3425.ドル基軸通貨体制崩壊過程



2008年11月に英国ブラウン首相が、インドのムンバイで新世
界秩序を作ることが重要と演説した。「p0010.新世界秩序の
歴史と考察」でこのブラウン首相の構想を現に考察した。

今回は、10月6日に中東情勢が詳しいロバート・フィスク氏の英イン
デペンデント紙の記事「アラブ諸国、原油取引での通貨バスケット
建て移行を協議」を追いかけるために、今までの湾岸統一通貨の動
向を見て、検討しよう。
                津田より

0.はじめに
今までに出てきた湾岸通貨、IMFのSDRなどに関する記事を有料版の
最後に全て収集し載せたので、有料版読者はそれを見てください。

湾岸統一通貨の話は、2006年11月と3年前に初めて聞いた。この時点
から、ドルは下落していて湾岸諸国はドルペッグ制から離脱するこ
とが協議していた。円はドルと同様に弱かったために、日本では気
が付いていないだけである。そして、湾岸統一通貨は単一主要通貨
に連動させることには今後意義が見いだせないであろうと述べてい
る。

この湾岸統一通貨の裏方としてロスチャイルド銀行がサポートして
いる。もう1つが湾岸諸国の外貨準備金は全て英国の銀行が運用・
管理している。このため、英国が世界の外為取引の34%を占めて、
米国の17%より大きい。日本は第3位で6%である。このため、英国
の動向が重要である。

しかし、その構想が出て1ケ月もしないで、オ−マンが離脱する。
裏では米国の離脱工作が続いたようである。オーマンは準備が整っ
てから遅れて加わる意向を示したとあるが、オーマンは他の湾岸諸
国と違い石油が出ないので、経済的に問題があり、サウジからの経
済援助より大きな米国の経済援助に靡いたのであろう。

2007年11月に一層のドル安から湾岸諸国はドルペッグ制をを廃止す
べきだとの意見が台頭したが、12月に湾岸協力会議(GCC)で通
貨統合の前段階として加盟国通貨のドル連動(ペッグ)を維持する
姿勢を打ち出した。この裏でも米国は相当の活動を行ったようであ
る。しかし、サウジを中心として、相当の苛立ちがあると想像でき
る。2006年から徐々に政府系のファンドが立ち上がり、投資の保全
で米国以外の地域にも投資するようになる。

このように数年前から、湾岸諸国はドルペッグ制廃止と統一通貨に
ついて議論してきたのである。その裏に英国とロスチャイルドがい
ることも考えると、今回の2009/10/06英インディペンデント紙での
「アラブ湾岸諸国が原油取引での米ドル利用を中止し、通貨バスケ
ット建て取引移行に向け、ロシア・中国・日本・フランスなどと極
秘に協議している」はありえることが分かる。数年前からの記事を
追いかけていない有名な評論家が即座にうそであると断言できる状
況ではない。

1.英ブラウン首相の新世界秩序
2008年になると、ドルが一層下落して、サウジがインフレ抑制に向
けた対ドルでの通貨切り上げが避けられないとの認識を示した。
サブプライム問題が3月にベアースタンズの破綻危機で本格化するが
、その前にシティバンクも危機になる。この時シティバンクに出資
したのが、サウジのアワール王子とアブダビ政庁である。しかし、
ベアースタンズ危機で一層米銀もドルも弱くなる。この事態にいた
り、説明のためにポールソン米財務長官は6月、湾岸諸国を歴訪し
て、アラブ首長国連邦のアブダビで演説し、金融市場の正常化には
なお数カ月が必要だとの認識を示した。

このポールソン米財務長官の説明を聞いて、サウジアラビアなど湾
岸の主要6産油国でつくるGCCは2008年6月、カタールの首都ドー
ハで中央銀行総裁会合を開き、2010年にオマーンを除く5カ国で域内
単一通貨を発行する目標を堅持することで一致した。

9月14日にリーマンブラザースが破綻して危機が深まる。これを受け
て英ブラウン首相が新世界秩序を言い始める。湾岸諸国が資金引き
上げという脅しを英国に行い、とうとう米英金融同盟が破綻して、
ブラウン首相は新世界秩序と演説した後、直ぐに湾岸諸国に飛び、
資産の引き上げを回避している。

もし、湾岸諸国が英銀に預けた資金を引き上げると英国の金融業は
大きなダメージを受ける。このために、新世界秩序とはドル基軸通
貨制度を変更して、IMFのSDRを基軸通貨にした体制で、かつ湾岸統
一通貨を視野に入れた通貨制度だと想像できる。原油を購入できる
通貨というのは、非常に強い。ドルが基軸通貨である理由の多くが
湾岸諸国の通貨とペッグしているためである。

この後、米国は英国の裏切りに対して、ブラウン首相との首脳会談
で記念品として手渡した米国映画24巻DVDのリージョンコード
を間違えたり、英国が要望する首脳会談に応じないなど、不快感を
表明している。これに対して英国のリビア航空機爆発の犯人を末期
ガンとの理由でリビアに送還するなど米国をより以上にいらだたせ
ている。

英国も湾岸諸国の資金が引き上げられたら、金融業界が国の中心で
ある英国経済は崩壊してしまう。このため、どうしようもないので
ある。このように米英のギクシャクは始まったのである。

2.SDRの提案
英ブラウン首相は、フランスのサルコジ大統領と共同で金融危機に
対応することを宣言した。そして、11月にサルコジ大統領は「米ド
ルはもはや世界の基軸通貨ではない」と述べた。

2008年11月に、ナスダックとドバイ金融国際取引所の提携があり、
その米国の提案にUAEは靡いたようである。米英とUAEの利益
が合致して、米国は湾岸統一通貨阻止に立ち向かう。

2009年2月になると、中東の政府系ファンドの保有資産が金融危機の
影響で急速に目減りしていることが鮮明になってきた。米シンクタ
ンクはアラブ首長国連邦(UAE)のファンドだけで2008年に1250
億ドル(約11兆2500億円)を失ったと指摘している。このように資
産が急減したために、米国に対するイライラが一層増していること
が分かる。

