3390.米金融経済と日米関係



 米国で金融不安がまた起こるような感じがすると論評したが、
これは日本でも同じで、1997年に山一証券が倒産したが、政府
が十分な対応しなかったために、1998年に日本長期信用銀行、
日本債権信用銀行が破綻した。その後、金融再生関連法や金融機能
安定化法ができて、1999年にやっと安定化することになる。

現在の米国の不良債権問題もその1997年当時の日本と同様で十
分な対応していない。時価会計を緩和したことで証券化商品を銀行
が温存できる環境にしたなど対応が中途半端な状態になっている。
このため、長期の景気後退局面で景気後退による企業融資の焦付き
や商業不動産などの不良債権がどんどん膨らんでいくことになる。

時間稼ぎをして、痛んだ資産を復旧しようとした日米両政府の思惑
は、残念ながらより大きな負債を背負うことになるのである。それ
が、1995年から始まった日本の教訓であるが、米国も同じ罠に
嵌ったようである。

米普銀の破綻が1ケ月で20行以上にもなるのは異常である。商業
用不動産、クレジットカード、住宅ローンなどや企業などへの運転
資金融資も貸し倒れになってきて、地方中小銀行の破綻が増加して
いるが、それと同じ現象が大手銀行にも押し寄せている。
この解析は、国際戦略コラムの「3389.米銀行の苦境が続く」で見て
いただくとして、ここでは米FRBや米政府、諸外国の対応、特に
民主党同士の日米関係を見ようと思う。
                津田より

0.はじめに
 米国の金融経済のショックは世界に大きな影響を与える。特に現
時点、ドルのキャリートレードで、世界にドルがばら撒かれている
ので、その巻き戻しが起こると、やっと景気回復の兆しが見えたの
に、再度、世界は景気後退局面に逆戻りになる。

しかし、シティバンクの不良債権は時間が経つほど積み上がってく
る。現時点、投資部門の自己売買部門しか利益を出せないように大
手米銀でもなっている。この投資部門を持たない地銀などは大量に
破綻している。

シティは、日興を50億ドルで5月に売却している。スミスバーニー
は111億ドルで1月に売却している。どちらもそれぞれの1/4四半
期決算を黒字にするためであるが、とうとう売却できる配下の大き
な企業が無くなった。

9月に入り、決算対策としてシティバンクは、クレジットカード事
業の13億ドル売却やベルシステム24で12億ドル程度の売却を行う
が、これだけでは赤字を埋めることはできない。そして、売るもの
が無くなったら、シティの破綻が見えてくる。現時点では米普通銀
行では利益が出ない。

このため、このシティバンクの救済をオバマ政権は、資金のある中
国に託したいのであろう。オバマ大統領はシティバンクの決算が出
る10月以降に中国へ救済のために交渉を行くと見ていたが、11
月に訪中するとなった。

しかし、残念ながら、中国当局は中国企業に米銀が売ったCDS構
成・証券化商品を債務停止し価値を保全すると宣言をして、米銀の
価値下落を拒否している。商品のデリバティブとは証券化商品のこ
とであり、額面の価値は変動するので、このような宣言は無意味で
ある。

しかし、中国特有の交渉術では無謀なことをするので本気がどうか
は定かではない。シティ救済で有利な条件を引き出すために仕掛け
たようにも感じる。

どちらにしても、シティバンクが破綻間近で米政府は対応する必要
があるのだ。TARP監督委員長もシティの今後に不安視するコメ
ントを出している。

1.米政府・FRBの限界
 しかし、なぜ、中国にシティ救済を依頼するのかというと、米政
府、FRB共に資金の限界がある。バーナンキ議長は無限大に資金
緩和をしてドル札をばら撒くというが、各連銀にMBSなどの不良
資産が溜まり、その処理ができないことになる。また、各連銀の理
事がこれ以上の緩和はドルの暴落を招くことになり、輸入物資の高
値に拍車がかかり、米国民の生活が維持できなくなると反対してい
る様子が覗える。

米国政府は米国債が消化できないと長期金利が上がり、景気回復に
悪い影響が出るために、無原則に予算を増やすことができない。
また、現時点でアフガニスタンでの戦争に多額の費用がかかってい
る。その上に国民皆保険を作ろうとしているので、国民への増税が
不可避である。このため、国民皆保険に金持ちなど保守派は反対活
動をして、阻止しようとしている。また、投資部門を持つ普通銀行
の経営者の報酬が高いために、国民に追加の援助を言い出せないで
いる。

このため、資金の余裕がある中国への依頼となる。中国が米国の財
布であるような感じになっている。本当に中国の指導者はこれで良
いのであろうか?

