3524.西洋文明を越えて



800年で西洋と東洋が覇権を交代する村山節さんの説の原理を考
察したい。    津田より

0.はじめに
文明の歴史は、新石器が出て狩猟経済になり、金属器が出て農耕社
会になり、工業・IT化で、大量消費大量生産と地球全体が1つに
なる社会になった。

新石器文化はBC3500年〜BC2800エジプト古王国文明で狩猟経済にな
り、BC2800〜BC2000メソポタミア文明は金属器が出て小麦を中心と
した農耕経済になる。

BC2000〜BC1200エジプト帝国文明やエーゲ海文明でヒッタイトが生
み出した鉄器が出て生産性を飛躍的に増大して、BC1200〜BC400中国
古代文明で稲作になり農耕の生産性が上がり、人口維持力が高まり
、非農耕民が大量に存在できることで思想や工業が発展する。儒教
などの諸子百家の思想が出る。

BC400〜AC400ギリシャ・ローマ文明でユーラシア世界がつながり、
交易が経済の中心になり、世界帝国という大帝国ができ、AC400〜
AC1200唐、宋の中国文明は陶磁器や羅針盤、火薬などの新しい工業
製品が生み出して世界に広める。

AC1200〜AC2000西洋文明はイギリスで産業革命・エネルギー革命を
起こして大量生産大量消費社会を作ることになる。米国でIT革命
を起こして世界を急速に一体化させた。このために金融分野で世界
が一体化してしまう。その米国の一体化を拒否している中国が世界
的な不景気を克服している。どうも東洋に覇権が交代する予兆を感
じる。

そして、今後の東洋文明が中心になる社会は、エネルギー自立の循
環型社会になるようだ。このエネルギー自立や循環系社会を作る技
術が、1973年・79年のオイルショック後に日本で脱石油技術
や有機農法など循環型社会に必要な技術を生み出した。

そして、この30年間その技術実績を蓄積し、相当なレベルになっ
ている。木村秋則さんのリンゴや金子美登さんの有機野菜作りなど
作物と作物の補完関係を調べて、ある程度の病気を防ぐ方法も開発
されてきた。りんごや野菜、稲作で実績を積んでいる。このような
技術の積み上げが地産地消のベースとして存在している。農薬も科
学肥料もいらないので、世界のほとんど人口密集地域で可能な農業
である。その実例として、キューバ農業がある。

そして、貿易がベースである工業化したグローバル社会から地域の
自立をベースとした循環型のグローカル社会になる。それぞれの気
候風土の違いで農作物のできる物が違う。普段の食べるものは地域
で確保できていて、気候が違うことでできる農産物は交換する社会
になる。

これは農産物に限らない。工業製品でもアセンブルは地域で行い、
その地域でできない高度部品のみ貿易する社会になる。自立社会が
一番豊かであることを、米国のIT化社会での金融危機が教えてい
る。ベースは地産地消であるが、その上で貿易もするという社会に
なる。

世界的なGDP成長率を競う経済発展は、貧富の差を拡大させ世界
の国同士が通貨切り下げを行い、低価格化する競争を起こして全員
の生活を脅かすことになることである。

しかし、この対応策である自立循環型社会を日本は江戸時代に経験
している。江戸時代のような地域分割で地域の自立社会の方が豊か
で、かつ貧富の差がない社会ができるということが分かり始めてい
る。

西洋は工業化社会の次が自立循環型社会であるが、日本は自立循環
型社会から工業化社会になった世界でも珍しい国家なのである。
また、ブータンのように自立循環型社会にいて、工業化されていな
い社会もあるが、アジア諸国は自立循環型社会を経てきている。こ
れに比べて、欧州社会は自然環境としての気候が厳しくて、環境が
良いアジアの農耕を中心とした自立循環型社会にはなれなかったの
である。

1.プラウト理論:PROUT
0章の議論は、私が考えですが、この私のような論を20年以上前
からインド人の在米経済学者が言っている。ラビパトラである。彼
は資本主義の次に来る経済としてプラウド経済を予言している。ラ
ビパトラはインドではソ連の崩壊を言い当てた人として有名で、ま
た資本主義やアメリカのの崩壊も予言している。

彼曰く 経済は現在のような巨大化したシステムがなくなり地域に
密着した小さな経済が生まれると。そしてその地域がグローバルに
つながった世界が構築されると。グローカル社会である。

資本主義は富の蓄積により豊かさをもたらしたが 富の集中をもた
らし差別化によって自給経済を根底から変え依存型の経済を作り出
し、豊かな人はごく一部で貧しい人が大半を占めるようになると。
現在の社会状況である。