3月には、中国人民銀行の周小川総裁は、ドルを基軸通貨とする現在
の国際通貨体制の限界を指摘する論文を公表し、IMFのSDR(
特別引き出し権)制度の拡充を訴えた。これに対して、ガイトナー
米財務長官は、ドルに代わる基軸通貨の創設に反対する考えを表明
し、米国は湾岸統一通貨に対応するだけではなく、中国など多数の
国から提案されたIMFのSDRにも対応する必要が出てきた。

しかし、IMFの議決に対しては、米国1国だけが拒否権を持って
いるために、そのIMF自体の改変も必要になる。新興国の発言権
はほとんどなく、発言権が大きいのが欧州である。IMF自体が欧米中
心の体制であるのだ。

3.ドル基軸通貨体制崩壊過程に入る
5月にGCCは、将来の設立を目指す統一中央銀行の土台となる通貨
評議会をサウジの首都リヤドに設けるとした。これに対して、UAE
は湾岸産油国の通貨統合に参加しないことを決めた。米国の活動は
UAEの離脱で実を結ぶことになる。しかし、6月にはサウジアラビ
ア、クウェート、カタール、バーレーンの中東湾岸産油4カ国は、
域内単一通貨を発行するとした通貨統合協定を結んだ。

7月にガイトナー米財務長官は、訪問先のUAEで「ドルは中東・
湾岸地域の最も重要な準備通貨であると再確信した」と述べ、ペル
シャ湾岸アラブ産油国のドル支援姿勢に変わりがないとの認識を示
した。しかし、米国はサウジではなくUAEで表明していることに
意味があるのだ。ガイドナーの意見に賛成するのはUAEしかない
ということである。

8月にIMFは、加盟国の外貨準備を補完し、世界経済に流動性を供
給するため、約2500億ドル(約23兆4000億円)相当のSDRを配分
したという。

このようにドル基軸通貨が揺らいる時に、鳩山首相の「金融危機は
基軸通貨ドルの永続性に疑問を投げかけた」との論文が米新聞に載
り、ドルの基軸通貨体制を損ないかねないと懸念する見方が出たの
だ。時期的にドル基軸通貨制度が揺らいだ時であるためである。

9月に世界銀行のゼーリック総裁は「米ドルが支配的な準備通貨とし
て地位が保証されていると当然視するのは間違いだ」と語り、ドル
が基軸通貨であり続けるか分からないとの見方を示した。これは、
米国抜きで協議されている通貨体制をある程度知って、言っている
ように感じる。

このように、私は大きなドル体制崩壊の流れが起きていると見たが
、それに対して、バーナンキFRB議長も、ドルに代わる国際的準
備通貨について、実現すればドル安につながるが、短期的なリスク
とはみていないと述べ、米国抜きで協議されている通貨体制議論
を知っているようである。何かの議論が起きていると私も見ていた。

10月英インデペンデント紙の「アラブ諸国、原油取引での通貨バス
ケット建て移行を協議」の記事と追従するロイター記事は本当であ
るからサポートしたのである。秘密会議であり、当事者は否定する
に決まっている。

4.最後に
2006年2月にライス国務長官が、今後は地域主導になり米国の時代は
終わったという演説をしている。遅れた地域の民主化、市場化が民
主的な世界を作るとしていた。とうとう、それが始まったと見える。

このような時代に日本は新しい政権ができて、新しい戦略を立てる
ことができる。日本に取っても大きなチャンスである。

今後の展開は見ものである。同時代の私達の目の前で大帝国が崩壊
している。1歩1歩は小さく見えるが、それは大きな流れになる。

さあ、どうなりましか?
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米国ライス国務長官の戦略
2006/02/01 2263.米ライスの戦略より
米国のライス国務長官が米国の国際戦略の変更という演説を2月1
日に行い、21世紀はそれぞれの地域が経済的、文化的、政治的に
統合しかつ成長する時代である。そしてその地域での中心になる国
ができてくる。それがインド、中国、ブラジル、インドネシア、エ
ジプト、南アなどである。このため、21世紀は新しい地域主義に
なる。決して新しい米国の世紀ではないとしている。

ライスの外交政策の基本は、遅れた地域の民主化、市場化である。
市場化した民主的な世界を作るということである。軍事力も使うが
、中心は海外援助であるようだ。
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原油産油国の統一通貨の誕生
2006年11月14日 田中 保春 

 2010年に実施予定されている湾岸協力会議(GCC)に加盟している
産油6カ国の通貨統合について、当地各紙は、アラブ首長国連邦
(UAE)中央銀行のスウェイディ総裁の声明を報じている。
内容は次の通り。 

1.GCC各国首脳は、2010年予定の通貨統合に際するGCC中央銀行をUAE
(アブダビ)に設立することで合意した。

2.通貨統合当初は単一主要通貨とのペッグとなるだろうが、その後
においては、GCCは2015年までに完全な変動通貨を確立するべきであ
る。単一主要通貨に連動させることには今後意義が見いだせないで
あろう。 

脱・ドル連動へ動き出す
 注目すべきは、GCC諸国を束ねるGCC中央銀行が置かれることにな
ったアブダビの中央銀行総裁自らの声明で、統一通貨が将来的に変
動相場制に移行する事が望ましいと明言されたことである。  

