3518.歴史を循環論的視点から



前回の地政学的な見方につづいて、循環論的な見方を用いて次の時
代のパラダイムを考えてみたい。この観点の理論は、1つに800年で
西洋と東洋が覇権を交代する村山節さんの理論と、もう1つがモデ
ルスキーの覇権循環である。これを見ていこう。
                津田より

0.はじめに
まず、村山さんの論は、BC3500年〜BC2800はエジプト古王国文明が
全盛期、BC2800〜BC2000はメソポタミア文明、BC2000〜BC1200は、
エジプト帝国文明やエーゲ海文明、BC1200〜BC400は中国古代文明、
インド古代文明、BC400〜AC400はギリシャ・ローマ文明、AC400〜
AC1200は唐、宋の中国文明とサラセン文明、AC1200〜AC2000は西洋
文明というようにエジプト文明を西洋文明とすると西洋と東洋文明
が800年で交代していることが分かる。

この原因は、東洋の農耕民族的な文明と西洋の狩猟民族的な文明で
文明の根本的な原理が違うためであり、東洋的な自然と調和しなが
ら生きる文明と人間中心の理論的・開拓精神の西洋文明で一方の文
明が行詰ると他の論理の文明が前の時代の遺産を引き継いで、より
高次に文明を高めるために、そうなったのであると見ている。

日本も飛鳥時代までは騎馬民族と農耕民族の戦いがあったが両方を
折衷した文明を作り、その後の日本文明の基礎を作ったようにであ
る。

世界的の農耕民族文化と狩猟民族文化がお互いに影響して人間の技
術と精神に提供を及ぼしあって、文明の規範を高めてきたのだ。

このことをこの800年交代説は示しているのであろう。2000年か
らは西洋文明から東洋文明に交代が起きていることになる。米国の
力が絶頂期になったが、その力を中東戦争に米国は費やして、その
力を落としている。文明的な影響力も徐々に衰退している。大量消
費・大量生産方式が環境問題を起して、今見直しの時期に来ている。

もう1つは米国のジョージ・モデルスキーが表した覇権循環モデル
である。AC1200年以降の西洋文明優位時代での覇権国循環を示して
いる。これによると海軍力が他国より著しく強大な国がそのときの
覇権を握るとしている。AC1480年代にポルトガルが喜望峰ルート開
拓とアメリカ発見で優位になる。AC1560年代に無敵艦隊を破り、オ
ランダが優位に立つ。AC1670年代に欧州大同盟戦争で英仏が勝ち、
海上では英国が優位になる。AC1780年代のナポレオン戦争にも英国
は勝ち、仏国を仰臥した。AC1870年、1900年代は米国が第1次、2次
世界大戦に勝利して世界の覇権をとっている。しかし、2000年から
この米国の海軍力が降下してきた。次の海上権力を取る国はどこか
という問いになる。

そして、このモデルからすると海軍力を増大している中国が世界覇
権を握る可能性を示唆している。しかし、このモデルはAC1200年以
降の西洋文明的な基準ではそうなるという見方が出来る。この基準
が東洋的な文明基準に合っていないように感じる。

また環境問題が大きくなっている時には違う文明の形があると見て
いる。文明基準が大きく代わる可能性があるということだ。

地政学的には、絶大な海上権力がない時代は地域分割的な地域強大
国が周辺諸国を軍事的に押さえ込み、生存権的な経済圏を作ること
になる。今、米国の軍事力が限界に来て、地域分割的な時代が来て
いる。

1.西洋文明と東洋文明の違い
 西洋文明は理論的であり、自然と対決する文明であり、他民族を
征服する文明である。基本的に略奪文明である。特にヨーロッパ文
明は寒冷地帯であり、農耕では多くの人口が生きていけない。この
ため産業革命を起こして、機械力で他世界を征服した。世界の富を
欧州に集めてしまい、現在でも大きな資産を持っている。
寒冷な自然を克服することが重要で、自然からの恵みはすくないの
で人間力で自然を改造するという精神ができている。

東洋文明はメソポタミア文明で小麦栽培という農耕を作り、中国古
代文明で稲作農耕ができ、唐・宋の文明で羅針盤、陶器、紙などを
生み出す。東洋文明は基本的には自国の生み出した商品を他国と貿
易して繁栄を築く文明である。

農耕文明は自国内で食糧を生み出せるので、他国を支配する必要が
ない。自国内の動植物を研究して食糧や薬草を見つけて、それで病
気を治すことが出来る。このため、自然の観察が非常に重要である。
自然と共生して生きていくことが重要になる。

