3323.グリーン・ニューディール政策



米オバマ政権はグリーン・ニューディール政策にシフトした。今ま
で米国産業の中心は金融業、軍事産業、石油産業であったが、その
3つの産業は地球環境や財政問題から限界に来ている。

その上、NHKの北極大変動2008年の再放送を見て、気が付い
たが、環境問題も得丸さんが言うように地球存続に危機的であると
いう認識が米国国民にもでてきている。

少し安心できるデータとして、2007年夏には1952年の観測
以来で最小になった北極の氷は、2008年夏では2007年まで
の減少にはならなかったようだ。        津田より

0.はじめに
 気候変動要素としてはCO2などの温室効果ガス濃度だけではな
く、一番大きな影響を持つ太陽活動も調べる必要がある。すると、
太陽の黒点が2009年に入りなり、太陽活動は減少している。
30%程度のエネルギーが減少している可能性があると。

黒点活動が100年に1度の低水準になった。今後は温暖化ではな
く寒冷化になるとも言う気象学者もいる。太陽の活動は約11年周期
で変動し、この前の極大期は2001年〜2002年だったので、現在2012
年〜2013年の極大期に向けて黒点が増え始める時期なのだが、黒点
が消えてしまったのだ。2006年〜2007年の極小期にもわずかながら
黒点は出現していたのに、今はそれよりも太陽活動が不活発になっ
ているという。 

寒冷化に向かうとすると、CO2排出量の削減は必要がないという
ことになりそうだが、世界の風潮は温暖化防止に向かっている。
太陽活動は11年周期であり、次の拡大期に温暖化で地球環境が破
綻することを防止するのに必要であるという環境学者の意見もある。

オバマ大統領は、米国もCO2排出量削減の国際会議に復帰して、
米国は2005年に比べて14%削減の目標を掲げている。日本は
2005年に比べて15%削減と麻生首相が宣言したが、今後、民
主党政権になった時、30%削減になる可能性はある。

しかし、CO2より温暖化に寄与するのは、メタンガスの方で21
倍も高い。メタンは有機物が空気の少ない状態で発酵する時に発生
しやすく、水田や家畜の腸内発酵、家畜のふん尿などから発生する。

経済的な観点からは、石油や天然ガスの新規開発を世界的に禁止し
て、石油や天然ガスの価格を1バーレル80ドル以上に高騰させて
、経済的に成立つ代替エネルギーの開発に世界を向かわすことが一
番いいのであるが、そのような取り組みを行っていないし、そのよ
うな話を国際会議で聞いたことがない。化石燃料の問題は地中に固
定化されている炭素を燃やしてCO2にして大気中に出すことであ
る。

1バーレル80ドル以上になれば、有機物を発酵でメタノール、エ
タノール化させて、メタンの排出量も抑えられることになる。この
燃料を燃やしても、植物由来であるために環境的にはCO2を増や
さないし、安定化しない自然発電のバファーとしてのバイオディー
ゼル発電の燃料とできる。

自然発電として、太陽光発電、風力発電、水力発電、潮流発電など
の開発が促進されるが、これらはその土地にあった発電主体を考え
る必要があるが、どこでも基本的にはエネルギー自体はある。

どうして、そう考えないのか不思議である。

1.グリーン・ニューディール政策
 オバマ政権は、グリーン・ニューディール政策で環境ビジネスを
米国で立ち上げ、米国の主導的な産業にしようと計画している。
この計画で500万人の雇用を生み出すとしている。電力発電に占
める再生可能エネルギーを2012年までに12%、2025年ま
でに25%の比率にするという。

この米オバマ政権より前に、カリフォルニア州は家に太陽光発電を
設置する場合に補助金を出して促進し、テキサス州は風力発電に補
助金を出している。風力発電で有名なのが、いつも強い風があるテ
キサス州ロースコーであり、この一帯には数百基の風力発電の風車
が建っている。

このため2008年にはドイツを抜かして米国は風力発電量が世界
の21%になり、世界最大の発電量になっている。現時点では1k
WHあたり太陽光45円程度に対して、風力は11円程度と断然安
いが、石炭火力の6円や原子力5円より高い。

太陽光パネル製造ではファーストソラー社がQセルに続く2位にな
り、日本最大のシャープは4位に後退し、風力発電機製造ではGE
が2位になっている。

このほかに、米国は2014年までに現時点の4倍の燃料効率を持
った自動車の開発を義務付けている。GM、クライスラーもこの自
動車を作る必要があるが、ハイブリッド車か電気自動車にしかその
解はない。普通のガソリン車では達成不可能のようである。

