3529.オバマ政権の金融政策転換



マサチューセッツ州上院補欠選挙で民主党が負けて、オバマ政権は
政策転換をし始めた。     Fより

米オバマ政権下で初の上院選となるマサチューセッツ州の補欠選挙
が1月19日に行われて、共和党候補のスコット・ブラウン州議会
議員が無党派層などの支持を集め、初当選した。これにより、民主
党は上院で長時間演説による議事妨害を阻止でき、安定多数とされ
る60議席を割り込むことになる。

そしてこれにより、より理想に近い下院の医療改革法案と公共の健
康保険を作らない上院の案があるが、補選結果を受け民主党内では
、上院案を下院が丸のみの形で可決し、法案を成立させるべきだと
の考え方が浮上している。

また、大統領は、就任1年を振り返り、「目の前の危機に対処する
のに忙し過ぎて、国民と直接対話する感覚を失っていた。国民に、
政府が遠い存在だと思わせてしまったことを後悔している」と語っ
たが、オバマ大統領の政策は、選挙での公約から大きく違うことに
なっている。

その一番大きなものは米の雇用の改善であろう。雇用は12月も8.5万
人減少して失業率も横ばいの10%であり、通年は最悪416万人減とな
り、依然厳しい状態が続いている。また、米住宅価格でも次回11月
分は4月以来の下落になるだろうと予想した上で、「今後数カ月は上
昇ではなく下落が続く可能性が高い」とシラー教授は言う。また、
地銀破綻の一因になっている商業用不動産市場に関しも「回復の見
通しは余り思わしくない。米経済全体の回復を遅らせる恐れもある
」とFRB理事が言っている。このように米国経済は立ち直ってい
ない。

このように国民は助けないのに、米政府は金融業だけを助けている
と言う不満が出ている。2008年秋のアメリカン・インターナショナ
ル・グループ(AIG)救済で、GSなどへの返還する代金を削減
しようとしてAIGは交渉をしていたが、その交渉を無視して全額
返還に踏み切ったという疑惑で、当時NY連銀総裁であったガイト
ナー財務長官への逆風が増している。

このため、ギャラップの調査でも、オバマ大統領の平均支持率は51
%で、クリントン、レーガン両氏との同率で最下位となり、就任直
後に記録した戦後歴代2位の68%から18ポイント低下し、人気の陰
りを印象づけた。

オバマ政権内では、金融機関の代弁者であるガイドナー財務長官と
サマーズ国家経済会議(NEC)委員長と、金融機関に厳しい経済
再生諮問会議のボルカー議長に意見が割れている。今までの金融機
関の建直しはガイドナー、サマーズが主導してきたが、今後、国民
への支持拡大のために、金融機関に厳しいボルカー議長の意見が採
用されそうである。

と見ていたら、立て続けに金融機関への厳しい政策が出てきた。
まず、金融システム安定に投じた公的資金の損失を穴埋めするため
、大手金融機関から特別税を徴収する方針で、資産規模にあわせ、
外資系を含む約50の大手金融機関に向こう10年で約900億ドル(約8
兆2000億円)を課金するという。

そして、新たな金融規制案として、銀行にヘッジファンドの保有・
出資などを禁止、大手金融機関の負債の規模に上限を設定する。今
までの銀行業務拡大や事業統合を促す金融自由化の方針を転換する
ことになる。

これに対して、英紙FTは、この金融規制強化策を受けて「オバマ
氏がウォール街に宣戦布告」と題する社説を掲載し、商業銀行のリ
スク投資を制限するなどの規制内容について「大衆迎合主義的で危
険だ」と批判した。

米国は国際的な投資銀行の金融業者と軍産学の防衛関係者の2つの
支配階層があり、そのバランスで国を運営してきた。金融業者を叩
くのであれば、もう1つの支配階層の防衛関係者とは紛争を起こせ
ない。

このため、2010会計年度予算にアフガニスタン増派などに関連
する戦費として330億ドルを追加して6930億ドルにして、な
おかつ、2011会計年度の国防総省の総予算を過去最高の7080
億ドルとするという。防衛関係者を味方にして、金融業者を叩く政
策になっている。

このように米投資銀行への締め付けが大きくなると、ドルキャリー
取引が縮小して、新興国への投資が減ることになる。このような観
測から世界の株式市場で大幅な下落が起こったし、またドルキャリ
ー取引の巻戻しが起こって、新興国の成長を阻害する可能性も出て
きた。新興国バブルの崩壊も可能性として出てくる。

