3336.米経済の苦悩と日本企業は



米国の底入れと判断できるような景気状況ではない。それを米経済
学者が景気の底入れと大宣伝していたが、6月の雇用統計は46万
人の雇用減となって、5月の32万人から大幅に上回り、底入れが
まだであると印象つけられた。

これはGM再建のために大幅なリストラを行ったことによることが
大きい。しかし、GMのリストラの本番はこれからであり、また
カリフォリニア州など州財政の厳しい州が本格的な雇用調整を始め
るので、今後も雇用情勢は厳しいと見るべきである。というように
今後の米国経済を見通していく必要がある。それは日本にも波及す
る。
                    津田より

0.はじめに
 日本の経済学者やエコノミストたちも日本の景気を底入れしたと
見ているが、日本も同様で、景気回復は欧米などがまだ調整局面で
あるために、当分は景気底入れというのは無理がある。中国の景気
拡大を日本企業は頼りにしているが、公共事業の回復までで、それ
以上の消費に火がつくのは無理であると、人民銀行周総裁はいう。

日本の景気は、外需の回復具合で決まる。少子高齢化で人口減少や
老人層の消費は少ないことで、内需産業の拡大は期待できない。外
需でも、今までは欧米市場に依存していた。しかし、この欧米の景
気回復は後に述べるが期待できない。それでは中国などの新興諸国
かというと、日本企業は低価格の商品を持っていないことで、現時
点では期待ができない。ということは、日本の経済情勢も厳しいと
見るべきである。

このため、日本でも正社員の雇用問題が再度浮かび上がっている。
去年12月までは、非正規社員の派遣切りであったが、自動車など
製造現場は、今年の4月からエコ車の減税などが始まり持ち直して
いる。しかし、まだ2007年ピーク時の4割程度の稼働率である
ので、正社員だけで十分なのだ。

問題は設備増強が必要ないことで、その設備分野の産業で正社員に
も余剰感がある。そして、外資や大企業ほど高給を支払っているの
で、雇用調整補助金を申請しても、その金では赤字になる。このた
め、今後、大企業を中心に正社員の雇用問題が出てくることになる。
非正規雇用者は、派遣切りになっても派遣元企業が雇用調整補助金
を申請すれば、60%程度の給与が渡せる。

今後はこの雇用調整補助金制度で救えない高給を取る正社員の首切
りが始まることになる。この趨勢は欧米景気動向や中国、インドの
景気動向で決まることになる。このため、欧米中印の動向は重要な
のである。

この動向を見ていこう。

1.米国経済の動向
 カリフォルニア州の問題は、土曜日のコラムで扱ったので詳しく
はそちらを見てほしいが、州政府の財政は危機的な状況になってい
る。これはカリフォリニア州だけではなくて、全米で46州も財政
赤字になっている。ニューヨーク州はメトロの料金を2ドルから2
ドル25セントに2割も値上げしている。

米GDPの70%が消費であり、この消費は安全とか医療とかを公
的機関が行っていることで消費が成り立つから、州政府の財政が破
綻して、安全や健康問題に影響が出てくると、それは耐久消費財の
消費には回らなくなる。ここでも今までの米国の旺盛な消費を期待
できなくなり、消費は減退することが明確になっている。

消費が減退すると、まず、耐久消費財や高級品の購入から減らすこ
とになる。ということは、自動車、住宅などの耐久消費財や高級品
の市場規模は大きく減っていくことになる。高級デパートの売上げ
は大きく落ち込み、住宅価格の低下はまだ止まらない。また耐久消
費財であるGMやクライスラーの再建はできるのであろうか?

自動車部品会社も清算されていくことになる。破綻後に経営再建を
目指す企業に対する運転資金融資の手当てが難しくなったと企業再
建の関係者が言っているが、それはそうだ。銀行はこれ以上の不良
債権を増やせないので、経営不振企業に対する融資に慎重になって
いるのだ。

そして、銀行の倒産も依然、高水準にある。米で7地域金融機関が
破綻して、09年で52社になり、年換算すると1992年(179社)以来
、17年ぶりの高水準で推移しているという。

ダウ平均株価も大幅に値下げして7月3日に223ドル安になり、8280
ドル74セントと5月22日以来の安値で終えた。

このため、株式市場や原油など商品市場に向かっていた投資資金の
行く場がなくなり、再度、米国債などに戻っている。よって、長期
金利が低下基調にまた戻ってきた。バーナンキFRB議長の思惑通
りである。銀行の増資が完了したので、再度景気後退を印象付けて
米国債に戻して、慎重な投資家に大量の米国債を買わせるシナリオ
であったが、成功している。