このため、トヨタかホンダからGMは技術を提供してもらうことが
必要であるが、基礎的なインバータやモータ、電池は電気会社から
でも手に入る。GMシボレーボルトのようなプラグイン・ハイブリ
ッドのような車もあるが、1台500万円以上もする。量産車とし
てはまだ売れるはずが無い。米国のベンチャー企業でも電気自動車
を出しているが、1台500万円程度と、三菱の電気自動車と同程
度か高い。

2.スマート・グリッド
 自然発電は、家などに設置しているので、分散で不安定な電源で
ある。しかし、A地域では曇りで、B地域で晴れとなると太陽光発
電で生み出される電気はB地域は余り、A地域では不足するので、
BからAにすばやく電気を流すことが必要である。このように風力
なども含めて、自然発電は不安定であるので相互の電気を融通する
必要があり、その情報を瞬時に伝えて調整するIT系が重要になる。

このシステムをスマート・グリッドという。安定的な電源も必要で
火力発電も必要であるが、その火力発電は常時動かさないで、足り
なくなりそうと予測し、稼動させればいい。

もう1つが、電力搬送は距離が伸びると電力損失が大きい。この解
決をするために超伝導の電力線搬送にすることが必要である。そし
て、なるべく近距離で電気を融通することが効果的であるので、情
報を即座に判断して、融通する地域への回路をオンやオフにするこ
とが必要なのだ。そして、全体的に電力が不足するときだけ、火力
発電を使うようにすれば、石炭火力でもその使用量は大幅に抑えら
れることになる。また、この火力もバイオディーゼルを使えば、
CO2排出量はゼロになる。

この計画では、ほかに電気自動車に搭載される2次電池が重要な要
素となる。余った電気を2次電池に蓄えれば、地域の中だけで時間
差で電気を融通できることになる。自給自足の電力量が確保できれ
ば、一番効率的になる。この2次電池として電気自動車に搭載され
た電池を使えば、一石二鳥となる。

家の電気機器の使用量が分かれば、使用する量を調節できるように
なる。この目的のためにスマートメーターがあり、自分のパソコン
で家の電気の使用状況を見ることができるようにする。米国では、
このメータを見るソフトをグーグルが提供している。

このソフトで一番大きな電力を使っているのが、洗濯物の乾燥機で
あり、これを日本と同じように天日干しにすると、家の電力使用量
が半分程度になったと報告が出ている。やっと、米国でも洗濯物の
天日干しを認めるようになる可能性が出てきた。景観から天日干し
をすると近所からクレームが来たが、省エネから米国民も認めるか
もしれない。

3.日本と米国の環境技術研究
このように環境技術を高度化する必要がある時代になった。この研
究では日米の研究は違うスタンスである。

 日本は積み上げ型技術が優れているし、欧米は跳び越し型技術が
優れている。日本は研究者が2代、3代と実験から物性、植物デー
タを積み上げて、少しづつ温度、肥料などを変えてその構造を明ら
かにする手法であり、師匠と弟子が1つの研究を引き継ぎ、徐々に
技術を磨く方向で研究をしている。これは企業だけではなく、大学
などでも同じである。大学の中で先輩・後輩の研究者間で大量のデ
ータと知識が引き継がれていく構造である。

これに比べて、欧米は天才的な能力に依存して、その発想を飛ばし
画期的な成果をだすことを得意としている。このため、若くて有能
な研究者が成果を出してくるし、師弟関係ではなく、個人の独立性
が強い。これに比べて、日本の研究者は何代もの長い期間を掛けて
研究成果を積み上げるために画期的ではないが、面白い成果が出て
きている。そして、徐々に成果を出すが、出すまでに大量の実験を
して失敗も多くあるが、その特性を明らかにしているので、その分
野での嗅覚ができていて、実験をしなくてもだいたいのことが変わ
るようである。ここが日本の研究者である。ある分野では知らない
ことがないとなる。

この状態を感覚的に知るというように研究者はいう。この大量デー
タの積み上げを行っているので、欧米諸国が日本の得意とする分野
に来ても成果がでないし、研究発表でも関連質問が沢山でてくる。
このため、日本の得意とする分野には欧米研究者は来ないことにな
る。

このため、日本的な技術分野では独壇場になっていたが、この日本
の分野に参入してきているのが、韓国・中国である。日本の製品や
部品を分解して、その追試を行い、かつ日本人研究者を引き抜くこ
とで急速に日本の分野で追いついてきたが、新規研究で日本を抜か
したわけではなく、両国は追試と大量動員で研究を行っている。嗅
覚がないように感じる研究であるが、日本の研究者も韓国・中国の
研究に恐れを感じている。

