3377.日本の将来戦略として



日本の経済政策を語ると、ビジネス等に影響するためにあまり評論
しないようにしていたが、衆議院選挙中でもあり、また各種世論で
も民主党が断然優位という状況になっているので、自民党に遠慮す
る必要が無くなっている。

自民党の問題点は、官僚に政策立案を丸投げしているが、官僚は省
庁の縦割りであり、日本全体戦略として必要な統一的なビジョンの
構築ができないでいた。

小泉内閣時代は、その全体的な日本のビジョンを語った時代である
。良いか悪いか以前に、このように日本全体の進むべき道を統一的
に示せた内閣は最近では小泉内閣しかない。しかし、その示した方
向は、新自由主義経済であり、格差拡大になってしまった。

そして、ここに問題があったが、小泉内閣以後の首相達は、官邸が
日本全体のビジョンを示すこともなく、日本戦略を主導することも
なくなった。小泉内閣を批判して、単純に小泉以前の自民党に戻し
てしまったのだ。自民党が長期低迷していたのを見て、小泉さんが
自民党を建て直しのために官邸主導にしてビジョンを示したのに、
その小泉さんを批判するだけで、新しいビジョンを示すこともでき
ずに、以後の自民党は国民からの支持を失った。このために、今回
の選挙の結果になるのだと見ている。

このコラムでは、そのことを何度も注意したが、時の首相は誰も見
向きもしなかった。その報いが今、来ている。
                    津田より

0.はじめに
 日本は基本的に戦後、吉田首相が示した経済中心で安保は米国に
丸投げして、米国の属国として振る舞い、覇権競争には参加しない
という国内経済発展の国家戦略を戦後60年間も推進してきた。

しかし、その国家戦略の見直しの時代になっている。日本が第2位
の経済大国になり、欧米と伍している現状では世界の安定に関与す
る必要が出てきたからである。

そして、このコラムの初期には、その次の日本の国家戦略として拡
大日本という戦略が必要であると述べてきた。日本は国内経済発展
から世界の経済発展に寄与するべきであると述べた。この戦略が今、
もっとも必要な時期に来ていると見ている。

日本は内向きではいけない。米国の覇権国家としての役割もそろそ
ろ限界に来ていることは、金融危機以後、徐々に明確になっている。
その米国という世界的な警察国家がいなくなると、世界で商売をし
ている日本企業の安全を確保する必要があり、日本自体が世界の安
定に関与する必要がでているのだ。

日本では公共事業が必要なくなっているが、アジアの発展にはイン
フラの整備は必要であり、そのインフラを作ることが日本企業の工
場進出でも必要であり、かつ日本企業の商品市場としても経済発展
した国々が必要なのである。

アジア各国が経済発展すると、石油などの資源が枯渇する危険があ
るし、石油やレアメタルなどの資源は有限資源であるので、リサイ
クルして使う必要があるが、そのリサイクルのシステムも江戸時代
に経験している。そのため、そのカンを取り戻せば日本が最先端に
なる。

このように日本の最先端技術を利用して、世界に出て行く分には日
本が嫌われることはないはずである。工場を世界に作ると国内が空
洞化すると心配になると思うが、アセンブリ工程と汎用部品などの
どこでもできることは、その国で行い日本国内では最先端部品を作
り、その部品は絶対に海外に出さないことである。

1.拡大日本
もう1つが、日本人が日本企業とともに世界に出て市場や工場で働
くことである。そして、世界に散らばる日本人のための初等教育機
関を世界に作り、日本国籍の人達に教育、医療、年金などの国家サ
ービスを提供することである。これが拡大日本である。海外分も税
金は企業から頂くことにするか、受益者負担でもいいはず。

国家というのは、国家サービスを提供する機関である。この機関は
国民というお客のニーズでサービスの内容を変更していくことが勤
めである。拡大日本とは、国家サービスの拡大でもある。

国家は、警察、国防、外交などの国家維持機能と国民へのサービス
である教育、医療、年金、福祉などがあるが、日本国籍を持つ人た
ちの福祉は日本で行い、労働年齢層では世界で活躍できるような国
民サービスを提供する必要がある。

日本語という基準を作り、その能力で日本帰化や日本国籍取得をで
きるようにすると、日本語が必要な人たちに学習意欲が沸くはず。
日本人2世でも日本語ができない人たちは、日本人ではないので、
無条件な国籍の獲得は反対である。初等中等教育の学習機会を与え
る代わりに、その学習をしない人たちは日本国籍を取得できないこ
とにするべきである。

反対に、日本に居て、日本語が自由に使える人たちは日本国籍を与
えるべきだし、そうしている。しかし、日本語が自由にできるのに
日本国籍を取らない人たちは、事情があるので仕方がないが、その
ような人たちに選挙権を付与するのは疑問である。そのような人た
ちには日本国籍取得を勧めるべきではないか??

