3499.日本の成長戦略について



今後の日本を考えると、雇用を生み出すことと付加価値の大きい産
業を創設・育成することが重要である。付加価値が大きいことは、
給与も高く出せることになる。
           津田より

0.はじめに
 現時点の問題点は韓国や中国が既存のAV家電や自動車など日本
が得意としていた領域で、日本製品を仰臥してきたことである。
特に韓国サムソンは、国内市場が小さいことでそれぞれの地域にあ
った製品を製造して、日本企業の製品を駆逐している。

韓国現代の自動車でも品質的に日本車と同等レベルに達しているた
めに、その低価格で日本車より売れる事態にある。これと同じこと
が造船でも起こっている。というように韓国が日本の得意分野にな
だれ込んできた。

この結果、この分野における日本企業の数が減り、その企業の雇用
は激減している。日本が雇用問題に直面したのは、この様な韓国企
業が成長した時期からである。日本企業の絶頂期には、就業人口が
足りないので家庭にいる女性を就業してもらうことや海外労働者導
入を考えていた。隔世の感がある。

このため、この分野での生き残りを模索することは重要であるが、
日本の質を確保した雇用を生むためには、新しい高付加価値な産業
分野を作るしかない。

その産業分野として有望視されているのが、医療・医薬品、原子力
・太陽光・風力・水力・エタノール・バッテリーや電気制御などの
エネルギー分野、鉄道・電気自動車などやその部品類を含む輸送機
械分野、ロボット・ステッピングモータなどを含む工作機械分野、
複合材や炭素繊維など高度素材分野、レアメタル回収、ペットボト
ル再生などのリサイクル分野、植物工場などの高度農業分野、水資
源分野である。

1998年のGDP500兆円から2009年までほとんどGDP
が増えていない。横ばいである。そして、高付加価値なAV産業な
どを韓国に取られて、日本はサービス産業や小売業など低付加価値
産業分野にシフトした。この分野は低賃金雇用しか生み出せない。
このため、賃金を減らすために見なし管理職や非正規雇用など雇用
条件の問題が出ている。

GDPが同じことで5000万人と必要労働人口も増えていないが
、非正規雇用が1500万人となり、正規雇用3500万人で徐々
に非正規雇用が増加して、現時点で30%になっている。1990
年ではほとんど非正規雇用でもパートタイム労働者で15%程度で
あったが、2000年から契約社員、派遣社員が出てきて、この数
が増えている。パートタイム労働者数は15%と変化がない。

成長戦略が無ければ、今後も低賃金労働者が増えていくことは間違
えない。もう1つは、女性労働者が増えていて男性社員を駆逐して
いる。必要総労働人口が同じであることで、女性労働者が多くなっ
た分、労働市場は供給過多になり労働賃金は下がるし、男性労働者
が弾き飛ばされることになっている。

欧米は日本企業が欧米企業を駆逐した時期に金融・投資分野にシフ
トさせて高付加価値産業化したが、その結果がバブル経済になり、
高利益追求がバブル生成と崩壊のサイクルを生み出した。日本は、
この金融投資分野は欧米に比べて弱いし、一部の人間しか高収入を
得られない問題点がある。

このため、欧米の状況を見るとこの金融投資分野への積極的な基盤
移行は日本を劣化させることになるので、反対である。あくまでも
社会の基盤としての金融業として存在するべきである。

1.資源産業の行方
 欧米諸国の積極的な投資から新興国が高度成長することは目に見
えている。この新興国の産業が立ち上がり、新興国経済が立上がる
と資源の枯渇と資源価格が高騰することは明らかである。

この資源に注目することが、次の産業改革では有望な市場になる。
今まで海外から買っていた資源を日本国内で生み出せれば、それは
海外に出て行く資金が国内に還元できることになる。また、日本で
使い切れない新資源を輸出することで、新しい産業が出来て雇用を
生み出すことになる。資源分野は水素・エタノール・水の浸透膜で
も分かる通り、設備産業である。

日本の問題は海外労働者より高い賃金を貰い労働者のために加工産
業は、日本の工場から低賃金国の工場に出る必要がある。特に労働
の質が高いフィリピンを除くアジア諸国に出て行く必要があるが、
資源産業は装置産業の面がある。化学産業と同様な設備産業であり
、工場の大きさの割りに労働者数が少ないので、製品価格に労働賃
金の高さが気にならない。
 
このような産業は素材産業、医薬品産業でも同様である。というよ
うにこれからの産業は設備産業的な分野である。

2.加工産業の行方
設備産業以外で残るには、世界でも日本しかできない部品分野など
の分野である。キー部品は素材分野でもある。このキー部品を持つ
ことが加工産業では重要な生き残り手段となる。

