3472.米中G2時代への苦悩



日米、米中首脳会談が行われたが、米中の思惑の違いが明らかにな
ってきた。            Fより

米国は壮大な実験をしている。FRBはドル札を大量に市中に供給
して、金融経済を立て直そうとしている。このFRBに連動して、
オバマ政権は景気刺激策などで財政赤字にしている。この財政赤字
のために、大量の米国債を発行しているが、この買い手が中国であ
る。

中国の外貨準備高は2兆ドルを超えている。この見返りとして、中
国は人民元をドルとリンクして米国への輸出を確保することを米国
に認めさせている。

この構造が、世界的に問題になってきた。ドルは世界の通貨に対し
て切り下げているのに、人民元もドル切り下げと同時に切り下がり
、中国の輸出が増大している。

中国製品と競合する商品を生産している国はたまらない。人民元安
で、自国通貨の方は対ドルで切り上がり、それは対人民元でも切り
上がることになるからである。

中国製品と競合しているのは、東南アジア諸国であるが、中国への
輸出も多いために、中国に文句が言えない。このため、仕方なく、
ドル買い介入して、自国通貨を切り下げることに躍起になる。

東南アジアの諸国を中心として、世界的な通貨の切り下げ競争にな
っている。この事態で一番被害を受けているのが、日本とEUであ
る。先進国であるので、通貨切り下げ競争に参加できない。米国も
自国産業を育成するべきであるが、できないことになる。

EUのユンケル・ユーロ圏財務相会合議長は、「世界的な不均衡は
中国と米国の誤った行動が原因だ」と指摘。「両国の国内の不均衡
は世界全体に影響を及ぼす」と述べたことでも分かる。日本のソニ
ーなどAV企業、トヨタなど自動車企業もウォンを低く抑えている
ために韓国企業現代・サムソンの追い上げを受けて、世界的に苦戦
している。

このような歪な世界経済の状況で、オバマ大統領はアジアを歴訪し
たが、結果として得るものが少なかったように思う。初の訪中で貿
易不均衡の是正に人民元の切り上げが不可欠とする考えを伝えたオ
バマ米大統領に対し、中国は「元相場を切り上げても不均衡是正に
つながらない」と主張し、かみ合わない議論の構図が鮮明になった。

米中の2強時代であるので、中国も世界経済に応分の貢献をしてほ
しいが、温家宝首相はオバマ米大統領との会談で、米中が世界規模
の課題解決を主導する「G2論」に賛成しない考えを伝えたが、一
方、温家宝首相は「中米協力は独特の役割を発揮し、国際政治・経
済の新秩序づくりを推進できる」とも語り「新秩序づくり」を主導
したい姿勢もにじませた。これは、世界が困っても義務が果たさな
いが、中国に得で世界に号令できる権利は受け取ると言うことであ
るようだ。あくまでも中国の損得でしか考えないということである。

米中両政府は、オバマ大統領と胡錦濤国家主席の首脳会談を踏まえ
、世界経済の回復に向けた連携強化などを盛り込んだ共同声明を発
表したが、最大の懸案事項は未解決となった。

事前には、中国の中央銀行である中国人民銀行は、人民元の相場決
定メカニズムを「国際資本の流れと主要通貨の動きの変化」も考慮
する方針を表明し、ドルに事実上固定している人民元相場のあり方
を見直す可能性を示唆していた。

これに対して、中国商務省は、中国人民銀行の人民元相場上昇容認
に含みを持たせることについて、人民元相場の切り上げに反対する
姿勢を明確にし、人民元政策をめぐる政府内の温度差が表面化して
きた。

このようなオバマ訪中で結果が出ないことで、米議会の超党派諮問
機関である「米中経済安全保障再考委員会」は19日、2009年版年次
報告書で、経済分野では中国の通貨、人民元を米ドルに連動させて
いる中国の為替政策を「通貨操作」と指摘。米経済への悪影響を相
殺する立法措置を求めた。中国が世界経済に貢献しないなら、米国
もに考えがあると言う脅しである。

これに対して、ガイトナー米財務長官は19日、上下両院合同経済委
員会で証言し、人民元相場について「中国は(柔軟な)変動を約束
している」と指摘、対ドルでの相場上昇に「それほど時間はかから
ないだろう」と楽観的な見方を示したが、裏があるのであろうか?