米国は、年金基金の農産物投資への規制も検討していて、徐々に商
品価格の乱高下をさせない、実の需給で価格を決める方向にするよ
うだ。これは世界的な要望であり、米政権はその要望を聞くという
ことである。

しかし、米国債については、中国やロシアは徐々に売りのポジショ
ンに出ているので、米国内の年金基金が国債の金利上昇するなら買
うが、ドル下落になることも考えられるので、米国債を大量に持つ
かどうかはさだかではない。

2.EU経済の動向
一方、EU諸国はドルでの外貨準備を意図的にしなかったことで、
貿易などでの決済で資金繰りに心配がある。このため、ドル相場も
現時点では安定している。急なドル下落も起きていない。

というより、EUの失業率は全体で9.5%であり、スペインでは
17%にもなり、EUの経済はまだ下降している。東欧の国家破綻
も心配され、財政拡大に反対のドイツでもオペルへの産業支援やエ
コカーへの補助金など財政支出を行っている。

もう1つ、米国より銀行の透明性が低いEUの銀行が持つ証券化商
品も損失処理もまだ、道半ばであり、今後も損失が出てくる。とい
うように景気後退局面のままである。英国のシティは、海外の銀行
が主流であるが、その海外の銀行のリストラが起こり、大幅な人員
削減を受け、また産業の空洞化も大きいので、英国の衰退が明らか
になっている。EUに期待はできない。

3.中国の動向
中国人民銀行の周小川総裁も中国経済を外需主導から内需主導に転
換する構造改革について、個人消費の拡大が最良の選択だが、口で
言うほど易しくないと述べている。中国の問題は企業の儲けが従業
員に還元されていなく、個人消費に火がつかない。貯蓄高が増えて
いるが、それは一部経営者と高級官僚にしか恩恵が行っていない。

このため、公共投資で潤う一部の経営者・官僚は消費を拡大するが
、国民全体が消費を始めるという内需拡大は起こりえないという。

中国の内需主導経済は、経済や労働制度などの整備がないと火がつ
かないようだ。公共事業でも海外から鉄輸入はほとんどない。国内
生産での供給が需要より多く、2割の減産を中央政府は指示してい
る。民間ベースの鉄鉱石の取引所設立も政府は妨害している。

4.日本企業はどうするか
日本から輸出されているのは、ポリエステルなど化学製品などであ
り、最先端の部品類である。自動車の優遇政策も中国国内産業保護
策であり、国内メーカのシェアが急増しているが、日本メーカのシ
ェアが下落している。

日本の自動車メーカも中国のメーカと同様な低価格品を作らないと
新興国市場でも商品は売れないし、欧米諸国の市場は消費が拡大し
ないし、日本企業は衰退することになる。そうならないためにも、
新興国市場を目指した商品開発が必要になっている。

インド市場も同様であり、東南アジア市場も同様であり、新興国モ
デルが重要である。このようなモデルがあれば、中国企業の輸出を
乗り越えることができる。そのよい例が、ホンダの二輪車である。

タイなどの東南アジアで低価格なモデルを作り、中国企業の二輪車
を仰臥している。今後は中国市場というより、中国周辺の東南アジ
アで中国企業の攻勢をどうかわしていくかが重要になってくる。

中国市場は、商業民族で血縁関係や講しか信用しない漢民族の性格
があり、日本企業の長期の信頼で商売をするというスタイルを利用
されて、失敗することが多い。それより、東南アジアの農耕民族に
信頼された企業イメージを確立して、長く商売をした方がよいと見
ている。インド市場も中国市場より良い。しかし一番、良いのが東
南アジア市場である。

5.中国市場で成功するには
イスラムの商人や中国の商人は相当に気をつけても、講などに入り
、信頼を築けないと失敗する。そのためには中国人以上にその地域
の言語に堪能でないと無理である。上海では北京語ではなく上海語
であり、アモイでは福建語であり、広州では広東語である。講に入
るためには紹介者が必要であり、中国人でも講に入るのは大変であ
る。中国の大学に留学して、人脈を築くぐらいのことをしないと、
ダメだ。

そのような準備を日本企業はしないから、日本企業のほとんどは失
敗しているようだ。中国の政治は日本とは違い、経済より政治が上
である。官僚へのワイロは企業にとっては必要経費であるくらいの
感じで見ることが必要である。

