3314.炉心融解



最近、高校生の息子がよく聞いている歌に「炉心融解」というのが
あります。

もちろん軽音楽として受け入れられているのでしょうが、その歌詞
がなんかもう絶望的なのです。
格差とか、学歴とか就職とかではなく、もっと根源的な存在の次元
、自殺や心中、そして人類絶滅の予感を感じて、生きているような
気がします。

現代日本の高校生が、こういう歌を支持しているときに、どう問題
を解いていくのか、より具体的にならないでしょうか。

得丸公明

炉心融解 (作詞:kuma 作曲:iroha 編曲:iroha 唄:鏡音リン)
 
街明かり 華やか  エーテル麻酔 の 冷たさ
眠れない 午前二時  全てが 急速に変わる
オイル切れのライター  焼けつくような胃の中
全てがそう嘘なら  本当に よかったのにね
君の首を締める夢を見た  光の溢れる昼下がり
君の細い喉が跳ねるのを  泣き出しそうな眼で見ていた

核融合炉にさ  飛び込んでみたい と思う
真っ青な 光 包まれて奇麗
核融合炉にさ  飛び込んでみたら そしたら
すべてが許されるような気がして

ベランダの向こう側  階段を昇ってゆく音
陰り出した空が  窓ガラスに 部屋に落ちる
拡散する夕暮れ  泣き腫らしたような陽の赤
融けるように少しずつ  少しずつ死んでゆく世界
君の首を絞める夢を見た  春風に揺れるカーテン
乾いて切れた唇から  零れる言葉は泡のよう

核融合炉にさ  飛び込んでみたい と思う
真っ白に 記憶 融かされて消える
核融合炉にさ
飛び込んでみたら また昔みたいに
眠れるような そんな気がして

時計の秒針や  テレビの司会者や
そこにいるけど 見えない誰かの
笑い声 飽和して反響する

耳鳴りが消えない 止まない 耳鳴りが消えない 止まない

誰もみんな消えてく夢を見た  真夜中の 部屋の広さと静寂が
胸につっかえて  上手に 息ができなくなる

核融合炉にさ  飛び込んでみたら そしたら
きっと眠るように 消えていけるんだ
僕のいない朝は  今よりずっと 素晴らしくて
全ての歯車が噛み合った  きっと そんな世界だ 
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炉心融解のご紹介ありがとうございました
佐藤

今の若い人たちにとっての世界
その世界の受け止め方、そのひりひりした感覚に驚嘆しました
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得丸様

思春期から青年前期は生物一般というかヒト類にとり、極めて重要
な時です、生殖へ進む初段階に当り、この過ごし方は本人の自覚、
無自覚に関係なく、環境、これも狭い身近な家族と言う物から、一
日の多くを過ごす、現代の先進国では用意された学校が大いに影響
されてしまいます。

先に佐藤さんが「コミューン」と言う言葉を引用して、米谷さんが
評価しました、環境論?。小生もコミューンについて手持ちの辞書
に当たりました。そこには、もっともらしい解釈が有りました。

「共通の思想、文化をもち、生活も協同に行う組織を創設し維持す
る運動、1960年代の激しい新左翼運動、特に全共闘運動の挫折
の中から、亜tらしい運動の発展形態として積極的に選択され、既
成のコミューン、たとえば山岸会などへの参加などもみられた、体
制の妥当ではなく、体制の外に出て新しいライフスタイルなどカウ
ンター・カルチャー(対抗文化)を創造し、体制から自立した生活
共同体を実現することを目指した」と

実に時間の流れは、歴史と言っては軽すぎますが、こんな説明を多
くの学生が読み、果たして彼を触発できるのか、出来たとしたら、
次に彼の行動に影響が出るか、出ないか。

多くの物語が生まれて消える、消費される物もあるし、生産に使わ
れるものもあるかも、しかし持続する物、刹那に消える物、違いは
あるものの、人の世は面白いですね。雁はそのことを知っていたの
でしょう、だから有るときには不遜に、今回のシンポの中でも何人
かの講演者が、雁と話した人が共通に「尺度が違う」と地理感も時
間もと言っていました。十代の会のテュターは「恐い人でした」
とも言いました。

アキハバラ事件から一年に成ります、何か状況、特に大きく採り上
げられた「食うために自立の手段を手段を得がたい社会状況、日本
的状況」を上げる言論人も、生活に必要な生活資料を得れない状況
の体験は希薄なのではないかと思いますが。

貴方の読まれた復刻「朝日ジャーナル」の基調論文などに、永山則
夫と加藤大○を並べて論証しようとしていましたが、分からないま
まにページを閉じました。

そして、先ほど引用した辞書、これはブリタニカ国際大百科事典か
らです、此れを書いた人も採用した出版社、皆納得して載せたので
しょうが、読む側に備えが無いと、とんでもない読み方に成る場合
が有るのではないかと思います。1960年代を重大な意味ある年
として仮定すれば、だからなんだと、いつもの得丸さんの言葉が聞
こえてきますが。