どちらにしても、世界の帝国にのし上がった中国は、人権問題、少
数民族問題、民主化問題など、世界的な人権拡張の動きとは逆行し
ている国家であるが、世界経済上でも大きな存在になり、その影響
力が増している。しかし、米国の凋落で、中国に文句を言える国は
なくなっている。

さあ、どうなりますか??

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人民元柔軟化「中国は確約」 米財務長官、対ドルでの上昇楽観視
 【ワシントン=御調昌邦】ガイトナー米財務長官は19日、上下両
院合同経済委員会で証言し、人民元相場について「中国は(柔軟な
)変動を約束している」と指摘、対ドルでの相場上昇に「それほど
時間はかからないだろう」と楽観的な見方を示した。ドルがユーロ
など対主要通貨で下落していることについては、国際的なドルの役
割を維持するためにも、米国が財政再建を進める必要性を強調した。

 同長官は人民元相場が対ドルで事実上固定された状況が続いてい
ることについて、中国政府が柔軟な変動を確約していると説明。「
彼らはそうしたいと思っている。私もそうなると確信している」と
語った。人民元相場の柔軟化は、中国が輸出依存から、内需主導経
済に変わる改革の一部との認識も示した。

 中国や一部の国が自国通貨高の圧力に対して為替介入を増やして
いることについては「この手法を続けることは難しい」と強調。特
に大国が自国通貨をドルに直接連動させた場合、世界の金融システ
ムが機能しにくくなると懸念した。(15:40) 
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ユーロ圏財務相会合議長:世界的不均衡は中国と米国の行動が原因
 11月19日(ブルームバーグ):

ユーロ圏財務相会合議長を務めるルクセンブルクのユンケル首相兼
国庫相は19日、世界的な不均衡は中国と米国が原因だと非難した。 

  同首相はルクセンブルクでのイベントで、「世界的な不均衡は
中国と米国の誤った行動が原因だ」と指摘。「両国の国内の不均衡
は世界全体に影響を及ぼす」と述べた。 

  また、「世界的不均衡というこの重荷をユーロが単独で背負わ
ざるを得ない状況にある。米国で新たな政策が必要なのはこのため
だ。現に政策は変わりつつある。そして、世界経済における中国の
行動が見直されることも必要だ」と言及。「中国は成長への取り組
みにおいて輸出に依存し過ぎており、国内での消費や需要が十分で
はない」と加えた。 
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中国の為替政策は「通貨操作」 米議会諮問機関が報告書 
 【ワシントン=弟子丸幸子】米議会の超党派諮問機関である「米
中経済安全保障再考委員会」は19日、2009年版年次報告書をまとめ
た。経済分野では中国の通貨、人民元を米ドルに連動させている中
国の為替政策を「通貨操作」と指摘。米経済への悪影響を相殺する
立法措置を求めた。

 報告書では、世界的な経済危機の原因について「最大の消費国(
借り手)としては米国にも責任があるものの、中国も最大の貯蓄国
(貸し手)としての責任がある」と指摘。巨額の貿易黒字をためこ
んだ中国から米国への資金環流について、米金利の低下を通じた資
産バブルにつながり、危機の一因となったとの見方を明記した。
 (01:04) 
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「G2論」には賛成せず 中国首相、米大統領に説明
 中国外務省によると、温家宝首相は18日のオバマ米大統領との会
談で、米中が世界規模の課題解決を主導する「G2論」に賛成しな
い考えを伝えた。理由として(1)中国は人口が非常に多い発展途上国
で、国家の近代化への道のりは遠い(2)中国は独立自主の外交政策を
取り、どの国とも同盟関係は持たない(3)国際問題は各国が共同で決
めるべきで1、2カ国で決められない――と説明した。