ここは、注意して動向を見ないと危ない。
素人は早く、市場から撤退することである。

さあ、どうなりますか??
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米銀のファンド投資禁止、米政府が新規制 負債規模に上限
 【ワシントン=御調昌邦】オバマ米大統領は21日、金融危機の再
発防止に向けた新たな金融規制案を正式に発表した。金融機関の規
模や事業内容に一定の制限を設ける内容で、銀行にヘッジファンド
の保有・出資などを禁止、大手金融機関の負債の規模に上限を設定
する。業務拡大や事業統合を促す金融自由化の方針転換につながる。
規制の詳細は今後詰めるが、金融機関の融資抑制などを通じて米経
済のダイナミズムをそぐことになれば、回復途上にある世界経済に
も影響が及びかねない。

 大統領はホワイトハウスで声明を発表。「銀行や金融機関が巨大
化し、短期的な利益と多額の報酬を追求して無謀なリスクを取り、
金融に端を発した経済危機が起きた」と強調。「金融システムでの
さらなる統合を防ぐ」と明言した。

 新規制は金融システムの安定を目指し、金融機関が「大きすぎて
、つぶせない」という状況をなくすのが狙い。大統領は米議会で審
議中の金融規制改革法案に新たに2つの内容を加えるよう提案した。
今後、議会と調整に入る。(11:15) 
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英FT紙「ウォール街に宣戦布告」 米の金融規制強化策を批判
 22日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版)は、オバマ
米大統領が発表した金融規制強化策を受けて「オバマ氏がウォール
街に宣戦布告」と題する社説を掲載した。商業銀行のリスク投資を
制限するなどの規制の内容について「大衆迎合主義的で危険だ」と
批判した。

 同紙は米政府がこれまでに打ち出した金融機関に対する特別税な
どと比べて「今回の提案は極端な方針転換であり、誤りだ」と論評。
金融機関の業務に線引きをすることは簡単ではないと指摘した。

 そのうえで「重要な政策は、金融機関が自らのリスクと金融シス
テムに与える脅威に見合った十分な自己資本を積むことだ」と主張
した。(11:44) 
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米大統領、医療改革法案 成立なお探る
 オバマ米大統領は20日、難航する医療改革法案の今後の見通しに
ついて「両院の案の良いところを取り出して法案を成立させる道が
あるはずだ」と語った。19日のマサチューセッツ州の上院補選で民
主党候補が敗北し同党は上院の安定多数を失ったものの、同大統領
は医療改革法案の成立を今後も探る考えを示した。ABCテレビの
インタビューに答えた。

 上院補選の敗北の責任に関連して大統領は「この1年、不人気な
決断を迫られ、私個人も間違いを犯した」と語った。

 補選結果を受け民主党内では、上院が昨年末に可決した法案を下
院が丸のみの形で可決し、法案を成立させるべきだとの考え方が浮
上している。これについて大統領は「現時点では下院(民主党)は
望んでいないし、強制はできない」と語った。ただ「両院の案は90
%は共通している」とも指摘。法案成立に向けた協議の進展に期待
を示した。(13:06) 
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オバマ大統領「国民怒ってる」反省の就任1年
1月21日10時48分配信 読売新聞

 【ワシントン=黒瀬悦成】オバマ米大統領は20日、米ABCテ
レビのインタビューに応じ、19日に共和党のスコット・ブラウン
候補が勝利したマサチューセッツ州の上院補選に関し、「全米で人
々が怒りを覚え、不満を抱いている表れだ」との認識を示した。

 大統領は、就任1年を振り返り、「目の前の危機に対処するのに
忙し過ぎて、国民と直接対話する感覚を失っていた。国民に、政府
が遠い存在だと思わせてしまったことを後悔している」と語った。

 ただ、有権者の怒りの理由については、「この1〜2年間という
より、(ブッシュ前政権時代の)過去8年間の出来事が原因だ」と
述べ、有権者はオバマ政権の医療保険制度改革や雇用政策にだけ不
満を集中させているのではないと釈明した。

 大統領はさらに、上院(定数100)で民主党が安定多数の60
議席を割り込むことになったことに関連し、補選結果の民意を反映
させるため、ブラウン氏の正式就任前に医療保険制度改革法案の駆
け込み成立を図らないよう議会民主党に要請した。
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オバマ大統領、就任1年間の平均支持率57% 戦後ワースト2位 
 【ワシントン=弟子丸幸子】米調査会社ギャラップは18日、オバ
マ大統領の就任から1年間の世論調査での平均支持率を発表した。
同日までの平均は57%で、第二次世界大戦後、大統領選を経て就任
した9人の大統領のうち最下位のクリントン氏(49%)に次いで、
レーガン氏と同率のワースト2位。オバマ氏の人気の陰りを印象づ
けた。

