3545.北朝鮮のデノミについて



デノミについて   

2月8日コラム、朝鮮のデノミ実行についてですが、あれ失敗です
かね?
というのも、当方、現在、中朝国境近くにおり、このあたりの情報
収集やっておりますが、今回のデノミは、戦術的には大成功で戦略
的には未だ回答が出ていなというのがまっとうな書き方ではないで
しょうか?

配給が復活せず、計画経済の歯車がまだ動いていない事だけで失敗
というのは、日本の世論が北朝鮮のやる事をすべて失敗にしたがっ
ているだけで、一部局面だけを捉えて、どこの紙面も失敗と書き連
ねているだけではないでしょうか?
北の連中を色々調べていますが、今の状況は全くの想定内ですよ。
この後の朝鮮の動向を見て、失敗か成功を論じた方が無難でしょう。

ちょっと前まで、あのお国のプチ自由経済の発達ぶりはよく聞くと
ころでした。ちょこっと金儲けた彼らは、新中間層やら何やらと呼
称され、朝鮮の経済改革の担い手層に成長するなどと中韓メディア
あたりはもてはやしていましたが、それは的外れ。
彼らは、現政権下にとっては、あくまで闇経済の担い手であり、戦
後日本闇市で発達したヤクザと同じく、政権に相当楯突いていまし
た。

今回のデノミは、その新中間層の商業基盤を破壊し、資金を没収す
る事に成功したのですから、朝鮮指導部にとっては戦術的に大成功
だったのでしょう。見間違えてはいけないのは、今、あの政権での
必要条件は政権の延命であって、経済成長のような、いわば健康増
進策は十分条件です。

ちなみに、このデノミ後、部長級を一人更迭していますがデノミ前
の人事を見ていると、そのもう一つ上まで更迭要員として準備して
いたのですから、これも指導部の満足度をあらわしている状況証拠
の一つのように当方は感じています。

さて、問題なのは今後、朝鮮指導部は、この結果をどう戦略的に結
びつけいくか?
ここでようやく、日本流に言う成功か失敗かが論じられる段階だと
思います。本当のところはどうお考えですか?

実体経済の担い手の大きな部分を潰してしまったのですから現状を
放置しておけば、本当に国家破産が待っています。具体的な破産シ
ナリオは、実際の供給力以上にバラ撒かれた新貨幣と生産停滞の二
つを放置し、インフレがハイパー段階にまで成長し、分配(配給)
の仕組みを含んだ、再生産そのものが再起不能になる事態でしょう。
ここまで来て、ようやくデノミが失敗と断定できるのかと思います。
また、これは政策を放置しても、この段階までは2〜3年かかるで
しょう。

中国共産党(社会科学院)の連中などと話していると、朝鮮指導部
は、このインフレが致命傷になる前に、デノミによって(哀れな)
新中間層から吸い上げた資金を使い、何らかの大型公共投資を行う
はずだから大丈夫だとのたもうております。

しかし、我々の観測では、吸い上げた資金は多分もう朝鮮にはあり
ません。借金漬けの朝鮮は、多くのところから債務履行を迫られて
いました。(例えば、去年から教祖の生死が確認できていない某宗
教団体で、現在、強烈な跡目争いがおきており、その抗争に一環で、
朝鮮に対する莫大な債権回収の動きがあったようです)

中国社会科学院の言うように、もし、朝鮮指導部が大型公共投資を
自国ベースで行う資金能力があれば、必ずデノミとパッケージで政
策を打ち出してくるはずです。しかし、現在に至っても何もないと
いう事は、吸い上げた金は、借金返して終わりなのです。

そのため、今後の朝鮮指導部の打つ手はかなり限定されてくるでし
ょう。経済再建では、大規模な外資開放しか方法がないでしょうな。
それも、現状では頼れる外資は中国だけ。
今、中朝では、その交渉も一所懸命やっているはずですよ。

しかし中国は新彊やチベット、ミャンマーをみるまでもなく、経済
の底上げ的なODAをやるほど甘い国ではありません。必ず、生産、分
配構造すべてを押さえにかかり、主権に対して制限措置を打つため
の布石を打ってくるでしょう。

破産も怖いが、主権への侵害が最も怖い現政権としては、中国との
交渉に平行して、そろそろ本気で中国の対抗馬探しに出してくるで
しょう。また、中国にこの一年低姿勢を試みて裏切られた米国とし
ても中国の勢力拡大に打つクビキの数を増やすのは必定。

米国からテロ支援国家指定の不延長確約をもらい、噂では米朝連絡
事務所の具体的要員リストの交換まで行っている米国と朝鮮です。
米朝国交改善への動きは今年の後半ぐらいから急速に表面化してく
るでしょう。今、領海あたりで朝鮮軍がぎゃーぎゃーやっているの
は、値段交渉時に声を張り上げるチンピラのあさましいあれですよ
ね。

いずれにしても、朝鮮は今年一杯あたり、中国従属を深化する方向
と米中バランスに乗っかる方向の2つの方向の美味しいとこ取りを
すべくあがくのでしょう。その際、発生する現象としては、とりあ
えず一時的にテロ色を濃くしますが、破産が迫っているので、おそ
らく、この年末までには方針を確定するでしょう。
そうすると、いずれの方向でもテロ色は急速に薄まります。

さて、ここで、テロ色を急に薄められると、日本の政権はどのよう
な戦略で臨むのでしょう?
再軍備のネタには使えないは、東アジアの政治的影響力拡大にも使
えない、黙っていれば、中国や米国の草刈場になる、そんな国を
どう扱うのでしょうか?