逆に米国の分野には日本は行けない。嗅覚がない分野で欧米研究者
には追いつけない。このため、解析が重要な金融工学分野で日本は
見るべき物がない。米国は論理的な解析で新理論を創造する分野で
はその力を発揮している。しかし、実体世界の解析はいろいろな現
象が絡み合うので、得意ではないようだ。現在の経済学でも人間の
感覚が重要になり、理論経済学から離れていくために、実体経済の
解析に処する理論がないようである。

また、近年その理論が発展した米国の金融工学は、金融規制でその
運用を大きく制限される可能性が高い。日本が得意とする物理現象
などの基礎研究上に積み上げた植物や物性研究などに米国の研究も
シフトしているように感じる。欧米も1人での研究成果では限界が
あり、チームでの研究に移行するしかないと見る。

4.最後に
 アジア的な環境思想が現時点、世界の行く方向を示しているよう
に感じる。金の量などの物量ではなく、人間の品格や高貴さをどう
作るかを東洋思想は問題にする。これに対して、欧米の思想は世界
に蔓延して、物欲中心の考え方になり、人間の人生の意味がだんだ
ん低俗になっているように感じる。

この面でも世界的な変革期が来たと見ている。日本はある程度の豊
かさがあり、そして、2度のバブル崩壊による景気後退を近々で味
わっているし、古来からの伝統文化は物欲ではなく、人間の品格を
どう高めるがを問題にしている。清貧の思想など、非常に高い文化
力を有している。

この日本文化を世界に広めることが必要であるとこのコラムでは、
述べている。それが本当に必要になってきたようである。
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太陽黒点100年に1度の低水準 温暖化どころか「寒冷化」?
2009/6/ 9 JANJAN
   ここ半年ほどで、「太陽の黒点が少ない」という指摘が相次いで
いる。黒点は11年周期で増減を繰り返し、これからは黒点の数が増
える時期なのだが、そのペースが遅れているというのだ。過去、黒
点が観測されなかった時期に寒冷期が訪れたということもあり、寒
冷化を懸念する声もあがっている。


1.08年から活発に、2011年頃にはピークのはずだった
 黒点の数の変化には要注意だ(NASAウェブサイトより)   黒点は、
太陽の表面にシミのように見える黒い部分だ。太陽の表面温度は約
6000度なのに対して、黒点の温度は約4000度と低いため、黒く見え
る。磁石の様な強い「磁場」を持つのも特徴で、黒点の周辺では「
フレア」と呼ばれる大爆発も多く発生する。黒点が多いほど、太陽
の活動が活発だとされる。

   黒点は11年周期で増減を繰り返し、通常のペースでいけば、08年
から活発に出現し、2011年頃には出現のピークを迎えることになっ
ている。

   ところが、米航空宇宙局(NASA)やベルギーの「太陽黒点数データ
センター」の調べによると、活動が約100年に1度の低水準にあるの
だという。前出の「太陽黒点数データセンター」の観測では、08年
に黒点が観測できなかった日数は266日。過去4番目に多い日数だ。

   国立天文台によると、09年3月に、1日に観測できた黒点の平均個
数は0.74個で、4月が1.23個、5月が2.9個。少しずつ増えているよう
にも見えるのだが、同天文台では

「これから黒点の数が増えていくはずなのですが、確かに、そのペ
ースが遅れ気味です」と話す。


2.黒点がほとんど観測されなかった時期に欧州が寒冷化
   一部では、今回の状況を、かつての寒冷期と結びつける動きもあ
る。1645年から1715年にかけて、「マウンダー極小期」と呼ばれる、
黒点がほとんど観測されなかった時期があったのだが、この時期は
ロンドンのテムズ川が凍るなど、欧州が寒冷化。農作物が実らずに
、飢饉が発生したという。ただ、この時期についても、黒点の増減
と寒冷化との因果関係は不明だ。さらに、最近の黒点が少ない点に
ついても、国立天文台では

「諸説あるのですが、その原因ははっきり分かっていません。まぁ
、『急速に寒冷化が進む』といったように、すぐに困ることにはな
らないでしょう。太陽は生き物みたいなものですし、すぐに今後の
動きが予想できるようなものでもありません」
と、結局のところは「複雑なので、良く分からない」という立場の
ようだ。

