3311.佐々井大長老



皆様

近時の密度の高まりに、得丸さんはじめみなさんが相次ぎ
貢献しておられるのを目の当たりに、このネットの持つ凄みを身に
迫って感じております。体力、知力ともに追いつかない私は、焦り
と諦めの両方を覚える日々であります。

しかしながら、或いはまた、さればこそか、せっかく教えていただ
いた機会を逃すのはもったいない。6月4日夕、鶴見総持寺を会場
とした佐々井秀嶺大長老の講話会に出かけてまいりました。

ざっと1000人の聴衆を相手にした師のお話は、要するには2点。
自分がインドに釘付けとなるに至ったのは大先達のアンベードカル
博士の「不可触民」解放への献身に打たれたからであり、その博士
の活動と人となりを日本人が知らずにいるとは、残念でならないこ
とである。アンベードカルという人を勉強してもらいたい。これが
第1。

第2は、インドには2つのインドがある。闘う仏教!闘うブッキョ
ー! われわれワーッ、ブラーマンの神々ヲーッ、断じて宗教とは
認めないゾーッ! 80分の熱弁は、吼えるが如しでありました。

うーん。60年代半ば、大学といえばどこでも聞かれた演説のそれ
でありました。懐かしい半面、会場狭しと発せられる助詞の音が
耳に痛くて、肝心のお話の本文は、メモを取れずに終わっていまし
た。

驚いたのは、これが74歳になる方の鍛えに鍛えた声であること。
それ以上に驚いたのは、総持寺の伽藍のものすごさ。山門からして
壮大というしかない。

会場だった講堂は、節一つない一本材を組み上げた4階建ての寺院
建築。夜になって本堂は拝観できませんでしたが、境内が10万坪
と聞いて驚く。

終わって帰っていくお坊様方のお車は、最新式のトヨタ・プリウス。
Eクラスのベンツ、BMVの5シリーズも少なからず。

聴衆の方は、総持寺の学僧たちが200人ほど。曹洞宗人権啓発委
員会主催の3日間にわたる修道の1教科であったそうです。
司会僧の「佐々井さんは21日にインドへ帰って、もう日本には帰
ってきません。もう会えません」の閉会の辞に、沸き起こった別れ
の拍手がまた、強烈でありました。

岩村
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岩村様、

佐々井秀嶺上人の講演会への参加とそのご報告ありがとうございま
した。私も行きたかったのですが、別件があり時間を作れませんで
したので、ご報告大変ありがたく読ませていただきました。

私は1978年の大学1年の教養学部のゼミ(上原淳道教授)で、アンベ
ードカルのことを本で読んでいたのですが、仏教塾のレポートの課
題「ダンマと心の不安の克服法」を書くときに、たまたま近所の図
書館でアンベードカルの『ブッダとそのダンマ』(これを書きかけ
てアンベードカルは亡くなったので、本としては、いまひとつです。
)を見つけて、読みました。

http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L0/201118.htm

2年前の3月に、南インドのティルパティで開かれるアンベードカル
のシンポジウムを見つけて、東京国際仏教塾の一年にわたる修行の
修学旅行として出席しました。ダリットの人々がアンベードカルの
名を借りて、言いたいことを言っていた会議という気配もなきにし
もあらずで、アンベードカルの思想は感じませんでした。海外から
の参加者は、私以外はイギリス人が一人いました。さすがですね、
大英帝国は。

http://www.ambedkar.org/confer.html

アパルトヘイトとカースト制度とかいった内容で短い講演をしたの
ですが、講演の中で、南アフリカでインド人は黒人と白人の間の緩
衝材の役目を与えられ、実際にアパルトヘイト体制下ではアジア人
として黒人の上の階級で黒人を差別する側にいたこと、そしてアパ
ルトヘイトが終わったあとも、黒人との交流は深まらず「インド人
が多すぎる」というムボンゲニ・ンゲマの歌まであるなんて話をし
たら、ドッチラケてしまいました。そういう場じゃなかったわけで
すよね。でもおかげで3泊大学のゲストハウスに泊めていただき、
おいしいインドの家庭料理を食べ、楽しい時間を過ごすことができ
ました。

ティルパティから列車に一晩のってハイデラバードに行き、そこか
ら飛行機でナグプールにいって、郊外にあるティルパティで知り合
いになった仏教団体の立派な宿泊施設に二泊したのですが、ここは
イギリス人でサンガラクシタというおじいさんの影響下にある僧院?
で、いかにも西洋人のアジア通が金を集めて作ったという雰囲気が
して、いまひとつでした。てそこに見切りをつけて、早朝、まだ真
っ暗なときに、逃げ出してナグプール市内に移動し、佐々井上人の
お寺の朝のお勤めをみてきました。

出勤前に普通の市民が、お参りしてからでかけるといった感じのす
る、人々の生活と結びついたお寺でした。佐々井上人は非常に気さ
くで、なおかつサービス満点な方で、アンベードカルが改宗を行な
った広場(ディクシャブミ)大ドームにもご案内いただきました。

