3328.植物工場が日本農業の救世主か



CH大園芸学部で、将来の農業とは何かを聞いた。  Fより

1.基本
植物工場とは軍事ベースで開発された技術であり、その研究で現在
コスト的にも路地物に比べて若干高いレベルになり、また、南極基
地に設置できるように技術レベルも低くなって、実用化段階にある。

現在の農業は植物の育成を5フェーズで管理し、それぞれのフェー
ズで適正温度、湿度、日照時間、必要肥料が的確に掴めている。
発芽、育苗、植付け、成長、結実の5フェーズと、最後に刈取りで
ある。

よい苗ができると50%の成功になる。それほど、育苗は重要で、
また苗の生育レベルが揃うことも大事であるが、この揃うのが難し
いようだ。育苗は温室で行っていた。また、夏、冬、春、秋の野菜
はそれぞれで温度が違うので、各時期毎の野菜の育苗は同時にでき
るが、他季節野菜とは同時に育苗はできない。

このような基本的なお話の後、まずCH大のトマトを育成している
ビニールハウスを見た。フィルムを2重にして、その中に空気を入
れて断熱し、40%のエネルギーを節約している。フィルムを2重
にするため、光の透過が弱くなるので、CO2濃度を3倍に上げて
いる。

また、液肥、温度などを自動制御していた。トマトの根はカップの
中にあり、水はマットにしみ込ませている程度である。ヒートポン
プで冷暖房し、雨水を貯めて、それを利用している。また、カーテ
ンを入れるとより断熱効果があり、暖房費が節約できるという。

日照時間が足りないときには、昔は高圧ナトリウムランプを使用し
、現在は蛍光灯で植物に光を与え、今後はLEDになるようだ。
光合成は昼間であるから、昼だけにすれば成長は早くなるかという
とそうではなく、夜の時間に糖代謝を行い、体内に蓄積していると
いう。

2.海外援助
CH大は、北緯40度Cで砂漠化が進んでいる中国の寧夏回族自治
区でネパールのムスタンで近藤亨が行っている石積みビニールハウ
スと同じようなCH大いわく日光温室という土壁で蓄熱し、ビニー
ルで上面を囲う農業を大々的に展開している。

夜は温度が下がるのでポリエステルなどの布で上面を覆い、内部温
度を保つ。水は外に蒸発させないで循環的に使い、水の使用を抑え
ている。この土地は塩分を多く含んでいる水であるために、多く使
うと塩害の恐れがあるためだ。

この農業技術者を育成するために、柏の葉に広大な農園を持ってい
る。また、英語での教育も行っているという。国際的な援助も視野
に入れて、取り組んでいる。

3.完全制御型の植物工場
 グリーンフレーバ五香に行った。みらいという37歳の青年が社
長の会社で、南極基地の植物工場を作った会社である。マンション
の1室に3坪の植物工場がある。半導体工場より厳格な無菌状態で
あり、出入り時に温水シャワーを浴びていると。

その植物工場で葉物を中心に15種類の野菜を作っている。コスト
面は、装置費用を2004年時の半分にし、栽培技術は研修とデー
タ管理をみらいで行うことで失敗がないようにしているという。

南極基地の植物工場の各種データもインターネットで即時に分かる
仕組みがあり、日本から指示して、南極基地のシェフに作業をして
もらっている。

植物工場でレタスなど葉物が中心な訳を聞いたが、40日でレタス
はできるが、いちごなどは6ケ月以上掛かり、コスト的に引き合わ
ないようだ。

この完全制御型の植物工場は、低価格化と高機能化の2つの道があ
る。1つは日本人が欠乏しているカルシウムを多く含んだ野菜を作
り、機能性野菜として高く売る方法と、コストを削減して低価格野
菜を売る方法である。薬草を栽培するという案や、大陸内部で欠乏
するヨウ素成分を持った野菜を作るということもできそうである。

4.今後の日本農業
現在、60歳以上の農業従事者は60%にものぼり、70歳以上で
も40%になる。50歳以下の従事者は5%しかいない。危機的な
状態に日本農業はある。このため、CH大では、あまり農業技術が
ない人たちでも農業ができるシステムを作り、企業が農業に進出し
やすい環境を早急に作らないと危ないという。

葉物の完全制御型、太陽光利用のトマト、いちご、ダイコンなどの
野菜栽培ができるシステム制御付きビニールハウスなど、事業モデ
ルに合った各種システムを10年後の日本農業の絶滅に備えて研究
しているという。この研究には経産省、農林省などの支援も受けて
いるが、早く企業とCH大が組んで野菜の確保を行う事業をしてほ
しいですね。


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