3512.地政学から見た将来



現代の地政学は、米国の海上権力が絶大で世界の海を米海軍が守る
ことを前提条件でできている。マハンの海軍優先戦略を米国は実践
してきたので、第2次大戦のスパイクスマンのハートランドとリム
ランドの戦いになるという冷戦構造も世界の海を米海軍が守れる米
国の海上権力が絶大であることで成立つ。

12隻の空母艦隊が紛争地域に展開することで、紛争を抑える効果
があった。しかし、陸地内部までは空母は入り込めないために、ソ
連の強大な戦車部隊を殲滅できないために、ハートランドは安全で
あり、海に近いリムランドと陸地内部のハートランドに二分される
としたのだ。

しかし、現在この前提条件である米国海軍力が徐々になくなる方向
である。空母艦隊を新設しないため、空母の老朽化で現役を離れる
空母の代換の空母は無くなり、徐々に空母艦隊の数が減ることにな
る。米国の海軍力が落ちることになる。
                津田より

0.はじめに
 海上権力の基盤は、世界各地の米海軍への補給基地と空母である
が、その世界各地にある補給基地がどんどんなくなっている。米国
は世界展開から米国に基地を引き上げている。また、各地域の地域
強大国の海軍力に匹敵する艦艇をその地域では持てないために、地
域同盟国との合同で作戦を行う必要になっている。しかし、その前
提は、米国の空母が紛争地域に来て、地域同盟国を助けることであ
るが、空母を無くすることで、出来なくなってくる。

米国空軍力でカバーするとしているが、空軍では戦闘に必要な物資
の量や兵員を短期に送ることは出来ない。特に戦闘機や弾丸・ミサ
イルなどの高度な兵器を大量に持ち込み、整備することは難しい。

このように米国衰退で一番問題になるのが、米国のシーパワーに依
存した親米国家と物資流通の海が安全でなくなることで、現時点の
経済を維持する資源、エネルギー、食料などが手に入りにくくなる
か手に入れるコストが増大することである。この物資確保地域と物
資流通の安全を確保する地域を生存圏とするハウスホーファーの生
存圏が意味を持つことになる。

海上権力がある米国地政学から多極的なドイツ地政学に主役が入れ
替わることになる。地域分割のバランス・オブ・パワーになる。ハ
ウスホーファーの「パン・リージョン」に似た地域経済圏はこの米
国衰退を見越した動きでもあると見える。

生存圏とは、何かというと、資源・エネルギー・食料の供給先とそ
の物資を運ぶルート、そして自国が生産する製品の市場である。
日本の生存圏範囲は、エネルギーは石油であり、その90%を中東
に依存している。そして、中東から日本までのシーレーンである。
食料はオーストラリアと米国など米大陸である。資源の多くはオー
ストラリアからである。というように広範囲の生存圏になる。しか
し、日本海軍は日本周辺しか守れてない。このため、広範囲の生存
圏を維持できない。特に石油のシーレーンは、中国の生存圏でもあ
り、シーレーンが競合している。インドも同じであり、シーレーン
が競合している。米海軍が居たときには、それぞれの国の海軍力は
小さくても良いが、米国衰退で、それぞれの地域強大国は海軍力を
増強している。このため、生存圏の境界面やシーレーンでは摩擦が
起きることになる。

特に海外基地を設けると警戒して、対抗上、同じ地域に基地を作り
対峙することになる。平時でも警戒することになる。このような現
状が、アンダマン諸島で起こっている。中国がミャンマーから借益
した東アンダマン諸島に基地を持ち、西アンダマン諸島にインドが
基地を作り、対峙している。そして、悪いことに中国はパキスタン
と友好関係を結んでいるために、インドは中国も警戒することにな
る。しかし、このアンダマン諸島はシーレーンのそばにある諸島群
であり、日本のタンカーも近くを航海しているのである。

日本は憲法の制約上シーレーン防衛をできないが、海外基地を持つ
と、その周辺国は警戒することになり、大きな負担になる。その良
い例が中印のアンダマン諸島での対峙である。中国はシーレーンを
自力で守る方向であるが、それが次の問題を起し、軍事力拡大が対
峙した国との間に起こるのである。中国の周辺国家は中国の軍備拡
大に刺激されて軍事拡大に走っている。

1.中国の生存圏拡大で
 中国の生存圏拡大が起きている。中国の経済成長でその必要な資
源・エネルギー・食料などの輸入量が拡大しているし、自国商品の
市場としても拡大している。しかし、生存圏の拡大に合わせて自国
の軍事力を急拡大している。それは自国生存圏を守る観点からであ
るが、生存圏拡大と生存圏を防衛する軍事力拡大は周辺強大国との
摩擦を引き起こすことになる。まるで産業革命に遅れて参加したド
イツが生存圏を主張するように中国も生存圏拡大を主張している。
日本のように生存圏拡大でも軍事力増強をしなければ、周辺諸国も
安心できるが、中国の海軍能力の増大は急であり、他国から多数借
益して基地にする事態で、摩擦を起している。中国は大陸国であり
、基本的に陸上権力を中心としていたが、経済発展とともに海上権
力の増強を加速している。空母も2隻建造すると宣言している。