米国企業は高給を出して、太子党(高級政治家の子弟)を社長にし
て、米国外資でも中国人で回している。このため、政治家の利便を
受けている。このようなセンスがないのが日本企業の問題である。

6.おわりに
日本企業の世界展開を推し進める必要がある。日本文化の理解が世
界で進んで、非常に良い状態になっている。日本企業は世界に工場
を立てて、そこの雇用を作り、日本からはキー部品を送る体制を早
く作ることである。

そのためには、世界的な人的支援や海上の安全に日本は積極的な役
割を担う必要があるとみる。
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米雇用46万人減、再び拡大 6月、失業率9.5%に悪化

 【ワシントン=大隅隆】米労働省が2日発表した6月の雇用統計
(季節調整済み)によると、非農業部門の雇用者数は前月から46万
7000人減った。減少規模は5月(32万2000人、改定値)を上回り、
市場予測の平均(36万5000人)よりも悪かった。失業率(軍人を除
く)は前月より0.1ポイント悪化し9.5%。米雇用情勢は底入れがま
だ見えにくい状況だ。

 雇用者数減は18カ月連続で1981年8月〜82年12月を抜き戦後最長
。今年1月の74万1000人減をピークに減少ペースが鈍っていたが再
び減少幅が拡大した。

 製造業が13万6000人減と引き続き低調なうえ、底入れの兆しが見
え始めていた建設(7万9000人減)、小売り(2万1000人減)も減
少幅が再び拡大した。2007年12月からの景気後退局面での雇用減は
合計で約650万人になった計算になる。(02日 22:26) 
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米住宅価格、4月18%下落 価格指数の主要10都市平均 

 【ニューヨーク=山下茂行】米格付け会社スタンダード・アンド
・プアーズ(S&P)が30日発表した4月の「S&Pケース・シラ
ー住宅価格指数」は、主要10都市平均で前年同月比18.0%下落した
。18.6%の下落だった3月に比べると下落ピッチはわずかながら穏
やかになった。

 主要20都市平均は同18.1%の下落。やはり3月(18.7%下落)よ
りも下落率はやや緩やかになった。

 ケースシラー指数は1月に主要10都市で19.4%下落し、調査開始
以来で最大の落ち込みを記録した。その後は下落率が3カ月連続で
少しずつ縮小している。 (23:00) 
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米で7地域金融機関が破綻 09年で52社に、17年ぶりの高水準

 【ワシントン=大隅隆】米連邦預金保険公社(FDIC)は2日
、ファウンダーズ・バンク(イリノイ州)など全米で7つの地域金
融機関が破綻したと発表した。今年に入ってからの破綻は52社に上
り、約6カ月で昨年(25社)のほぼ2倍になった。年換算すると
1992年(179社)以来、17年ぶりの高水準で推移している。(13:01) 
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長期金利が低下基調に、世界経済の先行き不透明で

 長期金利が低下基調となってきた。2日の10年物国債の入札で金
融機関の引き合いが強く、市場で指摘された政府の経済対策に伴う
国債増発で需給が悪化するとの懸念がひとまず後退。米国の景気指
標などから世界経済の先行き不透明感が強まり、国債への資金流入
を促している。市場では「当面は金利が上昇しにくくなった」
(BNPパリバ証券の山脇貴史氏)との声がある。

 3日の債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債の利回
りが前日に比べ0.040%低い1.315%と約3カ月ぶりの低水準をつけ
た。前日の入札では投資家の応募額が発行予定額の2倍程度と、金
融機関の需要が強いことが確認された。米雇用統計が市場の事前予
想よりも悪化したことも金利の下押し要因。5年債など中短期債の
利回りも大きく低下している。(00:35) 
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米再建企業、運転資金の調達難しく 貸し渋り強まる

 【シカゴ=毛利靖子】米国で経営不振企業の資金調達環境が悪化
している。企業再建の関係者で構成する業界団体の調査によると、
破綻後に経営再建を目指す企業に対する運転資金融資(DIPファ
イナンス)の手当てが難しくなったとする回答は2008年に比べて倍
増した。金融機関が米景気冷え込みが長引くとみて、貸し渋り姿勢
を強めているという。

