
消臭剤の袋詰めの作業を内職でお願いしようとしたが、できなかっ
た苦い思い出がある。地方都市の内職システムはまだ機能している
のであろうか?

紙芝居という「楽しみ+物売り」というジャンルの物売りが、昭和
40年代まであった。これは江戸の大道芸人の発展系である。この
仕組みは「ハード+コンテンツ」というような組み合わせの妙味と
して発想してはいかがであろうか?この仕組みはジョッブスが取り
入れて、大成功している。

昭和40年ごろまで、御用聞きという店の店員が各家を廻って、注
文を取っていた。現在、ネットでの宅配サービスとなって、御用聞
きになっているが、ヤクルトのように毎朝、自宅まで来てくれる御
用聞きは非常に使いがってがよい。社会から孤立している老人達は
、人間同士の会話に餓えている。朝晩の人間での御用聞きもよい方
法である思う。老人にはうれしいサービスだ。

江戸時代にはそれぞれが水平分業して浮世絵や瓦版などを作ってい
た。胴元、絵師、彫師、摺師などがいてできていた。このような水
平分業がコスト削減から再度、現在に復活してくる予兆を感じる。
今後、大企業より中小企業が連合して、革新的なビジネスを起こす
ことになると見ている。この時のモデルが水平分業である。

この水平分業に近いのが、連である。江戸時代の同好会であるが、
この同好会が次のビジネスのネタを作り、その同好の士が集まるこ
とで共同ビジネスが立ち上がる可能性がある。

秋葉原のAKB48を見ると、同好会的な要素があり、この同好会
的な雰囲気がビジネスになっている。その場にいけば必ず会えると
いう場の設定が面白い。その場からいろいろな媒体で発信すること
は江戸時代の歌舞伎にも似ている。

このように江戸時代のビジネススキームを再度参考に、現代化する
ことで新しいビジネスが生まれる可能性がある。どうか日本文化の
成熟期である江戸時代にヒントを得て、ビジネス・モデルを作って
ほしいものである。

3.さいごに
 いろいろな会で多数の人たちと会うが、やはりビジネスモデルや
実際の展示品を持っているとイメージしやすいために比較的早くビ
ジネスに結びつくことになるが、ただなんとなく集まっている会で
は、ビジネスが立ち上がらない。
目的を持った会で、同好の士が集まらないといけないようである。

電子出版で関しては、いろいろな方とお話しをしているが、全体を
集めた会合を持とうとしている。興味がある方は、メールください。

また、3月21日(日曜日)地域通貨としての藩札や江戸時代の経
済を研究している森野栄一氏に「江戸時代の実学」を講演してもら
う予定です。お楽しみに


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