3295.罰金制度の活用



 罰金制度の活用
――例として環境NPOへ――
             平成21年(2009)5月17日(日)
                「地球に謙虚に運動」代表 仲津 英治
2年前の平成19年(2007)10月に、セブン‐イレブンみどりの基金の助成に
より、ドイツに環境研修(セブン‐イレブンみどりの基金第10回海外研修)
に参加しました。
その時の研修メニューの中に、資金確保活動=ファンドレイジング(Fund 
raising)という項目がありました。ドイツファンドトレージングアカデミ
ー代表のトーマス・クライツァー氏他、お一人の講師の話を伺いました。
ファンドレイジングとはアメリカ生まれの制度で、収入のないもしくは収
入の少ない福祉厚生団体、環境団体などが、自らの活動資金得を得るため
の活動を意味しています。ご関心の高い方は、「地球に謙虚に運動」ホーム
ページ

をご覧になって下さい。

その中でドイツではかなり以前から、交通違反罰金、脱税違反金などが、
NPO活動の支援財源となっていることを伺っており、関心を持ちながらも、
フォローが出来ておりませんでした。そして、この1月24日にセブン‐
イレブンみどりの基金第11回海外研修生の報告を聞く機会がありました。
そこで罰金収入を裁判所が管轄し、環境NPOなどに支給するという仕組み
になっていると言うのです。
 
 その後、「ドイツにおける環境NPO事情(2)という資料をセブン‐
イレブンみどりの基金より戴きました。ドイツ環境ボランテイアー研修制
度運営事務局ヒンリッヒ・グース事務局長の話などを纏めたものです。そ
れによれば、罰金がNPOに支払われる制度として、「ゴミの不法投棄に
対する罰金はゴミ関係の環境NPOに」、「子供の虐待に対する罰金は子
供NPO」といった団体に、罰金を支払うよう裁判所が裁断できるとのこ
とです。対象NPOのリストは860団体が登録されており、その中から裁
判官が適当なNPOを選ぶことができます。そこで裁判官へのNPOに
よるロビー活動が行なわれているとのことです。今のところ、これ以上の
詳しい情報はありません。

 しかし私は、この罰金活用制度は理にかなった面があると思うようにな
りました。交通違反罰金は、交通遺児や負傷者への補償また、交通安全向
上のための施設、制度整備に使われて良いでしょうし、これらの任務を遂
行している非営利活動団体に支弁されて良いと思います。環境汚染企業、
個人に課せられた罰金は、同様に環境改善事業に、また環境NPOの支援
に使われて良いでしょう。タバコのポイ捨てや禁煙地区での喫煙に対して
課される罰金も、それらの行為が環境汚染をしているとの視点に立てば、
環境対策に使われて良いはずです。
 私がこの意を特に強くしたのは、全国野鳥密猟対策連絡会主催の第1回
 野鳥密猟対策セミナーに(日本野鳥の会大阪支部と共催)参加してから
です。全国野鳥密猟対策連絡会事務局長中村 桂子さん(日本野鳥の会京都
支部事務局長)、大阪府の「傷病野生鳥獣保護飼養ボランティア制度」の
登録ボランティアのIさん等の話を聴く事ができました。中村さんは、密
猟者、警察を相手に地道かつ積極的な働きかけをされており、その活動振
りには頭が下がります。日本では狩猟法により狩猟鳥獣として登録された
カモ類、キジ、ヤマドリなど野鳥29種、ノウサギ、イノシシ、ニホンジ
カなど20種以外の鳥獣の捕獲は禁止されています。しかしメジロ、ウグ
イスなどの鳴き声を楽しむため、これらの野鳥を捕獲する連中が後を絶た
ないのです。野鳥は山野にいてこそ野鳥です。自然の中で小鳥の囀りを楽
しんで欲しいものです。
  そしてIさんから、捕獲された野鳥を自然に戻すためのリハビリテーシ
ョンをされていることを伺うことができました。
 籠の鳥となってしまったメジロなどは、狭い籠の中で、羽ばたくことな
く、単にジャンプすることを繰りかえすことになります。すると羽ばたく
ための筋力が衰え、いきなり自然に帰しても思うように飛翔できず、すぐ
天敵などの餌食になってしまうのです。そこで少し大きめの籠に移して、
飛ぶ練習をさせ、さらに大きな籠に移して、野生に帰れるだけの飛翔力を
回復させてから野に放つのです。この間1週間くらいでしょうか。それで
もしばらく籠に戻ってくるメジロもいるらしいですね。

 このリハビリ期間中の餌代が馬鹿にならないのです。野鳥がフクロウ、
タカなどの猛禽類ともなれば、餌としてマウスを与えるようで、一匹
100円もするとか。餌代は全て愛鳥家のIさんのような方の篤志で賄
われています。

 こうした経費にこそ、鳥獣密猟者に罰金を課し、得られた罰金収入を
充当されて良いのではないかと思った次第です。

 罰金制度の活用に関し、もっと事例をあるいは前例がないか、と問わ
れる方もあるでしょう。日本は何時も欧米先進国の先例、前例を追いか
ける傾向があり、一般の方もアメリカではこうだ、ドイツではこのよう
な事例があると言われれば、従う方も多いようです。しかし、環境問題、
安全問題、福祉問題などにおいて、日本が先行事例を作っても良いので
はないでしょうか。
 「罰金制度の活用」例として環境NPO 等への支援制度を提案するもの
です。裁判所管轄でなくても良いと私は考えます。この国の罰金収入は年
間1千億円あるとか。 皆様如何でしょう。

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仲津英治
「地球に謙虚に」運動代表


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