どうも、中国指導層は米国の世界支配の道具を手に入れて、自分た
ちが米国の変わりに世界覇権を握れると米国指導者から吹き込まれ
ているようである。シティバンクもそのような道具であるという宣
伝がされているのであろう。IMFに対してもSDR債買取に人民
元で払い込みと言っているし、IMFの理事ポストを要求している。

そういう意味では、当分中国の天下でしょうね。中国に資金がある
間は、投資会社出身の米政府高官は、中国を持ち上げて中国から資
金を調達するようである。当分、中国は米国の財布でしょうね。
昔、日本がそうであったようにである。

この中国がいつ米国の要求にNOを言うかが焦点になっている。
今回かな、まだまだかな、どちらかは分からない??

2.中国離反が起きると
 中国は米国とのG2で世界の指導者として出てきている。アフリ
カなどへの資源外交も盛んであるが、米国は中国の邪魔をしない。
それは金蔓である間はそうである。

中国も米国債を買い続けるのは、米国債の暴落は自国資産の目減り
になり、望んでいない。しかし、米国の行き方には無理がある。
すでに日本は米国の米国債買い増しにはNOを言っている。このた
め、日本には米国は同盟国であるにもかかわらず、米高官は来ない
し、日本には冷淡である。

中国が人民元レートを自由化する決断をするかどうかである。この
決断ができると、米国は中国を財布には使えなくなる。人民元はド
ルレートで高くなり、米国債は目減りするが、0にはならない。

この決断は米国への貿易量が他国の貿易量より少なくなるときであ
るが、その時期が迫っている。アフリカやアジアへの貿易量が増え
て、米国への貿易量が減っている。

これも、もうまもなくである。後は中国指導者層の決断である。

4.SDRとは
  SDRはドル、円、ユーロ、ホンドの加重平均で構成でできて
いる。ドルから基軸通貨をSDRにしても、その通貨量がまだ少な
く、現時点ではSDRを基軸通貨にはできない。ワールドダラーは
膨大である。IMFの決定には米国は拒否権を持っているので、米
国の世界支配の機関と考えられているが、今まではIMFへの出資
金の半分を米国が出したが、つい最近のSDRへの出資金を見ると
、日本や欧州も多い。IMFの理事長はヨーロッパから出ている。
今回のSDR増資はEUが積極的に行っている。出資金比率で、
SDRの加重平均構成比が変化するし、引き出し権も大きくなる。

ドルの基軸通貨の地位をSDRに置き換えたいというEUの気持ち
がでている。その意味ではEUがBRICs諸国を巻き込んでドル
の基軸通貨を弱めたいという意思が感じられる。

対してSDRは、米国のドル防衛ではないが、米国のドル暴落時に
は引き出し権を使える。そして、SDRの加重平均の通貨範囲を拡
大して、引き出し権の増額を要求するBRICsは米国のドル暴落
に備えるという趣旨である。そのため米国も同意しているのが現状
である。

ドル暴落に備えるという側面が大きいと見る。そうしないとEUの
行動は理解できない。

5.日米関係
 民主党政権になり、米国従属ではなく、対等な関係を目指すとい
う政権の方向性は間違えていない。特に金融面からは米国の財布に
はなってはいけない。また、米国債の少しづつの売却でドル暴落を
仕掛けたと言われないように進めるべきである。ババを離すことで
ある。

 米国とは安保体制は存続することであるが、米国は膨大な軍事予
算をいつまで垂れ流しにできるかわからない。しかし、社民党も閣
内になり、平和ボケの社民党とは違う方向に向かうしかなくなる。

自立した安保体制を構築する必要が出てくる。シーレーン防衛も中
国やインド海軍に丸投げ状態である。米国はこの領域からは出て行
くはず。アフカニスタンへの物資輸送のためにインド洋に居るが、
その必要がなくなると、米海軍は撤退になる。日本は、そのときど
うするかである。共同安保体制を引くしかない。

日本、中国、インドが候補であるが、中国とインドは国境紛争を抱
えていて、敵対関係になる可能性がある。このような国際環境に日
本も軍事力の適正な行使が必要となってくる。集団安保も視野に入
れて考えることになる。

