3404.米中貿易摩擦か?



米国と中国の間では、G2対話で人民元の対ドルレート維持と引き
換えに米国債を購入するという密約ができてドルの基軸通貨は当分
安泰と見ていた。

しかし、この米中間の貿易・金融で問題が生じ、お互いに相手の輸
入品の関税を引き上げる事態になっている。この米中の貿易戦争を
見よう。
                 津田より

0.はじめに
まず、現状の米国経済を見ると、やっと住宅等の価格下落が止まっ
たことで、米家計の資産下落が止まった。それと住宅価格が底値で
あると見て、この住宅へ投資ファンドが動き始めている。やっと、
金融危機から抜け出し、米国の家計もL字の底になったようである。

米財務省も金融政策・正常化への出口戦略を取り始めた。まず、
MMFの保証プログラムを終了したようだ。ガイトナー財務長官は
声明で「金融によるリスクが後退し、緊急プログラムの必要性も後
退した」と表明した。

しかし、反対にFRBは、不振が続く商業用不動産向けの金融機関
の融資状況について調査を始めた。約800の地域金融機関などが対象
となるが、8月末で92行の破綻が起きている。

このため、年末までに100行以上、200行ぐらいの破綻が起き
ると予想されている。その原因が商業用不動産である。商業用不動
産ローン市場は個人向け住宅ローン市場と比べ価格下落や延滞の増
加が深刻で、金融機関の関連不良資産も多いとみられる。

このように危機はまだあるために、ギブズ米大統領報道官は住宅購
入減税延長の可能性を述べている。

しかし、米国の金融危機は終わったという感じになっている。この
ため、金融規制法を金融業界は競争力の減退から反対しているし、
銀行の投資部門は、高利回りのリスク資産にどんどん投資している
。また高レバレッジも復活してドルのキャリー取引が世界を駆け巡
っている。

しかし、米国民は失業者や就職を諦めた人たちがオバマ政権の金融
業界優先の政策に反対して、ワシントンの抗議集会に詰め掛けて、
30万人以上が参加したという。国民皆保険に反対の集会ではなく
、国民優先でない政策に抗議するために集まったというのが実情の
ようである。

アフガン戦争にも反対で、戦争継続支持者が36%程度になってい
る。このような状態に米国はある。金融業界だけが景気回復した感
じである。

この状況で、G2という蜜月と思われた中国と米国が突如、貿易戦
争を始めたのだ。このきっかけと今後の結果を見よう。

1.貿易戦争のきっかけ
 まず、きっかけであるが、中国政府は中国国有企業が外資系金融
機関との商品関連デリバティブ契約の一方的な破棄を容認する通達
を出したことである。米投資銀行と契約した商品デリバティブを破
棄するとなれば、商品が先物のCALLを証券化した商品かCAL
Lの契約であるはず。PUTの契約であれば、権利を行使しないこ
とで損失は確定されている。CALLの契約であると、損失は商品
価格によって決まるので、決算日でないと確定できない。

損失が膨大であると中国政府が見ているということは、商品先物取
引のCALL契約であるしか思えない。中国国営企業の契約を破棄
するとすると、米投資銀行はPUT権限者に代行して支払うことに
なり、大きな損失が出るし、今後中国でのこの手の契約ができない
ことになる。大きな痛手である。

この交渉を米国に派遣された呉国務委員がやったが、中国は破棄の
方向を撤回しなかった。その代わりに、中国は米国企業に投資する
という代替案を持って行ったが、それを米国は拒否して、中国の対
米輸出量の0.4%しかない中国製タイヤへの特別セーフガード
(緊急輸入制限)として上乗せ関税の実施になったと見える。

米国のタイヤメーカが提訴していないにも拘らず、特別セーフガー
ドになったことでも米国としては、形だけの貿易戦争にしたかった
ようである。

そして、米国は「中国政府とも相談した」うえで決めたと強調する
理由である。オバマ米大統領は「我々は中国と深い経済関係を築い
ている」と語り、米中間の通商摩擦激化は「避けられる」との見方
を強調した。

しかし、中国としては4中全会開幕の直前という時期であり、タイ
ミング的には非常に拙い時であり、メンツが無くなったと中国政府
は感じたようである。

このため、この特別セーフガード対抗して、中国商務省は13日、米
国製の一部輸入自動車と鶏肉製品について、反ダンピング(不当廉
売)・反補助金調査の手続きを始めたと発表した。

2.米中の意図
 米国は貿易赤字を減らしたいことと、米国債を中国に買ってほし
いという希望を持っている。対して中国は貿易黒字を増加させ、か
つ、稼いだ外貨で資源を確保することである。