 今年6月には、オマーンのアンブリ副総裁も日本経済新聞に対し、
「新通貨の相場がドル連動で決まるとは思えない」と語っており
(6月30日付け日経)、またクエートのマンナエ副総裁もロイター通
信に対して、「新通貨にはバスケット制を採用する可能性があると
指摘している。タイミングは別にしても、GCCとしては米ドルペッグ
(連動)政策を見直し中であると言える。  
(田中保春=サウジアラビア総合投資院投資アドバイザー)
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湾岸協力会議、単一通貨市場形成に遅れも
(nikkei)2006/12/10 
 【バーレーン=加賀谷和樹】オマーン政府がペルシャ湾岸の6産
油国でつくる湾岸協力会議(GCC)のほかの5カ国に対し、2010
年の域内単一通貨発行に参加せず、準備が整ってから遅れて加わる
意向を示した。GCC関係者が9日、ロイター通信に語った。事実
ならば湾岸の経済統合、単一市場形成が大きく遅れそうだ。
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湾岸各国、ドル安に懸念・ペッグ廃止論活発
(nikkei)2007/11/23 
 【ドバイ=加賀谷和樹】ドル安による石油収入の実質価値の目減
りに直面するサウジアラビアなど中東産油国では、自国通貨をドル
に連動させるペッグ制を廃止すべきだとの意見が台頭している。自
動車、家電など欧州や日本からの輸入品がドル安に連動した自国通
貨の下落で、値上がりしたことへの不満がある。
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湾岸単一通貨、予定通り2010年に・GCC財務・外相会議
(nikkei)2007/12/03 
 【ドーハ=加賀谷和樹】ペルシャ湾岸の6産油国でつくる湾岸協力
会議(GCC)は2日、カタールの首都ドーハで財務相と外相の合同
会議を開いた。参加者の1人はAFP通信に対し、ユーロのような域
内単一通貨を予定通り2010年に発行することで一致したと明かした
。事実ならば通貨統合の前段階として加盟国通貨のドル連動(ペッ
グ)を維持する姿勢を打ち出した格好だ。
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湾岸協力会議が閉幕、ドル連動停止見送り 
(nikkei)2007/12/05 
 【ドーハ=加賀谷和樹】カタールの首都ドーハで開いていた湾岸
協力会議(GCC)の首脳会議は4日、共同声明を採択して2日間の
日程を終えた。焦点だった加盟国通貨のドル連動(ペッグ)制維持
の是非については意見が割れ、結論を先送りした。一部加盟国はド
ルペッグを維持したうえで通貨を切り上げ、輸入価格上昇を抑える
動きをみせている。外国為替市場では各国がいつ、どのくらいの幅
、通貨を切り上げるかに注目が集まっている。
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通貨切り上げ「湾岸5カ国同時に」・UAE外相ら
(nikkei)2007/12/09 
 【ドバイ=加賀谷和樹】サウジアラビアなどペルシャ湾岸の5カ国
は通貨切り上げを同時に実施する方向で検討し始めた。バーレーン
のハリファ外相、アラブ首長国連邦(UAE)のアブドラ外相が8日
、相次ぎ表明した。輸入価格上昇によるインフレを抑える狙い。外
国為替市場の不安定化を防ぐため、通貨のドル連動(ペッグ)制度
は維持する方針だ。
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シティ増資、出資者にサウジ王子と中国の銀行…米紙報道【読売】

 【ニューヨーク=山本正実】米紙ウォール・ストリート・ジャー
ナル(電子版)は11日、米大手銀行のシティグループが計画中の
最大100億ドル(約1兆800億円)の出資者に、サウジアラビ
アのアルワリード・ビンタラール王子と、中国の政策銀行「国家開
発銀行」が含まれると報じた。
(2008年1月12日12時32分 読売新聞)
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サウジ、対ドル通貨切り上げか・地元紙「是非を17日協議」
(nikkei)2008/02/17 
 【ドバイ=加賀谷和樹】サウジアラビア国王に政策を助言する諮
問評議会のアブゲララ財政委員会副委員長は通貨リヤルの対ドル相
場の見直しが「必要だ」と述べ、インフレ抑制に向けた通貨切り上
げが避けられないとの認識を示した。同評議会は17日に通貨庁(中
央銀行に相当)総裁、財務相を招き通貨切り上げの是非を協議する
見通しだ。16日のサウジ紙「アル・イクティサディア」の報道とし
てロイター通信が伝えた。

 仮にサウジが通貨切り上げに踏み切れば、アラブ首長国連邦(U
AE)などほかのペルシャ湾岸産油国も追随、ドル相場に引き下げ
圧力を加える可能性がある。湾岸主要国はサウジと協調して自国通
貨のドル連動制(ペッグ制)を維持してきたが、インフレ克服のた
め通貨切り上げを検討、湾岸での発言力が大きなサウジの判断を待
っているとみられるためだ。

 サウジの消費者物価上昇率は昨年12月、6.5%で16年ぶりの高水準
を記録した。サウジは1986年に通貨のドルペッグを導入、
1ドル=3.75リヤルの公式レートを維持している。(16日 23:41) 
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サウジ、通貨切り上げ見送り 
(nikkei)2008/02/18 
 【ドバイ=加賀谷和樹】サウジアラビアのサイヤリ通貨庁(中央
銀行に相当)総裁とアッサーフ財務相は17日、国王に政策を助言す
る諮問評議会でインフレ対策を説明したが、通貨リヤルを22年ぶり
に切り上げる可能性については触れなかった。会合の後で、同評議
会財政委員会のアブゲララ副委員長がロイター通信に明かした。

 アブゲララ副委員長によると「両氏はインフレ克服の方策を続け
ると強調した」が、「当面は(通貨政策に)変更があると考えられ
るような内容が(両氏の発言に)なかった」と指摘した。同副委員
長は輸入価格を抑えるため通貨のドル連動(ペッグ)を維持したう
えでの切り上げを支持、17日の同評議会でサイヤリ氏らを招いて議
論すると表明していた。 (01:07) 
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ペルシャ湾岸6産油国、通貨統合規模を縮小
(nikkei)2008/04/07 
 【ドバイ=加賀谷和樹】ペルシャ湾岸国の通貨統合構想で参加国
の枠組みが縮小する可能性が出てきた。同地域の6産油国でつくる湾
岸協力会議(GCC)は6日、カタールの首都ドーハで中央銀行総裁
会合を開き、域内単一通貨を2010年に発行する目標を確認したが、
既に参加見送りを表明したオマーンに加え、少なくともさらに2カ国
が10年より後の参加を示唆。当初の参加国が3カ国以下になる事態も
あり得る。

 アラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンなどに拠点を置く日米
欧の金融機関は、ユーロをモデルにした湾岸域内の単一通貨発行に
合わせて金融取引の様々な規制が緩和されると見込んでいる。だが
、GCCが通貨統合の内容を見直せば、そうした各行の戦略が修正
を迫られる懸念もある。(16:03) 
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原油価格の急騰でドル基軸通貨の時代が終わる可能性−米大学調査
 2008/05/22 
  5月21日(ブルームバーグ):米ライス大学が実施した調査に
よれば、原油相場の急騰がエネルギー危機を招き、これをきっかけ
世界の金融システムが米ドルを基軸通貨とする体制から複数通貨制
へと移行する可能性がある。 

  ライス大の調査は、主として産油国がもたらすインフレ高進に
伴い、欧米各国は金融引き締めを余儀なくされ、輸出がけん引する
中国やインドの経済は打撃を被ると予想。これがエネルギー需要の
後退につながり、いわゆるオイルダラーが支える低コストの融資が
不可能になり、世界経済は一段と悪化するという。 

  その上で同調査は、「われわれはエネルギー市場が主因となっ
て金融危機を引き起こし、それが世界の金融システムを変質させる
可能性があると考える」と指摘。米ドルの基軸通貨たる地位は「終
えんを迎える公算が大きい」と予想した。 

  またライス大学のマフムード・アミン・エルガメル氏とベイカ
ー・インスティチュートのエイミー・マイヤーズ・ジャフィ氏が共
同執筆した同調査は、サウジアラビアなどの中東の石油輸出国と中
国、インドは、欧米諸国と共同で、金本位制時代と同程度の安定性
を持つ複数通貨に基づいた金融システムを構築することに関心を持
っていると分析した。 
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米財務長官「金融市場正常化にはなお数カ月が必要」
(nikkei) 2008/06/03 
 【ドバイ=加賀谷和樹】ペルシャ湾岸の産油国を歴訪中のポール
ソン米財務長官は2日、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで演
説し、金融市場の正常化にはなお数カ月が必要だとの認識を示した
。サブプライム問題に端を発した動揺は3月より小さくなったとしな
がらも「不動産関連を含む相当数の市場がいまだ正常には機能して
いない」と指摘した。

 原油価格の高騰については「需給逼迫(ひっぱく)が主因」とい
う持論を展開。世界規模で供給量をより早く効率的に増やすため「
すべての産油国に石油市場の対外開放を要求する」と語った。湾岸
の主要産油国では石油の生産や輸出を国営企業が担い、外資参入に
は一定の規制が残る。 (22:32) 
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湾岸産油国、単一通貨の目標堅持 2010年に発行 
(nikkei)2008/06/10 
 【ドバイ=加賀谷和樹】サウジアラビアなどペルシャ湾岸の主要
6産油国でつくる湾岸協力会議(GCC)は9日、カタールの首都ド
ーハで中央銀行総裁会合を開き、2010年にオマーンを除く5カ国で域
内単一通貨を発行する目標を堅持することで一致した。そのために
将来の域内統一中銀の土台となる通貨評議会を09年にも発足させる
ことで合意した。同評議会は通貨統合に参加する国の通貨政策を調
整する役割を持つ。
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湾岸産油国、域内「外資税率一律10%に」 カタール財務相提案へ
(nikkei6/29)2008/06/30 
 カタールのカマル財務相は首都ドーハで日本経済新聞記者のイン
タビューに応じ、湾岸協力会議(GCC)を構成するペルシャ湾岸
産油国に対して、外国企業に課している法人税率を一律10%に改め
るよう提案することを明らかにした。無税を掲げる特定国への外資
集中を是正、単一通貨導入とあわせ、域内経済統合を進めるねらい。
多くの域内企業には新たに課税し、GCC全体で歳入安定を目指す
構想も示した。

 財務相によると、外資税率の一律化は早ければ年末のGCC首脳
会議でカタールのハマド首長が議題に挙げる。実現すればカタール
の外資税率は現行の最高35%から大幅に下がり、サウジアラビア、
クウェートも減税。一方、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレー
ンでは大半の外資が増税となる。(ドーハ=加賀谷和樹)(07:02) 
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ドル連動制離脱を否定、UAE中銀総裁
(nikkei)2008/08/29 
 【ドバイ=松尾博文】アラブ首長国連邦(UAE)のスウェイデ
ィ中央銀行総裁は28日、通貨ディルハムと米ドルの連動(ペッグ)
制について、「米ドルは強さを取り戻しつつある」と述べて、維持
する考えを強調した。通貨切り上げの観測も否定した。

 ドバイでの日本企業を対象にした講演で表明した。UAEなどペ
ッグ制を導入している湾岸産油国では米ドルの下落に伴い、輸入価
格やインフレ率が上昇。通貨政策見直しへの圧力が強まっている。
(00:44) 
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湾岸5カ国通貨、統合方針を確認 サウジなど
(nikkei)2008/09/18 
 【ドバイ=太田順尚】サウジアラビアなど湾岸協力会議(GCC
)加盟6カ国は17日、サウジ西岸のジッダで財務相会合を開いた。
2010年を予定している通貨統合について、参加可能な加盟国が先行
する部分統合ではなく、不参加を表明済みのオマーンを除いた5カ国
による統合を目指す方針を確認した。将来の統一中央銀行の土台と
なる「通貨評議会」については、11月の首脳会議に結論を持ち越し
た。GCCの通貨統合を巡っては、各国のインフレ悪化などを理由
に10年の実現を疑問視する見方が強まっている。(13:49) 
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IMFの財源強化、英首相がサウジに協力要請 
2008/11/02
 【ドバイ=松尾博文】ブラウン英首相は1日、中東の湾岸産油国
歴訪を開始し、最初の訪問国サウジアラビアで同国のアブドラ国王
と会談した。首相は15日にワシントンで開く緊急首脳会合(金融サ
ミット)を控え、国際通貨基金(IMF)の機能強化を提案してい
る。新興・中小国支援の拡充に向けたIMFの財源強化への協力を
サウジに要請したとみられる。 