そのときに日米安保があれば、米国は日本の味方をしてくれる。も
し、米国が他国と同盟関係になったら、日本は終わりである。

このため、米国と対等に会議することは重要であるが、米国の意見
も尊重する必要がある。そこで合意するべきである。外交を政策論
争の争点にはしてはいけない。相手がいるので、政策が実現できな
い可能性が大きい。

米オバマ大統領は日本が米国の財布にならないことは了解している
ので、日米に大きな問題は基地問題以外ないと見ている。

6.ポスト米国に向けて
 EUは米国以後をどうするか、真剣に考えている。その米国以後
にEUはロシアや中国、ブラジルなどと組んで対応しようとしてい
るが、EUは日本は米国の従属国と見なして、相手にしなかった。
FTA交渉でもEUは日本に関心がない。

このため、日本も米国と共に世界から忘れられることになる危険が
ある。そうしないためには、EUやBRICs諸国とも米国以後の
体制を会話することである。

さあ、どうなりますか??

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自己資本規制強化策、12年までに導入を 米財務省が提案 
 【ワシントン=御調昌邦】米財務省は3日、金融機関に対する自
己資本規制の強化策を2012年末までに国際的に導入すべきだとの提
案をまとめた。金融危機の教訓を踏まえ、金融機関の貸し渋りや連
鎖破綻を防ぐのが狙い。4日にロンドンで開幕する20カ国・地域
(G20)財務相・中央銀行総裁会議の直前に方針を打ち出し、今後
の議論を主導したい考えだ。

 世界で活動する銀行は現在、最低でも8%の自己資本比率を確保
するよう規制されている。ただ昨秋以降の経済危機を受け、日米欧
の政策当局者を中心に見直しの機運が高まっていた。

 米国は今回の提案に具体策を盛り込まなかったが、日米欧が新規
制について10年末までに合意し、12年末までに導入すべきだとし、
時期を明確に打ち出した。金融持ち株会社なども対象にするよう指
摘。金融システムの安定を脅かしかねない金融機関に幅広く資本の
積み増しを求める必要があると強調した。 (18:52) 
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米財務長官、普通株で自己資本増強を
 【ロンドン=共同】ガイトナー米財務長官は、4日付の英紙フィ
ナンシャル・タイムズに寄稿し、金融危機の再発防止策の一環であ
る銀行の自己資本強化について「中核的な資本の大部分は普通株で
あるべきだ」との考えを示した。普通株による資本増強には、優先
株の割合が相対的に高い日本の銀行などが反対している。

 財務長官は、規制強化の方向性について「単純に全体の自己資本
を手厚くする必要がある」として、金融機関の自己資本を全体とし
て一律に底上げするよう主張。その上で、好況時に自己資本を積み
増し、景気後退時に損失処理に充てる仕組みの必要性を訴えた。
(13:30) 
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米シティ、クレジットカード事業の関連資産を13億ドル売却
 【ニューヨーク=蔭山道子】米金融大手のシティグループは31日
、クレジットカード事業に関連する一部資産の売却を発表した。経
営再建を目指して進めている非中核事業の圧縮策の一環。売却した
資産は13億ドル相当で、同社の非中核部門「シティホールディング
ス」の一部だった。資産の詳細や売却先、売却価格は明らかにして
いない。(07:40) 
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ベルシステム24売却、伊藤忠とKKRが共同応札の可能性=関係筋
8月19日16時3分配信 ロイター

 [香港/東京 19日 ロイター] 複数の関係筋によると、伊
藤忠<8001.T>はプライベートエクイティ大手コールバーグ・クラ
ビス・ロバーツ(KKR)[KKR.UL]と手を組み、米金融サービス大
手シティグループ<C.N>傘下のコールセンター会社ベルシステム
24(東京都豊島区)の入札に共同応札することを協議している。
 ベルシステム24については、KKRと欧州のプライベートエク
イティ、ペルミラ・アドバイザーズ[PERM.UL]が買収の有力候補とみ
られている。ベルシステム24の資産価値は15億ドル程度と予想
されている。
 KKRのコメントはこれまでのところ得られていない。伊藤忠も
コメントを拒否した。
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米当局にシティ救済の出口戦略なし─TARP監督委員長=新聞
 2009年 09月 4日 21:19 JST

