3387.ETC一律1000円、高速道路無料化政策などへのコメント



ETC一律1000円、高速道路無料化政策などへのコメント(追加3)
                 平成21年(2009)8月27日(木)
             「地球に謙虚に運動」代表 仲津 英治

 去る8月21日、高速道路無料化政策などへの更なるコメントと題して
(追加2)表を送らせて頂きましたところ、さらに一部重複する方、
及びメルマガの方を含め13名の方々から、ご意見などを戴きました。

別添高速道路無料化政策などへのコメント(追加3)表をお送りします。
これで総合計68名の方々からご意見等を頂いたことになります。有難
うございました。
 今回は無料化賛成のご意見も結構ありました。これらの中ではて?
と思う点に関し、私なりの考えを申し上げ、最後に気候ネットワーク
が公表した高速道路政策に関する検証ペーパー(平成21年(2009)8月21日)
の中味をお伝えして、今回の一応の締めくくりとさせて頂きます。

1.	石油暫定税率を廃止し、高速道路を無料化しても自動車交
通量はあまり増えないし、炭酸ガス排出量はそう増加しない、
との見解
 燃料費、移動費用が下がれば、人々は車などで出かけたくなり、遠出をする
ようになります。2008年春の石油暫定税率ゼロになったときもそうでしたし、
この春からの高速ETC週末一律1000円政策の後もそうです。ただし需要と言
うのはどこかで飽和するもので、無限に伸び続けるものではないことも事実
です。

 しかし、この40年間の長いレンジで交通機関のシェアーを見て参りますと、
劇的な変化が起こってきたことは紛れも無い事実です。自動車化の進行です。
 私が国鉄入社時(昭和43年=1968)、旅客輸送分野で人■ベースにおいて
鉄道のシェアーは50%を越えており、道路は30%前後でした。しかし今や鉄道
のシェアーは27%に過ぎず、道路シェアーは60%を越えています。貨物輸送
分野ではもっと劇的でトンキロベースで30%もあった鉄道は今や4%に過ぎず、
道路は30%のシェアーが今や50%を越えています。残りの太宗を占めるのが
内海航運で40%です。
 年間10−15兆円の公費が、財政投融資、有料道路収入も含め、道路投資に
投入され、鉄道は殆ど自力で年間1兆円程度の設備投資しかできて来なかった
という積み重ねがこういう結果に繋がっているとも言えるのです。

 運輸分野が占める炭酸ガス排出量は、国全体の19−20%程度ですが、増え
続けています。そのうち実に97%が、自動車、船舶、航空機によるものです。
残り3%が鉄道由来です。言葉を変えれば内燃機関系交通機関から97%もの
炭酸ガスが排出されていると言えましょう。そしてその中でも道路交通の炭
酸ガス排出量が太宗を占め、増え続けているのです。鉄道にもデイーゼル車
輌による排気ガスも少しですがあります。そのデイーゼル車輌も燃料経済効
率は高いのです。

 この10月24日(土)、私の所属するNPO法人 エコネット近畿では、淀川・
琵琶湖水系を巡る琵琶湖・淀川環境号を運転する計画を進めています。デイ
ーゼル動車=気動車4両による当日の燃料消費は400■と見積もられてお
り、その燃料費は4万円強です。しかし、何人のお客様に乗って頂ければ、
この燃料費は支払えるでしょう。答えは僅か6人です。お一人7千円の料金
*6人=42,000円の計算になります。

このように燃料費が安くて済む省エネ・省資源交通機関の鉄軌道を大事に
して来ず、今後さらにその経営基盤を揺るがすような政策を取ることは正
しい選択と言えましょうか。但し自らの線路・駅などを建設・維持しなけ
ればなない鉄道は、一定以上の需要がないと経営的に成り立ちません。そ
うしたところでは道路交通がメインとならざるを得ないのです。
 
2.	電気自動車の課題
 排気ガスとして炭酸ガスをあまり出さない電気自動車=EVに期待する声が
今回の中に多くありました。私も今持っている軽乗用車を買い換えるときは、
燃費効率の格段に良い、ハイブリッドカーか、思い切って電気自動車にしよ
うかなとも考えています。
 しかし、自動車の根本的問題は、炭酸ガスを含む排気ガスだけのものだけ
ではありません。自動車の根本的課題、それは多大な面積と空間を必要とす
るということです。

 都市の中で自動車はどれほどの面積を占めているか。極端な例はアメリカ
のロスアンジェルスです。関東平野ほどの巨大な土地に人口僅か370万人し
か住んでいません。道路、車庫、駐車場、自動車修理場など自動車関係に供
されている面積が50%以上の街です。

 オイルピーク=石油生産頭打ちを迎えたと言われる今、エネルギーの根幹
である石油の価格は中長期に見て上がることはあっても下がることは無いで
しょう。自動車依存社会はエネルギー脆弱社会に陥りましょう。エネルギー
の高騰を我々は覚悟する必要があります。一方でこれから高齢者が増加し、
それで安定する社会に移行しつつあります。移動手段の限られてくる高齢者
が安心して暮らせる街は、歩くか、自転車であるいは少しといい距離なら路
面電車などで移動すれば生活できる街でありましょう。コンパクトシテイー
の概念です。これから都市の都心部は、自動車無しで生活できる街に再改造
する必要性が高いのです。これを妨げるもの=自動車です。人間が住む以上
に面積と空間を必要とする自動車を都心から排除する思想が必要です。