 ブラウン首相は2日リヤドで、「金融危機の拡大を食い止めるに
は、IMFがより多くの財源を持つ必要がある」と指摘。「サウジ
の貢献によって資金を積み増せるだろう」と述べ、サウジが資金拠
出に応じるとの見方を示した。首相はサウジに続いてカタールやア
ラブ首長国連邦(UAE)を訪問する。 

 ブラウン首相はまた、「我々のルールを守って行動する限り、政
府系ファンドの英国への投資を歓迎する」と述べ、金融危機をきっ
かけに経営難に直面する金融機関や企業への投資を呼びかけた。
 (19:07) 
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「ドルは基軸通貨ではない」=金融サミットで表明へ−仏大統領
2008年11月14日8時26分配信 時事通信

 【パリ13日時事】フランスのサルコジ大統領は13日、「米ドルは
もはや世界の基軸通貨ではない」と述べ、ワシントンで14、15の両
日開かれる金融危機対策のための緊急首脳会合(サミット)でも、
こうした考えを表明することを明らかにした。AFP通信が報じた。
 同大統領は、パリのエリゼ宮(大統領府)での演説で「ドルは第
二次大戦終結直後には世界で唯一の(機軸)通貨だったが、もはや
基軸通貨だと言い張ることはできない」と述べた。 
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「ナスダック・ドバイ」へと名称変更したドバイ国際金融取引所(DIFX) 
2008年11月25日

 ドバイ国際金融取引所(DIFX)は2008年11月18日、かねてからの
計画通りに「ナスダック・ドバイ」へと名称を変更した。ナスダッ
ク・ドバイのジェフ・シンガー最高経営責任者(CEO)は、同日、「
ナスダック・ドバイは市場を強化させるために積極的な施策を打ち
出している」「具体的には、市場を開いている時間の延長、日曜日
の取引開始、UAEディルハム建てでの取引の容認などである」「我々
は新たな資産の拡大等に努めて行く」との抱負を明らかにした。

 周知のように、ドバイ国際金融取引所(DIFX)とナスダックOMXグ
ループとは、2007年の取引時に、ナスダックOMXグループがドバイ国
際金融取引所(DIFX)の株式の33.3%を取得することや、ドバイ国
際金融取引所(DIFX)の名称を「ナスダック・ドバイに変更するこ
とで合意していた。尚、ナスダックOMXグループは名称変更の二日後
の2008年11月20日に、ナスダック・ドバイ市場に株式を上場した。

関連情報:
ナスダックが保有するロンドン証券取引所株31%のうち28%もドバ
イ取引所が買い取る契約になり、ドバイ取引所が急ピッチで国際金
融センターとしての地位を固める動きを展開しています。
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中東ファンド、資産急減 政府系、金融危機が直撃2009/02/03 
 【ドバイ=松尾博文】中東の政府系ファンドの保有資産が金融危
機の影響で急速に目減りしていることが鮮明になってきた。米シン
クタンクはアラブ首長国連邦(UAE)のファンドだけで2008年に
1250億ドル(約11兆2500億円)を失ったと指摘。株式や不動産相場
の冷え込みで多額の評価損が出たもようで、湾岸産油国全体で資産
残高が15―30%減少したとの見方も強まっている。投資の原資とな
る原油価格の下落も重なり、各ファンドは投資対象や分野の見直し
を急いでいる。

 米有力シンクタンク、外交問題評議会(CFR)の報告によると
、UAEのアブダビ投資庁(ADIA)の資産残高は08年末時点で
前年末比27%減の3280億ドル。クウェートとカタールはそれぞれ数
百億ドルを失ったとの分析もある。(09:23) 
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中国人民銀総裁、ドル基軸体制での限界指摘の論文 2009/03/24 
 【北京=高橋哲史】中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は23
日、ドルを基軸通貨とする現在の国際通貨体制の限界を指摘する論
文を公表した。「基軸通貨を発行する国だけで世界に流動性を提供
すると同時に通貨価値を安定させることはできない」とし、国際通
貨基金(IMF)のSDR(特別引き出し権)制度の拡充を訴えた。

 周総裁の論文は4月2日にロンドンで開く20カ国・地域(G20)首
脳会合(金融サミット)を控え、中国政府の立場を反映したものと
みられる。SDRはIMFの準備資産で、外貨不足の国が余裕のあ
る国から外貨を受け取る際の支払い手段。周総裁はSDRの構成通
貨の比率を見直すよう求めた。 (02:13) 
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「ドルは今後も基軸通貨」 米財務長官 2009/03/25
 ガイトナー米財務長官は25日、米ドルを基軸通貨とする国際通貨
体制の見直し論が浮上していることについて「ドルは引き続き世界
において最も有力な準備通貨であり、今後も長期間そうあり続ける
と思う」と述べ、ドルに代わる基軸通貨の創設に反対する考えを改
めて表明した。ニューヨークでの講演後、質問に答えた。

 ドルへの信認を巡っては、中国人民銀行(中央銀行)の周小川総
裁が「基軸通貨を発行する国だけで世界に流動性を提供すると同時
に、通貨価値を安定させることはできない」との論文を発表。基軸
通貨としてのドルの限界論が主に新興国で浮上している。

 ガイトナー長官は、周総裁が新たな基軸通貨として活用を提案し
た国際通貨基金(IMF)のSDR(特別引き出し権)については
「排除しない」と表明。ただ基軸通貨としてのドルの地位は変わら
ないと述べた。(ニューヨーク=大隅隆) (01:21) 
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IMFのSDRを新たな準備通貨とする場合の課題
2009年 03月 26日 13:13 JST 

[ロンドン 25日 ロイター] 国際通貨基金(IMF)の特別
引き出し権(SDR)がドルに代わる新たな準備通貨となることが
可能かをめぐり、国際通貨体制の見直しを中国が提案したことを受
け、新たな準備通貨創設をめぐる議論が高まっている。
 ロシアも、4月の20カ国・地域(G20)首脳会議で、国際機
関が発行する新たな準備通貨の創設を提案する方針を示した。
 以下は準備通貨創設をめぐる課題。