 ロシアとは中央アジアで陸上権力が衝突する危険性があり、イン
ドとはインド洋と東南アジアで、日本とも中東からのシーレーンと
東南アジアで、EUとはアフリカで、それぞれ生存圏がぶつかり、
その防衛で中国軍を各地に常駐されると、それを警戒する観点から
他国が基地を監視することになる。

このため、中国を監視する国家同士が連携してくる。対中国への集
団安全保障が出来ることになると見る。しかし、そのような集団安
全保障になると、欧米露日印など中国包囲網とも言える国家が結集
してくる。

この世界連合に対峙する国家とはミャンマー・パキスタン・イラン
やベネズエラ・キューバやアンゴラなどになる。中国も包囲網を完
成させないように上海機構で、ロシア・インドなどと中国は安全保
障協定を結び、敵対関係にしないようにしているが、残念ながら、
アンダマン諸島でも対峙のように中国海軍の世界展開が始まり、警
戒する国が増えている。

2.日本の道は
 日本の生命線は、中東からのシーレーンであるが、残念ながら軍
事力でこの生命線であるシーレーンを守っていない。米海軍力が無
くなった後は、諸国の信義に期待するしかないことになる。

日本が進むべき道は、軍事力増強に走るのではなくて、生存圏をな
るべく小さくして、自給体制に持っていくことである。生存圏縮小
で、諸外国とも摩擦は劇的に無くなる。中国とシーレーンを競合し
なくなれば、中国を脅威とする必要もない。しかし、現時点では石
油なし経済は無理がある。それでは、シーレーンをどうするかとい
うと守りやすいシーレーンで調達できる代替物で置き換えることで
ある。日米間、日豪間のシーレーンは安保協定があり、守りやすい。
こちらにシフトすることを考えるべきである。そうすれば、競合を
大きく減らすことになる。

詳細な検討はこれからであるが、それで短期戦略は成り立つと見て
いる。その後、長期戦略として食料・エネルギー・資源は自給率を
上げることである。食料は植物工場でできる。特に植物の5フェー
ズに対応する生育条件を全てコンピュータに覚えこませた装置を作
っている大学があり、大学関係者も世界的な食料不足の寸での所で
間に合ったと言っている。クロマグロの完全養殖に成功した近畿大
学と同じようなことを言う。そして、ノウハウはコンピュータの中
にあり、工場的に植物を栽培できると言っている。このため、建築
会社の転換は可能であり、コンピュータ付き植物工場をつくればよ
いのである。

エネルギーは太陽光発電も良いが10%の効率であるので、まだ日
本全ての家に設置しても不足する。そのため、オーストラリアの砂
漠に30%から40%効率の太陽熱発電所を作り、西澤先生も推奨
する直流高圧送電で、日本に送電するとほとんどロスなしで送るこ
とができる。太陽光のエネルギーは砂漠地帯のほうが大きいし、太
陽熱発電の方が太陽光発電より効率が倍以上も高い。自然エネルギ
ーは変動するので、それを調節する大規模蓄電池が必要であるが、
この用途向けNAS電池が既にできている。

マイクロ水力や風力などそれぞれの地域特性に合った発電を組み合
わせていけば、エネルギーの半分程度は石油から置き換えることが
出来る。もちろん、内燃機関から電気自動車や蓄電池電車など電気
で走る輸送機器にシフトことが重要になる。

資源は日本にある使用済み機器のリサイクルで生み出すことができ
れば、多くの金属を使った機器や建築物が資源となり、日本国内の
使用分ぐらいは供給可能になる。

3.世界の日本化
 日本の生存圏縮小戦略が、経済的な合理性を有すると世界が分か
ると軍事力や外交力などの方法で諸外国から資源を奪わず運ばない
ので、軍事などの財政的な負担が小さくなる。このため、日本の生
存圏縮小の方法を世界各国が真似をすることになる。マータイさん
が「もったいない」という日本語を有名にしたが、日本文化が裏打
ちされている日本生存圏縮小方法を世界に広める日本企業や日本人
達が世界に出て行くことになる。環境技術の世界的なリーダになる
ことを意味するが、それを声高に日本は言わないことである。

そして、その日本企業と日本人をサポートするのが日本国の役割に
なる。名を捨てて実を取るのは日本である。

4.さいごに
 今までに述べたことを、全面的に詳細に研究する方向で今年、あ
る研究機関と調節しているので、その研究結果に注目してほしい。

さあ、どうなりますか??

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