3353.日本経済の現状と今後



日本はサブプライム問題に巻き込まれていないが、経済力が衰えて
いる。このまま政治や国民の的確な関与がないと経済の復活はでき
ない。民主党、自民党の政権交代を掛けた衆議院選挙もあり、少し
、日本経済を考えて見ましょう。     津田より

0.はじめに
 日本経済の現状は5月に失業率5.2%になり、雇用調整補助金がな
かったら、250万人もの失業者が増え、日本の労働人口は5000万人で
あるので10%程度の失業率になる。米国失業率が9.5%であり、大体
同じ数値になる。

また、米国のGDPの落ち込みは6%程度であるのに日本GDPの
落ち込みは16%にもなる。それほど、日本の経済状況も悪いので
ある。少し戻しているが、IMFによると日本の潜在成長力は1%
しかないといわれている。

しかし、雇用調整補助金、信用保証協会、日銀の社債、CPの買取な
どで、企業倒産は思ったほど多くない。このため、景気が悪いのに
危機感が日本にはない。政治もどうしたら、経済的な苦境を乗り越
えるかという議論をしない。

今回の日本の危機を作ったのは、輸出が突然20%以上も落ち込ん
だことであるが、製造業の在庫が20%以上も過剰に積み上がって
、工場の稼動を落とし、非正規社員を全員解雇したことで非正社員
問題も起こった。

企業業績も大きく落ち込み、金融を除く1部上場企業の経常利益は
2008年3月に比べて、2009年3月期は1/3以下になると
予想されている。この原因は、外需の大きな落ち込みによる。

外需、特にトヨタを中心とした自動車の輸出とAV機器の輸出で日本
経済を支えてきたが、その2つの産業に往年の競争力がなくなって
いる。パワートランジスタを使った機器を作っているが、安い部品
は全て、日本製ではなく、値段も数年前の数分の1になっている。
半導体も同様であり、エピルーダ・メモリが苦境にある。

日本AV企業と部品企業は台湾・韓国企業に完全に負け始めているよ
うである。徐々にAV製品も電子回路部品も競争力がなくなっている
し、自動車もインドのタタ自動車は20万円の自動車を作り、韓国
の現代自動車も追い上げてきている。現代は米国での評価も上がっ
てきて、新興国では現代のシェアの方が高い。ここでも新興国での
競争力が無くなる可能性が出ている。

日銀の資金供給や財政出動を止める出口戦略を構築しないと、いけ
ないが、その議論には、コンドラチェフの波で技術的な変革期であ
るという認識が必要である。韓国、台湾、中国など新興国が今まで
の日本の製品をコピーした商品を低価格で作れるので、次の新分野
・新技術を研究して日本は、そちらに移るしかない。

次の産業の議論を1980年代の日本は国民とともに行っていたが
、現在は全然、議論もしないし、新興国企業の実力が上がってきて
いる現実をメディアは報道しない。このため、国民も気が付いてい
ない。そこが大きな問題である。韓国や中国の欠点をあげつらうだ
けの評論家が注目を浴びて、その実力を正確に見ずに、日本をただ
良く見ているのみで国民をメクラにする評論が受けている。

韓国を批判する評論家は、韓国ウォン安になると喜んでいるが、欧
米や世界市場で、韓国のAVや自動車企業の競争力が日本企業を圧
倒することを忘れている。韓国や中国の悪いところだけしか見ない
で、物事を公平な視点で見ようとしない評論家が人気になることで
日本を衰退させないか心配になる。

2.衰退分野、隆盛分野
次の産業議論がなく、AV企業はどんどん衰退している。その原因
を調べることである。そうすると、電子部品も台湾企業、韓国企業
、中国企業が追いついてきている。日本の大企業は、失敗を恐れて
新しいアイデアや特許を使わないために、街中の研究者や大学の研
究者が、大挙、韓国企業や台湾企業などにアイデアを持ち込んでい
る。そこで製品化され始めて、日本人のアイデアを用いた新製品も
中国や台湾、韓国企業から出てきている。このため、欧米では日本
企業より多くの新アイデアを持った新製品が出て、AV製品は韓国
サムソンにとって変わられている。

たとえば、日本人のアイデアで開発されている商品として、私が知
っているだけで、高寿命の新しい安価な鉛蓄電池や架線なしのトロ
リーバス、回生技術を使った電気自動車などこれから大切な最先端
の新技術が全部、韓国、台湾、中国企業で先に商品化されているの
だ。独ボッシュ社のディーゼル排気ガス浄化装置も日本人の研究成
果をそのまま利用した製品である。この研究は、10年以上の時間
を掛けて出した多くの研究データとともにボッシュ社に渡っている。
研究者を追いかけていくと、そのような現実に突き当たる。

