3458.東アジア共同体の主導権



今後の世界市場としては米国から東アジア地域になることは間違い
ない。このため、その主導権をめぐり戦いが起こっている。
                Fより

この東アジア共同体の源流には、1つにEAECがあり、もう1つ
にアジア通貨基金AMFの構想がある。

EAEC(東アジア経済協議体)を最初に提案したのが、1990年に
マレーシアのマハティール首相であり、日本、韓国、中国、ASEAN諸
国などをメンバーに想定していたが、これが東アジア共同体構想の
源流である。94年7月のASEAN地域フォーラムの際に、9ケ
国外相が会合し、事実上の準備会議となった。しかし、時の国務長
官ベーカーは、日本政府にEAEGへの反対姿勢をとるよう求める書簡
を送りつけてきた。このようにアメリカからの強い反対を押し切り
、2003年12月には「東アジアフォーラム」が発足している。

日本政府も、中韓とASEANの経済関係強化を傍観しているわけには
いかないとの意識が強まり、2002年5月には小泉首相がマハティー
ルとの会談で、ASEAN+3事務局をマレーシアに設置することを支持
した。

もう1つのアジア通貨基金AMFであるが、1997年7月にアジ
ア通貨危機よる経済危機はアジア各国に広がり、自力での建て直し
を断念したアジアの国が続々とIMFに支援を要請した。同年8月にIMF
は世界銀行やアジア開発銀行と一体的で支援すると同時に日本や米
国は当該国との二国間支援を発表した。とりわけ日本は40億ドルも
の資金を提供した。

この成果を踏まえ同年9月のG7で日本は、通貨危機の際のバックエ
ンド政策としてアジア通貨基金(AMF)構想を非公式ながら打ち出した。

しかし、アジア通貨基金AMF構想に対して韓国とASEANの賛同は得ら
れたが、日本の台頭を恐れた米国と中国がIMFとの重複や規律の緩み
の懸念を口実に反対を表明し、この時点ではAMF構想は頓挫する事と
なった。

しかし、ASEAN諸国の要望により、2000年5月にチェンマイ・イニシ
アティブとして東アジア諸国の多国間での通貨スワップとレポの取
り決めに至り、AMFの実現に向けた第一歩となっている。

どちらかというと、米国の顔色を見て、日本の自民党政権は東アジ
ア共同体構想に消極的であり、またASEAN諸国の実情を知らな
い日本の右翼も反対していたことで、日本抜きで議論が進行して、
ASEAN諸国での中国の影響力が大きくなっていた。

しかし、サンケイは東アジア共同体構想は遅すぎたと推進を阻害す
る記事を書いている。なぜ、遅いのかというと、中国の影響力が強
くなり、日本が出遅れているというが、そのようにさせたのは、米
国の顔色を見て、この共同体の議論に積極的に参加しなかったこと
でそうなっているのである。

今年にはEU圏全体の経済規模より東アジア13ケ国の経済規模が
大きくなり、少なくとも2014年には米国を抜かして世界トップ
になることは間違いない。中国の伸びも大きいが、それ以上にベト
ナム、タイ、インドネシアの経済拡大スピードは速い。このため、
国より民間が主導して、経済相互関係が大きくなっている。

日本の経済交流にしめる東アジアの規模は米国やEUを抜いている。
今後、日本国内の人口が減少してくることを考えると、日本企業と
しても東アジアの市場が重要であり、米国から東アジアにシフトす
る必要がある。アジア諸国との経済的な壁を取り除いた方が日本に
とっても大きな利益がある。

時代が米国からアジアに来る事を想定して中国や韓国は東アジア共
同体議論に積極的に参加してきた。それに比べて、日本は積極的で
はなく、やっと小泉首相が認めたが、それに対してもサンケイなど
は反対していた。

日本の出遅れから、東アジア共同体構想での中国の影響力が強くな
り、中国はASEAN+日中韓の3国を想定しているが、日本はイ
ンド、オ−ストラリア、ニュージーランドなどを含む16ケ国体制
と提案している。

ここで、米国は東アジア共同体に加わる方向で日本などに要請して
きているし、タイのアピシット首相は米国を含む17ケ国体制にし
たほうがよいと言い始めている。オバマ大統領も11月にアジア訪
問時に、ASEAN諸国の首脳と会談して、米国が参加できるよう
に働きかけるようである。それに対応してシンガポールのリーシェ
ロン首相も米国の関与が必要であると言い始めている。

中国はASEAN諸国と近いので、経済統合を急速に進めてきて、
ミャンマーやラオスなどでは人民元が通用する所まで進んでいる。
このように日本がこの共同体に関与しないと、中国の経済圏化する
方向になる。日本にとっても経済的な結びつきが大きいので、日本
は関与して、日本の国益を守ることが必要である。

これ以上の反対運動をすると、日本は締め出されて大きく国益が損
なわれることになる。そこが大きな心配であり、また、米国の参加
は日本にとって中国の牽制という意味で有利になるので、妨げない
ほうが良い。