[4日 ロイター] 米議会の不良資産救済プログラム(TARP
)監督委員会のエリザベス・ウォーレン委員長は、米紙ニューヨー
ク・ポストとのインタビューで、米当局はシティグループの救済に
おいて透明性と明確な出口戦略を欠いているとの見解を示した。

 同委員長は同紙に対し「(企業が)大きすぎて潰せないが、成功
するほど強くないという考えは、決して出口戦略ではない」と語っ
た。

 シティグループはTARPのもとで米政府から450億ドルの公
的資金の注入を受けた。
 米政府は現在、シティ株の34%を保有している。
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「金融規制改革、早急に」米財務長官が議会証言
2009/07/25
 【ワシントン=米山雄介】ガイトナー米財務長官は24日、下院金
融サービス委員会で金融規制改革について証言し「米金融システム
は消費者や投資家を保護しながら、十分な信用を安定的に提供する
という最も基本的な機能を果たせなかった」と述べ、包括的な規制
改革が早急に必要との認識を示した。ローンの借り手など金融機関
の利用者保護とともに、銀行以外の大手金融機関の破綻処理制度の
整備が重要と強調した。

 オバマ政権は6月、金融システム上、重要な大手金融機関の監督
を米連邦準備理事会(FRB)に一元化することや、金融消費者保
護庁の創設などを柱とする包括的な規制改革案を発表。財務省は法
案原案を段階的に議会に提出している。

 同日の下院委では、バーナンキFRB議長も証言。事前配布され
た証言原稿によると、議長は証券・保険会社などを含めた大手金融
機関の監督の一元化を「重要な第一歩」と指摘し、FRBとして政
府の改革案を支持する。(00:35) 
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米の資金供給策、縮小焦点 FOMC、新方針示さず
 米連邦準備理事会(FRB)が実施している住宅ローン担保債券
と政府機関債の購入など資金供給策の縮小の扱いが焦点になってき
た。2日公表された8月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議
事要旨では、これまでと同じく年末まで債券購入を続ける方針を示
すにとどまった。景気の浮揚力は弱く、金融市場の信用取引も政策
措置で下支えされている部分があり、FRBは難しい判断を迫られ
そうだ。
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米リッチモンド連銀総裁、資金供給策「注意深く見極め」
 【ワシントン=岩本昌子】米リッチモンド連銀のラッカー総裁は
27日、バージニア州ダンビルで米経済の見通しについて講演した。
米連邦準備理事会(FRB)が決めた最大1兆2500億ドルの住宅ロ
ーン担保証券の買い取りを通じた資金供給策について「米景気が今
年後半に回復し始めるのに伴って、本当に総額を買い取る必要があ
るのかどうかを注意深く見極めていくつもりだ」と語った。
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IMF出資割当額の7%を発展途上国に=BRICs財務相
2009年 09月 5日 08:45 JST
 [ロンドン 4日 ロイター] ブラジル、ロシア、インド、中
国(BRICs)の財務相は4日、国際通貨基金(IMF)加盟国
の出資割当額(クオータ)の7%を発展途上国に移すことを提案し
た。この割合は関係筋がロイターに対し明らかにしていた米国提案
の5%を上回っている。

 BRICsは、クオータに伴い決定されるIMFでの投票権につ
いて、経済規模に沿ったものにすべきと主張した。4カ国は近年、
輸出や準備高の拡大で近年経済力をつけている。

 欧米諸国は発展途上国の投票権拡大に一般的に賛成しているが、
どの国も自らの投票権縮小を望まないため、その実現方法について
はコンセンサスが存在しない。

 この問題は今週末の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行
総裁会議で協議される見込みで、月内にピッツバーグで開かれる
G20首脳会合(金融サミット)でも取り上げられる公算が大きい。

 ブラジルのマンテガ財務相は「ここからIMF改革が始まる」と
述べた。

 BRICs財務相会合後の声明では、IMFクオータの配分は公
平ではなく「正当性をひどく損なっている」と主張した。

 声明はどの国が投票権を縮小すべきかには言及していないが、マ
ンテガ財務相は「こんにち、欧州の多くの国は依然のような重要性
を失っており、過剰な代表権を保持している。クオータの一部を新
興国に移すべきだ」と述べた。
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     IMFのSDR増額をめぐる米中の思惑 
  匿名希望  09/07/19         るいネットから 
 
