3292.米国のもう1つの「偽りの夜明け」



米政府とFRBの「フェイント、偽り」の政策は今後どうなるか?
                Fより

白川日銀総裁が、ニューヨークで1990年代の日本のバブル崩壊
後の政策等を講演して、一時的に景気が回復しそうであると期待す
る「偽りの夜明け」があり、そこで政策を間違えたことが、10年
の長い失われた時間を要した原因であると述べている。この時期、
米財務省のストレステストの結果が揃い始めた時期であり、この結
果を見越した白川総裁の講演とすると、意味深な感じがする。

そして、白川総裁が心配した通りのことを米国政府は発表した。ス
トレステストで、IMFより少ない金額の損失であると発表した。
1990年当時、日本は200兆円の損失で、公的資金を70兆円
も入れた。しかし、今回の証券化バブルでの損失は1000兆円以
上であるにも関わらず、公的資金の投入額は日本が入れた公的資金
と同じ70兆円でしかない。そして、それ以上はいらないという。

この前に時価会計の緩和をして、不良債権を表面化しない処置をし
たことで損失金額が小さくなるようであるが、消費者ローンや企業
債権の焦げ付きが少なすぎるように感じる。ストレステストという
名前に世界が惑わされたのだ。米経済は心配がないことを証明する
検査であったことが判明した。このように米国も失われた10年以
上が必要になったということである。もしかすると、米国は極貧国
になる可能性も出てきている。もう2度と浮かび上がれない可能性
もある。

ということで、「偽りの夜明け」を米財務省・FRBが共同で演出
していることで世界の投資家からの資金を集めようとしているよう
である。そのために、いかにも直ぐに米国経済は復活するというよ
うな「偽りの夜明け」を演出しているように感じる。

一方、日本は4月の鉱工業生産もプラスになっている。この理由は中
国の内需が拡大して、素材を中心として需要が拡大し始めたことに
よる。しかし、米国の鉱工業生産高はまだマイナスであり、少し減
少が少なくなっただけである。夜明けというにはまだ暗すぎるので
あるが、米政府は強引にも夜明けと宣伝しているのである。それを
真に受ける人たちがいるためにニューヨーク市場のダウは上昇して
いる。

そして、クライスラーに続き、GMも破綻処理になるということは
両社の社債がデフォルトになり、またCDS(金融保険)の支払い
が必要になり、AIGなどの損失が増大することになる。GMは販
売網の1000社以上との取引停止を行うし、車種も絞り込むこと
になり、また失業者を大量に生み出すことになる。世界最大の自動
車会社を半分にすることで、部品メーカも倒産するため、米国の景
気は今後、一層悪くなることが確実である。今の一瞬だけ、米政府
は「偽りの夜明け」を演出できる。今後GM破綻となると米国景気
は夜中に逆戻りするしかない。

GM破綻で大きな損失を蒙るのは、AIGなどCDS(金融保険)
業務に深入りした銀行である。このCDS取引に対して、米国も規
制を強化することにしたようである。CDSは相対取引で実態が見
えなかった。このため、取引を透明化する手段に出ている。

オバマ政権開始から77日間で15万人の雇用を生み出したという
が、その期間に100万人以上の雇用が失われている。米国経済に
対して、甘い見通しは危険である。欧州も同様にGDPのマイナス
幅が拡大している。こちらも甘い見通しは危険である。甘い見通し
をするならアジアである。まだその芽がある。

また、米国の財政赤字は、2009年会計年度での赤字が80兆円
にもなり、年度では150兆円以上の規模になる。このため、米国
債を大量に発行する必要になるが、その買い手は中国しかない。こ
のため、ガイドナー財務長官は、日本には立ち寄らずに5月末、中
国に飛んでいくという。それだけ、切羽詰っていることが分かる。

そして、その上に医療改革を行い、国民皆保険にするというし、中
間層の減税恒久化を行うというし、どれもこれも財政支出が必要な
ことばかりである。ガイドナー財務長官でなくても、資金手配が心
配になる。