 オバマ氏の18日時点の支持率は50%で、昨年1月20日の就任直後
に記録した戦後歴代2位の68%から18ポイント低下した。初年の第
4四半期(昨年10月20日〜現在)の平均支持率は51%で、クリント
ン、レーガン両氏との同率で最下位となった。ギャラップ社は3者
に共通しているのが経済情勢の悪化と指摘。オバマ氏の場合は医療
保険改革への反発も背景にあるもようだと分析した。
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米上院補選で民主敗北 オバマ政権の医療保険改革、難航必至 
 【ワシントン=大石格】米オバマ政権下で初の上院選となるマサ
チューセッツ州の補欠選挙が19日、投開票された。医療保険改革を
進めた場合の財政支出の増大を批判した共和党候補のスコット・ブ
ラウン州議会議員(50)が無党派層などの支持を集め、初当選した。
民主党は上院で長時間演説による議事妨害を阻止でき、安定多数と
される60議席を割り込む。 
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米住宅価格は下落再開  シラー教授とフェルドシュタイン教授が
警告      2010.01.14  上野泰也

 ロイターは1月12日、米エール大学のロバート・シラー教授のイン
タビュー記事を配信した。同教授は、米国の内外でこのところ広が
っている楽観論に、厳しい警告を発した。

 シラー教授が開発に携わったS&P/ケースシラー住宅価格指数は
、2009年5月から9月まで5カ月連続で前月比プラスを記録したが、10
月は上昇が止まった。シラー教授は、1月27日に発表される次回11月
分は4月以来の下落になるだろうと予想した上で、「今後数カ月は上
昇ではなく下落が続く可能性が高い」「私は二番底を心配しており
、不動産価格のさらなる下落を心配している」「私は住宅価格が下
落を再開することを心配しており、ここで問題になるのは今後さら
にどれくらい下落するかだ」とも述べた。
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米、外資含む大手金融に特別税 10年で8兆円課金
 米ホワイトハウスは14日、金融システム安定に投じた公的資金の
損失を穴埋めするため、大手金融機関から特別税を徴収する方針を
明らかにした。資産規模にあわせ、外資系を含む約50の大手金融機
関に向こう10年で約900億ドル(約8兆2000億円)を課金する。業績
が急回復した大手金融機関は経営幹部に多額の賞与を支払う予定で
、納税者の不満を和らげるには金融界の負担増が不可避と判断した。
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米大統領、2010年度予算に戦費330億ドルの追加要請へ
1月14日10時19分配信 ロイター
[ワシントン 13日 ロイター] オバマ米大統領は、2010
会計年度(09年10月─10年9月)予算にアフガニスタン増派
などに関連する戦費として330億ドルを追加するよう、議会に要
請する計画。国防総省当局者が13日、明らかにした。
 要請する追加戦費は、アフガニスタンへの3万人増派などにあて
られる。
 さらにオバマ大統領は、2011会計年度の国防総省の総予算を
過去最高の7080億ドルとすることを要請する見通し。
 2010会計年度の国防総省の予算はすでに6600億ドルとな
っており、今回の追加戦費が議会で承認されれば、2010会計年
度の同省予算は6930億ドルに達する。
 2011会計年度については、ホワイトハウスが2月1日に発表
する予定。
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ガイトナー財務長官に逆風再び 米下院、AIG救済で公聴会 
 米下院の監視・政府改革委員会のタウンズ委員長(民主)は、ガ
イトナー米財務長官らを呼んだ公聴会を開き、2008年秋のアメリカ
ン・インターナショナル・グループ(AIG)救済を巡る不透明な
情報開示問題などについて調べると発表した。雇用低迷など経済再
生が遅れるなか、米議会では共和党を中心に財務長官への風当たり
が強まっている。AIG救済の実務はニューヨーク連邦準備銀行が
主導。財務長官は当時ニューヨーク連銀総裁だった。
(ワシントン=大隅隆) (00:59) 
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米雇用、12月8.5万人減 失業率横ばい10%、通年は最悪416万人減
 米労働省が8日発表した2009年12月の雇用統計によると、非農業
部門の雇用者数は前月に比べ8万5000人の減少となり、前月の改定
値から再び悪化した。09年通年の減少幅は416万4000人と過去最悪と
なった。失業率(軍人を除く)は10.0%で前月と同じ水準。雇用情
勢の回復力は鈍く、米景気は依然として厳しい状況にある。

 昨年12月の雇用者数の減少幅は市場予測を上回った。失業率は予
測の平均と同じ水準。失業者数は1526万7000人で、前月に比べて7
万3000人減少しており、新たな失業者の発生は減っているもようだ。
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米商業用不動産の不振、景気回復遅らせる恐れ FRB理事
 【ワシントン=岩本昌子】米連邦準備理事会(FRB)のデュー
ク理事は4日、ノースカロライナ州で米経済見通しについて講演し
た。不振が続き、地銀破綻の一因になっている商業用不動産市場に
関し「回復の見通しは余り思わしくない。米経済全体の回復を遅ら
せる恐れもある」と述べ、景気回復の足かせになるとの見方を示し
た。


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