キー部品を持つ企業が、世界に出て行き世界の各地で工場を作り、
日本人がその工場の指導をすることである。世界に企業とともに、
日本人が出て行くことである。日本企業は本社、研究所やキー部品
工場だけを日本に持ち、後は世界で活躍するしかない。このように
しないと日本企業が倒産してしまい、技術を保持できなくなる。技
術のキー部分だけを押さえる。これをやっているのがYKKである。

今後、自動車でもAVでも全ての加工産業の企業で同様な事態が起
こるし、これが出来ない企業は破綻することになる。

世界に出ていくことで、企業は低価格製品から高額製品までを品揃
えすることができる。日本の大企業は世界企業になるしかない。
そして、日本政府はこの世界企業の日本人に国家サービスを行うこ
とである。

3.知恵の産業
 日本の研究開発費は世界でもトップレベルである。特許数も世界
トップであり、いかに研究開発費を掛けているかが分かる。この研
究開発分野が収益に繋がるには、多くの時間が必要である。太陽熱
発電の東工大玉浦教授でも、30年以上も同分野を研究している。
太陽光から水素を生成する光触媒の研究では東工大堂免教授も20
年程度の研究をしている。それがやっと日の目を見ることになって
いるのだ。

このように研究開発には長い時間が掛かることになる。しかし、水
素貯蔵技術では、ガラス管を用いた新しい方法がロシアとイスラエ
ルの合同企業から提案されて、今までの金属貯蔵技術を仰臥するよ
うに世界的に研究が行われているために、ある日突然、研究してい
た技術が陳腐化することもある。

知恵の産業は、その意味ではリスクを抱えて研究することになる。
この分野は、日本では中小企業の職人が長年、こだわった技術を基
に生み出していたが、その中小企業がどんどんなくなっている。こ
の役割を徐々に、中小企業から大学の研究機関に移し変えることで
しか日本の次の技術を生み出せないことになっている。

しかし、その最初の試作品を生み出すには、職人芸が必要であり、
職人は手の感覚でミクロンオーダの精度を出す。この技術を無くす
と、日本は最先端技術でも製品を作れなくなる。そして、1つの製
品を完成させるには、複数のそのような職人が必要である。

製品構築のためのワンセットというが、それがだんだんなくなって
いるように感じる。機械では、金型屋、盤屋、回路屋、加工屋、塗
装屋などなどである。これらは作るものによって違う。鋳物屋が必
要な場合もある。

このため、どこが一番重要であるかの優先順位をつけないと、ここ
でも研究開発費と製品開発企業保持費用が無限大になる。このため
にも研究の優先順位をつける必要がある。全ての分野の研究を研究
者が望む金額で援助はできない。しかし、次の日本の産業とする研
究は行うことである。

4.日本国内での産業
 なるべく、多くの絶対有利な加工・素材産業が国内に残り、多く
の雇用を生み出すことが必要である。しかし、有利ではなくなる多
くの加工産業は一番雇用を生み出すが、この部分を新興国、発展途
上国に取られてしまう。

このため、日本には研究と開発のための職人を有する中小企業、キ
ー部品の生産などと結果的には非常に少ない雇用しか残らないこと
になるが、そのどれもが日本に大きな利益をもたらすことになる。

この利益を国内に移転して研究などに使ってもらう必要がある。そ
して、高給の労働者とサービス産業の低賃金に分離することになる。
このため、法人税は海外からの移転利益には税金を掛けるべきでは
ないし、企業の社員で高額所得者から累進的に税金をいただき、低
所得者層の子供手当てなどに振り向けることである。社会全体で所
得の平準化を行う仕組みが必要になる。

そうしないと、国内のサービス産業にも金が廻らなくなり、日本の
雇用全体が縮小になる。国内に残るのは観光、福祉、研究、本社機
能、キー部品産業、素材産業、サービス産業、福祉産業などである。
製造業ではない企業は低賃金雇用になるし、製造業でも海外と同レ
ベルの賃金にすれば、雇用が海外から戻ることになる。

しかし、製造業の低賃金雇用を是正すると雇用は生まれない。サー
ビス産業などの低賃金雇用がメインになる。それでは、その国内産
業を動かす資金は、海外で利益を出した企業が日本国内に持ち帰る
資金であることだ。このため、日本企業の世界展開は日本の運命を
左右する事態になる。