 <なぜ新たな準備通貨創設か>
 専門家の間では、準備通貨において、ある通貨が独占的な役割を
担うという金融システムは、その通貨相場の変動により準備水準が
大きく振れるなどのリスクを伴うとの見方がある。こうした準備通
貨を積み上げている各国のマネタリーベースへの影響が、世界的な
過剰流動性やバブルにつながる可能性がある。
 ドルが独占的な準備通貨の地位を占めるなか、自国通貨ドルを印
刷できるという米国のメリットは、世界的な不均衡を助長するとの
指摘もある。

 <SDRが準備通貨としてどのように機能するか>
 SDRの使用拡大は、最初の重要な一歩となる。外貨取引におけ
る使用の拡大や、請求書や国際貿易における取引単位としての使用
、国際的な民間金融取引において、ローン・債券・預金などをSDR
建てにするなどが挙げられる。

 <課題>
 ◎SDRの価値は主要な国際通貨のバスケットに基づいて決めら
れているが、バスケット通貨の構成が変更される可能性はあるか:
 主要新興国が自国通貨を含むように提案する動きがあると予想さ
れる。中国は既にこれを示唆している。IMFはバスケット通貨の
構成を5年ごとに見直すが、次の見直しは2010年末に予定され
ている。

 ◎IMFはSDR建ての債券を発行することにより、SDR建て
証券を導入できるか。それが可能だとしたら、国の外貨準備管理担
当者や投資家の流動性懸念に配慮できる十分な規模になるか、もし
そうでなければ、外貨準備管理担当者は、SDR通貨バスケットの
通貨構成比率により、各通貨とその通貨建て債務により外貨準備を
保有することになるか。

 ◎SDR建て債券の発行規模は誰が決定するのか: この問題を
めぐる議論は、IMF改革に関連してくる。現在IMFは、事実上
米国が重要案件の拒否権を持っている。

 ◎米国の抵抗。オバマ大統領やガイトナー財務長官らは、ドルの
地位は揺るがないとの意向を表明している。

 ◎中国などの新興国は、自国通貨がSDRバスケットの構成通貨
に加わった場合、SDRを準備通貨とすることで発生する責任を負
担するか。例えば、中国は代償としてより柔軟な人民元相場に移行
する用意があるか。

 ◎新たな準備通貨創設は、米国債の利回り上昇やドル下落など不
安定な資金の流れを招く可能性がある。景気サイクルのどの時点で
そうした衝撃を吸収することができるか。金融危機や景気後退時は
適切でないことは明らかだが、好景気時に準備通貨創設に向けた政
治的な勢いが衰えることはないか。
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通貨統合、延期見通し 湾岸5産油国 2009/03/26 
 【ドバイ=太田順尚】サウジアラビアなど中東・湾岸産油国でつ
くる湾岸協力会議(GCC)のアルカウド事務総長補代理は24日、
湾岸5カ国が目指す域内単一通貨の2010年発行について「新たな期限
を設けることになるだろう」と述べ、延期は避けられないとの見通
しを示した。バーレーンで開いた銀行関係者の会合で語った。

 GCCは10年発行の目標を堅持しているが、各国の通貨当局はこ
れまでも延期の見通しを示しており、GCC事務局の高官も公式に
延期を認めた形だ。同氏は「(将来の統一中銀となる)通貨評議会
は09年中に設立され、発行時期を検討し直す」と語った。

 通貨統合をめぐっては、アラブ首長国連邦(UAE)などが統合
参加の条件であるインフレ率の基準を満たしておらず、10年の実施
は難しいとの見方が強まっていた。 (01:45) 
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「湾岸」通貨評議会をリヤドに設置へ2009/05/06 
 【カイロ=安部健太郎】サウジアラビアなどペルシャ湾岸諸国で
構成する湾岸協力会議(GCC)は5日、将来の設立を目指す統一中
央銀行の土台となる通貨評議会をサウジの首都リヤドに設けること
を決めた。リヤドで同日開いた首脳級会合で合意した。通貨統合に
向けて同評議会が各国の通貨政策を調整する。

 GCC諸国はオマーンを除く5カ国が2010年の統一通貨の発行を目
標にしている。ただ、アラブ首長国連邦(UAE)などが参加条件
であるインフレ率の基準に達しておらず、10年の通貨統合は困難と
いう見方もある。(07:00) 
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湾岸通貨統合、UAEは不参加表明2009/05/21 
 【ドバイ=太田順尚】アラブ首長国連邦(UAE)は2010年の実
現を目指す、湾岸産油国の通貨統合に参加しないことを決めた。国
営通信が外務省当局者の発言として報じた。サウジアラビアなどの
残る4カ国は統合方針を変えていないが、湾岸地域でサウジに次ぐ
経済規模を持ち、中東の経済・金融の中心地であるドバイを抱える
UAEの不参加によって通貨統合構想が後退する可能性がある。

 UAEなど湾岸産油国でつくる湾岸協力会議(GCC)は、オマ
ーンを除く5カ国での10年の単一通貨発行を目標に交渉を進めてきた。
5日には将来の統一中銀の土台となる通貨評議会をサウジの首都リヤ
ドに設けることを決めたが、自らも誘致を狙ってきたUAEは決定
を不服として受け入れを留保。この反発が、統合からの脱退の引き
金になった可能性がある。(20日 23:10) 
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サウジなど中東4カ国、通貨統合協定を締結2009/06/08 
 【ドバイ=太田順尚】サウジアラビア、クウェート、カタール、
バーレーンの中東湾岸産油4カ国は7日、域内単一通貨を発行する
とした通貨統合協定を結んだ。統合交渉では、将来の統一中央銀行
の土台となる通貨評議会の設置場所を巡り一部の国の不和が表面化
。アラブ首長国連邦(UAE)が不参加を表明するなど足並みが乱
れていたため、実現への懐疑論を封じ、あくまで統合推進する姿勢
を示す狙いがあるとみられる。