 17日の米中首脳会談で合意した「戦略的信頼」には「G2時代の
幕開け」との見方も出ている。温首相の発言は国際社会から過大な
責任を負わされないようけん制する狙いがある。

 温首相は5月のチェコ・プラハでの記者会見でも「米中共同統治
論は間違っている」と述べたが、G2論への慎重姿勢を米首脳に直
接伝えたのは初めて。ただ、18日には「中米協力は独特の役割を発
揮し、国際政治・経済の新秩序づくりを推進できる」とも語り「新
秩序づくり」を主導したい姿勢もにじませた。
(北京=佐藤賢)(07:00) 
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不均衡是正、かみ合わぬ議論 米中、人民元問題が最大の争点に
 【北京=高橋哲史】初の訪中で貿易不均衡の是正に人民元の切り
上げが不可欠とする考えを伝えたオバマ米大統領に対し、中国は「
元相場を切り上げても不均衡是正につながらない」と主張し、かみ
合わない議論の構図が鮮明になった。「外圧」を嫌う中国は、かえ
って元切り上げに慎重になる可能性もある。米中の政策協調に高い
ハードルがあることを印象付けた形だ。

 温家宝首相は18日の会談で「中国は貿易黒字の拡大を求めない」
と表明した。これは「中国が元相場を不当に低く抑えて輸出を後押
ししている」と批判する米国への反論にほかならない。温首相は「
(ハイテク製品などの)対中輸出規制を緩和してもらいたい」と要
求。不均衡の原因が中国側でなく、米国の輸出努力不足にあるとの
立場を明示した。

 オバマ大統領は一連の会談で、中国がこれまで実施してきた為替
制度改革を通じ、2005年7月以降、元の対ドル相場が約20%上昇し
たことは評価した。だが、世界経済の低迷で輸出企業の業績が悪化
した昨年夏以降、中国は元相場の上昇を止めている。(07:00) 
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米中「戦略的信頼を構築」 世界経済回復へ連携、首脳共同声明 
 【北京=大石格】米中両政府は17日、オバマ大統領と胡錦濤国家
主席の首脳会談を踏まえ、世界経済の回復に向けた連携強化などを
盛り込んだ共同声明を発表した。両国が今後、「戦略的信頼」を構
築・深化させると宣言。気候変動や核廃絶など地球規模の課題の解
決に米中が主導的な役割を果たしていくことを明確にした。北朝鮮
の核問題に関する6カ国協議を早期に再開させることも打ち出した。

 米中が共同声明を出したのは江沢民国家主席が訪米してクリント
ン大統領と会談した1997年以来、12年ぶり。今年が「国交樹立30周
年の節目」(ハンツマン駐中国米大使)であることから、オバマ政
権が文書化を希望した。

 声明とは別に、地球環境問題での協力を目指し、共同研究センタ
ーの設立などを明記した文書も作成した。 (00:06) 
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「米中時代」足元に溝 人民元・貿易で平行線
 【北京=高橋哲史】米中首脳会談は地球規模の課題に米中が主導
して取り組む姿勢を鮮明にした。ただ、人民元問題や貿易摩擦など
2国間に横たわる溝はなお深い。両首脳が共同声明でうたった「戦
略的信頼」の構築は、まだ緒に就いたばかりだ。

 「新たな情勢下で、米中両国は人類の平和と発展にかかわる重大
な問題で広範な共通利益と発展の余地を有する」。中国の胡錦濤国
家主席は記者会見で、「戦略的信頼」のもと気候変動、核拡散など
地球規模の課題にあたる考えを示した。(10:11) 
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人民元の切り上げ、中国商務省が反対 人民銀とは温度差
 中国商務省の姚堅報道官は16日の記者会見で、中国人民銀行(中
央銀行)が人民元相場の上昇容認に含みを持たせる報告書を発表し
たことについて「人民元相場の安定維持を含め企業が予見可能な環
境をつくる必要がある」と述べ、元相場の切り上げに反対する姿勢
を明確にした。人民元政策をめぐる政府内の温度差が表面化してき
た。