   地球温暖化問題の話題では必ずといっていいほど登場する、国連
の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)でも、07年発表の第4次報
告書で、太陽活動についての検討を進めていくことを明らかにして
いる。ただ、太陽活動が温暖化や寒冷化にどの程度影響するかにつ
いての研究は、まだ進んでいないというのが現状だ。

   いずれにしても、今後も、黒点の数の変化には注意が必要そうだ。
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北極海の海氷 観測史上2番目の小ささに
http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2008/tp080924.html

 今年(2008年)も、北極海の海氷域が融解最小時期を迎えました。
昨年9月に観測された最小面積記録(425.5万km2)には及びませんでし
たが、それでも過去2番目に小さい面積(9月9日の470.8万km2)にまで
今年も縮小しました。
 図1は、2008年9月23日にAMSR-Eが観測した海氷分布の様子です。
また、図2は2002年以降一日毎に観測された海氷面積の季節変化の様
子を、年毎に色別の線で示しています。昨年(橙色の線)は、7月上旬
から過去に例を見ない急激な減少傾向を示し、観測史上の最小面積
記録を大幅に更新しました。
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賢い送電線「スマートグリッド」が始動 米が主導権
2009.4.8 22:42産経新聞
 
 電気を送る送電網が頭脳を持ち、最適な電力供給体制を構築する
“賢い”次世代送電システム「スマートグリッド」に脚光が集まっ
ている。太陽光や風力発電など天候に大きく左右され、電力供給が
不安定な自然エネルギーの電気を大量に使うには、賢い送電線網が
欠かせない。米国のオバマ政権が環境対策と景気浮揚を両立する
「グリーン・ニューディール」の中で重点投資を打ち出し、国内で
も研究が進んでいる。ただ、日本政府は明確な普及促進に向けた戦
略を打ち出しておらず、国際競争力で米国に大きく後れをとる懸念
も出ている。

 日本の独立行政法人、新エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO)は8日、スマートグリッドについて米国と研究協力を
進めるための情報交換を米ニューメキシコ州で開催すると発表した。
13日から3日間、双方の専門家約30人が参加する。

 米国が先行するスマートグリッドは、送電網に通信・制御システ
ムを組み込み、発電施設と家庭や工場、ビルなどの施設を結び、発
電量に加え、使う側の電力量まで増減させるという優れものだ。

 真夏に温度が急上昇し、使用電力が増えると発電量を増やしたり
、蓄電施設からの供給を素早く指示。それでも足りないと、エアコ
ンの設定温度を下げるなどで、使用電力を減らしてくれる。

 地球温暖化防止の切り札である太陽光などの自然エネルギーは天
候の変化で発電量が突然、激減するなど、供給不安定で、大量に電
力網に組み込むと、電気の需給バランスが崩れ、大停電が起こるリ
スクもある。こうした事態を避けるためには、スマートグリッドの
整備が必要だ。

 米国ではすでにカリフォルニア州やテキサス州の一部地域で、シ
ステムのカギとなる「スマートメーター」が導入されている。

 スマートメーターは、電力供給者と消費者の間でデータをやり取
りし、エアコンの温度設定を変えるなどの働きを担う。

 メーターと家電製品が情報をやり取りする際の通信規格が策定さ
れ、メーカーが規格に基づいた製品を開発し販売しており、「米国
の規格が世界標準になる可能性がある」(大手ITメーカー)と、
主導権を握りつつある。

 後れをとった日本だが、システムのもう一つのカギである蓄電池
ではリードしている。世界シェアで6割を握るリチウムイオン充電
池を送電網に組み込むための大型化の研究開発が進行。さらに、日
本ガイシと東京電力は、より大容量の「ナトリウム硫黄(NAS)
電池」を共同開発し、風力発電施設ですでに実用化している。

 懸念材料は、政府の腰の重さだ。米政府は大型の蓄電池開発研究
に20億ドル(約2000億円)を投じる方針を決めたほか、関連
ベンチャー企業を支援するため、60億ドルの融資保証制度も創設
した。蓄電容量が多く、安全性や耐久性にも優れた「レドックスフ
ロー電池」の開発も視野に入れている。

 これに対し、日本政府は「スマートグリッドの定義はまだあいま
いだ」(経済産業省)という段階で、研究開発の戦略や支援策は打
ち出されていない。

 「エネルギー需給に革命をもたらす」(荻本和彦・東大特任教授
)とされるスマートグリッドの開発競争で勝利した国が、標準規格
や関連特許を握り、国際競争力で圧倒的に優位に立つ。対応の遅れ
は、日本が得意とするデジタル家電やIT分野の製品が海外で売れ
なくなる恐れすらはらんでいる。


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