米国が貿易赤字を減らすためには人民元高にして、中国製品の価格
を上げて、国内製品を有利にすることである。しかし、米国債の購
入を求めると、中国は貿易拡大のために人民元のレートを現状で維
持させることになり、米国は通貨に文句が言えなくなった。

貿易赤字を米国が減らせる手段は、中国製品の関税の引き上げしか
ないことになる。最初にこの処置をしたら、中国は当然怒るが、中
国が起こした問題で、この処置を取ることはありえる。

ということで、米国は中国が問題を起したと見て、準備をしていた
処置をしたように思う。そして、米国が最初のデリバティブ取引に
対して、公式に非難しないのは、米投資銀行の損失があるために明
らかにできないように感じる。

3.今後の動向
 米国としては、中国と問題を大きくして、米国債の消化に問題を
生じさせることはできない。このため、あまり中国貿易に影響が少
ない品目を選んでセーフガード化したので、問題を大きくしたいと
思っていない。それはオバマ大統領の声明にも出ている。

 中国も問題を大きくして、人民元の切り上げになることを避けた
いはずであり、現時点で米国との関係を壊すことを望んでいないよ
うである。ということで、今回は中国が米国債を買わなくなるとい
うことは起きないと見ている。

さあ、どうなりましすか??
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米家計の純資産が増加、1年9カ月ぶり 4〜6月 

 【ワシントン=御調昌邦】米連邦準備理事会(FRB)が17日発
表した2009年4〜6月期の資金循環統計によると、米家計の同期末
の純資産残高(季節調整前)は約53兆1399億ドル(約4843兆円)と
なり、前期末に比べて約2兆ドル増えた。前期末比でプラスに転じ
たのは07年9月末以来、1年9カ月ぶり。株価上昇などで金融資産
が増えたことが背景。ただ、米家計は負債圧縮などバランスシート
(貸借対照表)調整を進めており、純資産の増加が消費拡大に直結
する可能性は低い。

 家計の純資産残高は、資産残高から負債残高を差し引いたもの。
資産には株式など金融資産のほか、不動産などの有形資産なども含
まれる。

 資産残高は約67兆2079億ドルで、前期末に比べ約2兆ドル増加し
た。このうち約1兆8000億ドル分は、金融資産の増加。預金は減っ
ており、株高が資産価値を押し上げたとみられる。一方、負債は約
14兆680億ドルで小幅減にとどまった。 (13:03) 
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米財務省、MMF保証プログラム終了
 【ニューヨーク=伴百江】米財務省は18日、昨年9月に金融危機
対応として導入したマネー・マーケット・ファンド(MMF)の保
証プログラムを同日付で終了したと発表した。MMF運用会社から
保証料を徴収して、元本割れに陥った際に損失を政府が負担する仕
組み。徴収した保証料は12億ドルに上るが、制度導入後に元本割れ
を起こしたMMFがなかったため、保証料は全額、税収に充当する。

 制度は、金融危機で大手MMFが元本割れを起こす異例の事態に
陥ったのを受け、他のMMFへの波及を避けるために導入した。昨
年9月から当初3カ月間の時限措置としていたが、今年9月18日ま
で期限を延長していた。

 ガイトナー財務長官は声明で「金融によるリスクが後退し、緊急
プログラムの必要性も後退した」と表明した。(07:27) 
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商業用不動産、FRBが融資状況調査 米メディア報道
 【ワシントン=大隅隆】米連邦準備理事会(FRB)が、不振が
続く商業用不動産向けの金融機関の融資状況について調査を始めた
。複数の米メディアが伝えた。AP通信によると約800の地域金融機
関などが対象となる。今春に実施した大手銀行の健全性審査(スト
レステスト)でも調査を実施したが、金融システム全体への影響を
把握するため、中小金融機関についても詳細に調べることにしたと
みられる。

 商業用不動産向け融資はオフィスビルやホテルなどの建設資金向
けの貸し出し。金融機関の融資残高は1兆3000億ドル、同融資を裏
付けとする商業用不動産ローン担保証券(CMBS)は7000億ドル
程度とみられる。商業用不動産ローン市場は個人向け住宅ローン市
場と比べ価格下落や延滞の増加が深刻で、金融機関の関連不良資産
も多いとみられる。(07:00) 
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米政府、住宅購入減税延長の可能性否定せず
 【ワシントン=岩本昌子】ギブズ米大統領報道官は16日、11月末
に期限切れとなる住宅購入に対する特別減税について「現在その効
果を評価中」と語り、延長の可能性を排除しなかった。ホワイトハ
ウスでの定例会見で語った。