日本のように他国を支配しても、支配に多額の資金が必要になり、
植民地を無くした方が豊かになる。

現代、米国文明で石油を使った機械力は、石炭を使った機械より効
率が良い為に1945年以降、世界は内燃動力と言う機械力を用いた航
空機と戦後生まれのインターネットという世界に情報を瞬時に伝達
できる能力を駆使して、グローバルな商売ができるようになった。

しかし、これは文明間の軋轢を増したことになっている。この軋轢
で米国は軍事力を消耗して、米国の時代が終焉しそうになっている。
機械力、征服力、軍事力の西洋文明的な要素の限界に来ているよう
に感じる。

欧米文明が世界に伝播して、機械文明を農耕民族も受容したが、そ
れでけでなくその機械力で自然を改良した。農作物が大量に出来て
、多くの人口を維持できるようになったが、しかし自然の循環をダ
ムなどが壊して、自然破壊ということが起き、その反省の段階に来
ている。

戦後の石油文明も地球環境を地球規模で破壊してきたことで、これ
以上の環境破壊が無視できない状態になっていることと、機械力で
食糧を大量に得ることが出来たことで、人口も増えている。その上
に、中国やインドの巨大な人口が豊かな生活になり始めて、食糧・
資源が大量に必要になっている。ここでも限界に来ている。

世界文明の覇権などの基準を変更しないと、このままでは食糧も資
源も枯渇して、全体的な人間の生活レベルを落とすしかない状態に
なると見る。

このため、西洋文明的な覇権論理は、今後通用しなくなるように感
じる。今後は地域が自立した上で、共生的な貿易で多種類の産物を
相互に供給することで成り立つ世界ができることになると見る。

2.日本文化はどうなるか??
 日本は自立できる技術的な基盤を持っている。それにも増して、
日本文化が重要な要素である。日本文化は、自国内のいろいろな物
を好奇心で見て、工夫して独自の物を生み出してきた。今までは、
欧米文化の吸収に追われていたが、とうとう吸収するべき文物がな
くなってきた。

これからは欧米文化の自国文化への取り込みが行われ始める。その
良い例が、欧米漫画から戦後の漫画や劇画になり、その漫画からメ
イド的な衣装ができ、そのメイド的な雰囲気からモームスやAKB48な
ど出来てきている。このように漫画が1つの日本文化になりきって
きた。その漫画からいろいろな派生文化も出てくる。

漫画が日本文化になる準備が、平安・鎌倉時代の鳥獣戯画であろう
。しかし、海外のマンガとは違い、鳥獣戯画の動物達は精密で躍動
感がある。というように手が込んでいる。日本文化は浮世絵でも庶
民文化であるが美術的なレベルが高く、美術的な価値が後世に出て
くることになる。江戸時代には庶民が買える値段であったが、現時
点では、我々庶民では買えないほどで、解説書を買って楽しむしか
ない。

インターネット文化は、新しいビジネスもできたが、一番大きな新
しい文化は、インターネット内の多くの人に寄生する人間ができた
ことである。Twitterで食事のお願いを書くと人が奢るよとくる。
これは日本の居候文化で、江戸時代からある。その居候をインター
ネットで行う人間が出てきた。人同士の緩い付き合いがインターネ
ットでできたことによるのであろう。このように江戸時代の文化的
な風景が現代に蘇ったように感じる。

どうも、日本は欧米から入れたインターネットで、江戸時代の「連
」などの文化的な集団ができてきている。私もインターネットで同
じ趣味の人たちと知り合った。このように連が現代に蘇ったようで
ある。

日本の自然として、里山や有機農法なども江戸時代の農業が蘇るこ
とになる。人間と自然の調和は里山であろう。その環境でカブトム
シなどが繁殖できる。この里山が有機農法と一緒に復活してきた。

日本の川もダムから堤に変更することになると見る。公共事業の方
向が変化してきた。ダムは自然破壊になる。シャケなどの魚類が川
に上がれない。また、鉄分や有機物を海に運べない。このようなこ
とをすると自然が枯渇してしまう。これをやっと人間は気が付いた
のである。

3.日本の行く道
 自然が与えてくれる恵みをシッカリ研究して、その仕組みをどう
機械化していくかが重要なことである。植物成長を研究している先
生に聞くと、30年以上、この研究を継続したから、今があるとい
う。自然を観察して適切な生育条件を見つめるには時間が掛かると
いう。

このように継続的な研究を行っている大学や企業の時代になってき
た。それそれの分野の継続的な専門性が今、日本を助けることにな
るようだ。環境分野とは自然をジックリ見ることから開始なので、
長期の忍耐が必要な分野である。

そして、その先に日本の時代があるようだ。

さあ、どうなりますか??

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