3345.知こそ力なり



知こそ力なり         虚風老 
   
 人は、<現時点>において、すべてのことが解かって、物事を判断
できるわけではない。
万の事象は変化しながら、現時点に殺到してくる。
それをどのようにするかの選択は待った無しである場合が多い。
検討に検討を重ねたとしても、すべてを見通す眼を持つことなど、
不可能だし、もし誰かがそこに起こる副作用を口を酸っぱくして注
意したとしても、それを軽視してしまう場合も実に多いもんじゃ。

その後事態が発展して、問題が拡大し、それ見たことかとか、何故
あんな間違いをしたのかと言っても、後知恵だから解かるというこ
ともある。

だから<現時点>での判断は常に完全ではないと思っておくべきな
のじゃ。
必要なのは、これは、思ったより副作用が大きいと判った段階で、
その現時点で副作用を含めた上での「新たになった状況」を織り込
みながら、もっとも良いと思われる方へ修正し続けることなのじゃ
ろう。

もっとも悪いのは、間違いが明らかなのに初期の計画に「固執」す
ることじゃし、ドグマによって、(現実)状況が見えないというの
も困りモノじゃ。
ドグマを優先して、どんどん現実と乖離していきながら、「現実が
間違っている」と言っても、問題を解決する方法はみつからない。

状況を正しく判断することこそが、常にリーダーには求められるこ
となんじゃ。
その為にサポートするスタッフは、正しい情報を手に入れなければ
ならないし、それを包み隠さずリーダーに提出しなければならない。
自分の利害の為に、情報を歪めるなどもっとも恥ずべきことじゃろう。
リ−ダーが判断を間違えれば、隊列は、沼地に入り込むかもしれな
いし、砂漠を水無しで渡ろうとするかもしれない。

判断には常に不可知の「賭け」の部分が存在しているから、常に修
正すべき場所を探っておかなければならない。場合によっては退却
(損切り)も戦略の一つであるし、新たな活路へ転進もありうる。
そういう意味があるから、「君子は豹変す」といわれるんじゃの。
だから、情報が死生を決定づけるわけじゃ。

この、とりあえず判断して進むことと、そこに起こることの情報を
フィードバックしていく機能こそが、動物が動物であるゆえんじゃ
といってもええ。(獲物が逃げるのを追うからの、状況目的地が変
わる。それに対応する)

情報を取り扱う部門の肥大と劣化は(まあ、巨大官僚組織などでは
おうおうにして起こるが)この機能の不全をなす。
中間までにいろんな思惑が絡んでくるからの。

ITなどで、情報の流量や、今まではアクセスしにくかった情報にも
触れることができるようになった。これからは、分野ごとの情報の
取り扱い(リテラシー)・分析−総合の機能をより充実していかね
ばならないじゃろう。どちらも情報にたしして、分野の体系的な知
識を有していないと難しいじゃろう。単に情報を読む人ではなく学
問的にその意味が理解できるくらいの知すら必要じゃろう。

そして尚且つ、それらの分野を横断的にみて統合する人々が必要に
なる。

世の中には、博士号を持っていてもまともな職にありつけない人も
いる(非常勤講師ぐらいじゃ知性の宝の持ち腐れじゃろう)
情報部門(解析部門−統合部門)は、企業にしろ国にしろ強化すべ
きじゃろうな。

<知こそ力>なり。そういう時代じゃ。

            虚風老
 


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