 弁護士や再建請負人、銀行で構成する米企業再建協会が会員から
聞き取り調査した。企業再生の現場で、DIPファイナンスの調達
で苦戦したと答えた再建請負人の比率は4割を超え、昨年(21%)
の2倍に跳ね上がった。金融機関が経営不振企業に対する融資に慎
重になっているとの答えも7割に達した。(07:00) 
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「消費拡大、易しくない」中国人民銀総裁 当面は投資頼み 

 中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は3日の講演で、中国経
済を外需主導から内需主導に転換する構造改革について「個人消費
の拡大が最良の選択だが、口で言うほど易しくない」と語った。そ
のうえで「次善の選択として投資を維持、拡大するしかない」とし
、外需の回復が見込みにくいなか、当面は投資頼みの成長が避けら
れないとの認識を明らかにした。

 米欧には中国で個人消費に火が付かない理由として、貯蓄率の高
さを指摘する声がある。周総裁はこれについて「貯蓄率が大幅に上
昇しているのは家計部門でなく企業部門だ」と強調。安価な労働力
の大量供給を背景に、輸出などで稼いだ利益が企業部門に滞留し、
家計部門に十分回っていないことが消費の力不足につながっている
との見方を示した。

 周総裁は「工業への投資が過剰になれば、生産能力の過剰を生む
」とも指摘。「潜在力があるのは都市化に対応した投資だ」と述べ
、都市インフラやサービス産業の発展につながる投資に力を入れる
べきだとの考えを表明した。(北京=高橋哲史) (21:31) 
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米国株、ダウ平均223ドル安 5月下旬以来の安値、ダウ全30銘柄が
下落

【NQNニューヨーク=荒木朋】2日の米株式相場は大幅に反落。
ダウ工業株30種平均は前日比223ドル32セント安の8280ドル74セント
と5月22日以来の安値で終えた。ハイテク株の比率が高いナスダッ
ク総合株価指数は49.20ポイント安の1796.52で終えた。6月の雇用
統計で非農業部門の雇用者数が予想以上に減少したことが嫌気され
、幅広い銘柄に売りが出た。

 6月の非農業部門の雇用者数は前月比46万7000人減と、36万人程
度と見られていた市場予想の減少幅を大きく上回った。失業率は9.5
%と前月から0.1ポイント上昇した。雇用情勢の悪化や個人消費の低
迷がしばらく続くとの懸念が強まり、景気敏感株を中心に売りが出
た。

 週間の新規失業保険申請件数は前週比1万6000件減の61万4000件
となり、失業保険の受給者総数も減少した。ただ、これを好感する
動きは見られなかった。ニューヨーク証券取引所(NYSE)は取
引終了間際、システム不具合によって影響を受けた顧客の注文を執
行するために取引時間を通常の午後4時から4時15分まで延長する
と発表。取引終了にかけて処分売りが出て、ダウ平均はこの日の安
値で引けた。

 S&P500種株価指数は26.91ポイント安の896.42と、節目の900を
割り込んで終えた。業種別S&P500種株価指数は「金融」「消費循
環」などを筆頭に全10業種が下げた。フィラデルフィア証券取引所
の半導体株指数(SOX)は1%超の下落。

 NYSEの売買高は約6億3000万株(速報値)、ナスダック市場
は約18億7500万株(同)だった。

 ダウ構成企業の全30銘柄が下げた。アルコアやキャタピラー、ユ
ナイテッド・テクノロジーズが安い。保険大手トラベラーズや米銀
大手バンク・オブ・アメリカなども軟調。ホームセンター大手ホー
ム・デポが売られた。アナリストが投資判断を引き下げた自動車部
品大手ジョンソン・コントロールズが急落。原油先物相場の下落を
受けてエクソンモービルやシェブロンの石油株が下げた。

 半面、アナリストが投資判断を引き上げたコンチネンタル航空が
上昇。デルタ航空も買われた。(09-7-03 07:35) 
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米、年金基金の農産物投資に規制
 【シカゴ=毛利靖子】米商品先物取引委員会(CFTC)は24日
、年金基金などによる農産物投資に対する持ち高規制を検討する方
針を明らかにした。2008年にかけてシカゴの小麦相場が乱高下した
のは、年金の国際商品投資の受け皿となるインデックスファンドの
資金が大量流入したことが原因とする報告書を、米上院が公表した
ため。

 報告書によると昨年までの4年間でインデックスファンドの小麦
先物の持ち高は7倍に拡大。シカゴ小麦市場に滞留する資金の35〜
50%を占めたという。(16:00) 


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