 姚報道官は元相場の安定維持が必要な理由について「中国の輸出
にはっきりとした回復の兆しが出ているわけではない」と指摘。さ
らに「金融危機が起きてから、中国は元相場の基本的な安定を保つ
ことによって世界経済の回復に貢献してきた」と語った。

 中国の陳徳銘商務相も16日のロック米商務長官との会談で、同様
の考えを示したとみられる。(北京=高橋哲史)(07:00) 
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人民元相場、上昇の再開に含み 人民銀報告、政策方針見直し 
 【北京=高橋哲史】中国人民銀行(中央銀行)は11日、四半期に
一度の金融政策執行報告を発表した。人民元政策の今後の方向性に
ついて記述した部分で、前回まで盛り込んでいた「合理的で均衡の
取れた水準で基本的な安定を保持する」との表現を削除した。昨年
7月から対ドルの人民元相場を1ドル=6.83元前後に事実上、固定
してきたが、輸出に回復の兆しが出てきたため、上昇容認に含みを
持たせたとみられる。

 報告は人民元の相場決定メカニズムを改善するにあたって「国際
資本の流れと主要通貨の動きの変化」も考慮する方針を初めて表明
。ドルがユーロや円に対して下落傾向を強める中で、ドルに事実上
固定している元相場のあり方を見直す可能性を示唆した。

 人民銀は2005年7月の制度改革以降、元相場を切り上げ方向に誘
導してきた。しかし、世界経済の低迷で輸出企業の業績が悪化した
08年7月以降は相場上昇にストップをかけている。 (00:33) 
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成21年11月16日号
 オバマ政権、対中アプローチを劇的に変えた
  当面の目標は人民元切り上げ。人権批判は当面しない方針。

 変化の兆しは随所にあった。
 一月の指名公聴会で証言したガイトナー財務長官は「中国は為替
不正操作しているとオバマ大統領は認識している」と明言した。
 
にもかかわらず四月と十月の財務省議会報告には中国を「為替不正
操作国」のリストからはずした。財務長官はこの間、二回、訪中し
「米国債への投資は安全です」とひたすらご用聞きに回った。

 オバマはダライ・ラマ法王との面会を避け、それ以前に訪中した
「人権」とフェミニズムのチャンピオン=ヒラリーもペロシも北京
で「人権」批判をしなかった。
 だから米国の対中姿勢は明らかに変調していたのだ。

 言うまでもない。
 米国は世界一の外貨準備高をほこる中国が保有する米国債の購買
継続と維持が目的となり、「西側モデル」「民主化」要求と「人権
批判」を抑え込む。
 そればかりか民主活動家の釈放さえ、米国は北京に要求せず、自
由と民主を渇望する人々を大いに失望させた。

ネオコンの論客ロバート・ケーガンは言った。
「米国の衰退は、この変化からも明らかである」。

 七月にこういう事件があったという(ヘラルドトリビューン、
11月16日付け)。
 中国の財務担当高官が訪米し、米国のカウンターパートとの会談
を開催した。
中国側から質問が集中したのは、米国のヘルス・ケアだった。これ
は“オバマケア”とも渾名される理想的な国民皆保険、医療改革で
、先般下院を通過しているが、おそらく上院で大幅に修正されるか
、或いは廃案の可能性もある。

 ▲中国がオバマのヘルス・ケアに異常な関心を示した理由
 「?」。中国も国民皆保険、医療費改革の乗り出す?
 とんでもない。
中国の思惑は完全に異なった。かれらの関心はオバマ大統領のすす
めるヘルス・ケアが実現した場合、いったい米国の赤字はどうなる
のか、どこまでどういう風に増えていくのか、そのとき米国債の価
値はどうなるのか、というポイントのみにあった。

ピーター・オーザッグ予算局長が説明に汗を掻き、つまりはヘルス
・ケアの社会的意義に関する質問はなかったというのである。

 そして東京へやってきたオバマは演説した。
「中国を封じ込めることはしない」「中国の繁栄が国家共同体の強
さの源である」
 オバマ訪日とその後のアジア歴訪は、紛れもなく米国の力の凋落
を予兆させた。


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