このことは経済を縮小し地域を活性化のない経済に変えてしまい、
貧富の差がより拡大するのは資本主義の問題点であるとした。貧富
の差は働かないから貧しいのでなく経済機構が作り出す必然なのだ
という。そして多国籍企業がその地域から富を持っていってしまい
、資金をためた人は他の地域に投資するという悪循環が続き、その
地域はますます貧しくなる。

それを防ぐためには、地域が自立できる技術が必要であるという。
この資本主義の問題点を70%解決する方法があり、日本の江戸時
代にあった結いという制度で、農家では田植えなどの時労力を提供
し合うことである。現代のようにお金だけでの決剤システムではな
く、貧しいけれども豊かさや助け合いの精神が地域を支えることで
ある。地域通貨にもそのような意味合いがあるし、地域経済システ
ムで金や労力などの交換を行うことである。

もう1つが、地域自立経済の中心は地域エネルギーの自給自足であ
り、農産物の自給自足である。これが有機農法、自然エネルギーで
出来るようになったことが大きい。また、農村都市連携経済が出来
上がる。自立経済では、大都市より中小都市+近郊農業の方が豊か
になる。地方の振興策でもある。

そして、私の予測と同様にこのプラウド経済は日本から始まると予
測している。ここでラビパドラさんと同じ結論になっている。

3.ブータンの自立化
 国民総幸福量(Gross National Happiness:GNH)が有名で、
1972年に、ブータン前国王ジグミ・シンゲ・ワンチュクが提唱した
「国民全体の幸福度」を示す”尺度”である。国民総生産で示され
るような、金銭的・物質的豊かさを目指すのではなく、精神的な豊
かさ、つまり幸福を目指すべきだとした指標である。

現在、ブータン政府は国民総幸福量の増加を政策の中心としている。
2007年に初めて行われたブータン政府による国政調査では「あなた
は今幸せか」という問いに対し9割が「幸福」と回答している。

この国民総幸福を実現するために、さまざまな環境政策、伝統文化
保持のための国民に対する民族衣装着用の強制政策など、また経済
的には農業生産が中心であり、その農業技術の発展に日本人の故西
岡京治が貢献している。

地域社会にある竹などの材料で橋や水路を作り、山岳地域であるシ
ャムガン県の最貧地域を農業開発した。地域社会が自立循環型社会
にできるよう西岡は指導している。このように地域が自立できる技
術が日本の江戸時代に多数開発されている。この技術が貢献してい
るのである。

数人で井戸を掘れる上総掘りなども江戸時代にできた技術である。
地域の経済や技術の状況に合わせて、いろいろな技術が蓄積されて
いるのが日本の特徴である。そして、伝統技術を書いた書物をある
程度、読むことができるのも欧米以外では日本しかない。韓国は現
在、漢字教育されていないので昔の文章を読めない。

東南アジアでも、タイ以外は昔の王朝と断絶していることと、植民
地時代のフランス語化・英語化などで読めないようである。このた
め、江戸時代に開発した農業技術が有効になっている。その上で、
現代の技術が積み上がってきたので、日本の地域自立循環社会構築
技術が多数存在していることになっている。

この技術を発展途上国に供与して、その国の農業を活性化すること
に貢献できるのである。

4.気候条件など
 砂漠や寒冷地など気候条件が厳しい地域は、地域自立化できない
という批判を頂く。これは太陽光のエネルギーが極地域に近いほど
少なくなり、太陽光発電量少なくなることと、その太陽光で食物が
育たないことによる。しかし、風力は極に近いほど強い。また、エ
ネルギーがあれば、植物工場で農業はできるので、自立経済は可能
である。

砂漠地域は反対に、太陽光エネルギーが大きいので電力が十分にあ
る。このエネルギーで、海水などを真水化して農業を行うことがで
きる。内陸部は太陽熱発電で大量のエネルギーを確保して、海岸地
域で、農業を行うようなことを考えれば可能になる。

都市でも農業は可能である。これはキューバの都市に良い例がある。
都市の空き地や家のベランダなどにレタスなどを生育させている。

このように現在、ある程度人間が住んでいる場所では、地域自立経
済は可能である。

5.さいごに
 日本が先頭を切って自立循環型社会に移行して、その後、世界へ
その経済を広めるのが日本の役割であると思う。
どうか、皆さん、一緒にこのような社会建設を作ろうではありませ
んか。それが、日本の使命であると見ています。
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プラウト理論の概要
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ラビ・バトラの恩師であるサーカーの階級循環論を歴史に適応して
いる。端的に述べると社会は戦士(Warrior)、
知識人(Intellectual)・資本家(Acquirer)が順別に支配するこ
とによって歴史が展開されるというものである。これによって革命
前のイランと崩壊前のソビエトは戦士によって支配されている社会
であり、次には知識人により支配させる社会が生まれるであろうと
予言した。一方の西側先進国は資本家が支配しており、崩壊後は戦
士(軍人)が支配する社会が生まれるであろうと予言した。

