3294.死生観の科学と思想



サイエンスZEROで「アポトーシス」の話があった。 Fより

従来、寿命を司るのは「テロメア」であると思っていたが、「アポ
トーシス」であり、このアポトーシスは、自分が死ぬ必要を感じた
時に、自分自身の細胞を壊すと言う。

しかし、これは人間の全体にも言えるように感じる。免疫系がおか
しくなるのも、気力が失せた時であり、自分の生甲斐を失ったとき
であるということと同様な仕組みが人間にはあるということだ。

死生観については、仏教的な思想など、いろいろな思想があるが、
その意味が科学的な目で見ることができるようになってきたという
ことである。

しかし、最後に必要なのは、いくら科学的に死のメカニズムを知っ
たとしても、自分の考え方であり、死生観である。生甲斐である。

その死生観を日本人は自然の中に自然に見る習慣があったのに、そ
の習慣を戦後、失っている。ものの考え方を西欧文明から東洋文明
へスイッチする必要があると見るがどうであろうか??

==============================
サイエンスZERO(NHK教育)
シリーズ「ヒトの謎に迫る」第7回のテーマは「死」。
活性酸素や紫外線で傷ついた細胞は、ダメージが小さければ修復し
て生き続けることができるが、ダメージが大きくなると死を選択、
自らを粒状に分解して死んでいく。これはアポトーシスと呼ばれる
現象で、遺伝子にあらかじめプログラムされた「細胞の自殺」とい
える。

その仕組みは巧妙で、細胞自身がダメージの程度を判定し、修復で
きないと判断すれば「死の酵素」を働かせ、核の中のDNAを細か
く切断。DNAの断片を小さな袋に封じ込めて、最後は免疫細胞に
食べられて消滅する。つまり、アポトーシスはダメージを個々の細
胞レベルで食い止め、私たち個体を守る危機管理システムと言える。

生化学者の田沼靖一さんは、「アポトーシスは15億年前、有性生殖
とともに生まれた」という。遺伝子をランダムに組み換えて子孫を
残そうとする有性生殖では、よくない遺伝子の組み合わせを消去す
る必要があった。その方法がアポトーシスであり、さらには老化と
ともに遺伝子に傷を蓄積した個体を消去するため、死が生まれたと
いうのだ。

このアポトーシスの研究は、「進化の大きな流れの中で死の積極的
な意味をとらえ直そう」という示唆を含み、私たちに死生観の見直
しを迫るものでもある。

誰もが避けては通れない死。死の視点から生の仕組みを読み解き、
「自分の死を予見する唯一の生物」としてのヒトに迫る。
==============================
アポトーシス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アポトーシス (apoptosis) とは、多細胞生物の体を構成する細胞の
死に方の一種で、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起
こされる、管理・調節された細胞の自殺すなわちプログラムされた
細胞死(狭義にはその中の、カスパーゼに依存する型)のこと。

これに対し、血行不良、外傷などによる細胞内外の環境の悪化によ
って起こる細胞死は、ネクローシス (necrosis) または壊死(えし
)と呼ばれ、これと区別される。Apoptosis の語源はギリシャ語の
「apo-(離れて)」と「ptosis(下降)」に由来し、「(枯れ葉な
どが木から)落ちる」という意味である。

1.特徴 
特徴としては、順番に

細胞膜構造変化(細胞が丸くなる) 
核が凝縮する 
DNA 断片化(DNAが短い単位(ヌクレオソームに相当)に切断される) 
細胞が小型の「アポトーシス小胞」とよぶ構造に分解する 
といった変化を見せる。

多細胞動物の生体内では、癌化した細胞(そのほか内部に異常を起
こした細胞)のほとんどは、アポトーシスによって取り除かれ続け
ており、これにより、ほとんどの腫瘍の成長は未然に防がれている
ことが知られている。また、生物の発生過程では、あらかじめ決ま
った時期、決まった場所で細胞死が起こり(プログラムされた細胞
死)、これが生物の形態変化などの原動力として働いているが、こ
の細胞死もアポトーシスの仕組みによって起こる。例えばオタマジ
ャクシからカエルに変態する際に尻尾がなくなるのはアポトーシス
による。線虫では発生において起こるアポトーシスがすべて記載さ
れている。人の指の形成過程も、はじめ指の間が埋まった状態で形
成し、それからアポトーシスによって指の間の細胞が予定死して指
ができる。さらに免疫系でも自己抗原に反応する細胞の除去など重
要な役割を果たす。

