3306.文明の転換−構造の変更



文明の転換−構造の変更                 虚風老
 
生とは「苦」である。というのは、ブッダの根底認識であるのじゃが
わしは、生(いのち)とは問題解決の技法であると呼びたい。
生きるというのは、まずエネルギーを外から得なければならないし
(食等)、局部的にはエントロピーの増大に逆らわなければならな
い(情報秩序の拡散ではなく組織化あるいは継続)というわけじゃ
な。
この基本的な問題を解決したいという方向性が<欲>として根底に
インプットされておる。
つまり<欲>そのものは、単なる脳などではなく、DNAレベル(生の
根源)からあることになる。
そこで方向づけられた欲であるからこそ、意識下に潜んでおり、無
明であるともいえる。
多くの<欲>も二次三次的な<生の継続>のため、その為の有効性
−優位性を担保するためにあると思える。(生が社会生活に埋め込
まれているのであれば、社会的欲求を通じてその優位性を発揮する
というのもそうじゃろう)

この問題に逢着することが「苦」であり、未来に問題が生じそうな
ことを知るのが憂(不安)である。
これが解決されれば、「快」となる。

問題解決の技法には、ふつうは問題がクリアーされること、つまり
無いことが問題なら有れば問題はなくなるし、有るが問題であれば
それが無くなれば問題が解決したといえる。
これを、一応<前進的解決>と呼んでおこう

仏教そのものは、「苦憂」に対する解決技法であるとおもう。仏教
の面白いのは、問題そのものを<無効化>するという方法を取る点
にある。
つまり問題と思っているそのものは本当に問題なのか?ということ
である。
つまり問題そのものが問題ではなかったら、そこに問題は無い。
これを<逆転的解決>とよんでみる。たとえば、何々が無くてはな
らないと思い込んでいるとしよう(執着)。しかしそれが無くてい
いのなら、問題(苦)そのものがなりたたない。

少し脱線したが、今我々が、逢着しているのは、文明構造の転換で
あるということじゃ。
20世紀はエネルギー・素材資源(高分子化合物)としての、石油
の世紀であったといえるじゃろう。まさに石油の上に乗っかった文
明であったのじゃ。
それがそれまであったたくさんの問題をクリアーさせたにちがいな
い。

しかし、今その成功が別の問題としてたち現れる。
環境(CO2)また、石油資源そのものの枯渇の可能性が見えて来た。
エネルギーの増大は人口の増大を可能にし、しかし、食と水の限界
もある工業化そのものも汚染(水の化学物質汚染−環境ホルモン等
−放射性物質の処理)の問題もある。また、東側・南側の諸国が労
働人口として世界参加してくること、また機械化等を通じての労働
生産性があがることによる「雇用」の問題も世界中で蔓延常態化し
てくるであろう。産業商品化文明の中で仕事がない(雇用されない
)とはそのまま死活問題になる。(昔の農業中心の生活形態という
のは、半自給自足であったといえよう。しかし今の「農産業」は商
品生産的農業である。)
どれも限界(地球と実体)の問題である。

もう一つは、問題のありようとその解決の枠組みが、村のような地
域(古代から中世)から国(近代)へ変わりそして今国という枠で
はなく世界という枠組みに変わろうとしていることであるといえる
じゃろう。

オバマは、「チェンジ」という掛け声で出てきたが、これは単なる
政権の交代だけを指しているようにはおもえない。

おそらく今起こっていることは、文明構造の変更・転換なのであろ
う。(そう指摘する人は多い)
その中心が「グリーン政策」なのだが、これは、環境という装いを
した、エネルギー転換だとみなければならんじゃろう。
文明の構造そのものが変わる時には、今までの問題解決の技法が
そのまま使えない可能性がある。また解決済みと思われていたもの
が問題として立ちはだかることになるじゃろう。
今の経済危機が終われは、もとの世界(産業システムの)に戻って
営々と前と同じような世界が続くというようなことは考えないほう
が無難かもしれない。

水野氏は経済そのものの変調を文明の転換の文脈でみている。
なた、ワシが読んだ中では、高瀬浄(きよし)氏の「自然と人間の
経済」(論創社)などは、そういう意味ですぐれた文明論なのかも
しれない。

文明そのものは、古今東西盛衰変更されてきたわけじゃから、終わ
ることに不思議はない。
石油文明の終わりに、何が起こり、何をしなければならないかを備
えておくことが、生き残りのために必要なのじゃろう。ただ、みん
なうすうす感じながらも、今のシステムの枠内で生きているわしら
は、実行として、それを替えることができない気がする。
システムというのは、おそらく破綻した後でしか再構成(新生)で
きないのだろう。(戦後焼け野原から新しい枠組みが生まれたよう
に)一つのシステムそれ自体には、壊れるまで維持しようとする
<力>が内在するからの。

おそらく文明転換の重要なキーは、エネルギー・水・雇用・世界化
(情報)なのじゃろう。
気分は戦争などという言葉があったが、それより大きな地殻変動を
我々は、目の前にしているのじゃろう

<力>あるものは、考えよ。そして、破綻したあとに備えるがええ。
新生する力の芽は、今内在させておかなければならない。(まるで
、ハリ・セルダンの預言みたいな…)

               虚風老
 

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