 同報道官は「評価の結果次第で、担当部署が大統領にどのような
政策をとるか提言するだろう」と述べた。

 米国の住宅着工件数で主力の一戸建てをみると、7月分が前月比
1.7%増と5カ月連続で前月実績を上回った。米住宅市場は底入れを
探っているが、特別減税が11月末で終了した場合の影響が懸念され
ている。(07:14) 
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経済けん引役「中国に期待」 夏季ダボス会議が閉幕 
 【大連=多部田俊輔】世界経済フォーラムが中国・大連で開いた
夏季ダボス会議が12日閉幕した。会議では「中国はまもなく世界経
済を引っ張るリーダーになる」(米監査法人大手アーンスト・アン
ド・ヤングのジェームズ・ターリー会長)など、中国に世界経済の
成長エンジンの役割を期待する意見が相次いだ。 

 「中国からの投資で経済を成長させたい」(ナイジェリア中央銀
行のアレイド副総裁)と、資金の出し手としての評価も多く出た。
モンゴルのゾリグト鉱物資源エネルギー相は「投資対象を資源のほ
か製造業にも広げてほしい」と述べた。ドイツ銀行のカイオ・コフ
ベーゼル副会長は「中国は既に経済大国。世界的な問題の解決に責
任を果たすべきだ」と主張した。 

 中国側出席者からは「中国はまだ発展途上国だ」(張暁強・国家
発展改革委員会副主任)とする意見や、「中国の個人消費は米国に
到底及ばない」(福耀集団の曹徳旺会長)との見方が多く、大国と
しての責任を負うのを避けたい様子だった。 (12日 23:08)
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米のタイヤ輸入制限、「G20で大きな議題に」 中国外務省次官 
 中国外務省の何亜非次官は15日、胡錦濤国家主席が来週米国で開
かれる国連や20カ国・地域(G20)の首脳会議に出席することを受
けて記者会見した。米政府が決めた中国製タイヤに対する特別セー
フガード(緊急輸入制限)発動について「重大な保護貿易主義行為
。中米貿易に損害を与えるだけではなく、世界経済の回復にもマイ
ナスだ」と強く批判した。

 同時に「G20のリーダーは常に保護貿易主義に反対だ。今回の会
議でもそれを再確認し、新たな保護貿易主義の措置を打ち出さない
だろう」と述べ、この問題が大きなテーマになる見通しを示した。
そのうえで「米国の消費者にとっても不利。米国は真剣に考え直す
べきだ」と語った。(北京=品田卓) (02:11) 
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中国の4中全会が開幕 「ポスト胡錦濤」焦点 
 【北京=佐藤賢】中国共産党の第17期中央委員会第4回全体会議
(4中全会)が15日午前、北京で開幕した。会期は18日までの4日
間。党内序列6位の習近平国家副主席(56)が中央軍事委員会副主
席に選出されるかが最大の焦点となる。軍事委入りすれば2012年に
「ポスト胡錦濤」として党総書記に就くことが事実上確定するとみ
られる。
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オバマ大統領、米中通商摩擦「激化は避けられる」 
 【ワシントン=大隅隆】オバマ米大統領は14日夕、中国製タイヤ
に特別セーフガード(緊急輸入制限)として上乗せ関税をかけるこ
とに関し「我々は中国と深い経済関係を築いている」と語り、米中
間の通商摩擦激化は「避けられる」との見方を強調した。米国内で
追加景気対策を求める声が出ていることについては「やりたくない
と思っている」と述べた。

 同大統領はCNBCテレビのインタビューで明らかにした。

 通商問題に関しオバマ大統領は「米国と相手国の双方の繁栄につ
ながる貿易協定は重要だと信じている。だが、国際協定に盛り込ま
れている(特別セーフガードなどの)ルールを(状況に応じて)使
わなければ、米国民が将来の貿易協定を支持しなくなる」と指摘。
中国へのセーフガード発動に理解を求めた。 (18:30) 
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タイヤ、米中関係のトゲに 中国製に輸入制限、双方譲れず 
 米オバマ大統領が11日夜(日本時間12日朝)、中国製タイヤへの
特別セーフガード(緊急輸入制限)として上乗せ関税の実施を発表
した。国内企業や雇用への打撃を重く見た決定だが、中国は「重大
な貿易保護主義だ」と反発を強めている。米中間の他の通商摩擦に
影響が及ぶのは必至で、モノとカネの両面で相互依存を強めてきた
米中関係は難しい局面に入る。 

 オバマ大統領が「最も適切な行動」と強調した上乗せ関税は3年
間で最大35%。米通商代表部(USTR)のカーク代表は「世界貿
易機関(WTO)のルールに基づく米国の権利としっかりとした経
済的な算定に基づく」と指摘。「中国政府とも相談した」うえで決
めたと強調した。(ワシントン=大隅隆、北京=高橋哲史) (18:23)
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中国製タイヤ輸入制限 米、関税を3年間上乗せへ
 【ワシントン=大隅隆】オバマ米大統領は11日、米国市場で急増
する中国製タイヤに特別セーフガード(緊急輸入制限)として上乗
せ関税を3年間かけると発表した。上乗せ幅は最大35%となる。米
国内の雇用保護を優先させた結果といえるが、中国は事実に基づい
ておらず法的根拠もないと反発している。世界的に保護主義の懸念
が強まるなか、米中間の通商摩擦が一段と激しくなっている。