まっとうな答えは、今から、米朝接近を押し、時期が来たら米朝関
係改善にすばやく相乗りして、朝鮮資源の開拓競争にいち早く乗り
出すことでしょう。(誰かが、言っているように、朝鮮政権圧迫を
加速し、崩壊による資源、すなわち大量難民という廉価労働力や空
白地帯の地下資源や都市インフラを周辺国で山分けにするという発
想もおもしろいですが、そのような事態は日本の採算に合うだけの
期待値とスピードで起こるとは思えません。)

もちろん、朝鮮資源の開拓競争への参加実現には、二枚舌外交が必
要です。今、世論で声高に唱えている北朝鮮脅威論をぎりぎりまで
維持しつつ、もう一つの口では、対北朝鮮投資促進など餌をさんざ
ん散々つかせておく事でしょう。(具体的には、国交回復を前提と
した夢のような対朝ODA等)

実際に、日本のとある部署では、このような二枚舌対北交渉を行っ
ているようです。しかし、役人的なこのようなコソコソした根回し
なんかより、何より重要なのは、世論がこの二枚舌を使いこなせる
かどうかですよね。国家として迅速な判断が必要なときに、世論の
急速な転向核となるアンチテーゼが、世論そのもののに内在してい
るかという事が極めて重要だと考えております。

しかし、現在、日本世論は、東アジア観に代表されるように、
「恐れ」一色ですよね。

横に怖い人がいるから何をやってもダメだよ〜という責任転嫁によ
り、灰色の世論が社会を枯れ木のように固定化しつつあります。
怖いから、例えば中国の悪口なんかなんぼでも売れてますわな。
マスコミさんもそりゃ商売ですからそんなのばっかし集めています。
仮想敵国の政策の一部を切り取って、失敗だの脅威だのと名前をつ
けているわけですね。また国民もそれによって安堵感を得て、怖さ
という仮面が剥がれ、劣等感という素ピン顔がむき出しになるまで
の時間稼ぎをしているのです。

もちろん、そういった安堵感、つまり願望は、それはそれで重要な
ことだと思います。やる気なくしたらその国は一時的にガタ落ちで
すからね。しかし、願望と予測は、世論の中ではあくまで住むとこ
ろの違うもの。Fさんは間違いなく予測の人でしょう。

どうですかFさん、ここらで一丁、世論の核に戻ってみては?
金融危機前、社会が桜色であった当時、今がいいんだから、今後も
なんとなく発展する気がするな〜といった風潮の中で、異端扱いを
されながらも、冷静な予測に基づき、灰色の冬が来ることを主張し
たFさんは立派でした。

コラムの読者の多くが、来るべく危機に対して何がしかのポトフォ
リオを組めたことは間違いないでしょう。国際戦略コラムは、禍を
祓う賢者の役割を果たしたと思います。

そして、欲深い国際戦略コラムの読者はみな、

冬のあと春を欲しがっているのではないでしょうか?
枯れ木のような世論の中、花が欲しいのです。
どうですか、賢者の後は、花咲爺という役もそれなりに面白いのでは?


(長々と書いてすみません。最近、暗ネタに凝っているFさんに
若干のリクエストでした)
                   by くされ領事   
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(Fのコメント)
北朝鮮部分を書いたのは有料版ですから、これへのコメントをいた
だき、ありがたく思います。

その通りで、北朝鮮は米国と中国を天秤に掛けた外交政策を行って
きたが、米国はその外交政策を熟知しているために、中国に関与さ
せる政策に変化している。米国は北朝鮮との交渉をある程度、中国
に通知している。

そのため、北朝鮮としては米国と交渉したのに、重要な場面では中
国が頭を抑えるように乗り出してくる印象を与えていると見る。
北朝鮮の外交交渉が巧みさが、その対応を米中が見透かし始めたの
で、外交交渉の巧みさが裏目に出ているように感じる。

北朝鮮の指導部は、ちょこっと金儲けたプチブルたちをやっつける
ことでよいかもしれないが、流通機構がダメージを受けて、国民は
食糧もままにならない状態になっている。このため、暴動が起きる
ことになる。どちらにしても、収入源が枯渇し始めている北朝鮮指
導部も、何かの手を打つ必要があり、6ケ国協議に参加するしかな
いが、その6ケ国協議参加するだけで、何か寄こせと言っているの
である。

北朝鮮にはタングステン、ウランなどの鉱物が大量にあることは知
られているし、中国が鉱区を独り占めしているようである。日本は
リスクが大きいので、鉱区を得ようとないと見る。

日本は、2兆円程度の戦後賠償をする約束をしているので、鉄道や
道路などの建設を無償援助という形で行うことになる。このため、
日本の大手建設会社は、日朝正常化の準備が始めると、その利権を
手に入れるべく、民主党に大量献金するはずである。


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