さて岩村さんのご報告によれば、戦う仏教の雄たけびと、リッチな
日本の僧侶に囲まれて、身の置き所がなかったようですね。私もも
しご一緒していたら同じ気分になっていたのだろうと思います。

リッチなお坊さんの姿はそこそこ見慣れていますが、インドの戦う
仏教については、あまり知られていないだけにどう受け止めればい
いのか、悩みます。

アンベードカルは、貧しくて虐げられているアウトカーストの人々
を救いたいと考えたのでしょう。だがそれは、人間社会の中だけし
か見ていなかったのかもしれません。地球環境危機の時代において
、たとえアウトカーストであっても、豊かさを求める運動には時代
錯誤の匂いがするということでしょうか。

得丸公明
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アンベードカル
得丸様

迫り来る凄みは、まさにこれです。恥ずかしながら、アンベードカ
ルという人のことは知らなかったのです。戦う仏教は標語的に聞い
たのですが、その核心は、ひょっとすると7日の大塚護国寺での最
終講演になるのかもしれません。

得丸さんのおっしゃる時代錯誤の匂いは感じながら、あまりの悲惨
状態を看過し得なかった人々のことは、尊敬せざるを得ません。
得丸さん、いろいろ教えていただけて、私にはよい刺激です。

岩村
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岩村様、

佐々井秀嶺上人の最終講演は明日の午後3時、護国寺ですね。
残念ながら私は伺えませんが、講師にとって、聴衆にとって、実り
ある会となることを祈ります。

http://www.higan.net/blog/feature/items/sasai_flyer.pdf
http://www.higan.net/blog/feature/

2年前、インドにはチェンナイ(マドラス)の空港から入りました。
マドラスの宿を決めていなかったのですが、午前5時ごろに空港到
着したところ、日本人の美大の学生がいて、マドラス市内からマハ
ーバリプラムに移動するというので、それならタクシー相乗りで直
接マハーバリプラムにいこう、時間も稼げるし快適だよという話に
なって、ユネスコ世界遺産マハーバリプラムにいきました。

僕もそのときはじめて名前を聞いたのですが、世界遺産マハーバリ
プラムは、花崗岩地帯にたくさんのお寺が築かれた聖地です。
クリシュナのバターボールというのは、坂の途中に球が転がらずに
止まっている、不思議な姿をみせています。

インド亜大陸には、花崗岩地帯が多く、それはゴンドワナの時代に
隕石が衝突して、そのときに地殻が割れてマントルが流出したもの
ではないかと思います。
2年前の旅では、宗教聖地と、隕石衝突や大陸移動の関係について
も考えさせられました。この旅があったから、4月に南アフリカへ
の旅を思いついたのでした。

たとえばお釈迦様が生まれたネパールのルンビニという土地は、
ゴンドワナの一部であった亜大陸が、ユーラシア大陸とぶつかって
、褶曲山脈ができた麓にあります。
地球の磁場・重力異常が釈尊の意識に影響を与えた可能性はありま
す。

また、アンベードカルのシンポジウムが開かれたティルパティ(Tirupati)
は、すぐ北にあるティルマラ(Tirumala)という聖地(もともとは仏
教聖地であったものが、ヒンズー教によって奪われたという)の門
前町です。
ティルマラをグーグル地図でみると、海岸線に沿って、南北に山地
が並んであり、まるで唇を縦にしたような形状です。
海岸線に対して平行に山地があると、海風が降水をもたらすので、
恵みの雨が得られます。
だから聖地ティルマラが生まれたのでしょう。ティルマラの山なみ
の植生は、日本の山を歩いているような気分になりました。
日本列島こそ、海岸線に対して平行な山地だらけで、国中が聖地で
あるのだなあと思いました。

得丸公明
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http://www.higan.net/blog/feature/

 生涯を不可触民解放に捧げられたアンベードカル博士が50万人と
ともに行った集団改宗によって始まったインドにおける仏教復興運
動は、博士の死後・佐々井秀嶺師によって引き継がれ、一度は仏教
が消え去ったインドにおいて今や1億人とも言われる仏教徒が誕生す
るまでになった。

 人口10億人を超え驚異的な経済発展を遂げ、国際的に存在感を増
しているインド。世界的な金融不安による貧困や紛争の絶えない現
代において、慈悲をもって争いを無くそうとする仏教徒の増加は、
世界的にも大きな意義がある。

 渡印以来40年にわたりインドの仏教復興運動の中心的指導者とし
て、インドの仏教徒を導いてこられた佐々井師を迎え、インド仏教
復興運動の意義と師の活動について学ぶことを通して、現代社会に
おける仏教の意義について再考する機会としたい。

 ゲストには佐々井師の日本への紹介に尽力されてきたフォトジャ
ーナリストの山本宗補氏による現地報告と佐々井師の弟子である高
山龍智師に「歴史のメッセージ」についてお話しいただき、日本か
らは想像しづらいインド仏教の現状にも肉薄する。



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