 対象となるのは乗用車や軽トラックなどに使う中国製タイヤ。現
行の関税率4%に、1年目は35%、2年目は30%、3年目は25%を
それぞれ加える。オバマ政権にとっては初めてのセーフガードであ
り、月内に発動する見通し。6月末に米国際貿易委員会(ITC)
が大統領に勧告した関税率(55〜35%)よりは圧縮された。

 オバマ大統領は「ITC調査のあらゆる側面を検討した結果、追
加関税の実施が最も適切な行動と判断した」との公式声明を発表。
米通商代表部(USTR)に追加関税の準備を指示した。(13:11) 
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中国、反ダンピング調査 米国製の一部自動車と鶏肉
 【北京=高橋哲史】中国商務省は13日、米国製の一部輸入自動車
と鶏肉製品について、反ダンピング(不当廉売)・反補助金調査の
手続きを始めたと発表した。米政府は11日に中国製タイヤに特別セ
ーフガード(緊急輸入制限)を発動すると発表したばかりで、今回
の調査開始は米国への対抗措置とみられる。米中間の通商摩擦が激
しさを増す可能性が出てきた。

 中国商務省の声明によると、今回の調査は国内の自動車や鶏肉業
界から寄せられた「(米国企業が)ダンピングや補助金など不公平
な貿易方式で中国市場に進出しており、国内産業に打撃を与えてい
る」との申し立てに基づいて始める。商務省は「中国の国内法と世
界貿易機関(WTO)の規則に基づいた措置」と強調している。

 米政府は11日、米国市場で急増する中国製タイヤに特別セーフガ
ードとして上乗せ関税を3年間かけると発表した。上乗せ幅は最大
で35%。中国商務省は直ちに「重大な貿易保護主義」と反発する声
明を出し、WTOへの提訴を含めた対抗措置を取る可能性を示唆し
ていた。(00:40) 
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中国国有企業はデリバティブ契約の一方的破棄可能と報道、外銀間
に動揺

[北京 31日 ロイター]
 中国国有企業が外資系金融機関との商品関連デリバティブ契約の
一方的な破棄を容認される可能性があるとの報道を受け、金融機関
に憤慨と動揺が広がっている。

 中国誌の財経が29日、業界関係筋の話として報じたところによ
ると、国有企業を規制する国務院国有資産監督管理委員会(SAS
AC)が外資系金融機関6社に対し、国有企業はデリバティブ契約
のデフォルトの権利を留保している、と伝えた。 SASACの広
報担当官は、「関連当局」による公式コメントを待っているところ
だ、と述べた。

 今回の事態は、中国での一層多くのデリバティブ・ヘッジの取引
を望む投資銀行に打撃となる。シンガポールにある外資系金融機関
シンガポールのマーケティング担当幹部は「もし、われわれが書簡
を受け取った銀行であれば、ひどく憤慨しているであろう。
 今、重要なのは、いかなる組織が書簡を送ったのか、いかなる理
由のデフォルトなのか詳細を知ることだ」とし、「政府が発行した
書簡であれば、非常にネガティブな影響をもたらすだろう」と語っ
た。

 JPモルガン・チェース(JPM.N: 株価, 企業情報, レポート)やモ
ルガン・スタンレー(MS.N: 株価, 企業情報, レポート)の商品関連
デリバティブ・マーケティングの関係者はコメントを拒否した。

 シンガポールの関係筋によると、少なくとも中国国際航空
(601111.SS: 株価, 企業情報, レポート)(0753.HK: 株価, 企業情報
, レポート)、中国東方航空(600115.SS: 株価, 企業情報, レポート
)、中国遠洋(チャイナCOSCO)(1919.HK: 株価, 企業情報, レ
ポート)(601919.SS: 株価, 企業情報, レポート)の3社が銀行に書
簡を送っている。

 これらは昨年末以降にデリバティブで巨額の損失を被った中国国
有企業の一角。関係筋は、各社の書簡はすべて同一の形式と聞いて
いる、と述べた。

 別の銀行筋は「当局により再交渉を奨励されているのは一握りの
企業だ。非常識だが中国のことであり、誰もが慎重に取り扱ってい
る」と語った。

 財経は特定の銀行に言及していない。SASACの報道官も、銀
行の特定を拒否した。


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