中国の出方が見ものである。

さあ、どうなりますか??
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米鉱工業生産0.5%低下 4月、調整進展で下げ幅縮小
 【ワシントン=米山雄介】米連邦準備理事会(FRB)が15日発
表した4月の鉱工業生産指数(2002年=100、季節調整済み)は97.1
となり、前月に比べ0.5%低下した。前月比マイナスは6カ月連続。
ただ下げ幅は前月の1.7%(改定値)から大幅に縮小。在庫調整の進
展などから、企業が減産ペースを徐々に緩めている状況を映した。
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米、店頭デリバティブ決済を一元化 金融機関に資本規制

【ワシントン=大隅隆】米政府は13日、金融派生商品(デリバティ
ブ)市場の規制改革案をまとめ米議会に提示した。標準的な店頭デ
リバティブの決済を金融当局が監督する清算機関に原則一元化する
。さらに同商品を大規模に手がける金融機関には一定の資本規制を
導入、資本を積むように義務づける。金融危機の一因となった店頭
デリバティブ市場の透明性を高め、リスク管理の強化を促す狙い。
米政府は日欧など関係各国とも規制の協調を図る構えだ。

 ガイトナー財務長官、シャピロ米証券取引委員会(SEC)委員
長らが会見し発表した。デリバティブを活用し1990年代に急成長し
たヘッジファンドなどの経営に大きな影響を与えるのは確実だ。

 これまでの店頭デリバティブ市場では金融機関同士の相対取引が
多く、取引先が負っているリスクや市場全体の動向などがつかみに
くかった。危機時には市場参加者同士の不信が増幅。取引がほとん
ど止まり金融システムがまひ状態に陥った。(12:35) 
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米医療改革法案、7月末までに可決 大統領、下院民主と合意 
 【ワシントン=米山雄介】オバマ米大統領は13日午前、ホワイト
ハウスでペロシ下院議長ら下院民主党幹部と会談した後に声明を発
表し、事実上の国民皆保険を目指す医療保険改革法案を7月末までに
下院で可決する方針で合意したことを明らかにした。民主党が圧倒
的多数を占める下院でまず法案を可決することで、大統領が目標に
掲げる年内の法案成立に弾みをつける狙いがある。
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米財務長官、訪中へ=訪日見送りも「強く希望」
5月13日8時17分配信 時事通信

 【ワシントン12日時事】米財務省は12日、ガイトナー長官が5月末
から中国を訪問し、中国高官と会談すると発表した。米中間の経済
関係強化など「両国にとって重要な問題」について協議する。ガイ
トナー長官が中国を訪問するのは1月下旬の就任以来初めて。
 財務省筋によると、長官は今回の外遊で日本には立ち寄れないも
のの、近い将来の訪日を「強く希望している」という。 
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4月の米財政収支、209億ドルの赤字に 景気悪化で税収細る 
 【ワシントン=大隅隆】米財務省は12日、4月の財政赤字が209億
ドル(約2兆円)になったと発表した。所得税の納税が集中する4月
は例年黒字になるが、景気悪化を受け赤字に転落した。2009会計年
度(08年10月―09年9月)の財政赤字は4月までの累計で8022億ドル
。前年同期の5倍強の水準で推移している。 
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米、中間層の減税恒久化 10年で72兆円、税制改革案を公表
 【ワシントン=大隅隆】米財務省は11日、2010会計年度(09年10
月―10年9月)以降の税制改革案を公表した。景気対策に盛り込んだ
中間層向け減税を恒久化。19年までの約10年で7355億ドル(約72兆
円)の減税を実施する。一方、高所得者層への増税で同6153億ドル
を確保。多国籍企業への課税も厳格化する。オバマ政権が目指す富
の再配分を意識した改革案になっている。