以前何処かに書いたかと思いますが、雁は質問者に「貴方の質問は
、あなた自身の中に回答を持っていて聞いているのか」と質問の作
法について厳しく迫ったことがあります。

長くなりました。ともあれ、子どもの成長をお楽しみ下さい。草々

浅山
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浅山様、佐藤様、
レスありがとうございました。

せんだっての盛さんのご質問とも関連するのですが、すでに鬼籍に
入られた谷川雁の言葉を引っ張り出してきて、現代の諸問題を乗り
切るためのヒントにするというのは、あくまでも引っ張ってくる側
の人間の行為であり、谷川雁はその言葉に何の責任も意味づけも行
なえないのだと思います。

谷川雁の脳内辞書にある記号と意味の対応表は、すでに消えてしま
っており、彼の記号だけを今持ち出してきたとしても、その意味は
何であったかはかりようがない。

> 雁と話した人が共通に「尺度が違う」と地理感も時間もと
> 言っていました。

尺度が違うというのは大切なことだと思います。

核家族は、消費財の売上に貢献するのみで、人間の人格や心の豊か
さにはつながらないと思います。

コミューンの真逆にあるのが核家族でしょう。核家族よりもさらに
極小な消費主体としての個別カプセルのような生活が秋葉原事件の
加藤容疑者を追い詰めたといえるでしょうから、コミューンという
生活スタイルがすべての核家族・お一人様を救う可能性もあります。

ま、お暇があれば、炉心融解、ネット上で簡単に聴くことができる
ようですから、ためしに聴いてみてください。
びっくりするくらい明るい曲です。

得丸公明
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得丸様

炉心融解、youtubeで拝聴(拝見?)しました。確かに救いようがな
い曲ですね。
歌い手の声がわざと人工的な声に聞こえるようにしてあるところも
より救いようがないですね。せめて尾崎豊のように「彼がそう感じ
るなら」という他者に期待する

部分があればまだよいのですが。。。。わざと存在を消している
この歌手にはたぶんいくら好きでも近づきようがないので熱狂的な
ファンにもなりようがない気がします。

ただ、歌詞に「昔のようによく眠れる」といった自分の過去にはつ
ながっているとことがあって少し安心しました。

ありがとうございました

木野
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木野様

> 炉心融解、youtubeで拝聴(拝見?)しました。確かに救いようが
ない曲ですね。

お付き合いいただきありがとうございました。

この歌の二次創作、つまりいろいろな人やグループが歌っているヴ
ァージョンがあり、youtube やその他のサイトにアップロードして
いるようです。息子はそれをすべて一生懸命に聞いています。

日本中でたくさんの若者がこの歌の練習をして、アップロードして
おり、またそれを聴いている若者がいるかと思うと、その救いよう
のなさが共有されているようで、これはこれでよいことかもしれな
いという気がします。

おそらく彼らのほとんどは自覚してないのでしょうが、人類文明が
終焉したことを感じ取っているのでしょう。

得丸公明
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木野さんへ

炉心融解のコラムについてなのですが、木野さんという方は自分の
意見が全てと思っているような人みたいですね。見ていてとても不
快でした。

「歌い手の声がわざと人工的な声に聞こえるようにしてあるところ
もより救いようがないですね」とありましたが、きちんと調べてか
ら物を言って下さい。ボーカロイドというYAMAHAが開発したソフト
を知らないのですか?炉心融解は人が歌っているのではなく“鏡音
リン”という名のついたボーカロイドソフトに歌わせているんです
よ。

救いようがない、と連呼してましたが、どの様に救いようがないの
か具体的に書いていらっしゃらないので、分かりません。

炉心融解の捉え方等は自由ですが、分からない方は思っていること
を口にしない方が宜しいかと。

今の高校生がどうしてこの曲に惹かれるのか、分からないなら何も
言わないで欲しい。無知な癖に救いようがない。

作り手の方にも失礼ですよ。

私は今高校一年ですが、この曲は好きです。意味を感じ取れない大
人は口を出さないで下さい、ということを伝えたかったので、意見
を送ります。

桜井
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私自身は“鏡音リン”は使っておりませんが、"初音ミク" という
ソフトを使っている40代の者です。
炉心融解は大好きではないですが、別に嫌いでもありません。

“鏡音リン”はパソコンのソフトですので "わざと人工的な声に聞
こえるようにしてある" のではなく、人の声の波形データと元にし
て"人工的に合成した歌声" です。

歌詞の内容について解釈は御自由ですが、私自身は青春期のある種
の行き場のない危うさは感じますが、それと共に、その危うさにこ
そ魅力があると感じます。作詞者の感受性の豊かさ、鋭敏な感覚を
感じています。


30年ほど前の歌の一節(森田童子「逆光線」)に
 安全カミソリがやさしく
 ぼくの手首を走る
 静かにぼくの命は ふきだして
 真夏の淋しい 蒼さの中で
 ぼくはひとり
 やさしく発狂する

というのがあります。手首を走るカミソリの刃に「やさしさ」を
感じとる鋭敏な感受性に惹かれます。

「最近」に限った事では無いと思います。
池田


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