 もう一つの大きな課題、電池に使われるリチウムという希少金属です。
 当然有限です。
 ハイブリッドカー、電気自動車にリチウムイオン電池が盛んに使われるよ
うになり、石油以上に厳しい制約資源になる可能性が大と言われています。
そして産地では鉱害問題が起きています。下のHPには、リチウムの産地であ
るチリのアテカマ砂漠の鉱害例を取り上げています。
#

 この情報提供者のもったいない学会会長石井吉徳氏によれば、電池は一次
エネルギー源ではないこともお忘れ無くとのことです。単位エネルギーを取
得するのに必要なエネルギー投入量が大きいほどエネルギーの質は落ちます。
EPR=Energy Profit Ratioの概念です。石油はEPRの高い質の良いエネルギ
ー源なのですが、かつて1単位の投入エネルギーで100単位の石油が採取で
きたのです。まさに噴出していたからです。今は高品質の油田でも圧力をか
けて石油をくみ上げています。EPRは40程度。オイルサンドともなれば、EPR
は1以下になるとのことです。つまりエネルギーを得るためのエネルギーロス
が大きすぎて採算が取れなくなるのです。

 石油はそれ自身が燃料になる一次エネルギーです。リチウム電池は加工し
て得られるエネルギー源で二次エネルギーです。もしそれを得るために投入
しているエネルギーの量が大き過ぎると、経済収支、エネルギー収支も合わ
なくなります。エネルギー価格の高騰を覚悟しなければならない時代が来つ
つある今、自動車、道路交通優遇政策には大いなる疑問があります。

3.	高速道路政策に関する検証ペーパー
 去る8月5日、私の属する気候ネットワークでは「高速道路無料化・自動
車関連諸税の暫定税率廃止に反対するNGO共同声明」を発表致しました。
これについて交通工学的手法から定量的にその影響を推計し各方面の議論に
供するものとして「高速道路政策に関する検証ペーパー」を公表致しました
のでお知らせ致します。
なお、検証ペーパーは下記のリンク先からPDFファイルをダウンロードして
ご覧下さい。

(あるいは直接)

15ページに渡る検証論文で、環境自治体会議環境政策研究所主任研究員上岡
 直見氏になるもので、気候ネットワークが委託しました。

6ページの図3「高速道路無料化・自動車関連諸税の暫定税率廃止に伴う、
国内鉄道ネットワークの崩壊の可能性」に着目してください。私も驚きま
したが、国内の鉄道は新幹線と首都圏、近畿圏、中京圏の大都市ネットワ
ークの他は全て衰退するとの想定が為されています。北海道、四国、九州
の在来鉄道(私鉄・軌道を含む)は全壊近くになる可能性があるようです。
ハード面で冷遇されてきた鉄軌道に対し、今回の政策はソフト面で追い討
ちを掛けるものでしょう。

地球温暖化ガスがもたらす気候変動の影響もさることながら、オイルピー
クの後来るべきエネルギー危機が予測されるとき、省エネ・省資源交通機
関であり、国民のシビルミニマムにもなり得る鉄軌道系、路線バス交通機
関のインフラを葬り去る可能性のある政策を撤回、もしくは修正されるこ
とを私は望みます。さもなくばこれら交通機関への影響に対応する必要性
が生じるのは必然ですが、民主党のマニフェストにはそれが見当たりませ
ん。
                             以上

仲津英治
「地球に謙虚に」運動代表
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民主党の公約は、どうも内容に偽りありのようですね。
民主・馬淵議員 「渋滞しそうな高速道路区間は無料化しないよ。」
 
ソースは、2009/09/02(水)の報道ステーションより。 

以下まとめ 
--------- 
 一色清:「高速道路を無料化したら渋滞が」 
   馬淵:「渋滞しそうな所は国土交通省にシミュレーションさせ
      て高速料金を取ります」 
   古館:「へえ!国民のみなさんは首都高速と阪神高速以外は全
      部無料だと思ってますよ!」 
   馬淵:「渋滞しそうなら有料です」 
   古館:「渋滞しそうな所なら大体分かりますよね。東名高速と
      か有料ですか」 
   馬淵:「どこの路線が渋滞しそうかは申し上げられません」 
   古館:「今でも渋滞してるんだから分かるじゃないですか!」 
   馬淵:「どこが無料にならないと路線名を上げると、地元の方
      の感情がありますから選挙前は言いにくかったんです」 
--------- 

参考・民主党サイトより 
 ■民主党 高速道路政策大綱〜高速道路の無料化〜 
  2.施策概要 
  > 実際の無料化にあたっては、首都高速・阪神高速など 
  > 渋滞が想定される路線・区間など 
  > については交通需要管理(TDM)の観点から 
  > 社会実験(5割引、7割引等)を実施して影響を確認しつつ、
    実施する。 
http://www.dpj.or.jp/news/?num=15550 

民主・馬淵議員 「渋滞しそうな高速道路区間は無料化しないよ。」 
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/news/1251903251/


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