 中間層向け減税は勤労者向け所得減税(夫婦で最大800ドル)など
で構成。2月に成立した景気対策に10年までの時限措置として盛り込
んだが、これを11年度以降も継続する。
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米カード改革法「25日までに成立」 オバマ大統領演説
 【ワシントン=米山雄介】オバマ米大統領は9日、週末恒例のラジ
オとインターネットを通じた演説で、クレジットカードの利率引き
上げに一定の規制を設け、手数料などの情報開示を徹底するクレジ
ットカード改革法案の早期可決を議会に要請していると語った。メ
モリアルデー(戦没者追悼記念日)の5月25日までに署名、成立させ
るとしている。

 大統領はカードの利用に伴って、思いがけない利率引き上げや高
い手数料などの請求を迫られる事例が増えていることに懸念を表明
。「強力で信頼できる消費者保護が必要だ」と訴えた。

 オバマ政権は持続的な経済成長に向け、これまでの過剰消費を改
める観点からもカード会社の規制を強化する方針を示している。
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米金融機関、増資ラッシュ 公的資金、早期返済めざす
 米国の金融機関で資本増強の動きが加速している。11日にはUS
バンコープなど5社が普通株の公募で計73億ドル(約7100億円)の増
資を行うと発表。米政府による資産査定(ストレステスト)を受け
た19社のうち、普通株の発行手続きに入ったのは7社となった。公的
資金を返済し、経営の自主性を取り戻す狙いだ。公的資金の一斉注
入で金融危機を防ぐ非常時が一段落したことを示している。

 USバンコープのほかに増資を発表したのは、バンク・オブ・ニ
ューヨーク・メロン、キャピタル・ワン・ファイナンシャル、BB
&T、キーコープ。キーコープを除く4社はテストの結果、資本増強
の必要なしと判定されたが、公的資金の早期返済のために増資を決
めた。投資家の需要が多ければ売り出し株数を約15%増やす予定で
、最終的な調達額は増える可能性がある。

 モルガン・スタンレーとウェルズ・ファーゴは既に8日までに増資
手続きを終え、約126億ドルの調達を決めている。新たに5社が増資
手続きに入り、調達の予定額は約200億ドルに達した。(07:00) 
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特別検査でFRBが譲歩=公表前に資本不足額を圧縮−米紙報道
5月9日14時54分配信 時事通信

 【ワシントン9日時事】米紙ウォール・ストリート・ジャーナル
(電子版)は9日、大手19金融機関に対する特別検査(ストレステ
スト)を行った連邦準備制度理事会(FRB)が7日の公表直前に資本
不足額を大幅に圧縮していたと報じた。検査は厳格に行われたとす
るFRBの主張に疑いが生じかねず、今後論議を呼びそうだ。
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米金融、10社で資本不足7.4兆円 資産査定結果
 【ワシントン=大隅隆】米政府と米連邦準備理事会(FRB)は
7日、大手金融機関19社の健全性を審査する資産査定(ストレステス
ト)の結果を公表した。景気が一段と悪化した場合の潜在的な損失
が来年末までで計6000億ドル弱(約60兆円)になると予測。バンク
・オブ・アメリカ、シティグループなど10社について計746億ドル
(約7兆4000億円)の資本不足の恐れがあると査定した。結果を受け
て米金融機関は増資などの健全化策に着手した。

 バーナンキFRB議長は7日の記者会見で「査定結果は投資家と一
般市民にかなりの安心感を与える」と指摘した。ガイトナー財務長
官も「金融システムの透明性」が高まることで貸し渋りなどの信用
収縮の解消につながるとの見方を強調した。

 19社のうちJPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスな
ど9社は現在の自己資本で景気悪化に耐えられると査定した。一方で
バンク・オブ・アメリカは339億ドル、ウェルズ・ファーゴは137億
ドル、シティグループも55億ドルの資本増強がそれぞれ必要になる
と判定している。(11:01) 
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5月7日(ブルームバーグ):
資金不足を指摘されたのは10社で、不足額が大きい金融機関から順
に、バンク・オブ・アメリカ(BOA)が339億ドル、ウェルズ・
ファーゴが137億ドル、シティグループが55億ドル。また、フィフ
ス・サード・バンコープが11億ドル、キーコープが18億ドル、
PNCファイナンシャル・サービシズ・グループが6億ドル、
リージョンズ・ファイナンシャルが25億ドル、サントラスト・バン
クスが22億ドル、ゼネラル・モーターズ(GM)の金融子会社
GMACが115億ドル、モルガン・スタンレーは18億ドルと判断さ
れた。 