シドニー・ブレナーらはこの業績により2002年ノーベル生理学・医
学賞を受賞している。

アポトーシスを開始させる細胞内のシグナル伝達経路は主にこの線
虫の遺伝学的研究から明らかになった。その後線虫や昆虫から哺乳
類まで多細胞動物のアポトーシス経路には共通点が多いことが明ら
かとなった。これは非常に複雑に調節されるネットワークであるが
、カスパーゼと総称される一連のプロテアーゼが中心的な働きをし
、下流のカスパーゼを順に開裂・活性化していくこと、またミトコ
ンドリア(「アポトーシスの司令塔」)も重要な働きをなすことが
特徴である。おおよそ次のようにまとめられる。

 
アポトーシスの主経路TNFなどのサイトカインやFasリガンドなど(
デスリガンドによる)細胞外からのシグナル => 受容体(デスレセ
プター) => カスパーゼ-8,-10 => カスパーゼ-3 
DNA損傷など => p53 => ミトコンドリア上のBcl-2などのタンパク質
からなるシグナル系による制御(またはミトコンドリア自体の異常)
 => ミトコンドリアからシトクロムcの漏出 => カスパーゼ-9 => カ
スパーゼ-3 
小胞体ストレス(小胞体で異常なタンパク質が生成するなど) => 
カスパーゼ-12 => カスパーゼ-3 
カスパーゼ-3がその他のタンパク質を分解するなどしてアポトーシ
スを決行させる。現在普通にはこのような経路による細胞死を特に
アポトーシスと呼んでいる(ただし植物などで異なるメカニズムに
よる細胞死をアポトーシスと呼ぶこともある:これらについてはプ
ログラム細胞死を参照)。 

なお、多細胞動物の細胞内においても「カスパーゼに依存しないプ
ログラム細胞死」(caspase-independent programmed cell death)
の経路は存在している。

==============================
テロメア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

テロメアは特徴的な繰り返し配列をもつDNAと、様々なタンパク質か
らなる構造である。真核生物の染色体は直線状であり、DNAの末端が
存在する。DNA末端は細胞内にあるDNA分解酵素やDNA修復機構の標的
となるが、テロメアのDNA末端は正常なものであり、分解や修復を受
けてはならない。そのためテロメアはその特異な構造により、DNAの
分解や修復から染色体を保護し、物理的および遺伝的な安定性を保
つ働きをする。また、テロメアは細胞分裂における染色体の正常な
分配に必要とされる。テロメアを欠いた染色体は不安定になり、分
解や末端どうしの異常な融合がおこる。このような染色体の不安定
化は細胞死や発ガンの原因となる。原核生物の染色体は環状で末端
がないためテロメアも存在しない。

テロメアの伸長はテロメラーゼと呼ばれる酵素によって行われる。
この酵素はヒトの体細胞では発現していないか、弱い活性しかもた
ない。そのため、ヒトの体細胞を取り出して培養すると、細胞分裂
のたびにテロメアが短くなる。テロメアが一定長より短くなると、
細胞は不可逆的に増殖を止め、細胞老化と呼ばれる状態になる。細
胞老化は細胞分裂を止めることで、テロメア欠失による染色体の不
安定化を阻止し、発ガンなどから細胞を守る働きがあると考えられ
ている。また老化した動物やクローン羊ドリーではテロメアが短か
ったことが報告されており、テロメア短縮による細胞の老化が、個
体の老化の原因となることが示唆されているが、個体老化とテロメ
ア短縮による細胞老化との関連性は現段階では明らかではない。



コラム目次に戻る
トップページに戻る