■小沢氏に問う、外国人参政権は国益か。 −危険な社会実験を急ぐ理由− ◆法案提出についての見通し◆ 永住外国人への地方参政権付与法案は、民主党・小沢幹事長が昨年12月に訪問先の 韓国ソウル市内の講演において政府提案で今国会に提出する考えを表明したように、 小沢氏主導で進められてきた。 永住外国人への地方参政権付与については、懸念事項として都市部でのゲットーの発 生や、特定国の外国人の集団移住により小規模な自治体がコントロール下に置かれ進 んでは分離独立運動の発生も考えられること、現在40カ国が導入しているが欧米主 要先進国ではほぼ英仏独伊がEU域内や英連邦加盟諸国民に限定的に付与するのみで あること等が、既に多くの論者から指摘されている。 筆者も、これらの懸念を共有し、少なくとも今国会に法案を提出するべきではないと 考える。 ここに来て、一連の政治資金問題で小沢氏が窮地に立たされているため、法案の具体 化が進まず提出が見送られる可能性等も出てきたが未だ予断を許さない。 しかし、よくも悪くも民主党連立政権は、小沢氏のシナリオによって動いており、例 え失脚してもその影響力が残るか、あるいは烏合の衆に戻り外側から小沢氏や自民党 に揺さぶられるだけであり、各政策課題や構想について今一度小沢氏の考えを検証し て置く必要があるだろう。 以下に小沢氏のホームページから、「小沢一郎のオピニオン・永住外国人の地方参政 権について」(2005年自由党時代のものと思われる)http://www.ozawa-ichiro. jp/policy/05.htm 、http://www.ozawa-ichiro.jp/policy/05.htmという文章を抜粋し ながら筆者の論評を加えたい。という文章を抜粋しながら筆者の論評を加えたい。 ◆帰化を阻む障害は消えた◆ <抜粋> 法案に反対する人達の多くの方の主張は「そんなに参政権が欲しければ帰化をして日 本国籍を取得すればいい」という考え方があります。私もそれが一番いい方法だと 思っておりますし、また在日のほとんど多くの人々の本心であると思います。 しかし、このことについては日本側・永住外国人側双方に大きな障害があります。日 本側の問題点からいうと、国籍を取得する為の法律的要件が結構厳しいということと 同時に、制度の運用が、(反対論の存在が念頭にあるせいなのかはわかりませんが) 現実的に非常に帰化に消極的なやり方をしています。例えば、刑事事件とならない軽 い交通違反(スピード違反・駐車違反等)を起こしただけで、余分に何年もかかって いるのが現実です。これらの状況を日本の側として考えなければなりません。<以上 抜粋> 小規模野党であった自由党党首当時はともかく、現在政権党にあるのだから国籍を取 得する為の法律的要件や運用を緩めれば、この問題は即座に解消される。 ◆特別永住者限定なのか?◆ <抜粋> 一方、永住外国人のほとんど多くの人は日本で生まれ育って、まったくの日本人その ものであり、その人達が日本人として生涯にわたって生きていきたいと願っているこ とは、紛れもない事実だと私は思います。ただ、過去の併合の歴史や、それに伴う差 別や偏見に対して心にわだかまりがあるのも事実なのです。 我々日本人は、両国両国民の数千年の深い繋がりと友好関係を考えなければなりませ ん。また、近い将来日韓両国は、EUや北米大陸の例にあるように、自由貿易を柱とす る共同体構想が現実のものになると思います。今こそ、日韓両国民がお互いにわだか まりを捨て、将来に向けて信頼関係を構築していくことが、両国と両国民の繁栄のた めに必要不可欠なことであると考えます。<以上抜粋> これは、第二次世界大戦終戦まで日本国民であった韓国人やその子孫等の「特別永住 者」のことを指してると思われ、それに限定した理由付けにしかならない。 ◆英連邦やEUとの比較は無理筋◆ <抜粋> しかし両国が主権国家として存在する以上、地方参政権の問題は、政治論の側面から だけではなく、法的・制度的にも許容されるべきものでなければなりません。 