3413.廃墟につづく兎の穴:高田馬場BAR軍艦島



皆様、

富山のマイルストン向けに「現代という芸術」を書きました。
こないだの22日の晩に、ひさしぶりに軍艦島を訪れたときの感想です。

歩道に突っ立っている看板とか、ビルにくっついている電照サインとか、通りか
ら店を見上げた写真を使いたかったのですが、撮影器材をもっていなかったの
で、間に合わせでお店のHPから写真をいただきました。

僕はあの店の看板(歩道においてあるやつと、ビルの壁についているやつ)が
けっこう好きです。

得丸公明




廃墟につづく兎の穴  高田馬場SHOT BAR軍艦島で廃墟=東京を思う

 6年前、友人が高田馬場の雑居ビルの2階の事務所を手作りで改装して小さな
バーを開いた。もと不動産屋が事務所に使っていた7坪の部屋を、一ヶ月以上か
けてカウンター8席に、2畳の小上がりがついたシブいバーになった。

 名前は軍艦島、長崎の廃鉱となった炭鉱の島をイメージして、軍艦島や廃墟の
写真集もたくさんおいてあった。人類の文明が滅びて、都市という都市がすべて
廃墟になったときでも、そこにいけば誰かと語り合うことができ、何かしらの安
らぎが得られる場所となることを願って命名した。

 最近ひさしぶりで店を訪れたら、イメージどおりの店に成長していた。おそら
く、この6年で、店が街になじんだこともあるだろうが、時代がどんどん進歩し
て、世界中が廃墟に近づいているのだ。遠くの廃墟を思うはずの場所が、近くの
廃墟に気づく場所になろうとは。書棚の写真集の影がすこしうすくなっていた。

 長崎の海に浮かぶ軍艦島は、すでに文明の禊ぎを終えて、人間の気配を清めて
再生の気配をまき散らしはじめているというのに。そこを世界遺産に指定しよう
という運動があるようだが、できれば島内立ち入り禁止にして、訪問者は、近く
から島を見学して、自然の力に安心感を得るというコンセプトはどうだろう。人
がいなくなって何十年かすると、自然の力で文明の穢れが少しずと禊ぎ清められ
ていくことを、少し離れたところから眺めるようにすればよい。

 高田馬場の軍艦島は生々しい廃墟を感じることができる。空をみあげてごら
ん。すでに飛んでいる鳥も少ない。通りを見下ろしてごらん、何ものかに追われ
るようにセカセカ人は歩いているが、いつ無人化するかわからない。人類は地球
の上ですでに滅んでいて、東京はすでに廃墟である。もうあとしばらくは補給の
船とトラックが食糧とエネルギーを運び込んでくるだけのことなのだ。

 ここ高田馬場の軍艦島は、廃墟の未来を感じる場所である。まもなくやってく
る最期の時、おたおたしないために、心の準備をする場所である。世界の都会が
すべて廃墟になっても、いつかかならず自然に覆い尽くされるであろうことを
思って、希望を味わう店である。(2009.9.27)

http://www.milestone-art.com/MILESTONES/issue103/htm/p10tokumaru.html



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