環境技術でも現状の体系では多くの問題点があるが、大企業は問題
点を隠して、他者に知らせないように既得権益を守るために隠蔽す
る。そこに米オバマ政権からグリーン・ニューディール政策を言わ
れた途端に、日本では米国のような問題がないとの大合唱になる。
日本の大きな問題点を国民には知らせないようにしている。

日本の大企業は既存権益を維持することに汲々として、新技術に後
ろ向きになっている。日本の旧軍の体質が大企業を覆っているよう
に感じる。多くの第一線の研究者と話すと、同じような不満を述べ
ているので、どうも多くの大企業が同じ状況になっているように感
じる。

そのような問題を、韓国や中国を強く批判する評論家は見ようとし
ないで、日本大丈夫論を声高々に述べている。研究者達は大企業に
睨まれたくないために、声を出さない。電気系、自動車系の主流と
言われる研究分野で閉塞感が出ているようだ。

これに引き換え、既得権益がない材料・医療分野は、どんどん研究
成果が製品化されている分野である。世界的な競争分野でもある。
ここでは日本企業は強い。特に薬品分野、新電池分野、炭素系材料
分野などである。農業では全制御型植物工場も日本が最先端を走っ
ている分野である。世界の大企業に日本の企業が追いつき追い越せ
と必死である。

しかし、新分野でも自然エネルギー分野は大きな問題がある。世界
は自然エネルギーを中心とした技術革新になるはずである。だが、
国内には大きな既得権益を維持しようとする大企業をいるので、日
本の自然エネルギー機器の工作機械メーカはその工作機械と製造技
術を世界に売り始めて、本来は日本企業に入る売り上げを、ミスミ
ス海外企業に渡している。日本市場が大きく阻害されていることに
よる。政府が太陽光発電を推進しようとしても、大きな問題を解決
しないと、国民を騙すことになる。

3.日本の政策
 製造業の利益率の方が、小売業やサービス業の利益率より一般的
には高い。金融業でも投資銀行は利益率は高いが、損失も大きい。
このため、製造業を死守しないで、金融業やサービス業にシフトす
ると、今の米国のような衰退を迎えることになる。

 しかし、日本は1980年代にアセンブリ部分を海外に出し、か
つ部品産業も海外での製造にシフトした。このため、ノウハウや製
造技術が海外移転されている。特にアセンブリ工程が日本で無くな
ったことで、工場労働者が必要なくなったか、アジア地域との競争
で、賃金を低くする必要があり、非正規労働者という仕組みが必要
になった。韓国が急速に日本の技術に追いつき、勤勉さも日本人と
似て、現場レベルの優秀さも似ていることで追いついてきている。

このため、日本は新しい技術を今主流といわれている分野でも蓄積
する必要があるのに、大企業が大きなネックになっている。中国、
韓国企業は新技術やアイデアに柔軟である。このような状態を放置
すると、近未来は韓国・中国企業に負ける可能性もある。主流分野
でも革新的な研究に政府が研究費を出すべきであると思う。日本国
としての保険にもなる。

そうしないと、電気自動車分野でもゴーンさんや三菱がいたから良
かったが、このような異端児がいない電気分野では、世界の潮流に
日本は乗り遅れることになる。特に自然エネルギー分野は、太陽光
発電や風力発電、マイクロ水力発電など、現時点では日本が優位で
あるが、大企業の権益維持に固守すると、日本企業はどんどん衰退
することになると見る。大きな損失に繋がることになる。

4.雇用問題
 雇用問題もこの製造業がシッカリしないと、サービス業の低賃金
労働だけになり、日本人全体が貧乏になり、日本のGDPの60%
が消費者の買い物で生み出されているので、消費者が貧乏になると
日本のGDPも減少することになる。このことでIMFは日本の潜
在成長力を1%としたのだ。よって、中流階層を維持するためにも
、売上高の大きな製造業は重要なのである。

製造業は雇用条件に制約をつけると、アセンブリ部門が海外に移動
するので、日本の工場労働者はいなくなる。研究者だけが日本に残
ることはできないので、海外に企業の主要機関が逃げることになる
。このため、日本企業の衰退を加速することになる。製造業の現実
を見ると、日本の労働者が世界各地の労働者と競争していることを
忘れてはいけない。日本の現状しか見ていない非常に心配な政策を
民主党は掲げている。

5.最後に
 民主党でも自民党でも、国民の生活を平等にして豊かにすること
が重要である。国民の格差が大きくしてはいけない。この原則が、
どうも新自由主義的な政策を竹中さんが、日本に導入したことで狂
ったように思う。

新自由主義は大きな間違いであったことがオバマ政権で明らかにさ
れて、その新自由主義を米国では修正しているが、日本はどうする
のかの議論がなかった。麻生自民党は国民的な議論を避けてきた。
このため、国民が大きな不満を抱いたように感じる。

竹中さんの金融政策は非常に良かったが、新自由主義は失敗である。
小泉さんの官邸中心政策運営は民主党に引き継がれることになる。

さあ、民主党政権はどうなるか??

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