 4カ国の外相と中銀総裁が7日、サウジの首都リヤドで署名した
。サウジなど湾岸産油国でつくる湾岸協力会議(GCC)の報道官
によると、各国は通貨評議会を年内にリヤドに設置し、具体作業に
入ることで正式合意した。

 GCC加盟国は、オマーンを除く5カ国が2010年の単一通貨発行
を目標に交渉を進め、5月に通貨評議会のリヤド設置を決定。だが
、UAEは不服として「通貨評議会をUAEに置くなら交渉に復帰
する」(アブドラ外相)と表明。(13:42) 
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「ドルは最重要の準備通貨」 UAE訪問の米財務長官2009/07/16 
 【ドバイ=太田順尚】欧州・中東を歴訪中のガイトナー米財務長
官は15日、訪問先のアラブ首長国連邦(UAE)で「ドルは中東・
湾岸地域の最も重要な準備通貨であると再確信した」と述べ、ペル
シャ湾岸アラブ産油国のドル支援姿勢に変わりがないとの認識を示
した。中東の衛星テレビ局アルアラビーヤのインタビューに答えた。

 同財務長官は「強いドルを約束するのが米国の政策で、今後も変
わらない」と語り、ドルの安定を目指す考えを改めて強調。今回の
中東訪問で「ドルの価値に関する懸念はまったく聞かなかった」と
述べ、通貨をドルに連動させている湾岸産油国が米国の政策を支持
し、ドルへの信頼を変えていないことを強調した。

 また、原油相場について「エネルギーや商品市場の透明性を高め
ることが重要」との認識を示し「(原油価格の)不安定さを緩和さ
せる方法を見いだす必要がある」と述べた。(13:34) 
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IMF、2500億ドル相当のSDRを加盟国に配分−外貨準備を補完
 2009/08/30 
  8月28日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)は28日
、加盟国の外貨準備を補完し、世界経済に流動性を供給するため、
主要通貨と交換可能な約2500億ドル(約23兆4000億円)相当の
SDR(特別引き出し権)を配分したと発表した。今年4月の20カ
国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)の要請に応じる措置。 

SDR配分はIMF総務会が今月承認。IMFの融資枠拡大にはつ
ながらないものの、「加盟国が通貨を取得する新たな手段になる」
という。 

9月9日には、旧ソ連共和国など1981年以降の加盟国に対象を限定
した約330億ドル相当のSDRが追加配分される。 
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米、「ドル軽視」を警戒 民主・鳩山代表の主張を不安視
2009/09/01 
 【ワシントン=大隅隆】衆院選での民主党の勝利を受け、米政府
は政権交代への期待感を示しながらも、水面下では経済政策の転換
への懸念を強めている。民主党の鳩山由紀夫代表は米紙への寄稿で
「金融危機は基軸通貨ドルの永続性に疑問を投げかけた」との主張
を展開した。同じ論文で示した「アジア共通通貨」の創設構想に
ついても、ドルの基軸通貨体制を損ないかねないと懸念する見方が
出ている。

 海外資金への依存度が高い米国にとってドルの信認維持は経済政
策の根幹だ。外貨準備での米国債の購入という役割への期待も強い
。2月の日米首脳会談でオバマ大統領と麻生太郎首相は「ドルの信
認維持」で一致しており、景気回復への取り組みも含めて新政権に
も政策の継続を求める構えだ。米財務省の元幹部は「民主党による
雇用増加に向けた政策をオバマ政権は支持するだろう」と語った。
(08:51) 
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国連:新たな世界準備通貨の創設提言−為替相場管理で安定必要
2009/09/08 
 9月7日(ブルームバーグ):国連は7日発表した報告書で、新
たな世界準備通貨を創設し、国際貿易でのドルの役割を軽減するこ
とで、新興国市場を金融の思惑的な「信頼感競争」から保護する必
要があると提言した。 

 ジュネーブに本部を置く国連貿易開発会議(UNCTAD)は報
告書で、国連加盟国は新たに世界準備通貨銀行を創設し、同銀が通
貨発行および加盟国が保有する通貨の為替水準を監視することに合
意する必要があると呼び掛けた。 

 米住宅ローン市場の崩壊をきっかけに金融危機が発生したことを
受け、中国やインド、ブラジル、ロシアは今年、ドルに替わる主要
準備通貨が必要だと訴えた。世界最大規模のドル準備を有する中国
は、国際通貨基金(IMF)のSDR(特別引き出し権)など超国
家通貨が安定強化につながるだろうと主張している。 

 報告書の共同執筆者で、UNCTADのディレクターであるハイ
ナー・フラスベック氏は、ジュネーブからインタビューに応じ、「
為替相場管理のための多国間合意に基づく枠組みで、より安定した
為替水準を達成できる確率はかなり高い」との見方を示し、「ブレ
トン・ウッズ体制や欧州通貨制度(EMS)に相当する取り組みが
必要だ」と述べた。
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世銀総裁「ドル基軸の当然視は誤り」 経済の構造変化指摘
2009/09/28 
 【ワシントン=御調昌邦】世界銀行のゼーリック総裁は「米ドル
が支配的な準備通貨として地位が保証されていると当然視するのは
間違いだ」と語り、ドルが基軸通貨であり続けるか分からないとの
見方を示した。そのうえで「ドルに代わる複数の選択肢が増えてく
る」との見通しを明らかにした。背景には、中国やインドの台頭な
ど世界経済の大きな構造変化があると説明している。

 発言内容は同氏が28日にワシントンで講演する要旨を世銀が公表
し、明らかになった。ドルに代わる選択肢について具体的な言及は
ない。オバマ米政権は「強いドルは国益」と強調し続けているが、
過去に米政府の有力者だったゼーリック総裁はドルの地位が経済情
勢によって変動すると考えているようだ。

