3286.アジアの時代に向けて



アジアの時代が来ている。米国の銀行審査は不十分であり、それだ
けバブル崩壊の傷が大きいことを示している。今後、経済的な中心
は欧米から中国・インドになり、そのために新興国は権利を主張す
ることになる。

これに対して、今までの先進諸国は権利を維持しようとして新興国
との世界支配機関での配分争いになるが、所詮、中国のお金がアフ
リカや南米などに巻かれて、多数の支持を勝ち取ることになる。中
国は近攻遠交策でくることが見えている。

米国も中国との権利獲得競争で、スマートパワーという敵とも交渉
する立場を表明したが、親米国が離反することになり、米国の力の
限界がハッキリしてきている。このため、米国は中国とのG2とい
うが、そのうち中国に負けることになる。
このとき、日本はどうするべきなのかを議論しよう。
                  津田より

0.はじめに
日本は東アジア共同体結成に向けて、AMFなどの組織化に積極的
である。この組織に積極的なのは中国も同じである。アジア市場は
3億人以上のいる市場であるので日中ともに利益があると見ている。

日本の中で、東アジア共同体は中国を利するので止めるべきである
という人たちがいるが、ここまで中国の政治力が強くなると、日本
を除外して東アジア共同体を作り、盟主となってしまう可能性が高
い。それは避ける意味からも、日本が主導した形で共同体を作るこ
とが重要になっている。

ということで、この組織構築自体は日中が共同で進めるべきである
と思う。

日本は中国文化と欧米文化の両方を取り入れて、その2つを融合さ
せた文化を形成した。たとえば、日本の本草学は中国の陰陽5行説
の影響をあまり受けていない。博物学として日本流の発展をしたし
、漢方も西洋医学との折衷した和漢方である。このように中国と日
本は同じ思想を持ちながら、その発展形態は違う。

中国と日本の違いは、中華思想を持つか持たないかだけではなく、
中国と日本は政治構造も違い、中国は科挙で一般人でも特権階級に
なれる2千年前からした社会であり、日本は身分固定の特権階級支
配という歴史があり、政治体制に関した考え方は大きく違う。
このため、中国の民主化というのは彼らの中からは起こりえない。

1.中国の政治制度について
2千年前から中国は一般人でも支配階層になることができた優れた
システムを持っているという。現在の政治システムはトップまで一
般市民が上り詰めることができる制度であり、民主主義と同じ程度
に優れていると見ている。

法治国家がダメであるのは、韓非子が提唱した法家思想であり秦が
実験して失敗している。欧米の民主化と法治国家というのは中国で
は実験済みであり、中国では良くない政治制度と見ている。

法治国家ではなくて、人治国家であれば、臨機応変に対応できるし
対応が早く、危機を乗り切ることが可能であるが、民主主義である
と行動が遅く、判断の責任体制が明確ではなくて危機を乗り切るこ
とができないと。危機に何べんも会い、その中で政治体制をどうす
るかを見てきた中国は、他の諸国とは違う思いを持っているようで
ある。

これに対して、日本や欧州は貴族など特権階級が支配する政治シス
テムであり、経済が発展して商人が力を持ち、それで貴族社会を崩
壊させてできたのが民主主義であり、特権階級の自由させないため
に法律を作り、その法律で支配するという仕組みを作った。
民主主義は日本、欧州など似たような歴史を潜り抜けた国家には有
効であると多くの人たちが見るが、それとは違う歴史の中国は、我
々の考え方を受け入れないようである。

ということで、中国の政治制度がこのままと見るしかない。民主化
すると期待しない方がいい。

2.中国と日本の思想
 前回の中国思想史で見たように、日本も中国も同じような文化で
ある。道教は江南から出てきたが、この道教を元に天皇制度や神道
ができたことは、福永光司氏の研究で明らかになってきている。
思想でも陰陽5行説は易では使用するが、その他への発展は日本で
はあまりない。

特に影響を受けたのが中国医学であり、針灸医療には陰陽道が大き
な分類に使用されている。江南で発展した薬草を下にした漢方は、
この陰陽思想にあまり影響をされていない。そして、日本が力を入
れて導入したのは江南の薬草を中心とした漢方である。このため、
現在も針灸は医療としては一歩下に見られている。