今回のG20では、2500億ドル分の新しいSDRの増額を行う
こととしたが、その動きを巡る米中G2の思惑について、

リンク より以下引用

中国の中央銀行にあたる、中国人民銀行の周小川総裁が、IMFに
対して、ドルに変わる「国際準備通貨」の創設を求めた。具体的に
は、IMFの特別引き出し権(SDR、スペシャル・ドローイング
・ライツ)の活用範囲を広げて国債準備通貨(インターナショナル
・リザーブ・カレンシー)とする案で、SDRの構成通貨とその組
み入れ比率の見直しを提案している。 具体的には、SDRは現在、
ドル、ユーロ、円、ポンドで構成される通貨バスケットであるが、
SDRの価値を決める通貨バスケットに、すべての主要経済国通貨
を組み入れるべきべきであるとした。

彼の提案は、具体的には、「GDP(国内総生産)の規模を組み入
れ比率に反映させればいい」という案であるようだ。

 SDRは1969年、固定為替相場制のブレトン・ウッズ体制に
おいて金や米ドルの供給不足を補完する、加盟各国のための国際的
な準備資産として創設された。このSDRの元になったのが、ブレ
トン・ウッズ会議で、イギリス代表のケインズ卿が主張した、新通
貨「バンコール」(bancor)である。しかし、同会議では、アメリ
カの代表であった、ハリー・デクスター・ホワイトの提唱する、「
実際には金の交換性を維持した米ドル」を機軸とする案が採用され
、これが1971年まで続くことになる。(その後は、アメリカの
「国力」以外には、何の裏付けもない「ドル紙幣体制」が続いてい
る)

 現在、SDRは、例えば、国際決済銀行(BIS)のような国際
機関の中で使われる通貨単位にとどまっている。国際決済銀行は、
世界の中央銀行の集まりである通称「バーゼル・クラブ」と言われ
るが、現在は使用する通貨単位(unit of account )を、かつての
「金フラン」から「SDR」に統一している。

 このSDRを新しい通貨単位として使用する動きは、アメリカの
一部の知識人の間でも始まっていて、ピーターソン国際経済研究所
のテッド・トルーマン研究員も、SDR利用論を提唱していた。ト
ルーマン研究員は、ガイトナー財務長官の国際金融アドバイザーで
もある。

 したがって、ガイトナーは、この中国の構想について、「ドル基
軸体制は変わらないと思うが、検討に値する一案だ」と述べたのだ。

 というのは、特別引き出し権(SDR)の増額は、アメリカにと
っても好都合だからだ。
 それは、SDRは、IMFの出資比率に応じて割り当てられた権
利だからである。IMFは、SDRについて、「IMF加盟国がもつ
自由に利用できる通貨に対する潜在的請求権といえます」(IMF
日本語版ウェブサイト)と説明している。

 現在のIMFへの出資比率では、アメリカがダントツの16.7
%の出資比率であり、日本(約6%)、イギリス(5%)、仏(同
)、中国(3.6%)、ロシア(2.7%)と続く。

 今回のG20では、2500億ドル分の新しいSDRの増額を行
うこととしたが、このうち、大半の1700億ドルが、先進国に割
り当てられることになる。この割り当てられたSDRを先進国が自
国の通貨で引き出して、途上国支援に回すことは可能だが、これは
IMFが事実上の世界中央銀行となって、各国に財政支援するのと
は違う。

 IMFは緊急融資をハンガリーなどの金融危機に瀕した東欧諸国
に対して行い、かつては、「構造改革」を条件に途上国にも融資を
行ってきた。これをクレジット・ファシリティという。

 しかし、SDRはまず出資比率に応じた権利なのである。だから
、BRICS諸国が、IMFの出資比率の見直しをアメリカに対し
て主張するのである。

 アメリカの作り上げたドル基軸体制は、従って、急激に変わると
いうことはない。
 だが、仮に戦争が起きたり、アメリカが国家として財政破綻する
ことあれば、話は別である。アメリカは、バーナンキ議長のもと、
相次いでマネーサプライを増やしている。しかし、これは銀行に貯
まっているだけで、産業への貸し出しに回っていない。大銀行は弱
小銀行を買収したり、公的資金返済のための増資の準備をするため
に公的資金での下支えを有利に活用した。自動車産業は救わないの
に、大銀行は救済する。ここにオバマ政権が、実際はウォール街の
傀儡(かいらい)政権であることが良く現れている。

(引用以上)

当面は出資比率の見直しを巡っての動きになるが、金融破綻の進行
によっては、新しい受け皿として急展開する可能性がある。

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