資本増強の必要なしと判断された9社は、ゴールドマン・サックス
・グループ、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・ニューヨー
ク・メロン、メットライフ、アメリカン・エキスプレス(アメック
ス)、ステート・ストリート、BB&T、USバンコープ、キャピ
タル・ワン・ファイナンシャル。 

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米保険大手に資本注入 AIG以外で初、財務省が仮承認
 【ワシントン=米山雄介】米財務省は14日、ハートフォード・フ
ィナンシャル・サービシズ・グループなど米大手保険数社が申請し
ていた公的資金による資本注入を仮承認した。保険会社への資本注
入は、政府管理下で経営再建中のアメリカン・インターナショナル
・グループ(AIG)以外では初めて。同省報道官によると、プル
デンシャル・フィナンシャルなども資本注入の対象に含まれる。
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「偽りの夜明け」を本当の回復と見誤らない注意必要=日銀総裁
2009年 04月 24日 14:22 JST

 [東京 24日 ロイター] 白川方明日銀総裁は23日、日本
がバブル崩壊後に何度か一時的な景気回復局面を経験したことを踏
まえ、「偽りの夜明け」を本当の回復と見誤らないよう注意する必
要性を強調した。

 ニューヨークで「経済・金融危機からの脱却:教訓と政策対応」
とのテーマで行った講演で述べた。

 日銀が24日に発表した講演の邦訳によると、白川総裁は「日本
経済は1990年代の低成長においても、何度か一時的な回復局面
を経験したが、このことは経済がついにけん引力を取り戻したと人
々に早合点させる働きをしたように思う」と指摘。その上で「これ
は『偽りの夜明け』とも言うべきものだったが、人間の常として、
物事がいくぶん改善すると楽観的な見方になりがちだ」と述べ、一
時的な回復を本当の回復と見誤ることに警鐘を鳴らした。

 ただ、「終わりのない経済危機というものはない」とも強調し、
「中央銀行は積極的な金融緩和からの適切なタイミングでの脱出も
、意識しておかなければならない。脱出が遅れると、より悪い状況
への入口に既に足を踏み入れている可能性がある」と出口戦略の必
要性も訴えた。

 白川総裁は、日本の「失われた10年」の教訓として、1)大胆
だと思って採った行動であっても、事後的にみれば必ずしも大胆で
はなかったという場合がある、2)政府や中央銀行による危機管理
対応が、経営に失敗した銀行を救済するためではなく、金融システ
ム全体を救うために行なわれているということを、しっかりと説明
し、国民の理解を得る必要がある、3)マクロ経済政策は、経済の
急激な減速に立ち向かう上で鍵となる役割を果たすが、万能薬では
ない──の3点を指摘。

 その上で金融危機管理の政策対応として、1)流動性の潤沢な供
給、2)信用市場の機能の支援、3)マクロ経済政策による有効需
要の喚起、4)公的資本の注入とバランスシートの不確実性の除去
──の4点を挙げ「この4つの領域で効果的な措置が講じられなけ
れば、経済は一段と厳しい調整を余儀なくされかねない」と強調し
た。

 さらに「中央銀行は、不均衡が経済に蓄積されてきていないかど
うかを、常に警戒しておくことが必要だ」とも指摘。「中央銀行が
金融政策判断に当たって一般物価の安定だけに焦点を当てていると
、経済活動の様々な側面で生じる危険な兆候を見落とす可能性が高
まる」と述べ、政策当局者としてマクロプルーデンスの観点を持つ
重要性を訴えた。白川総裁は「金融の不均衡は、典型的には、金融
機関の信用量の伸びやレバレッジの拡大、資産価格の急騰、あるい
はそうしたものの組み合わせとして現われやすい。中央銀行は、こ
うした指標を注意深くみることが必要だ」と語った。


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