2.日本の世界平和への関与
 平和を確立するためには、貧困からの脱出、教育の普及、武器の
排除の3つが必要である。貧困からの脱出には、農業の確立が最初
であり、文字を教える教育ができると工場の進出でさらに、貧困か
ら脱出ができ、中流階層の登場となる。そうすると、アジアでは民
主化ができて、国内が安定した。

また、紛争地域では治安の確立がある程度できたら、武器の回収を
行う必要がある。いろいろな紛争からこのノウハウが確立されてき
ている。

この紛争地域での処理解決能力をPKOやPKFで日本の自衛隊も
積んでいるし、ある程度は経済援助はODAであるが、本当の経済
発展をするのは企業が進出する必要がある。このバランスが重要で
ある。

米国だけでは世界の警察力を充当できない。このため、国連や有志
連合などが中心になって、米国の代替の機能を作るしかない。しか
し、同じ価値観が重要になるが自由な民主主義国しか共通の価値体
系を持たない。中国はその振る舞いを見ると、独裁国の圧政者の立
場を支持することが多いことで、世界の良識的な立場からは遠いよ
うに感じる。このため、現在の中国との共同歩調は取りにくいよう
に感じる。

また、中国国内の少数民族問題を抱えているために、共同的な対応
が不可能である。安全保障問題は欧米日が今後も中心になって担う
必要がありそうだ。

3.経済問題
 日本の経済問題は、戦後一貫して守られた組織の機能が限界に突
き当たっていることである。この組織は既得権益を守ることが優先
で、世界経済の変化に対応できずに、またそのために魅力も無くて
、かつ経済合理性もなく、若者が寄り付かないために、平均就業年
齢が65歳となっている。この組織は農協を中心とした農家である
が、この限界を冷静に見て対応することで、雇用が生まれることに
なると見る。

資源も日本の限界点になる分野であるが、都市からの産業廃棄物な
どからリサイクルで、レアメタルなどの有効資源が生成される研究
が進んでいる。ペットボトルなどでは、研究開発の結果、いろいろ
な繊維に再生できる技術が日本で完成している。不純物がほとんど
ないことで、繊維の質も高い。

このように日本では江戸時代の知恵を復活させることで、経済問題
のネックである資源問題がクリアできるはずである。

企業は世界で商売して、その利益を日本に還元して日本社会は、そ
の利益と部品産業、農業、リサイクル、観光・銀行などのサービス
分野で生きることである。しかし、米国のような金融大国化は避け
るべきで、製造大国として日本はあるべきだ。

4.研究について
 日本が製造大国である根源は研究開発である。一流の研究を研究
現場で見ると、面白いことに気が付くことになる。それを植物工場
でみたい。

日本では制御された植物工場の実用化も視野に入り、今後、企業経
営ができる産業になる可能性が高まってきている。その研究に日本
は20年程度の時間を掛けて、やっと物になり始めている。他国で
はこのような3世代の研究者が、こつこつと研究して膨大なデータ
の積み重ねを行うこと自体が不可能であるようだ。それが日本では
できる。

このように超一流な研究とは長い時間が係り、膨大なデータの集積
で可能になる分野の方が多い。欧米が得意とする論理的な能力では
無理な分野の方が多く、論理的な考察で問題が解決できるという研
究分野はすでになくなっているように感じる。

未知の分野の多くが、論理的な思考だけではダメであり、多くの観
察を重ねて、自然現象が理解でき、そのデータを制御などに組み入
れて製品化することになる。そのような分野では忍耐力と、世代を
超えた連携プレーが必要で、そのような研究分野は個人より組織の
方が強い日本の企業や大学の研究者しかできないような感じがする。

5.最後に
 民主党政権では内閣府に国家戦略局を作り、その所で日本全体の
戦略を練るという。期待をしたいが内需拡大など閉鎖的な戦略にな
ると、日本を沈没させる可能性もある。どうか、この国際戦略コラ
ムも参考として、国家戦略を練ってほしいものである。

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