このための日本拡大戦略が重要になるのである。

5.最後に
 ここでは今、話題の成長戦略を考えたが、このストーリーで日本
の戦略を一刻も早く組み立てて、次世代の日本を繋いでほしいもの
である。
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世界の自動車販売ランキングで歴史的な逆転が起きた。韓国現代自
動車の1〜9月の販売台数は前年比9%増の341万台。米フォー
ドモーターを抜いて5位に浮上した。
                 日本経済新聞 12月17日
   __________
   佐々木の視点・考え方
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄      
★上記の記事は特集「韓国企業強さの秘密」の一部。

 現代自動車が、自国通貨安によってではなく、マーケティングと
品質の良さによって販売を拡大している事をいくつかの事例で説明
している。

 記事にはないが、現代自動車は海外生産台数が世界一なので、ウ
ォン安 効果を受ける企業ではない事は、投資家なら知っている。

 安さから品質とマーケティングの巧みさで伸びるように変わった
韓国 企業は鉄鋼や電機にもある。

 同じように安かろう悪かろうと思っていた中国製品でも、品質が
急速に向上しているものがかなり多くなっている。
 
 日本企業は、こうしたライバルたちの「量から品質への昇華」を
見逃して対処できなくなってしまったように見える。
 
 私は、日本企業の多くの経営者や社員に言いたい。

 「もっともっと自分たちの歴史を学べ」と。

 今、中韓企業、新興国企業がやっていることは、歴史の繰り返し
だ。

 30〜50年前の日本企業が「安かろう悪かろう」と先進国にバ
カにされながらも生産して輸出を伸ばし、量を売って稼いでいる間
に社員全員がQC活動に励み、品質も改善して高級品も売れるよう
になったのと同じことだ。

 つまり、今の日本企業社員の現役社員は、ライバル国企業と戦っ
ているのだが、同時に引退した先輩世代と戦っているのと同じだ。

 引退した先輩世代は中韓企業・新興国企業と同じ行動をとってき
たのだから。

 先輩世代を老いぼれと無視するのではなく、彼らが現役世代に考
えていた内容を聞き、そのときにライバル先進国にどんな手を打た
れると厳しかったか、何をされたら負けていたかということを聞く
ことだ。

 きっと解決策を教えてくれるだろう。

 これが温故知新という事だ。
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『プロジェクトX』の悪影響から抜け出そう [BM時評] (2009/12/19)
http://dandoweb.com/

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに) 
 NHKスペシャルの「チャイナパワー 第2回 巨龍 アフリカを駆
ける」について書かれた「中国の特番を見た」(レジデント初期研修
用資料)と、そのはてなブックマークが気になりました。結論から言
えばこうした中国のやり方は日本には参考にも何にもならないと考
えるのですが、NHK『プロジェクトX』という安易な「頑張りました
、出来ました」番組があったために、日本の企業活動について大き
な誤解が広がっています。 

 「チャイナパワー」は道も整備されないエチオピアの山奥まで中
国企業が携帯電話網を整備する話です。全土にアンテナを建てまく
る人海戦術です。「なんだか『プロジェクトX』みたいに見えた」
「プロジェクトXは、日本独自の昔話だと思っていたんだけれど、
あれが昔話になってしまったのは、要するにああいう『泥まみれに
なって働けるプロジェクト』を、日本の政府とか、企業が取って来
ることができなくなったからなんだな」と思われ、はてなブックマ
ークでも納得されてしまっています。 

 いまトヨタ自動車が苦境にあります。筋肉質な、リーンな生産様
式を作り上げて米ビッグスリーを追い落としたはずなのに、米国の
住宅バブルに浮かれて利幅が大きい大型車に手を出してしまいまし
た。その一方でこれから実需が立ち上がる途上国で足場を築くこと
を怠っていました。損益分岐点が大幅に上がり、リーンどころかぶ
くぶくの肥満体です。それなのに経営の意思決定が過去に縛られが
ちで方向転換が難しいのです。ソニーなど日本の大手メーカーは似
たような状況にあります。 

 日本には「頑張れば出来た」の過去しかないなら悲惨の限りです
が、そんなことはありません。日本企業が米国を追い上げる過程で
発揮されたのは知恵と創造性だったのです。ソニーのウォークマン
が全く新しい音楽の聴き方を切り開いたのが、その典型です。ウォ
ークマンは例外的な存在ではなく、様々な業種、局面で新市場を切
り開く商品開発が行われました。今一度、そこに立ち返るべきです
。そうした営みを「独走商品の現場・京都」として20年前にシリー
ズにしています。「京都商品開発ストーリー閲覧への招待」から入
れます。興味がある方はどうぞ。 


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