永住外国人に地方参政権を与えることについての国際社会の状況は、アメリカをはじ め未だ多くの国が、国籍の取得を要件としているのは事実であります。しかしなが ら、例えば日本の場合と状況が似ている英国では、かつて植民地支配した英連邦出身 の永住権取得者に対して投票する選挙権だけでなく、立候補できる被選挙権まで与え ています(地方選挙)。北欧の国々では一般的に永住権取得者には地方参政権を与え ており、また、EU域内では、「お互いに永住権を取得した者には地方参政権を与えよ う」という方向で制度の改正が行なわれつつあります。このようなことを考え合わせ れば、地方参政権の付与が主権を侵害する、或いは主権国家としての日本の存在を脅 かすものであるという主張は、必ずしも今日的な社会の中で、絶対的なものであると は言えないと思います。したがって私は永住者に対する参政権の付与は、憲法上・制 度上許容されるべき範囲のものであると考えます。<以上抜粋> 「かつて植民地支配した英連邦」は、現在も形式的ながら国家元首にエリザベス女王 を頂く「連邦」であり、EUは実験的ながら言わば巨大な連邦主権国家であり、どの 連邦にも属さない日本とは全く事情が違う。 「東アジア共同体」の是非については議論が分かれるところだが、将来において仮に 「東アジア共同体」の創設が明確になった場合に初めてEU等と比較しての議論が成 り立つものである。 ◆危険な社会実験と政治的窮地◆ <抜粋> 以上のような政治的側面、制度的側面双方から考え合わせ、一定の要件のもとに地方 参政権を与えるべきだと考えます。そして、そのことにより日本に対するわだかまり も解け、また、結果として帰化も促進され、永住外国人が本当によき日本国民とし て、共生への道が開かれることになるのではないでしょうか。<以上抜粋> 小沢氏が、永住外国人への地方参政権付与を急ぐ理由として、巷間語られるのは昨年 の衆院総選挙で民団(在日本大韓民国民団)から応援を受ける代わりに手形を切って いることや今夏の参院選で公明党とその支援団体の創価学会を引き寄せるため等が語 られている。 特定利益集団の要求と引き換えに支持を取り付けること自体は、民主主義に於いて否 定されない。 しかし、事は地方参政権とはいえ民主主義の枠を決める問題であり、筆者は本来なら 国民投票に付すべきレベルの問題と考える。 予見される範囲でのメリットに比べてリスクが余りにも高い「危険な社会実験」であ り少なくとも時期尚早である。 百歩譲って仮に法案を提出するなら、対象を北朝鮮籍を除く「特別永住者」に限定し 議員立法で行うべきだ。 更に将来の道州制導入の可能性もあるため、市町村レベルに留めるべきだろう。(ド イツは州政府への参政権を認めていない。) <抜粋> 国政を預かる政治家として、ホームページ上で自分の考える全てのことを申し上げる ことはできませんが、この問題は主として、在日の朝鮮半島の方々の問題であること からあえて申し上げます。もし仮に朝鮮半島で動乱等何か起きた場合、日本の国内が どういう事態になるか、皆さんも良く考えてみてください。地方参政権付与につきま しては、あらゆる状況を想定し考えた末での結論です。<以上抜粋> 小沢氏は、この意味深な表現で何を言いたいのだろうか。 上記のような場合、日本国内の韓国・朝鮮籍の外国人が呼応して内乱を始める。 それを防ぐために地方参政権付与を誘い水にして帰化の促進を図るべしという理論 か。 米中が接近する等国際情勢が流動化する中で、大国に伍して渡り合って行ける政治家 は見渡す限り現在の日本には小沢氏しかいない。 しかし、策士策に溺れるの例え通り、希望的観測やアクロバティックな奇策は、国を 亡ぼすリスクを孕む。 外交問題絡みについては、「国際的大義を伴った長期的国益の追求」の基本に立ち返 り亡国に至らぬ道を選ぶべきだ。 小沢氏の政治問題の帰結がどうなるかは判らないが、今の窮地はそんな小沢氏に対す る国民の漠然とした不安が背景にある気がするのは筆者だけか。 以上 佐藤 鴻全