 米国の金融規制改革については「独立性の強い専門家集団である
米連邦準備理事会(FRB)に、さらに権限を移譲することは難し
い」と指摘。米財務省が金融規制当局を束ねるのが危機管理として
望ましいとの考えも示した。(16:00) 
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新たな国際準備通貨、ドル安につながるが短期的リスクでない
=米FRB議長(ロイター)
2009/10/02 
[ワシントン 1日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)の
バーナンキ議長は1日、ドルに代わる国際的準備通貨について、実
現すればドル安につながるが、短期的なリスクとはみていないとの
認識を明らかにした。
 同議長は下院金融委員会で証言し「(国際的な準備通貨は)ドル
を下落させる。インフレにつながる可能性について注視する必要が
ある」と述べた。

 その上で「米国が財政の管理で適切な措置を取る限り、これは短
期的なリスクではないと考えていると繰り返しておきたい」と語っ
た。

 また「中期的にインフレを引き起こさずに経済を支援する政策運
営にわれわれは自信を持っている。これを達成するために必要な手
段と政治的な意思を備えていると確信している」と述べた。
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アラブ諸国、原油取引での通貨バスケット建て移行を協議=英紙
10月6日11時57分配信 ロイター> 2009/10/06 
 [シドニー 6日 ロイター] 英インディペンデント紙(電子
版)は6日、アラブ湾岸諸国が原油取引での米ドル利用を中止し、
通貨バスケット建て取引移行に向け、ロシア・中国・日本・フラン
スなどと極秘に協議していると報じた。
 ロバート・フィスク中東特派員によるこの記事を受け、ドル相場
は軟化した。
 同紙がアラブ諸国の関係筋および香港にいる中国の銀行関係者の
情報として伝えたところによると、通貨バスケットは、円・人民元
・ユーロ・金のほか、サウジアラビア、アブダビ、クウェート、カ
タールなど湾岸協力会議(GCC)関係国が計画している統一通貨
などで構成される。
 記事は「ロシア、中国、日本、ブラジルの財務相と中央銀行総裁
らがすでにスキームについて極秘の協議を行っており、原油取引は
今後、ドル建てにならないことを意味する」と指摘。また、この協
議にはフランスも関与しているとされる。
 同紙によると、米当局はこの協議が行われたことを認識している
が詳細を把握しておらず、「この国際的な陰謀には対処する」姿勢
を示しているという。
 ドル建ての原油取引を止めるとの観測はここ数年、度々浮上して
いるが、専門家の間では直ちにそうなる可能性は低いとの見方が有
力だ。
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サウジ:石油決済通貨はドル、変更協議していない−報道否定
2009/10/07 

10月6日(ブルームバーグ):サウジアラビア通貨庁(SAMA、
中央銀行に相当)のジャーセル長官は6日、同国は他の産油国とも
中国などの大手消費国とも、石油取引の決済通貨をドルから変更す
ることについて協議していないと述べ、英紙インディペンデントの
報道を否定した。 

 同長官はトルコのイスタンブールで記者団に語った。インディペ
ンデント紙は同日、湾岸産油国が中国とブラジルを含む消費国と、
石油取引の決済通貨としてドルの役割を徐々に低下させることにつ
いて秘密裏の協議を持ったと報じていた。 

 ジャーセル長官はこの報道について、「全く正しくない」とし、
サウジアラビアと諸外国との間にそのような協議は「全くなかった
」と述べた。 

 同長官の発言を受けてドルは下げ幅を縮め、ロンドン時間午前7
時52分(日本時間午後3時52分)現在、対ユーロで1ユーロ=1.4713
ドル。インディペンデントの報道を受けて一時は1.4749ドルまで弱
含んでいた。ニューヨーク5日は1.4648ドル。対円では
1ドル=89円34銭(前日は89円53銭)。一時は88円86銭まで下げて
いた。 

 インディペンデント紙は湾岸諸国の複数の当局者および中国のバ
ンカーの話として、ロシアと中国、日本、ブラジル政府の閣僚と中
銀当局者が、2018年までに導入予定の決済通貨変更計画に向けて会
合を持ったと報じていた。 

 日本の藤井裕久財務相は6日、東京での記者会見で報道について
尋ねられ、何も承知していないと述べた。 
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英紙報道の背景--【原油取引でのドル利用停止協議との報道、ドル
の地位低下を反映】---(ロイター)
 2009年 10月 6日 14:15 JST

[シンガポール 6日 ロイター] 英インディペンデント紙が6
日、アラブ湾岸諸国が原油取引でのドル利用を停止し、人民元など
で構成する通貨バスケット建て取引に移行する案をロシア・中国・
日本・フランスと極秘に協議していると報道、ドルの地位低下が裏
付けられる形となった。

 同紙がアラブ諸国や中国の匿名の銀行筋の情報として伝えたとこ
ろによると、ドルの代わりに使う通貨バスケットは、円・人民元・
ユーロ・金のほか、サウジアラビア、アブダビ、クウェート、カタ
ールなど湾岸協力会議(GCC)関係国が計画している統一通貨な
どで構成される。

 原油の取引通貨としてドルを使うのをやめること自体は、イラン
がすでに実行していることでもあり、それほど困難ではないかもし
れない。

 ずっと難しいのは、原油価格の設定をドル建てから変えることだ
。現在はニューヨークからドバイ、シンガポールまで、原油のベン
チマーク価格はドル建てとなっており、これを変えるには大変な努
力が必要だ。

 つまり、原油取引でのドル利用停止が仮に実行された場合には、
輸出国は外貨準備の多様化が容易になり、輸入国は代金支払いのた
めにドルを取得する必要性がなくなるという点では外為市場にとっ
て大きなニュースだろうが、原油取引自体の革命につながるとは考
えにくい。

 ドル建ての原油取引停止は新しい案ではなく、ドルの下落に伴い
ここ10年、度々浮上しているが、これまでのところ実現したこと
はない。

 原油のドル以外での売買シェアが上昇したとしても、こうした売
買の価格を決定する指標がドル建てという現実を変えることにはな
らない。 


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