仏教でも北伝仏教は法相宗、華厳宗など理論中心の仏教であるが、
あまり日本では流行っていない。南伝仏教である密教、禅、浄土教
などが日本では流行った。

このように日本が入れたのは江南の地で受け入れた文化であり、人
種的にも日本と江南の地に住んでいた人たちは一緒ではなかったか
と見ている。江南の地は、米作であり食文化が同じであるし、嗜好
もよく似ている。

呉服というように、日本の和服は呉からきたことが覗えるし、漢字
の読み方も呉音が中心であることから5世紀日本で大和朝廷を作っ
た人たちは呉など江南から逃れてきた人たちなのであろう。

このため、科挙や宦官など北方遊牧民的な文化を取り入れていない
し、その北伝仏教や針灸の陰陽説など北方的な思想も日本はあまり
取り入れていないようである。

針灸を日本化したのは江戸時代で、日本式の鍼灸術「管鍼術」を全
盲の鍼灸師杉山和一が体系化した。その後、経路否定論など日本は
医療経験からいろいろな研究が出ているが、陰陽5行説にはとらわ
れていない。

3.実力主義の中国
現在の中国は上記のように2つの文化と思想があり、この2つの考
え方を微妙に使い分けてくるために、交渉も難しい。特にトップダ
ウンで物を決める思考が日本とは違い、交渉を難しいものにしてい
るようだ。

私たち日本人と付き合う中国人はプライドが高い。大学を出て日本
語や英語ができて、留学もしている人たちが多い。中には共産党員
である場合もある。その県や村でもトップの成績でないと大学には
いけなかった時代の人たちが企業のトップ近くにいる。

また、国営企業トップでも評価されているので、すぐに結果を出さ
ないと左遷されるのでがんばることになる。このため、交渉もタフ
である。中国は実力主義社会であり、日本の方が実力主義ではない。

そして、中国企業は情報提供や便宜をしてもらうために、複数の省
幹部を普通、企業の顧問にしている。月10万円以上を支払ってい
るという。これはワイロではなく、民間企業への兼務が認められて
いることによる。このため、省の幹部は複数社の顧問になっている
ので、大金持ちである。これも中国社会では当然とみなされている。

王朝時代の科挙で選出された士大夫は大金持ちになることが当然で
あったことと現在の官僚と同じであるとみなしている。歴史的な事
実で中国では当然とされている。もし、そうなりたかったら、猛烈
に勉強をしろでしょうね。このため、中国は受験勉強が大変である。

4.中国社会への接近
現時点の中国はキャッチアップであるので、どうしても真似から始
まるし、それの方が効率がいい。製品を持って行くと1つだけ買っ
て、それを分解して同じような製品を作ることになる。このため、
日本企業は自社工場を中国に作り厳重な情報保持をするが、中国人
は企業を移動するためにすぐに漏れていく。

しかし、中国語の孤立語から論理展開がやや苦手であるとか、早く
儲けたいという意識が強いために、忍耐力がやや弱いという欠点が
ある。このため、大学の研究もチャッチアップ型になっている。ど
うしても真似て作ることを考えることになる。このため、耐久性や
素材などの面で日本には勝てないように感じている。簡単な真似で
はできない微細な工夫や加工はそう簡単に真似ができない。

もう1つ、中国政治指導者を見ていると内部の政治闘争があるため
に、高級幹部の息子たちの太子党と這上がり組の権力闘争が見える。
このため、政治家も個人能力が問われる社会であり、失敗ができな
いという緊張感がある。

このため、中国の将来と日本の将来の利害を調整して共同の目標を
持てば、日中トップ同士の共同的な戦略ができるようにも見える。
麻生首相のような非優等生的な人の方がいいかもしれない。

5.日本はどうすればいいのか?
お隣の中国の軍事力が拡大しているし、中国政治が世界的な規模で
拡大している。日本の利益と相反する事態にもなりかねない。
これを防ぐには、日中欧米など多極的な関係を密にして、中国と当
たり、アジアについては日中韓・ASEANなどと密に協議して、
いくことであろうが、日中の共同の利益を追求するような関係を作
るしかない。

このためには、中国の不得手な部分を探して、そこで日本は生きる
しかない。当面、高級品を日本から中国に販売することも重要であ
るが、それだけでは中国は追いつく可能性がある。日本人の特性と
中国人の特性を見た戦略が必要になっていると思うがどうであろう
か??


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