広域自由貿易協定(FTA)を13、16のいずれで結ぶのか、ま
たは米国も入れて17ケ国にするのかの議論が今後、出てくる。

さあ、どうなりますか??
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ASEAN、米と包括的協力促進 首脳会議の共同報道声明案
 【マニラ=遠西俊洋】シンガポールで15日に開く初の米国と東南
アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の共同報道声明案が6日、
明らかになった。域内投資の拡大から核拡散防止、新型インフルエ
ンザ対策まで政治、経済、社会の分野で包括的に協力促進を表明。
首脳会議を継続的に開くことも確認、両者の関係強化を域内外に示
す。

 声明は経済面では1997年のアジア危機や昨年の金融危機の経験を
踏まえ、将来に備えた金融面などの安全網を築く重要性に言及。米
とASEANが投資やインフラ開発、科学技術での協力を強めるこ
とをうたった。(07:00) 
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米国務省高官、東アジア共同体構想を牽制
配信元:IZA2009/11/04 21:30

【ワシントン=渡辺浩生】シンガポールで今月開かれるアジア太平
洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前に、米国務省のカート・
トンAPEC代表代行は3日、記者会見し、APECを中核に、米
国がアジア太平洋地域の経済統合を主導していく考えを強調した。
オバマ政権は鳩山首相の東アジア共同体構想に警戒感を抱いており
、アジアの地域統合への基本姿勢をめぐる日米の違いが浮き彫りに
なった。

トン代表代理は記者会見の中で東アジア共同体構想に言及。東南ア
ジア諸国連合(ASEAN)に日本、中国、韓国の3カ国を加えた
「ASEANプラス3」、さらにオーストラリアやニュージーラン
ド、インドを加えた「ASEANプラス6」など、米国が加盟して
いない枠組みを挙げ、「さまざまな方法で東アジア諸国が関係を深
めるには十分な理由がある」と、東アジア共同体後送にも一定の理
解を示した。

 そのうえで、「肝心なことは、環太平洋機構としてのAPECが
極めて重要ということだ」と指摘。アジア太平洋地域の経済的繁栄
と安定を達成するために、APECを最重要の経済的枠組みと位置
づけた。

 2010年には日本が、11年には米国がAPECを主宰する。
トン代表代理は「APECについて、日本側と広範囲な議論を続け
ており、その重要性について考えを共有している」と述べ、東アジ
ア共同体構想に傾く鳩山政権を牽制(けんせい)した。
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東アジア共同体「米国も関与を」 タイ首相が会見
 タイのアピシット首相は4日、東京で6日から開く「日メコン首
脳会議」出席を前にバンコクで日本経済新聞などと会見した。鳩山
由紀夫首相が提唱する「東アジア共同体」構想を評価したうえで「
米国が関与するのが現実的」と指摘した。今月15日にシンガポール
で開く東南アジア諸国連合(ASEAN)と米国の初の首脳会議で
、自由貿易協定(FTA)締結に向けた協議の開始を提案する意向
も表明。米との多面的な関係強化に意欲を示した。

 アピシット首相は東アジア共同体構想について「ASEAN加盟
国や周辺国は方向性の正しさを認識している」と支持。「経済・安
全保障の両面で米国は東アジアの重要なパートナーだ」と強調し、
構想への関与を訴えた。(07:00) 
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11月のアジア歴訪で、支援を取りつけられるか?〔AFPBB News〕

 従って米国としては、米国抜きの地域共同体をつくる構想がアジ
アに根づく前に行動を起こさねばならない。バラク・オバマ大統領
は11月にアジアを歴訪する際、シンガポールでASEAN首脳と会談した
いと申し入れている。

 これは東南アジアの重要性を遅まきながら認識したという意思表
示だと見られているが、この会談は大統領にとって、アジア諸国の
共同体への米国参加に支援を取りつけ、中国による米国排除の試み
を阻止するまたとない機会となる。

 長期的には、このアジアの共同体への参加は、幾多の貿易イニシ
アチブにも優る大きな意味を持つことになるだろう。
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FTA交渉国数、「13」と「16」検討 ASEAN+3議長声明
 【フアヒン=岩本陽一】東南アジア諸国連合(ASEAN)プラ
ス3(日中韓)13カ国は25日、タイ中部フアヒンで前日開催した首
脳会議の議長声明を発表した。広域自由貿易協定(FTA)につい
て、交渉の対象国を13カ国にする案と16カ国に拡大する案の双方を
並行して検討すると明記。協議の枠組み確定には至らなかった。

 広域FTAの13カ国案は中国や韓国、東アジア首脳会議(サミッ
ト)に参加する16カ国に広げる案は日本が支持している。関係国は
今後、域内の学者らで構成する民間チームがまとめた経済効果の試
算などを検討。枠組みに関する話し合いを続ける見通し。

 議長声明の取りまとめ作業は気候変動問題の扱いなどを巡って遅
れた。ただ温暖化ガス削減について具体的な言及はなく、12月の国
連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)に向けた連携を確認
するにとどまった。(01:25) 


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