・予測
また、2008年9月のリーマン・ショック以降、大暴落していた世界各
国の株価が2009年の3月頃から急激に回復しつつあり、2010年を迎え
た現在、世界各国において「不況の最悪期は脱した。」「景気は回
復し始めた。」等の分析も大いに出るようになりつつあるが、この
ような楽観論に対して、ラビ・バトラは2009年7月に出版された著書
『資本主義最終章の始まり 大恐慌2009~2010 』(あ・うん出版)に
おいて、「現在の見せ掛けの株価回復は単なる大暴落後の一時的な
リバウンドに過ぎず、最悪期、すなわち資本主義崩壊の本番を迎え
るのはこれからである。」と予測している。

資本主義を根本的に崩壊させる主因となるものとしてラビ・バトラ
は「富の過剰な集中」と「自由貿易」という2つの要因を挙げている。
彼は「現在の世界ではごく少数の資産家に富が偏り、その偏った富
が世界の金融経済を動かしている。そして、その一方では明日の生
活の糧を得ることもままならない貧しい人たちが数多く存在してい
る。富の集中しているごく少数の資産家たちは、自分たちが大量に
貯めた金を使おうとせずに、より金持ちになろうとするがためにた
だひたすら貯蓄に励み、消費活動をあまり行わず、その一方で貧し
い人たちはもともとお金がないため、無い袖は触れず、消費活動を
活発に行うことが出来ない。消費活動が鈍化すれば、いくら供給を
喚起しても無駄なのである。」と主張している。

更にラビ・バトラは「国際間の競争が激しくなると、生産者は競争
力をつけるためにコストを下げざるを得ない。コストを下げるため
には人件費、つまり労働者の賃金を低く抑えざるを得なくなる。労
働者の賃金を低く抑えれば、無い袖は触れないので結局消費活動は
鈍化してしまう。消費活動が鈍化すると不況の原因になる。」と述
べ、自由貿易に反対の姿勢を示している。 

ラビ・バトラの指摘する通り、資本主義経済は現在、「富の過剰な
集中」と「自由貿易」による消費活動の停滞、すなわち需要と供給
のバランスの崩壊のために、終焉の危機にさらされているといって
も過言ではないと言えるであろう。 

更にラビ・バトラは「健全な経済は需要と供給のバランスを必要と
する。需要=供給。このバランスが失われると、高い失業率や高い
インフレを引き起こす。供給の主要な源泉は労働生産性であり、需
要の主要な源泉は賃金ないしは購買能力である。生産性が上がり、
賃金が上がり、消費が増大して、投資が拡大する。この投資と生産
性の拡大によって、供給が増大する。故に、経済バランスを維持す
るためには、需要も比例して、増大しなくてならない。つまり、生
産性に比例して、実質賃金が増大しなくてならない。」と述べてお
り、この経済の根本を無視して、借金経済を作ったのがグリーンス
パンであると指摘し、彼を手厳しく批判している。彼のグリーンス
パンに対する批判は、彼の著書『グリーンスパンの嘘(GREENSPAN’
S FRAUD)』(2005年出版、和訳本:あうん出版)等で顕著に見られ
る。 

資本主義経済崩壊後に誕生する経済社会システム、とラビ・バトラ
が予測している「プラウト主義経済」とは、大まかに言えば均衡貿
易、賃金格差の縮小、均衡財政、自国産業保護、終身雇用、環境保
護、銀行規制等による「所得格差の少ない安定した共存共栄の社会
」のことを指す。彼は昭和30年代中盤頃〜昭和40年代頃の日本社会
がプラウト主義経済に最も近い理想的な社会だったと述べており、
当時「一億総中流社会」を実現していた日本を絶賛している。

彼は恩師サーカーと同様に、数々の著書で「必ずやプラウト主義経
済は過去に一億総中流社会を実現していた日本から始まるだろう。
」と述べており、彼の決まり文句とも言える「光は極東の日本から
」というフレーズは日本からプラウト主義経済の胎動が始まること
を示唆した表現と言えるであろう。 


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